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親から子への生前贈与、税金はどうなる?――わが家の経験から相続税・贈与税を解説🔰

以前の記事で、義母が息子である夫たちに生前贈与をしたことを書きました。


そのとき利用したのが、

「相続時精算課税制度」

です。

名前からして難しそうですよね。

私自身、実際に手続きをするまでは、

「生前贈与なのに、どうして相続税が関係するの?」

「贈与税と相続税は何が違うの?」

「2,500万円までは税金がかからないということ?」

と、分からないことがたくさんありました。

そこで今回は、夫が実際に経験した生前贈与を例にしながら、相続税と贈与税、そして相続時精算課税について、できるだけ分かりやすくまとめてみたいと思います。

※この記事は2026年8月時点で公表されている国税庁などの情報をもとにまとめています。税法・税制は改正されることがあります。
実際に贈与・相続・申告などを行う際には、その都度、国税庁などの最新情報を確認し、必要に応じて税務署、税理士、弁護士などの専門家へご相談ください。


わが家が生前贈与を考えることになった事情


義父母は、法律上の婚姻関係を続けています。

ただ、長年それぞれが自分の財産を管理し、お互いの詳しい資産状況は共有していませんでした。

義父は80代になった現在も自営業を続けています。

毎日のように仕事などで外出し、日中に自宅で過ごすことはほとんどなく、夜になると自宅へ戻って寝るという生活を続けているそうです。

義父がどのくらいの預貯金や資産を持っているのか。

事業に関係する借入金などの負債がどのくらいあるのか。

それについては、家族の誰も把握していません。

家族の間では、義父には別に親しい女性がいると認識しています。

ただ、その関係について詳しいことは分かりません。

そのため夫たちは以前から、

「父が亡くなったときには、負債がどれだけあるのか分からないので、相続放棄を考えることになるかもしれない」

と話していました。

仮に義父に財産があったとしても、遺言などによってその女性へ財産を残している可能性も考えられます。

資産も負債も全容が分からず、相続をめぐって複雑な問題になる可能性もあるため、夫たちは義父の財産については積極的に関わらない考えだそうです。

※内縁関係にある人は、法律上の配偶者と同じように自動的に法定相続人になるわけではありません。ただし、遺言による遺贈などによって財産を受け取る場合があります。


なぜ義母は、生前贈与を考えたのか


義母は80代で要介護の状態です。

現在は地域包括支援センターなどにも相談しながら、介護保険サービスを利用し、買い物や掃除、入浴など日常生活の支援を受けています。

一方、義父は80代になった現在も自営業を続けており、日中はほとんど自宅にいません。

義父母は同じ家で生活しているものの、義父は基本的に自分のことは自分で行い、義母の日常生活については介護サービスを利用して成り立っている状況です。

そんな中で義母が心配していたのが、

「自分の判断能力が低下したあと、自分のお金はどうなるのか」

ということでした。

認知症などによって本人の判断能力が低下し、金融機関がそれを把握した場合には、本人の財産を守るため、預金の引き出しなどの取引が制限されることがあります。

そうなったとき、介護費用など自分自身のために必要なお金を、家族が自由に引き出せるとは限りません。

一方で義母は、夫婦間でお互いの資産を共有してこなかったこともあり、自分の預貯金を義父に管理してもらうことにも不安を感じていました。

そこで、

自分の生活に必要なお金は手元に残す。

そのうえで、

判断能力が十分にあるうちに、財産の一部を息子2人へ生前贈与しておく。

という方法を選びました。

もちろん、生前贈与だけが高齢者の財産管理の方法ではありません。

成年後見制度や家族信託など、状況によって検討できる方法はほかにもあります。

