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維新が絶対条件とする「副首都構想」―私たちは何を得られるのか?―第3部:副首都構想は私たちの生活を本当に良くするのか―懸念されるリスクと世論が求めているもの

これまでの振り返り

このシリーズでは、日本維新の会が連立の絶対条件とした「副首都構想」について、2回にわたって読み解いてきました。

第1部では、過去2度否決された「大阪都構想」について振り返りました。

住民投票で示された10の懸念――住民サービスの低下、コスト削減効果への疑問、説明不足、学者からの批判など――を通じて、なぜ大阪市民が「NO」を突きつけたのかを整理しました。

第2部では、「副首都構想」の正体に迫りました。

  • 国全体の首都機能の配置という「国家レベルの政策」として位置づけられていること

  • しかし、その条件に「特別区の設置」が含まれており、事実上の都構想再燃と見られること

  • 東京一極集中の是正、災害時のバックアップ、経済効果などの期待が寄せられていること

これらを明らかにしました。

第3部(最終回)で考えること

副首都構想には様々な期待が語られています。しかし一方で、過去の維新の政策では予期せぬ問題も発生してきました。

  • 特区民泊での住民トラブル

  • 万博での工事代金未払い問題

これらを踏まえると、副首都構想にはどのようなリスクが潜んでいるのでしょうか。

また、世論調査では多くの国民が「物価高対策」や「賃上げ」を最優先課題として挙げています。副首都構想は、こうした切実な生活の問題に本当に応えられる政策なのでしょうか。

最終回となる今回は、

  • 副首都構想で考えられる具体的なリスク

  • 「地方創生」という観点からの批判的検証

  • 世論が本当に求めているものとのギャップ

  • 政策の優先順位をめぐる問題

  • 私たち市民に必要な姿勢

について、大阪市民である筆者の視点から考察していきます。


8.懸念される弊害や副作用はないか

維新が推し進める副首都構想には懸念される点もあります。過去の維新の政策実施において、予期せぬ問題が生じたケースがあるからです。

そして、その問題は現在進行形であり、解決を見ていないのが現状です。

特区民泊の事例

大阪市で2016年から始まった「特区民泊」では、周辺住民とのトラブルが多発しました。観光庁の「民泊制度に関する調査」によれば、騒音問題、ゴミ出しマナーの悪化、不特定多数の出入りによる治安への不安などが報告されています。

規制緩和による経済効果を優先した結果、生活環境の悪化という代償を払った住民がいたことは事実です。

以前、特区民泊について、大阪特有の問題点と経緯をまとめた記事があります。よろしければ、こちらもご覧になってみてください。

大阪・関西万博の問題

2025年大阪・関西万博では、建設費の膨張や工事代金未払い問題が報じられています。朝日新聞の報道(2024年)によれば、一部の中小建設業者が工事代金を受け取れないまま資金繰りに苦しむケースが発生していると指摘されています。

この問題点についても以前、大阪府市の責任のあり方について考察しています。

いずれの政策実現においても、しわ寄せがきてしまった当事者に対して、十分な救済措置がなされていないのが現状で、果たして「副首都構想」においても取り残されてしまう人たちがまた生じてしまうのでは?という疑問は生じるのは自然なことではないでしょうか。

民意を無視する政策にならないか

もし大阪が副首都となり、「特別区の設置」が強行される形となれば、住民投票で二度も「NO」を突きつけた市民の意思が尊重されなかったという問題が残ります。

副首都構想で考えられるリスク

これらの事例を踏まえると、副首都構想でも以下のようなリスクが考えられます。

1. 移転コストの負担
国の機関を移転させるには膨大な費用がかかります。しかし、その財源を誰が負担するのか、明確ではありません。

一方で、日本維新の会は社会保障費の削減を掲げていますが、その整合性をもたせた説明ができるのでしょうか。

2. 既存住民への影響
急激な開発により、地価上昇や生活環境の変化が起こる可能性があります。実際に、特区民泊の影響を受けて、地価が高騰し、地域住民が居住できないレベルまで上がっているとの指摘もあります。

長年その地域に住んでいた方々が、住み続けられなくなるかもしれません。実際に首都圏を中心に新築マンションの販売価格の高騰により、地域住民が暮らしにくい問題が浮き彫りになっています。

