子供を諦めていた躁鬱が妊娠を許可された話②
※この投稿は私の体験談を記載したものであり、医学的な見解に基づいたものではありません。
バルプロ酸ナトリウムを400mgから200mgに変更した私であったが、思っていたほど体調が悪くならない。
むしろハイでもなく程よく調子が良い期間が2週間続いた。
おそらく、子供を持つこともできないのかと人生に絶望していた私が、希望を持てたことで気分を持ち直した部分も大きかったと思う。
減薬前から予定していた、群馬から長野への1泊2日の旅行は、私にとってはちょっとした冒険であったけれど、減薬前と同じ調子で問題なく楽しむことができた。
楽しむ、といっても同年代の皆と同じように旅行する訳にはいかない。体力もなく、疲れると気分が沈んだり、反動で寝込んだりしてしまう。
10時頃家を出て、午後から夕方まで観光し、ホテルで休み、次の日もチェックアウトギリギリまで寝て、午前中一件観光して帰る。朝から夜までびっしり活動するような遊び方は、おそらくこの先しばらくできないのだろう。
それでも私にとっては素敵な思い出になった。
とまあ、そんな感じで楽しく過ごしていたのだが、減薬してから2週間後、生理前の影響もあり大きな混乱が訪れた。
布団に横になって休んでいた時。横にはむぎがいて、私は何となく手にマッサージ機のコードを絡めて遊んでいた。
ふと、脳裏に映像がよぎるー
私がむぎの首をコードで締めている
私は酷い恐怖を覚えた。むぎの首が絞まっていることと、それを自分がしていることに対しての恐怖だ。
こういう映像が頭に流れることはよくある。いちばん多いのは手にお茶の入ったカップを持っている時、そのカップのお茶を目の前の相手の顔にバシャっとかける映像だ。
最初の頃はそんな些細な映像でも大きく取り乱していた。それが自分の願望であるかのような気がして嫌だった。自分が愚かな人間であるような嫌悪感と、自分がいつか本当にそれをしてしまうんではないかと言う恐怖を感じた。
しかし、色々調べたり、先生に話したり、自分の気持ちを整理したりして、その映像は自分の意思とは関係なく現れるものだと分かった。
そのため、些細な自害・他害の映像には動揺しなくなっていた。
薬のコントロールが上手くいっている時は比較的映像の出てくる頻度が下がる。以前はお茶をかける映像も一日に何度も現れていたが、最近は全然出てきていなかったので油断していたというのもある。
でも、むぎの首を締めるのは予想外だった。
私は取り乱した。かなり取り乱した。
そしてむぎが寝たあと、意味もなく家の中を歩き回ってみたり、一人で意味も無い歌を歌いながら踊ってみたり、自分を慰めるために鏡を見つめて、可哀想な自分自身に「大丈夫、大丈夫」と声をかけてキスをしたりもしてみた。この時の私は、完全に"頭がおかしくなって"いた。
そして、それでも落ち着かない私は、コードを手にしてソワソワしていた。そのコードで自分を罰しないといけない気がした。
ダメだ、ダメだ。でも、でも…。
おもむろに、というのか、出来心で、と言うべきか、私はコードを首に巻いてみた。
2周、3周…。
残りの両端が短くなったところで私はそのコードの両端を両手で持ち、グー…っと外側へ引っ張ってみる。
ソーッと、ソーッと、少しずつ、少しずつ。
段々息が詰まってくる。
首にも痛みが出てる。
苦しい。苦しい。
でも、もう少し、もう少し…。
あとちょっと…。
そこで私は引っ張るのを辞めた。首に回していたコードを解き、落ち着いて深呼吸をする。
混乱は消えていた。
首には苦しさと痛みが残っている。
私は半べそをかいて、むぎの寝ている部屋へ行った。むぎの腹を枕にして寝た。むぎの腹の柔らかさとお腹のギュルギュルという音が私を落ち着かせてくれた。呼吸とともに上下するむぎの腹のゆっくりとした動きを感じながら眠りに落ちた。
今まで、自分の顔を叩いてみたり、自分の頭を壁に叩きつけてみたり、唐突に髪を切ってみたりー。
