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勝手に決定! 私の「2025年新潮文庫の100冊」

また無謀なことを始めてしまいました(笑)。
読書大好き歌詠みつくだとしおです。

実は、今回は7月1日に発表される「新潮文庫の100冊」を、10の手がかりから予想する『勝手に予想!「新潮文庫の100冊」』をお届けします……という予定だったのですが、本日いろいろ検索していく中で2025年ラインアップが公開されているのがわかってしまいました。

ただ公式サイトさんはまだ予告中になっていて、ラインアップを秘密にされているご様子のように感じました。ここは私もあまり広めない方がいいかもしれないと愚考し、急遽企画を変更。『勝手に決定! 私の「2025年新潮文庫の100冊」』としてお送りしたいと思います。

いったん視点を「私」とすると、思いがあふれて「あれも伝えたい、これも伝えたい」と、どんどん言葉は心の井戸からこぼれだし、7500字近くになってしまいました。ほんとに長い記事で恐縮です。

ぜひ冷たい麦茶かビールでも飲みながら、お楽しみいただけると幸いです。(Amazonアソシエイト・プログラムに参加しています)。


おすすめの1 今年のプレミアムカバー作品

とはいえすでに公開されている情報は広めたいと思いますので、ご紹介してまいります。まずは今年のプレミアムカバー作品です。ちなみに今回のカバー選定に当たっては、下記のようなキャンペーンがXで行われました。

そして決まったのが以下の8作品。定番作品から「そうくるか」といった作品までバラエティ豊かですよね。たしか2024年の「新潮文庫の100冊」には谷崎潤一郎の『痴人の愛』が入っていて、ナボコフの『ロリータ』はその並びで今回選ばれたのかもと感じました。

おすすめの2 Xからつくだ的におすすめ

文庫フェアが近づくに従い、新潮文庫さんのXではさまざまな告知がなされています。

たとえば、宮島末奈さんの『成瀬は天下を取りにいく』です。発売前重版も決まったそうですし。文庫フェアのノベルティであるステンドグラスしおりと一緒に作品が写っていることから考えて、そう判断しました。

同じ理由で千早茜さんの『しろがねの葉』も入っているのではと考えています。そして、つくだ的「新潮文庫の100冊」としては、新井新井見枝香さんとの共著の食エッセイ『胃が合うふたり』もおすすめ。番外編50Pが新たに収録されています。

同じく重松清さんの短編集『答えは風のなか』も入っているでしょう。また昨年の「新潮文庫の100冊」に選ばれていた直木賞受賞作『ビタミンF』も押さえておきたいですね。


Xを見ていて目立ったのは、『しゃばけ』シリーズ久しぶりの長編作品となった畠中恵さんの『いつまで』の告知です。今年10月にはシリーズのアニメ化が決まっており、これも楽しみな一冊ですよね。

また「これは選ばねば」と思ったのが、金原ひとみさんの『アンソーシャルディスタンス』です。谷崎潤一郎賞受賞作で、作品を流れる疾走感が大好きです。実はいま第一作から金原さんの作品を読み返していこうとしておりまして、今まできちんと読んでこなかったことを猛省しています。『蛇とピアス』もつくだ的におすすめしたい一冊です(ここから、少しずつ「つくだ的に」という言葉が増えていきます🙇)

おすすめの3:歴代全ての年に選出の10冊

インターネットを検索していくと以下のような記事にたどり着きました。なんと、新潮文庫創刊の1976年から2024年までの49年間において、必ず選出されている10冊があるというのです。※不思議の国の図書室さん、大変参考になりました。ありがとうございます🙇

もうこれは49年間続くマスターピースだと判断し、そんな基準で以下の作品を選びました。また定番でありながらも、そこには連投を続ける理由があるとこのラインナップを見て感じました。たとえば井伏鱒二の『黒い雨』は、2025年が終戦80年にあたるという意味もあると私は考えます。

10作のうち『こころ』(夏目漱石著)と『人間失格』(太宰治著)は、プレミアムカバーに選ばれており、『新編銀河鉄道の夜』(宮沢賢治著)は、『注文の多い料理店』がプレミアムカバーに選ばれているので、今回は一回休みかなと判断しました。

おすすめの4 昨年実績からつくだ的に選ぶ

さらにまた検索していくと、2024年の「新潮文庫の100冊」を紹介する座談会の記事を見つけました。この記事で知ったのですが、新潮文庫のラインアップは毎年4割ほどが新作に差し替えられるそうです。ということは、昨年に選出されたラインアップを見れば、今年何が選ばれるかもつかめるはず。

そこで取り出したのが昨年の「新潮文庫の100冊」の小冊子です。この小冊子を参考にしつつ、数冊挙げてみました。ここからはすべてつくだ的なチョイスになります。

まずは村上春樹さんの新作『街とその不確かな壁』。新潮文庫サイトにおいてもプッシュされており、文庫化を待望していた方にとっては楽しみな作品ではないでしょうか。ちなみに今年は阪神淡路大震災から30年になります。震災をテーマにした『神の子どもたちはみな踊る』も、この夏読みたい一冊ではないでしょうか。