3. 二重投資の問題
東京と副首都の両方にインフラや施設を整備することで、かえってコストが増大する可能性があります。「二重行政の解消」を目指していたはずが、国レベルでの二重投資を生むという皮肉な結果になりかねません。

4. 地域間格差の拡大
副首都に選ばれた地域とそうでない地域の格差が広がる可能性があり、かえって新たな地域格差が生まれるリスクがあります。

このように、構想政策が「成長・効率化」に振られた時、行政・経済的視点では合目的とされても、個別住民の暮らしや地域コミュニティには負担がかかることがあります

その観点から言えば、副首都構想でも以下のような懸念は正当です。

  • 副首都機能の誘致・集中による「地価・賃料の上昇」「住民の生活コスト悪化」

  • 中央機能の移転・再整備に伴う行政コストの増加を初期段階で住民が負担する可能性

  • 「副首都になる」「都市機能強化」というスローガンが実質の生活実感を伴わないまま進むことで、住民の期待が裏切られ、「生きづらさ」を増幅させるリスク

私たちが「役立つ知識」として知っておくべきことは、政策の“光”の側だけでなく、“影”の側にも目を向けることです

9.「地方創生」という観点から見た副首都構想

副首都構想は、しばしば「地方創生」の文脈で語られます。しかし、これは本当に地方創生につながるのでしょうか。

一極集中と地方衰退の関係

経済学者の藤井聡氏らの研究では、東京一極集中と地方の衰退、そして日本経済全体の停滞には深い関連があると指摘されています。

プレジデントオンラインの記事「だから若者が都会に逃げていく…日本人を貧しくした"一極集中"と"失われた30年"の知られざる関係」では、以下のような指摘がなされています。

  • 地方から東京への人口流出により、地方経済が縮小

  • しかし東京での生活コストの高さから、実質的な豊かさは向上していない

  • 結果として、日本全体の経済成長が停滞している

副首都構想は真の地方創生になるか

副首都構想が「東京一極集中の是正」を目指すのであれば、それは一定の意義があるかもしれません。しかし、いくつかの疑問も残ります。

1. 「大阪一極集中」になる懸念

ダイヤモンドオンラインの記事「大阪が『東京の縮小コピー』に成り下がる?維新の『副首都構想』が間違っている根本理由」では、副首都構想が実現しても、関西圏内で大阪への一極集中が進むだけで、真の地方創生にはつながらないのではないかという懸念が示されています。

2. 他の地方都市への効果は限定的

維新の政策提言には「二極型国家を実現し、地方に活力を」という文言があります。また、2025年の地域版マニフェストにも「副首都の位置づけを法制化することにより、中央官庁の大阪への移転…地方をバックアップする拠点とする」と明記されています。

しかし、ここに疑問があります。具体的には「大阪・関西が副首都化したとして、全国の地方(中山間地、過疎地域、北海道・東北など)にどのように波及効果をもたらすのか?」という点です。

言い換えれば、「大阪が強くなる=地方が元気になる」という構図が必ずしも成立するわけではありません

例えば、地方創生の典型的な課題には「若者の流出」「地域産業の衰退」「インフラ老朽化」「人口減少」があります。

副首都構想が「中央機能を大阪に移す」「大阪・関西で企業を誘致する」というものであれば、それはむしろ大阪圏に更なる資源を集中させることになり、地方の“分散”という観点からは逆行となる可能性もあります。

副首都に選ばれなかった地方都市には、むしろ負の影響が及ぶ可能性があります。人材や資金が副首都に吸い取られ、地域間格差がさらに拡大するかもしれません。

3. 本当に必要なのは「分散」

構想の中に「全国の地域をどう巻き込むか」「大阪だけでなく地域全体の持続可能性をどう担保するか」という論点が曖昧なままであり、それゆえ「地方創生と結びつけて語るには十分とは言えない」と思います。

真の地方創生を目指すのであれば、副首都という「第二の集中」を作るのではなく、複数の地方都市がそれぞれの特色を活かして発展できる仕組みが必要ではないでしょうか

例えば:

