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非正規と正社員の生涯賃金差、全部言う

誰も言わないから書く。

非正規と正社員の生涯賃金の差は、単なる時給差ではない。複合的な構造として積み上がる。

厚生労働省「賃金構造基本統計調査2024」によれば、正社員の平均年収は男性で約540万円、女性で約393万円。非正規労働者(パート・派遣・契約社員)の平均年収は男性で約241万円、女性で約163万円だ。年収差は男性で約300万円、女性で約230万円。これが40年続く。

正社員 — 平均年収(男性) 542万円、平均年収(女性) 393万円
契約社員 — 平均年収(男性) 355万円、平均年収(女性) 256万円
派遣社員 — 平均年収(男性) 281万円、平均年収(女性) 215万円
パートタイム — 平均年収(男性) 114万円、平均年収(女性) 107万円

出所: 厚生労働省「賃金構造基本統計調査2024」

差の大きさだけが問題ではない。非正規から正規への転換が難しい点が、差を固定させる。

雇用格差が積み重なる3つの仕組み

第一の仕組みは「経験が年収に変換されない」ことだ。

正社員は勤続年数と職位昇格が連動する設計が多い。10年勤めれば昇給と職位上昇が重なり、年収が段階的に上がる。非正規は同じ業務を10年続けても時給の小幅な上昇だけで、職位という概念がない場合が多い。経験年数が市場価値に変換されにくい設計になっている。

第二の仕組みは「社会保険の格差」だ。

週30時間未満・月収約88,000円未満の短時間勤務では厚生年金に加入できない場合がある。国民年金のみでは将来の年金受給額が大幅に低くなる。40年間の厚生年金と国民年金の受給額差は、月額で数万円、生涯で数百万円に達する。雇用形態の差が老後の格差に直結する。

第三の仕組みは「雇用の不安定さ」による機会損失だ。

派遣や契約社員は契約満了で雇い止めになる可能性がある。雇い止めと転職活動の繰り返しにより、キャリアに空白期間が生じる。空白期間は次の採用時に不利に働き、条件の良い正規雇用への転換をさらに難しくする。不安定さが不安定さを再生産する。

生涯賃金の試算

大卒22歳から60歳まで38年間働いた場合の生涯賃金を試算する。

正社員(大企業) — 推定生涯賃金(男性) 約2億7,000万円
正社員(中小企業) — 推定生涯賃金(男性) 約1億8,000万円
非正規(契約・派遣) — 推定生涯賃金(男性) 約1億1,000万円
非正規(パート中心) — 推定生涯賃金(男性) 約5,000万円

出所: 労働政策研究・研修機構「ユースフル労働統計2024」を基に試算

正社員と非正規(パート中心)の生涯賃金差は、最大で2億円以上になる。この差が老後の年金差にも反映される。

非正規から正規への転換率

非正規から正社員への転換を実現した割合は、総務省「就業構造基本調査2022」によれば、過去5年間で非正規から正規に転換できたのは非正規全体の約8.4%にとどまる。9割以上は非正規のまま5年が過ぎる。

転換の壁は35歳付近で急激に高くなる。採用側は正規雇用の中途採用を30代前半までの人材で埋めることが多い。35歳を過ぎた非正規は、正規転換の市場から実質的に外れていく。

非正規という選択が一時的なつもりで始まっても、構造として固定される。年収差・年金差・転換率の低さが組み合わさり、個人の努力で乗り越えられる問題ではなくなる。雇用の二層構造が設計として存在するかぎり、格差は個人の選択の問題として語られ続ける。


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