(14)【それでも、朝は来てしまう】人生が終わった日も、朝のコーヒーだけは飲んでいた。-失踪編-
■この物語は筆者の実体験をもとに執筆しています。
・正直、極限まで恥をさらしてます。
・僕が生きてきた記録(ノンフィクション)です。
・ほぼ毎日更新を目指しています。
【それでも、朝は来てしまう】
翌朝。
僕たちは、また缶コーヒーから一日を始めた。
そろそろ。。。
ちゃんとしたコーヒーが飲みたい。
豆を挽いて、湯を注いで、
あの匂いに包まれる朝。
そんな普通の生活を、
もう一度やり直したい。
でも。
「失踪者」で「逃亡者」の僕には、
それはまだ遠い話だった。
忘れるな。
自分がどこにいる人間なのか。
自分は白鯨で複数のエイハブに
狙われてるのだ。
9時。
松下さんに教えてもらった人夫出しに電話をかけた。
「初心者1名と経験者1名です」
少しの間があって、すぐ返事が来た。
「じゃ、1時間後に荷物も全部持って来て」
それだけだった。
あまりにも簡単で、
逆に不安になる。
「荷物全部ってことは。。。採用ってことですかね」
「そりゃそうや。人数さえおれば、どうにでもなるからな」
松下さんはあっさり言った。
そんなものなのか。
面接は、想像していたものとは違った。
最終学歴と、緊急連絡先。
それを書くだけの紙を渡される
履歴書とも言えない紙だった。
「ウチは解体専門ね。建設はほぼない」
男は一方的に話し始める。
「松下君は前おったから日当14,000円。おみゃ〜さんは初心者やけど免許あるから14,000円な」
一瞬、耳を疑った。
「運転せんでも免許手当は付くちょ〜よ。運転したらさらに3,000円」
そんなにいいのか。
「タバコは吸うんけ?
毎朝タバコ支給だから。」
松下さんが即答する。
「セブンスターや」
「僕はマイルドセブンです」
「あの。。。吸わない人は損するってことですか?」
思わず聞いてしまった。
男は笑った。
「まぁ、はっきり言うと
そういうこっちゃな」
その場でタバコを渡された。
「本当は毎朝支給やけど、今日は特別な」
さらに続く。
「寮代1,000円、朝昼晩の飯でそれぞれ1,000円ずつ引く。飯は自分で用意するなら断ってもええ」
「前借りは金曜に2万まで。事情あれば5万までいける」
淡々とした説明だった。
条件は、悪くない。
いや、むしろいい。
良すぎるくらいだ。
「食事は辞退します」
僕たちは同時に言った。
「ほな、館内案内するわ」
風呂は大浴場。ここ、会議室な。
トイレと洗面は共同。
「松下君は304、おみゃ〜さんは305な」
鍵を渡される。

「明日6時に会議室集合やで」
それで終わりだった。
分からんことは経験者の
松下君に教えて貰えばいいから。
あっけないほど、あっさりと。
部屋は、思っていたよりもずっと普通だった。
鉄筋コンクリートのワンルーム。
風呂とトイレ、キッチンがないだけで、
それ以外はほとんど変わらない。
ここで、やり直せるかもしれない。
いや、やり直さないと行けない。
そう思えた。
「明日の朝飯、買いに行こうや」
松下さんに言われて外に出る。
コンビニはすぐそこだった。
歩いて1分もかからない。
その途中で、松下さんが立ち止まる。
「あそこ、バッタ屋あるけ見てみようや」
店の中に入る。
雑多に並べられた商品の中に、
それはあった。
コーヒーメーカー。
新品で、3,000円。
しかも、有名メーカーだ。安い。
これがあれば、
毎朝レギュラーコーヒーが飲める。
「俺が買うたるわ」
松下さんが言った。
「その代わり、俺にも飲ませてな」
僕は何も言えなかった。
ただ、頷いた。
コンビニに戻り、
弁当とコーヒー豆、フィルターを買う。
部屋に戻って、
さっそくコーヒーを淹れた。
湯を注ぐ。
ゆっくりと、膨らむ粉。
あの香りが、部屋いっぱいに広がる。
久しぶりだった。
一口飲む。
うまい。
思わず声が出た。
うまい。
それだけで、
少しだけ人間に戻れた気がした。
その時だった。
ドアがノックされた。
こんな時間に、誰だろう。
ドアを開ける。
知らない男が立っていた。
「吉田言うねん」
酒の匂いがした。
昼間なのに、強い匂いだった。

「今日から入ったんや。
自分らも今日からやろ?」
やけに距離が近い。
「仲良うしてもらおう思〜てな」
男は、そのまま部屋の中を覗き込む。
「ええ匂いやな」
コーヒーメーカーを見ている。
「わしも、もろおてええか?」
断る間がなかった。
気づけば、吉田は部屋に入っていた。
嫌な予感がした。
理由は分からない。
でも、本能が言っていた。
この男とは、
関わらない方がいい。
それでも。。。
この時の僕は、まだ知らなかった。
この男と、
しばらく一緒に生きることになるなんて。
■創作大賞2026応募作品
(ホラー小説部門・サイコホラー)
・創作大賞2026応募作品なので、こちらも読んでいただけると巨大なエネルギーになります。
![夕日[第1章]へ](/https://assets.st-note.com/img/1779817149-tZWjXLYIP46zrwD8SfQs01TU.png?width=1200)
■ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
もし何か1つでも残ったら、
【スキ】で教えてください。
【フォロー】していただけると、
続きを書くエネルギーになります。
■はじめての方へ
・僕のメチャクチャな人生の紹介です。
→プロフィール
■以下連載(ノンフィクション)
・僕のメチャクチャな人生の恥を晒して書いています。
「人生が終わった日も、朝のコーヒーだけは飲んでいた。」
【第一章・失踪編】
→目次から読む
→第1話から読む
【第二章・新聞配達編】
→目次から読む
→第1話から読む