  • 札幌は北方圏との交流拠点

  • 仙台は東北の復興と発展の中心

  • 名古屋は製造業の集積地

  • 広島は平和都市としての国際的役割

  • 福岡はアジアとの玄関口

このように、各都市が独自の強みを活かした発展を目指す方が、日本全体の活力につながるのではないでしょうか。

10.世論が求めているものとのギャップ

ここで、私たちは重要な問いに向き合う必要があります。副首都構想は、今の社会が本当に求めている政策なのでしょうか。

「副首都構想」は、長期的な国土のグランドデザインと、東京一極集中という構造的な問題への対策としては、確かに重要な意義を持ちます。

しかし、その実現に「都構想」を抱き合わせる形で高い優先順位をつけ、連立の絶対条件とする政治的手法は、「目先の生活苦」に直面する国民の思いを本当に酌んでいるのか、という問いを私たちに投げかけます。

世論が優先する政策

NHKやJNNなど各種世論調査(2025年10月実施)によれば、国民が政府に優先的に取り組んでほしい政策として挙げているのは

  1. 物価高対策・経済対策 (約60%)

  2. 年金・医療などの社会保障 (約40%)

  3. 賃上げ・雇用対策 (約35%)

  4. 少子化対策 (約30%)

副首都構想や地方創生を最優先課題として挙げる人の割合は、これらと比べて著しく低い水準にとどまっています。

生活者の実感

大阪市民の一人として、日々の生活で感じるのは

  • スーパーでの食料品価格の上昇

  • 光熱費の負担増

  • 実質賃金の目減り

  • 将来への不安

こうした切実な問題に対して、「副首都構想」がどのように応えてくれるのか、正直なところ見えにくいというのが実感です。

私たちは、「副首都構想」という壮大なテーマについて、そのメリットを正しく享受し、同時に弊害や副作用に巻き込まれないよう、冷静かつ客観的な視点で見守り続ける必要があります。

優先順位の問題

もちろん、長期的な視点で国家の在り方を考えることは重要です。災害への備えや、持続可能な国土のあり方を検討することに、意味がないわけではありません。

しかし、多くの国民が日々の生活で困難を感じている今、政治が最優先で取り組むべきは何か。連立交渉の「絶対条件」として掲げるべきテーマは何か。そこに、政治と市民の感覚のズレを感じずにはいられません。

目的と手段が入れ替わっていないか?

首都機能分散を巡っては国民民主党が「特別自治市構想」を提起しています。大都市を道府県から独立させて、強い権限を与える構想としており、複数都市の参加に道を広げやすいアプローチになっています。

目的を「地方創生」「機能分散」と掲げるのならば、こちらが適当なのではという疑問点も生じるのは自然かもしれません。

11.私たちに必要な姿勢

副首都構想をめぐる議論は、今後も続いていくでしょう。その中で、私たち市民に求められるのは

1. 冷静な情報収集と分析

感情的な賛否ではなく、具体的な内容を理解し、メリットとデメリットを冷静に見極めることが大切です。

2. 自分たちの声を届ける

世論調査への参加、選挙での投票、地域での対話など、さまざまな形で自分たちの意見を表明していくことが重要です。

3. 多様な視点を尊重する

賛成の方にも反対の方にも、それぞれの考えや事情があります。異なる意見を排除するのではなく、対話を通じて より良い方向性を探っていく姿勢が求められます。

4. 当事者意識を持つ

「政治家が決めること」と他人事にするのではなく、自分たちの生活に直結する問題として、関心を持ち続けることが大切です。

おわりに

副首都構想は、日本の将来にとって重要な政策テーマの一つかもしれません。しかし、それが今この瞬間、最優先で取り組むべき課題なのかどうかは、慎重に考える必要があります。

大阪市民として、2度の住民投票を経験し、今また新たな形でこの問題が浮上してきたことに、複雑な思いを抱いています。

政治は、私たち一人ひとりの暮らしのためにあるべきものです。壮大な構想も大切ですが、日々の生活で困難を感じている人々に寄り添い、その声に応える政策こそが、今求められているのではないでしょうか。

この記事が、副首都構想について考えるきっかけになれば幸いです。そして、私たちがどのような社会を望むのか、一緒に考え、対話していければと思います。

国会議員は「全体の奉仕者」

憲法第15条第2項は「すべて公務員は、全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない」と規定しています。

