【お悩み会議室】暴言は「助けて」の裏返し。言葉にできない子が"交渉できる子"に変わるまで
今日もお疲れ様です、だんパパです。
今回も、私の「作戦会議室」へようこそ。
ありがたいことに、日々たくさんのご相談をいただいています。
今回も、私がこれまで学校の現場や福祉の事業所で積み重ねてきた膨大な引き出しの中から、今まさに多くの人が直面している、リアルなお悩みをご紹介させてください。
1. 今回のお悩み
今回は、年長のお子さんに関わる支援者さんからのご相談です。
「自分の気持ちを言葉で説明するのが、とにかく苦手な子がいるんです」
みんなで活動する場面や、次に何をするのか見通しが持てない場面。
そういう時に「やりたくない」「不安だ」を言葉にできない。
その代わりに出てくるのが、暴言なんです。
「うるさい!」「あっちいけ!」「やらない!!」
周りの子はびっくりするし、大人は毎回その対応に追われる。
「なんでそんな言い方しかできないの…」
「本当はやりたくないだけなのに、どうして素直に言えないんだろう」
そんなふうに、大人のほうが疲れ果ててしまう。
きっと、同じ景色を見ている方、たくさんいますよね。
家庭でも園でも学校でも、本当によくあるお悩みです。
ここで、まず一番大事なことをお伝えします。
【暴言は、その子の「性格の悪さ」ではありません】
言葉にできない気持ちの、いわば"非常ベル"です。
考えてみてください。
「不安です」「やりたくないです」「助けてください」
この言葉たちって、実はものすごく高度なスキルなんです。
自分の心の中を見つめて。
それにピッタリの言葉を探して。
相手に伝わる形で口に出す。
大人でも難しいことを、この子たちはまだ持ち合わせていない。
だから、手持ちの表現の中で一番強力な「暴言」という手段で、
必死にSOSを出しているんです。
ところが大人は、暴言という"手段"のほうに反応してしまう。
「そんな言い方しないの!」
「ちゃんと言いなさい!」
すると子どもは、唯一のSOS手段まで否定された気持ちになる。
ますます追い詰められて、もっと激しい行動に出る。
大人は「注意してもなおらない」と、さらに強く叱る。
誰も悪くない。
みんな必死でやっている。
それなのに、なぜか全員が苦しい。
ただ、この状態のまま大人が体当たりを続けても、
お互いにすり減っていくだけなんです。
ここから先は、オープンな場所ではなかなか書けない、
現場のリアルな具体策になります。
私がこれまでの支援の現場や、自分の家庭での泥臭い失敗から学んだ、明日から試せるアプローチのステップです。
今日までの「どうすればいいの…」という孤独な遠回りを少しでも減らすヒントになれば嬉しく思います。
お子さんも、あなた自身も、
少しだけ肩の荷が軽くなる具体的な作戦を、
ここからお伝えしていきます。
2. 状況を劇的に変えるアプローチと具体的な解決策
まず、この作戦のゴールを共有させてください。
ゴールは「暴言を叱ってやめさせること」ではありません。
【暴言よりも便利な"言葉"という道具を、子どもに手渡すこと】です。
暴言は、その子にとって「今いちばん効果のある伝達手段」だから使われています。
つまり、言葉のほうが「便利で、得をする」と体で分かれば、
子どもは自然と言葉を選ぶようになります。
実際に私が現場で見た事例を、先にお話しさせてください。
情緒が不安定になると暴言が出てしまう、年長の子がいました。
その子が、苦手だった書字の活動…カレンダー作りの場面で、
こう言えたんです。
「4月のカレンダーは、4月になったら作るものだから。次回やる」
拒否じゃないんです。
【理由を付けて、自分の思いを説明して、代わりの案まで出している】
これはもう、立派な"交渉"です。
暴言で爆発していた子が、交渉のテーブルに着けるようになった。
この変化は偶然ではなく、大人の関わり方の積み重ねで作れます。
そのためのステップを、順番にお伝えします。
📌 ステップ1:まず大人が「翻訳者」になる
言葉が出ない子に「言葉で言いなさい」と要求しても、
出るはずがありません。
持っていない道具は、使えないからです。
だから最初は、大人が子どもの気持ちを"翻訳"して、
代わりに言葉にしてあげます。
暴言が出た場面で、こう言い換えてみてください。
・「うるさい!」と叫んだ時
→「そっか、『今は静かにしてほしい』んだね」
・「やらない!」と拒否した時
→「『まだ気持ちの準備ができてない』ってことかな」
・「あっちいけ!」と突き放した時
→「『一人になりたい』って教えてくれたんだね」
ポイントは、暴言を叱るより先に、
【裏側にある本当の気持ちを言葉にして聞かせる】こと。
子どもは、この積み重ねの中で初めて知ります。
「あ、この気持ちは、こういう言葉で言えばいいんだ」と。
翻訳のシャワーを浴びせる期間だと思ってください。
すぐに結果は出ません。
でも、確実に子どもの中に"言葉の在庫"が増えていきます。
📌 ステップ2:「言えた瞬間」を絶対に見逃さない
ある日、ふとした瞬間に、子どもが暴言ではなく
言葉で伝えてくる時が来ます。
「やだ」でもいい。
「あとで」でもいい。
たった一言でもいいんです。
この瞬間が、勝負どころです。
ここで大人がやるべきことは、ただ一つ。
【何が良かったのかを、具体的に言葉にして褒める】ことです。
「わ〜!すごいね!言葉で言えたね!」
「えらいね」ではダメな理由が、ここにあります。
「えらいね」だと、子どもは"何が"えらかったのか分からない。
「言葉で言えたね」なら、
「言葉で伝える行動」そのものが評価されたと、はっきり伝わります。
