泰夢(たいむ)のお話:5
オープニングシーン、ラストを迎えました!
それでは、どうぞ!!
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「━━あっ!」
道路のみぞか何かにハマったのか、ふいに車がドンとはねあがり、泰夢(たいむ)が乗っていた後ろの席のシートも同じように大きくたてにゆれた。
あおむけにねていた泰夢の体もいっしょに大きくはずんで、そのひょうしにゲームのコントローラーから指が外れてしまった。
それまですばらしい動きで勢いよくてきのモンスターをたおしていた泰夢の戦士が、ゲーム機の小さな画面の中で止まってしまう。
くそっと小さく声を上げ、その失敗をなんとかしようと必死でゲームの中の戦士を動かすけれどもさっきのミスはかなり大きく、めちゃくちゃに武器をふるってがんばりを見せた泰夢の戦士だったが、少しずつモンスターたちに追いつめられていき、まわりをとりかこまれて、そして最後はやっつけられてしまった。
「なんだよ、ちくしょう!」
はらがたった泰夢はゲーム機をシートのわきにほうり投げると、両手を頭の後ろで組む。
そうやってねそべったまま上目にして車のまどの外を見ると、ななめに見える白っぽい空に、黒いヒモのような電線がヒョロヒョロとすごい速さで走っているのが見えた。
(だいたいさ、なにが「いなか」だよ……)
やれ落ち着くとかのびのびするだとか、大人たちはいなかのことを良い風にすぐ言うけれども、泰夢にとってはいつもの遊び場もなく仲のいい友だちもおらずつまらなくてたいくつな場所でしかない。
鼻のおくのほうがツンとつまるような、いたいような感じになって目のはしっこからなみだがこぼれそうになり、それをごまかそうとしてさっとうでで顔をこする。
ゲームもそうだし、学習スクールも、友だちも、夏休みだってそうだ。
なにもかもが全部うまくいかないようなきがした。
自分ひとりだけが置き去りにされているような気がした。
このまませまい車の後ろの席に乗せられて、どこか知らないところに連れて行かれて、そうしてそのまますてられてしまうのではないかと、そんなおそろしい考えが頭にうかび、ぐうっとのどのおくが鳴る。
(弟がうまれたら、きっとオレは母さんからも父さんからも、だんだんといらないって思われるようになるんだろうな……)
両親からはじめて弟か妹ができると言う話を聞いたときから、すこしずつ大きくなっていくその思いが、また泰夢の中にうかんだ。
事実として、泰夢の部屋にはすでに弟(かもしくは妹)のためのベッドや物入れ━━そのほとんどが泰夢が使っていたものだと母は言っていたけれども、泰夢はそんなことは覚えていないし、今の自分にとっては必要がないものばかりだった━━などでどんどんせまくなっていくし、それよりもなによりも、いま泰夢がこうして車に乗せられて、祖母の家に行かなくてはならなくなったのは、弟のせいなのだ。
あおむけにねそべっていた体を横にして、車のシートのせもたれに顔をかくすようにうずめると、前の席で運転をしている父にきかれないように、そっと声と息を口の中にしまって……ひっそりとひとりで泣いた。
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どうにもならない思いが涙で流れ出す日もあります…
では、次回もお楽しみに!
小林るい
