泰夢(たいむ)のお話:4
どうやら捕らぬ狸の皮算用になりそうです。
それでは、どうぞ!!
===============
「━━泰夢(たいむ)。スクールの先生からね、夏休み強化コースのお知らせがあったから、申しこんでおいたわよ。夏休みもお勉強をしっかりがんばりましょうね!」
ある日の夕食のときに、母が鼻のあなをふくらめてパンフレットを見せつけてきた。
じつはこの強化コースの話は、泰夢と友だちとの間でもずっと話題になっていたのだ。
せっかく学校が休みなのに、毎日のように学習スクールに行くのはめんどうくさいという意見が出る中、ようするに直接おたがいの家に行き来したり、公園やだがし屋で待ち合わせたりしてから遊ぶか、それがスクールの教室に集まって遊ぶかだけのちがいだろうという声も聞こえた。
さらに「スクールで勉強する」というありがたいまほうのじゅもんがあれば、朝から夜まで遊んでいても親からおこられることはないし、ついでに夏休みの勉強もみんなでやれば━━たいがいの場合はめんどうくさいものを真っ先にかたづけるタイプのヤツや、頭の良いのヤツの終わらせた宿題を仲間でまわしてちょこっと変えて書き写すのだけれども━━一石二鳥になるだろうということで、同じ学習スクールに通う友だちもそれぞれが「夏休み強化コースに行きたい!」と親たちにせがんでいたのだった。
(ちくしょう……)
けれどもそれもこれもふくめて、みんなとしめしを合わせたこの計画は丸つぶれだった。
しかもそれどころか、泰夢にとってはさらに悪い方向へと転がっていってしまった。
祖母の家に行くことになったのだから、とうぜん学習スクールには通えないし、だからこの強化コースの話も無かったことになるのだろうと、泰夢はそう思っていた。
ところが、泰夢の通っている学習スクールは全国のあちこちに教室を開いている有名なところで、とうぜん祖母の家の近く(とは言っても、祖母の家は山の中にあるのでバスで町まで出なくてはいけない)にも教室はあった。
さらにこの「夏休み強化コース」については、学習スクールの生徒であれば、全国どこの教室に通っても同じように授業を受けられる仕組みになっていたのだ。
なんてよけいな事をしてくれたんだ、と泰夢は頭をかかえたけれども、夏休みの間に旅行に出たり、親類の家に行ったりという生徒たちが多いなかでは、特に親たちにとってはこれは実に「ありがたい」仕組みだった。
そういうわけで、この本当におせっかいでありがたい学習スクールの「夏休み強化コース」のおかげで、泰夢が一学期の半ば過ぎから指折り数えて待ち続けていた楽しい夏休みは、友だちがひとりもおらず、どこだかしらない町の教室に通ってひとりで勉強をし、帰ってきてもまたひとりでゲームのレベル上げをするしかできないという、本当にお先まっくらの最悪なものに変わってしまったのだった。
===============
泰夢の行先はどうやら暗そうです…
では、次回もお楽しみに!
小林るい