わが家の場合は、義母自身の希望と家族関係、今後の介護などを考えた結果、生前贈与という方法を選択しました。


義父には生命保険金500万円を残すことに


生前贈与を進めるにあたり、夫は義母に、

「美容院を閉めてから今まで生活してこられたのは、父の収入による部分もあるのだから、父にも何か残した方がいいのではないか」

と話しました。

義母も夫の話を受け入れました。

そこで、預貯金などとは別に、義母が亡くなったときに義父が生命保険金500万円を受け取れるようにすることになりました。

つまり、

義母自身の今後の生活資金を確保する

財産の一部を息子2人へ生前贈与する

義父には死亡保険金500万円を残す

という形で財産を整理しました。

なお、死亡保険金にどの税金がかかるかは、誰が保険料を負担したのか、誰が被保険者なのか、誰が受取人なのかによって異なります。

被相続人が保険料を負担し、相続人が死亡保険金を受け取る場合には相続税の対象となりますが、相続人が受け取った死亡保険金には、

500万円×法定相続人の数

という非課税限度額があります。

契約内容によって税金の扱いが異なるため、生命保険を相続対策として利用する場合にも契約内容の確認が必要です。


義父に知らせず進めることへの迷い


この生前贈与については、義父には知らせずに進めました。

私自身、

「それで本当にいいのだろうか」

という迷いがなかったわけではありません。

義母名義の預貯金ではありましたが、婚姻中に形成された財産でもあり、夫婦の財産関係をどこまで考慮すべきなのか、簡単には判断できない部分もあったからです。

本来であれば、夫婦で財産について話し合い、将来の相続や介護費用についても共有できることが望ましいのだと思います。

ただ、義父母には長年にわたる複雑な夫婦関係があり、お互いの資産状況も共有しない生活を続けていました。

そのような事情の中で、最終的には義母自身の意思を尊重し、私は手続きに協力することにしました。

これは、あくまでもわが家の個別の事情によるものです。

配偶者に財産を隠すことや、家族に知らせず生前贈与することを勧めるものではありません。

また、夫婦の財産については、名義だけで判断できず、財産を取得した時期や原資などによって法的な扱いが異なる場合があります。


では、生前贈与をしなかったら相続はどうなる?


ここから税金の話です。

義母が亡くなった場合、現在の家族構成では法定相続人は、

義父(配偶者)

息子A

息子B

の3人です。

法定相続分で考えると、

義父 1/2

息子A 1/4

息子B 1/4

となります。



義母の法定相続人

義父(配偶者) 50%

息子A     25%

息子B     25%

※法定相続分は、必ずこの割合で実際の遺産を分けなければならないという意味ではありません。


相続税はいくらからかかる?


相続税には「基礎控除」があります。

現在の計算式は、

3,000万円+600万円×法定相続人の数

です。

わが家の場合、法定相続人は3人なので、

3,000万円+600万円×3人

4,800万円

となります。



わが家の場合の相続税の基礎控除

法定相続人 3人

3,000万円

600万円×3人

4,800万円

ここで注意したいのは、

「1人4,800万円まで非課税」ではない

ということです。

遺産に係る基礎控除が4,800万円という意味です。

相続税を考えるときには、預貯金だけを見るわけでもありません。

不動産などの財産や、相続時精算課税による贈与など相続税の対象となる財産を確認し、債務や葬式費用などを差し引きながら計算していきます。


生きているうちに財産を渡したら「贈与」


一方、義母が生きているうちに息子たちへ財産を渡せば、「相続」ではなく「贈与」です。

そこで関係するのが贈与税です。

贈与税には大きく、

①暦年課税

②相続時精算課税

という2つの課税方法があります。



親から子へ生前贈与したら?