行動は、具体的に認められた時に、繰り返されるようになります。
逆に言うと…
言えた瞬間をスルーしてしまうと、
子どもは「言葉って意味ないじゃん」と学んでしまう。
だからこの時期の大人は、"言えた瞬間ハンター"になってください。
📌 ステップ3:最強のキーワード「助かる」と「ありがとう」
ここが、今回の記事でいちばんお伝えしたい核心部分です。
「言葉で言えたね」という褒め方に、
さらに一段、効果を上乗せする声かけがあります。
それがこれです。
【「言葉で伝えてくれると、先生(ママ・パパ)すごく分かりやすくて助かるわ〜。ありがとう!」】
ポイントは2つ。
・「助かる」というキーワードを使うこと
・評価ではなく「お礼」として伝えること
なぜこれが効くのか。
「えらいね」「すごいね」は、上から下への"評価"です。
一方で「助かる」「ありがとう」は、対等な関係での"感謝"です。
子どもは、「自分の行動が、目の前の大人の役に立った」という実感を得ます。
これは「褒められた」よりも、ずっと深いところに届くんです。
「僕が言葉で言うと、この人が助かるんだ」
「私の言葉には、人を動かす力があるんだ」
この感覚が、言葉で伝える行動をぐっと後押ししてくれます。
私の経験上、この「助かる+ありがとう」の組み合わせは、かなり効果が高い声かけです。
(正直に言うと、あまり響かないタイプの子もいます。
でも、試す価値は十分にあります)
📌 ステップ4:「やらない」を交渉に育てる型を教える
言葉が出るようになってきたら、次の段階です。
「やらない!」という一言拒否を、"交渉"に育てていきます。
使うのは、この型です。
【「〜だから、〜したい」】
・「疲れたから、休みたい」
・「今は不安だから、見てるだけにしたい」
・「4月になったらやるものだから、次回やりたい」
理由+希望のセットです。
最初は大人が型を見せてあげてください。
子:「やらない!」
大人:「『やらない』って言えたね。どうしてか、教えてくれる?」
子:「…むずかしいから」
大人:「そっか!『難しいから、やりたくない』んだね。教えてくれて助かる〜。じゃあ、どうしよっか?」
この流れを繰り返すうちに、子どもの中に交渉の型がインストールされていきます。
そしてここで、大人側の超重要ルールを一つ。
【言葉で伝えられた要求は、できる範囲で"通す"こと】
言葉で「やりたくない」と言えたのに、結局無理やりやらされた。
これでは、子どもは「言葉で言っても意味ない。やっぱり暴れたほうが早い」と学んでしまいます。
全部の要求を通す必要はありません。
「今日は見学ね」「半分だけやってみようか」でいい。
【言葉で伝えると、状況が少し良くなる】という成功体験を積ませることが目的です。
📌 ステップ5:見通しの不安を先回りして減らす
最後に、そもそもの暴言の"燃料"を減らす作戦です。
このタイプの子の不安の多くは、「次に何が起こるか分からない」ことから来ています。
だから、先回りして見通しを渡してあげてください。
・「今日は、①お絵かき、②おやつ、③お外遊び、の順番だよ」
・「あと5分したら、お片付けだよ」
・「今日のカレンダー作りは、名前を書くところまででOKだよ」
絵カードやホワイトボードで"見える化"すると、さらに効果的です。
見通しが持てれば、不安が減る。
不安が減れば、暴言の出番そのものが減る。
言葉のスキルを育てる作戦と、不安を減らす作戦。
この両輪で進めていくのが、遠回りに見えて一番の近道です。
3. 関わる大人が明日から意識してほしいこと
ここまで読んでくださって、ありがとうございます。
最後に、実践する上での心構えを3つだけ。
📌 1つ目:「やらない」を成長として受け止める
「今回はやらない」という返事は、一見マイナスに見えます。
でも、暴言で爆発していた子が、言葉で「やらない」と言えた。
これは【できないこと】ではなく、まぎれもない【成長の印】です。
大人がこの視点を持てるかどうかで、子どもへの声のトーンが変わります。
📌 2つ目:後退する日があって当たり前
昨日は言葉で言えたのに、今日はまた暴言。
普通にあります。というか、必ずあります。
行動の変化は、右肩上がりの直線ではなく、行ったり来たりのジグザグです。
一回の後退で「やっぱりダメだ」と判断しないでください。
📌 3つ目:あなた自身の休憩を確保する
翻訳者になるのも、言えた瞬間ハンターになるのも、正直、体力を使います。
大人に余裕がない日は、うまくできなくて当然です。
「今日は翻訳できなかったな」という日があっても、自分を責めない。
続けられるペースが、いちばん強いペースです。
最後に
今日も最後まで読んでくださって、本当にありがとうございました。
暴言の裏には、必ず「伝えたいのに、伝えられない」というもどかしさが隠れています。
その子は、困らせたいんじゃない。
困っているんです。
そして、そのSOSに毎日向き合っているあなたも、
十分すぎるほど頑張っています。
明日、もしお子さんが小さな一言でも言葉にできたら。
ぜひ、「教えてくれて助かるよ、ありがとう」と伝えてみてください。
その一言が、親子の、そして先生と生徒の関係を、少しずつ変えていきます。
この「お悩み会議室」は、これからも更新していきます。
「うちの場合はどうだろう?」というお悩みがあれば、コメントやメッセージで気軽に教えてください。
あなたの一つのお悩みが、同じ場所で立ち止まっている誰かのヒントになります。
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