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(9)【地獄で勝ち続ける男】人生が終わった日も、朝のコーヒーだけは飲んでいた。-失踪編-


■この物語は筆者の実体験をもとに執筆しています。
・正直、極限まで恥をさらしてます。
・僕が生きてきた記録(ノンフィクション)です。
・ほぼ毎日更新を目指してます。


【地獄で勝ち続ける男】


名古屋のスロッターの朝は早い。
朝9時開店のため7時には起きている。。

僕が目を覚ましたのは7時。

松下さんはもう起きていて、
布団の上で天井を眺めていた。

僕は言う。
「コーヒー買ってきます。」

すると松下さんが言った。
「今日は缶コーヒーはあかん。」
「喫茶店行くで。」

「美味いコーヒーとトーストで
1日を始めるんや。」

名古屋名物。
モーニング。

コーヒーを頼むと
トーストと卵が付いてくる。
色々てんこ盛りの店もあるらしい。

僕は、一度食べてみたいと思っていた。

松下さんが言う。
「07:30に出る。
喫茶店でモーニング食って
08:30に並ぶ。」

そしてニヤっと笑った。

「喫茶店でモーニング食ったら
スロットでもモーニング引けるかもしれんやろ。」

当時のパチスロには
モーニングというものがあった。

店側が客寄せのために
当たり状態の台を
数台だけ仕込んでおく。

ただし見た目では
当たり台は分からない。

完全に運だ。

作業着のまま
僕たちは喫茶店へ向かった。

作業着が
私服兼仕事着になっていた。

人夫出しに
すっかり染まっていた。

モーニングを食べながら
松下さんが言う。

「自分、軍資金いくらや?」
「2万ちょいです。」
「俺は6万ある。」

少し考えてから言った。
「2万貸したるわ。」
「え?」

「その代わりな。」
「どっちが勝っても折半や。」

僕は一瞬考えた。
でも断る理由はなかった。
軍資金は多い方がいい。

「お願いします。」

松下さんは
本当に2万円をくれた。

久しぶりのレギュラーコーヒー
やっぱり缶コーヒーとは違う。
僕はコーヒーをおかわりした。

08:30
パチンコ屋の前。
すでに50人以上並んでいた

松下さんは言う。
「俺はボブサップ。」

僕は言う。
「僕は獣王にします。」

開店。
僕はメダルを入れる。
すると。

サバンナチャンス。
モーニングを引いた。

しかし。
伸びない。

単発。
また単発。
また単発。

気づけば
所持金は2万円になっていた。

松下さんの様子を見に行く。
松下さんも苦戦していた。

「残り1万や。」
まだ昼前。

ここで僕は言った。
「松下さん!」
「スーパービンゴ行きません?」

松下さんが笑う。
「そやな。」

それが。
すべての始まりだった。

松下さんが千円で、わずか千円で
ATを当てた。

666ゲーム。
ロングAT。

「今日は帰れんかもやな。」

松下さんが
ニカっと笑った。

そこから。
止まらない。

店内の空気が変わったのを感じた。
AT。
AT。
AT。

メダルが
ドンドン、あっという間に
増え続ける。

僕はというと。
吸い込まれる。

気づけば
残り千円。

その時。
松下さんが
ドル箱を差し出した。

「使い〜。」
優しい人だ。

15時。
松下さんのメダルは
山になっていた。

10万円どころじゃあない。
20万はある。

僕は自販機で
缶コーヒーを2本買った。

残金は
500円もない。

来週は
ご飯が食べれないかもしれない。
そう思った。

松下さんに
コーヒーを渡す。

「すまんな。」

「コイン使ってええで。」
その時。
僕にも
ATが来た。

なんとか
2万円回収。

松下さんはスロットを
回し続ける。
タバコを吸いながら。
ひたすら。
回し続ける。

20時。
ついに松下さんの台もAT終了。

ドル箱。
22箱。

枚数。
23,712枚。

換金。
47万4千円。

僕は
1,023枚。
約2万円。

そのまま
居酒屋へ。

松下さんが
お金を数える。

「47万か。」
「ほら。」
僕に
22万円差し出してきた。

「え?!」
「朝言うたやろ。」
「折半や。」

この人。
本当にすごい人だ。

酒を飲みながら
松下さんが言った。
「相談あるんや。」
「この金持って。」
「逃げようや。」

「え?」
僕は驚いた。
「人夫出しは辞める。」
「逃げるんや。」

確かに。
ここは普通じゃない。

僕たちは見えない鎖に
つながれて搾取され続けるだろう。

僕は言った。
「分かりました。」

松下さんが笑う。
僕も笑う。

「明日求人誌買うで。」
「もっと条件のいいとこ行こ。」

焼き鳥が
美味かった。
ビールも美味かった。
何もかも上手くいくような気がした。

アパートに戻る頃
僕たちは
ベロベロだった。

松下さんが言う。
「覚えとき。」
「大勝ちした次の日は」
「ギャンブルしたらあかん。」

「そうですね。」
そう応えた時
松下さんは
もう眠っていた。

次の日。
僕は。

一人で逃げる。
松下さんを置いて。


(第10話【僕は逃げた】へ続く)




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「人生が終わった日も、朝のコーヒーだけは飲んでいた。」

【第一章・失踪編】
目次から読む
1話から読む

【第二章・新聞配達編】
目次から読む
1話から読む


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