     義母
      ↓
    息子へ贈与
      ↓

 ─────────────

 ↓         ↓

【暦年課税】   【相続時精算課税】

年間110万円    年間110万円
の基礎控除     の基礎控除

          +

        累計2,500万円
        の特別控除


相続時精算課税は2024年に大きく変わりました


ここは、インターネットで古い情報を読むときにも注意したいところです。

令和5年度税制改正によって相続時精算課税制度が改正され、2024年(令和6年)1月1日以後の贈与から、新たに年間110万円の基礎控除が設けられました。

そのため、2023年以前の制度について書かれた記事と、現在の制度では内容が異なるところがあります。

現在の相続時精算課税では、原則として、

・60歳以上の父母や祖父母などから
・18歳以上の子や孫などへ

贈与する場合に選択できます。

※年齢は贈与した年の1月1日時点で判定します。また、住宅取得等資金の贈与などには特例があります。


「年間110万円」と「2,500万円」は別のもの


ここは、私も最初は分かりにくいと感じました。

現在の相続時精算課税には、

年間110万円の基礎控除

と、

累計2,500万円までの特別控除

があります。

たとえば、相続時精算課税を選択して、対象となる親から1年間に1,000万円の贈与を受けたとします。

まず、

1,000万円-110万円

=890万円

となります。

この890万円について、2,500万円の特別控除を利用できます。

ただし、

「2,500万円まで完全に税金と無関係になる」

という意味ではありません。

相続時精算課税を選択した贈与者が亡くなったときには、相続時精算課税の対象となった贈与財産について、一定の金額を相続財産に加えて相続税を計算します。

2024年1月1日以後の贈与については、その年の年間110万円の基礎控除を差し引いた残額が、原則として相続税の計算に加算されます。

だから、

「相続時精算課税」

という名前なんですね。


一度選ぶと暦年課税には戻せません


ここも大切です。

ある贈与者からの贈与について一度相続時精算課税を選択すると、その贈与者からその後受ける贈与についても相続時精算課税が適用されます。

その贈与者について、

「やっぱり暦年課税に戻そう」

とはできません。

そのため、

「2,500万円まで控除されるなら得なのでは?」

という理由だけで選ぶ制度ではありません。


暦年課税の生前贈与も2024年から変わりました


2024年から変わったのは、相続時精算課税だけではありません。

暦年課税による贈与についても、相続税の計算に加算される期間が改正されました。

以前は原則として相続開始前3年以内でしたが、令和5年度税制改正によって、2024年1月1日以後の贈与から、最終的には相続開始前7年以内へ延長されます。

ただし、一度に3年から7年へ変わるのではなく、段階的に延長されます。

そのため、

「年間110万円以下なら、将来の相続税とは必ず無関係」

と単純に考えないことも大切です。

制度が変わったばかりだからこそ、実際に贈与するときには最新情報を確認する必要があります。


わが家では相続時精算課税を選択しました


義母から息子たちへの生前贈与では、相続時精算課税制度を利用しました。

夫は税務署へ相談に行き、制度について説明を受けました。

そして、実際の申告・届出については、私がe-Taxを使って手続きをしました。

当時は、

「これは贈与税なの?」

「相続税なの?」

「相続時精算課税選択届出書って何?」

と、名称だけでも混乱した記憶があります。

でも一つずつ調べていくと、

今、生前贈与する

将来、贈与した人が亡くなったときに相続税の計算につなげる

という制度なのだと理解できました。


妻である私に、生前贈与された財産の権利はありません


ここでもう一つ、夫婦のお金について触れておきたいと思います。

義母から生前贈与を受けたのは、義母の息子である夫たちです。

妻である私は贈与を受けた本人ではありません。

親から子へ贈与された財産は、原則として贈与を受けた本人の財産(特有財産)となるため、離婚時の財産分与でも、原則としてその生前贈与そのものを夫婦で半分に分けることにはなりません。

つまり、義母から夫へ贈与された財産について、妻である私に当然の権利があるわけではありません。

夫婦として生涯一緒に暮らしていくことを前提にしていた私は、「夫の財産」と「私の財産」の境界線を、今ほど意識していなかったのだと思います。

もちろん、夫の親から贈与された財産が、法律上私のものになると思っていたわけではありません。

ただ、夫婦のどちらかに財産があれば、それは将来の二人の生活を支える安心材料になる。そんな感覚で捉えていました。

しかし、今になって考えると、結婚生活を続けていたとしても、夫が親から贈与された財産を夫婦の老後のために使うとは限りません。

夫の特有財産である以上、夫が自分のために保有したり、使ったりすることもできます。

つまり、

「配偶者に財産があること」と「その財産によって自分の老後も保障されること」は同じではありません。

そして、

「夫婦としてその財産の恩恵を受けること」と「自分にその財産の権利があること」も別の話です。

離婚について調べるようになって、私は夫婦のお金にも境界線があることを、改めて意識するようになりました。

ただ、離婚の話し合いとなれば、また少し違う側面もあります。

財産分与、慰謝料、解決金などについて話し合う際、相手にどの程度の支払い能力があるのかが、現実の交渉に影響することはあると思います。

夫に一定の固有財産があることが分かっていれば、「支払える財産がまったくない」という事情とは異なります。

ただし、だからといって、夫の生前贈与された財産から私が当然に慰謝料や解決金を受け取れるという意味ではありません。

特に解決金は、財産分与のように一定のルールで当然に分けるものではなく、離婚条件について双方が話し合い、合意できるかどうかによって変わります。

また、慰謝料についても、単に相手に財産があるから受け取れるものではなく、慰謝料請求が法的に認められる事情があるかどうかが別に問題となります。

「生前贈与された財産に妻の権利があること」と、「離婚時に相手に支払い能力があること」は別の話。

私は、この二つを分けて考えています。


ちなみに、義父の相続はどうする?


