『おもいでそうぞくぜい』ー毎週ショートショート
朗読:桐野心春

「そうぞくぜい」ってのが
あるらしい。
父ちゃんが死んで、
今の家に住むなら
払わないといけないんだって。
でも、うちはお金がないから……
どうするんだろう。
ある日、
父ちゃんが帰ってきた。
嬉しかった。

その日から、
父ちゃん、いっぱい遊んでくれた。
やってみたかった
キャッチボールも。

いつも、しごとで
遊んでくれなかったのに。
好きな野球チームの
ユニフォームも買ってくれたんだ。

母ちゃんに言った。
そうぞくぜい払ったらあかん。
父ちゃんがいなくなる気がする。
それからしばらくして、
父ちゃんが
疲れた顔で帰ってきた。
手に、見たことないくらいの
お金を持ってた。

母ちゃんに渡して、
「あとは頼むよ」と言った。
僕の頭をぐしゃぐしゃにして、
「母ちゃんのこと頼んだぞ」
と言われた。

嫌だ。
行かないで。
その日の夜、
三人で川の字になって寝たんだ。
次の日、父ちゃんはいなかった。
だから言ったんだ!
そうぞくぜい払わんぞって。
泣きながら言った。
ふと見ると、
布団みたいに
ユニフォームが掛けられてた。
父ちゃんのにおいがした。
あったかかった。

……
……母ちゃん、
そうぞくぜい払っちゃったんだね。

(473字)
今回参加させていただいたのは
田原さんのこちらの企画です。
LV1のパルプンテ賢者
〜桐野心春作品3選〜
森のクマさん
👉言葉が自由すぎる童話
注文の多いアンパンマン
👉文学と笑いの融合体
変人式
👉大人になる違和感記録
読んでいただき、
ありがとうございました。
もし、
少しでも「いいかも」と思っていただけたなら。
(間)
その気持ちに、
そっと印をつけていただけると、うれしいです。
言葉は、残るものなので。

