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泰夢(たいむ)のお話:6

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第一章、ようやく始まりました!
それでは、どうぞ!!

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 第一章

シーン1-1:清々しい山の朝のバス停で

 同じ日本でもこんなに様子がちがう場所もあるんだなと、グイっと大きくせのびをしながら、泰夢(たいむ)はそう思った。のびをしたついでにあくびもひとつ、頭の上の大きな空にはき出す。
 空気がちがうのかもしれない。
「いなかの空気はしんせんだ」と、これもよく大人が言うことだけれども、いまなら泰夢にもなんとなくわかるような気がする。
 山のしゃ面に立っている祖母の家のすぐ前にあるバス停からは、青い空と緑の山と川にそってポツポツと建つ家の様子を全部見ることができた。
 泰夢の住んでいるゴミゴミとした街の景色とは大ちがいだった。
 昨日の夜おそくに車で祖母の家に着いて、そして初めての朝だった。
 いそがしい父は、祖母の作った夕飯もそこそこに、すぐに自分の家に帰ってしまった。
「いいか、泰夢。おばあちゃんの言うことをしっかり聞いて、ちゃんといい子にしてるんだぞ」
 帰り際に、真けんな顔でそう言いながら、強くて大きな手で頭をなでていった父に、泰夢は少しおどろいた。
 まさか小学五年にもなって、そんな風に父に頭をなでられるとは思わなかったのだ。
 もしかしたら、息子をひとり置いていくのはさすがに気が悪いと思ったのかもしれない。
 しかしなでられた泰夢の頭の中は全く逆だった。
 むしろいろいろなことをガミガミ言われることもなく━━ネットはつながらないけれど━━ひとりでゆっくりとゲームができるし、山のような夏休みの宿題なんかは、てきとうにすませればいい。
 それに、あまり慣れてはいないけれども、久しぶりに来た祖母の家はとても居心地がよかった。
 泰夢にあてがわれた部屋は父が昔使っていた部屋だそうで、大きなベッドと古ぼけた学習づくえがあり、本だなには父が読んでいた本やマンガがおさまっていて、そこには古くなって色が変わったシールがあちらこちらにはりつけらあれていてまるで自分の部屋やつくえと同じような感じだった。
 泰夢も自分の部屋のつくえやかべにシールをはって、目を三角にした母にこっぴどくおこられるが、なんのことはない父だって子どものころは自分と同じことをしていたのだ。
 それもあって、泰夢はこの部屋がすっかりと好きになった。
 昔この家に来ていたころはまだ小さな子どもだったので、台所やふろ場のもっとおくの方にあるトイレに行くには長くて暗いろうかを通っていかなくてはならず、それが本当にこわかったのだけれども、いまでは夜中にだってへっちゃらで━━少しドキドキはするけれども━━もうトイレに行けずにこまってベソをかくような年ではないのだ。
(保育園に通ってるワケじゃないんだからさ。ばあちゃんもいるんだし、かほごもいいかげんにしてほしいよ)
 はきだしたしたあくびの代わりに朝の空気をすいこむと、急に寒気が走って体がぶるっとふるえた。
 泰夢が住んでいる都市部とはまるでちがい、山間にあるこの辺りは夏なのに半ソデでは寒いぐらいだった。
(ヒートアイランド現象……っていってたっけか)
 ふと、学校の先生が話していたこと思い出す。
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実際に見て感じて納得してまた考える、学校の授業が身につく瞬間です。
では、次回もお楽しみに!

小林るい


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