義母の生前贈与とは別の話ですが、義父については資産だけでなく負債も家族が把握していません。

相続では、預貯金や不動産などのプラスの財産だけでなく、原則として借金などのマイナスの財産も引き継ぐことになります。

そのため夫たちは、

「父が亡くなったときには、負債がどれだけあるのか分からないので、相続放棄を考えることになるかもしれない」

と話しています。

相続放棄をする場合は、原則として、自分のために相続が始まったことを知ったときから3か月以内に家庭裁判所へ申述する必要があります。

「借金があるかもしれないから、何もしない」

というだけでは、相続放棄にはなりません。

財産や負債を調べても3か月以内に判断できない場合には、家庭裁判所へ相続の承認または放棄の期間を延長してもらうための申立てをする方法もあります。


親が相続放棄したら、借金は孫に移る?


ここで私が気になったのが、

「夫が相続放棄したら、今度は私たちの息子が義父の相続人になってしまうの?」

ということでした。

結論からいうと、夫が存命で相続放棄したことを理由に、息子が夫の代わりに義父の相続人になるわけではありません。

相続放棄をした人は、その相続について初めから相続人ではなかったものとして扱われます。

一方、代襲相続は、本来相続人となるはずだった子が相続開始前に亡くなっている場合などに、その子ども、つまり孫などが代わって相続人になる仕組みです。

相続放棄をしたことによって、相続権がその人の子どもへ移るわけではありません。

つまり、義父が亡くなったときに夫が存命で、夫が正式に相続放棄した場合、夫の代わりに私たちの息子が義父の財産や負債を相続することにはなりません。



父が相続放棄したら孫へ行く?

義父
 ↓
夫(子)
相続放棄
 ↓

✕ 相続放棄を理由に孫が代襲相続するわけではない


ただし「家族全員が終わり」ではありません


ここも注意が必要です。

義父の子ども全員が相続放棄すると、それだけで相続の問題が終わるとは限りません。

先順位の相続人がいなくなれば、次の順位の人が相続人になる可能性があります。

基本的な順位は、

第1順位 子

第2順位 父母・祖父母などの直系尊属

第3順位 兄弟姉妹

です。

そのため、負債がある可能性のある相続では、

「自分が放棄すれば終わり」ではなく、その次に誰が相続人になるのか

まで確認しておく必要があります。


生前贈与は「税金がかからない方法」だけで考えない


実際に家族の生前贈与に関わって感じたのは、

「どうすれば今の贈与税が安くなるか」だけを考えればいいわけではない

ということでした。

贈与する本人の生活費や介護費用は十分に残っているか。

将来相続が発生したときにどうなるのか。

法定相続人は何人いるのか。

ほかにどのような財産や負債があるのか。

暦年課税と相続時精算課税のどちらを選ぶのか。

そして何より、

本人が自分の財産を、これからの生活のためにどう使い、最終的に誰に残したいと思っているのか。

税金だけではなく、老後、介護、夫婦関係、親子関係まで関係してきます。

わが家の場合は、少し複雑な家庭事情がありました。

だからこそ、実際に手続きを経験したことで、

生前贈与と相続は、切り離して考えるものではない

ということを知りました。

同じように、

「親から生前贈与の話が出たけれど、何から調べればいいの?」

「親の財産だけでなく、借金もよく分からない」

という方に、わが家の経験が少しでも参考になれば幸いです。


※この記事は2026年8月時点で公表されている制度をもとに、私自身の経験を交えて一般的な仕組みをまとめたものです。個別の税務・法律判断を行うものではありません。

税法・税制は改正されることがあります。贈与や相続、申告などの手続きを実際に行う際には、その都度、国税庁、裁判所などの最新情報をご確認ください。

家族構成、財産の種類や取得経緯、贈与時期、生命保険の契約形態などによって、税務上・法律上の取り扱いが異なる場合があります。

判断に迷う場合は、税務署、税理士、弁護士などの専門家へご相談ください。




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