注文の多いアンパンマン
朝ドラ「あんぱん」
最終回に寄せて
作・桐野心春
静かな教室。窓から朝の光。机の上に置かれた一つのあんぱんを見つめて、心春が語る。
「さあ、僕をお食べ。
……噛み付かないで。
あ、あんこがこぼれる。
ちぎったところのパン生地が硬くなる。
そこはあんこが少ないよ。
おすすめは全体の三分の一。
ちゃんと十勝産のあんこだよ。
産地偽装は、反対……。」
(パンの声が、心春の胸の中で続いていく)

「頭が大きくて飛べない。
もう少し、カッコよくなりたい。
バイキンなんて殴りたくない。
カレーパンがやればいい。
なんで、アンおじさんじゃないの。
バタ子さん、僕を投げないで。
食べ物虐待だよ。」
(心春の目に涙が浮かぶ)

「なんで、あんこなの。
食パンがいい。
生ドーナツもいいな。
カレーパンは嫌です。
……でも、やっぱり生まれ変わってもあんぱんがいい。」
(小さく息をのむ)

「勇気の鈴って何。異物混入だよ。
勇気100%じゃありません、あんこ71%です。
新しい顔なんていらないやい。
安らかに賞味期限を迎えたい。
みんなの夢より、自分の夢。
僕の夢は──ミシュラン三つ星。」
(心春、ふっと笑って、でも声を震わせながら)

「せめて、美味しく食べて。
コンビニより、パン屋で出会いたいな。
セブンのカレーパンは嫌です。
泣かないで……泣きたいのは、僕の方。
……結局のところ、食べてくれてありがとう。」
「ケシの実が口の中に残るのは、僕のいたずらだよ。
注文の多いアンパンマン──。」
鐘の音。光に包まれ、幕
「※本作はフィクションです。実在のヒーロー・パンとは関係ありません」