この「公務員」には当然ながら「国会議員」も含まれています。

そして「全体の奉仕者」という理念は、特定の権力者や一部の国民のためではなく、すべての国民のために公共の利益を増進するという、公務員という公職のあり方を示す言葉です。

吉村代表は先日、他党からの批判に対して「自党の政策をどうやって実現するのかに注力された方がいいんじゃないか」という発言をしていますが、果たして、これは「全体の奉仕者」から出るべき発想と言えるでしょうか。

政策の是非は、刻一刻と変化していく国の情勢によって、変わっていくものです。

自分の政策を押し通すために国会議員をやるのではなく、自身やその政党に投票をしなかった国民も含めて、すべての国民にとってプラスになる政策を優先的に扱うのが本来の国会議員のあるべき姿ではないでしょうか。

これは、「自分たちが当選したから」「自分たちが多数だから」という単純な理由で政策を進めてはならないですし、目的と手段を取り違ってほしくはないと切に願います。


【シリーズを振り返って】

全3回にわたり、「副首都構想」について多角的に見てきました。

第1部では、大阪都構想が2度否決された理由を、反対派の10の懸念から整理しました。

第2部では、副首都構想とは何か、そして日本維新の会がなぜこれを連立の絶対条件としたのかを読み解きました。

第3部では、副首都構想のリスク、地方創生との関係、そして世論とのギャップについて考察しました。

このシリーズを通じて、一つ明確になったことがあります。それは、政策を評価する際には、その「光」の部分だけでなく、「影」の部分にも目を向ける必要があるということです。

壮大なビジョンは魅力的に見えます。しかし、その実現のプロセスで誰かが取り残されたり、予期せぬ負担を強いられたりしないか。私たち市民は、常にその視点を持ち続ける必要があります。

副首都構想をめぐる議論は、今後も続いていくでしょう。この記事が、その議論に参加するための一助となれば幸いです。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。


主な参考文献・出典

  1. 日本維新の会「2025年参院選マニフェスト」
    https://o-ishin.jp/policy/pdf/2025_election_manifesto.pdf

  2. 総務省統計局「人口推計」(2024年10月1日現在)

  3. 内閣府「首都直下地震の被害想定と対策について(最終報告)」(2013年12月)

  4. 朝日新聞デジタル「【そもそも解説】維新の『副首都』構想とは 課題は都構想との関係性」https://www.asahi.com/articles/ASTBL1SSQTBLPTIL003M.html

  5. Yahoo!ニュース「維新・吉村代表『絶対条件は副首都構想と社会保障改革』連立巡り」https://news.yahoo.co.jp/articles/0a3285703402a6447e35ad041c78b11e797a7bfb

  6. ダイヤモンドオンライン「大阪が『東京の縮小コピー』に成り下がる?維新の『副首都構想』が間違っている根本理由」https://diamond.jp/articles/-/374621

  7. 維新の副首都構想 「大阪都」実現が目的では
    https://mainichi.jp/articles/20251021/ddm/005/070/121000c

  8. プレジデントオンライン「だから若者が都会に逃げていく…日本人を貧しくした"一極集中"と"失われた30年"の知られざる関係」https://president.jp/articles/-/101081

  9. 自民党と日本維新の会、連立政権合意書の全文https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA20AP30Q5A021C2000000/

  10. 大阪都構想の動向と実現への課題(東京大学)
    https://www.pp.u-tokyo.ac.jp/graspp-old/courses/2012/documents/graspp2012-5140040-5.pdf

  11. 維新の副首都構想とは?大阪都構想との違いと実現可能性を徹底解説(テックジム)
    https://techgym.jp/column/fukushuto/

  12. 「道州制」と「副首都構想」について(札幌市議会議員 波田大専)
    https://hada-daisen.com/report/20250825-2/

  13. 「自党の政策実現に注力されたら」吉村氏苦言 「二枚舌」と維新批判の国民・玉木氏に
    https://www.sankei.com/article/20251016-5YOXOCAFKVMWVJJPCE3BEW66N4/


最後までお読みいただきありがとうございました。

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