自傷行為と言えるものは色々したことがあったが、"死"を直接的に連想させる行為を行ったのははじめてであった。
調子が良いと思っていた減薬後の、それでも自分を痛めつけた出来事に、薬を減らすことと妊娠するまでの道のりの難しさを突きつけられた。
その3日後、生理が始まると共に気分は落ち着いたが、一筋縄ではいかないのだな、と気を引き締めた。自分自身のためにも、むぎのためにも、生まれた後に育てる子のためにも、妊娠を甘く見てはいけない…。
今日、前回の診療から3週間が経ち、精神科へ行った。3週間の経過を先生に伝えると、先生は「調子が悪い訳では無い」と判断したようで、更なる減薬を提案された。
「今日バルプロ酸ナトリウム200mgを無くすこともできます。いきなり無くすのが不安なら100mgにすることもできますけど、どうしますか?」
瞬時には判断できなかった。
でもまだ頭の整理のついていない私にも、妊娠にチャレンジするためには、バルプロ酸ナトリウムを辞めなければいけないことは分かっている。
私は先生に質問した。
「妊活しても飲める双極性の薬はないんですか?」
「ありますよ。ラモトリギンっていうお薬で、バルプロ酸より安心して飲めるお薬です。バルプロ酸は飲んでたら絶対妊娠しちゃいけないけど、ラモトリギンなら飲んでても妊娠しても大丈夫です。ただ、ラモトリギンには珍しい副作用があって、紅斑って言って赤い湿疹がバーッとできちゃうことがあって、それが出たらすぐ飲むの辞めちゃってください。」
そんな訳で、私はバルプロ酸ナトリウムを飲むのをやめて、ラモトリギンを飲み始めようと思った。
が、処方箋を出した薬局で妊活のために薬を変えることを説明すると、薬剤師さんが妊娠と授乳のための薬の説明本を取り出して確認してくれて、私にもリスクの説明をしてくれた。
「ラモトリギンはバルプロ酸ナトリウムよりは奇形児等のリスクは低いけど、副作用で粘膜の炎症が起こることが多くて、口内炎とかもそうなんですけど、見えないところだけど子宮にも炎症を起こす可能性も否定できないから、そういうリスクは承知の上で飲んでください。」
私は不安になった。今まで飲んだことの無い薬を飲んで、どんな副作用が起こるかも分からず、そもそも子宮の炎症とか起こしやすいほうだし、それに薬を変えたタイミングでメンタルを崩すことよくあるし…。そこまでして新しい薬にチャレンジしなきゃいけないかな。なんかもう分かんないな。
そして不安になった勢いで他に飲んでる薬のリスクも聞いてみた。
パキシルはこのくらいのリスク度で、同じ抗うつ薬でもセルトラリンならもう少し低いリスクで安全に飲める。とか、この睡眠薬とその睡眠薬はどっちも妊娠しても飲めるけど、その睡眠薬は授乳する時には飲めない。とか、この薬はリスクは少しあるけど少量だし頓服で時々飲むだけだから大丈夫。とか
薬剤師さんは一つ一つ丁寧に調べて教えてくれた。
私は、先生ともう一度今回処方してもらう薬について話し合うことにした。
はじめて飲むラモトリギンで副作用が出ないか心配なこと、安全のためにパキシルではなくセルトラリンを飲みたいこと。
先生はラモトリギンに変更はせず、今回はバルプロ酸ナトリウムは200mgから100mgに変更。調子が良ければ次回停止。
セルトラリンに変更は、一度に色々な薬を変更すると調子を崩したり、調子を崩した時の影響が分かりづらくなったりすることから、今回はパキシルのままで行くことに決めてくれた。
そんな訳で、上がったり下がったりと色々あったが、それでも減薬を続けることになった(した)私は、流れのままにそれでもまだ妊娠できる日を試みている。
でも、このままでいいのかどうか…。
でも、今諦めるのも違うのかな、とか。
とりあえず、今回の減薬で今後調子がどう変わるかを見てまた考えようと思う。
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