子供を諦めていた躁鬱が妊娠を許可された話④
前回、前々回で、バルプロ酸ナトリウムを400→200→100mgと順調に減薬したが、結局自殺衝動が酷く、もう一度200mgに増薬したという話をさせて頂いた。
では、増薬してから体調が良くなったかと言うと、そうでもない。
千葉の田舎の祖父母の家に夫婦で何泊かのんびりしようと療養に行ってみたが、元々「海に入ると野生に帰る」と言われるほどの海好きの私が、そんなに海で泳ぐ気もせず、いざ少し入ってみたら頭に自分が入水自殺する映像が流れる。怖くてとても泳げたものではなかった。
もう88歳のパワフルなおばあちゃんが、私よりも遥かに沢山の家事や畑仕事をこなしているのを見て、自分がいかに何も出来ないかを実感して泣いたりもした。
夫と予定していたハネムーンも体調が悪くならないように大きくプランを変更し、飛行機からホテルから何までを取り直さなくてはならなかった。そんな風に最低限の旅程で回ってもついてまわる死にまつわる侵入思考…。
(それでも4泊5日の旅行に行けたことは自分の大きな自信につながったし、それはもう素敵な思い出になったのだが、それについてはまた後日知らないおばちゃんに悩み相談をした話シリーズのどこかで―。)
今にして思えば、この時期は私にとって最低限の量の薬が、何とか私を普段と違う生活にも耐えさせてくれていたのだと思う。
さて、ここまでメンタルの話ばっかりしてきたが、妊活は身体面からも語ればならない。
私は昔から生理不順で多嚢胞性卵巣症候群を持っている。簡単に言うと規則的に毎月排卵しない状態だ。
であるので、私は精神科で減薬を試みながらも、婦人科にも通い、こちらでも薬の調整を試す必要があった。
卵胞を育てるために生理中にレトロゾールを1錠(2.5mg)飲んでみたのだが、1週間後の内診で卵胞が育っていないと言われる。
「1錠じゃ少なかったかな〜…」と先生が漏らした。
ここから、「まあでもしばらくこのままモニタリングしましょう」との事で毎週婦人科に通い内診をすることになる。
あの内診の、ひっくり返って足を開かせられる内診台で、腟に何かを突っ込まれ、右にグイっ。右の卵巣を見て「うーん…。」左にグイっ。左の卵巣を見て「あんまり育ってないかなぁ…。」これだけでも地味に気持ちが辛いのだが、
待合室で幸せそうな赤ちゃん連れの夫婦や、お腹の大きな女性を見ているのも、メンタルの減薬に失敗中の自分に本当に子供を持てる日が来るのか、自分に育てられるのか、という思考が頭をぐるぐるしてしまい、なかなかに辛い時間である。
婦人科には必ずむぎが一緒に来てくれていたのが、私の唯一の救いだった。(むぎは実際に、「子供が出来なくてもふたりなら幸せに過ごせるよ」と言って手を握ってくれたり、「時間をかけてゆっくりでいいんだから、大丈夫だよ」と優しく声をかけてくれたりした。)
それに、婦人科に通うために予定を調整するのも楽ではなかった。私たちは普通の人と精神障害の面で少し事情が違うので夫婦二人で説明を受けたかったのと、私があの一件以降車の運転をしないようにしているため、むぎに婦人科に行く時に仕事を調整してもらう必要があった。最初に病院に行ってから、生理が来るのを待っていた1週間を除いて、7週間は毎週婦人科に通わなくてはならなかった。それもいつくるか分からない生理とのタイミングであったり、土曜日に時間を作れなかったりで、平日の昼間に仕事の合間を縫って連れて行ってもらうしか無かったので、それも心苦しかった。
幸いむぎはフレックスの在宅メインワーカーなので、融通の利きやすい方ではあったが、ミーティングがぎっしり入っているのを、婦人科のために上手く調整してくれた。
さて、結局レトロゾール投与から4週目にして、右の卵巣からの排卵が確認されて、また生理が来たら来てくださいとのことで今は経過観察中だ。
本来はレトロゾールの投与無しで生理から2週間程度で排卵になるので、婦人科の薬の方の調整にもしばらく時間がかかりそうだ。
メンタルの減薬が終わってから婦人科での不妊治療に入るか、並行させるか迷っていたが、並行させていて良かったと思う。