さらに大型文庫化といえば2024年の『百年の孤独』に続き、文庫化された『族長の秋』(ガブリエル・ガルシア=マルケス著)も読み応えがありそうです。

余談ですが、個人的には『百年の孤独』、『族長の秋』に続いて今年は『コレラの時代の愛』なんて文庫化になれば嬉しいなと思っています。

おすすめの5 新潮文庫サイトを深掘りする

1976年から続いている、毎年恒例の「新潮文庫の100冊」フェア。2024年は、「愛する本」「シビレル本」「考える本」「ヤバい本」「泣ける本」とジャンルわけされていました。

今年も、時代を超えて愛される名作、長年文庫化が待たれていた名作など、バラエティ豊かなラインアップを揃えているはずです。とはいうものの、新潮社さんの特設サイトはいまはまだティーザー告知の状態です。そこで私は手がかりを新潮文庫さんのサイトに求めました。

本日新潮文庫さんのトップ画面でプッシュされているのは、先に紹介した村上春樹さんの作品と、窪美澄さんの直木賞受賞第一作。『夏目狂想』です。「詩人と評論家。二人の男に愛された女優の選択は。」なんて、思わず読みたくなるじゃないですか。ということで、選んでしまいました。

同じくトップ画面に紹介されているのがノンフィクション作品です。サイトには25作品が紹介されています。そのなかから、社会の「裏」と「表」を知るという意味で3冊選びました。まずはアンダーグラウンドな現場の「声なき声」を拾い上げてきた石井光太さんの『ヤクザの子』、沢木耕太郎さん初の国内旅エッセイ『旅のつばくろ』、群ようこさんのとにかく笑えるじじばば観察エッセイ『じじばばのるつぼ』。いずれも面白そうです。

さて、新潮文庫さんでは本体の他に3つのシリーズを展開しています。1つ目は翻訳ものの「Star Classics 名作新訳コレクション」、そして科学と歴史の「Science&History Collection」、最後にライト文芸シリーズの「新潮文庫nex」。各4冊ずつ選んでみました。

まずは「Star Classics 名作新訳コレクション」シリーズから選んでいきましょう。『ナルニア国物語』は昨日発売された本書で全7巻が完結ということで。そして夏と言えばホラー。というわけで、人類が決して見てはいけない光景を目撃してしまった作家、ラヴクラフトの傑作集『チャールズ・デクスター・ウォード事件』を。正気と狂気を行き来する天才的画家を描いた『月と六ペンス』は、私のなかのモーム・オブ・モームです。さらには、フランス文学からも一冊、サガンの『ブラームスはお好き』を入れました。

次に、Science&History Collectionからは、「なぜ生まれ、死ぬその日まで無意識に動き続けられるのか?」って、ほんとに気になる大ヒット医学エンタメの『人体大全』と、別の意味でやっぱり気になる『人間をお休みしてヤギになってみた結果』が楽しい。そして量子コンピュータが実現するまでに知っておきたい、アインシュタインとボーアを中心とした人間ドラマ『量子革命』も押さえておきたい一冊です。最後に『素数の音楽』を。素数というと難しそう? そんなこと、言わないで。もともと新潮社が誇る海外文芸レーベル「クレストブックス」から文庫化した作品だったと記憶しているので、その味わい深さは折り紙付きと言っていいでしょう。

最後に控えるのは、新潮文庫の新星(といっても創刊11年になるのだけれど)、新潮文庫nex.です。まずライト文芸というジャンル誕生の源流といってもおかしくない江戸川乱歩の探偵小説『怪人二十面相』をおすすめします。シリーズ5冊出ていますので、それで肩慣らしをしたあとは、早坂吝さんが描く未来の探偵『探偵AIの未来のディープ・ラーニング』を。これもシリーズ4作あります。

そしてライト文芸といえば心温まる作品が多いのも特徴ですね。町田そのこさんの『コンビニ兄弟』シリーズ(現在全4冊)で、ほっこりしてください。さて、異世界転生ものもライト文芸では人気のあるジャンルですよね。転生薬師×巫女×和風ファンタジーと、おいしいところをかけ算した紺野 天龍さんの『幽世の薬剤師』シリーズ(現在全9冊)をどうぞ。

おすすめの6 Amazonさんおすすめから選ぶ

Amazonさんでキーワードを検索すると、デフォルトではおすすめ順に商品が表示されます。そしてログインしている状態では、パーソナライズされた状態で作品が表示されます。つまり人によって「新潮文庫」で検索しても、おすすめは違うんですね。

50代の男のハダカを見ても誰も面白くないとは思うのですが、ここでは私、つくだとしおだけに向けてアマゾンさんがおすすめしていると思われる作品を、ご紹介していきます(まだ発売されてない本は除きます)。

では第1位から10位まで、一気にドラムロールスタートです!

いかがだったでしょうか? このリストをつくっているときにいろいろ検索したので、そこに引っ張られているところは確かにあります。一位の『鳥類学はあなたのお役に立てますか?』は、まさにそう(でも、面白そうだから読みたいです)。

個人的な感想としては、翻訳ミステリーが選ばれる数に驚きました。私の中の誰かが「謎l」を求めているのかもしれませんね。そして、ヘミングウェイ。好きです。『河を渡って木立の中へ』は、彼が生前に発表した最後の長編小説であり第二次世界大戦後のヴェネチアを描いた小説です。戦後80年を振り返る一冊として、またトーマス・マンの『ヴェニスに死す』、シェイクスピアの『ヴェニスの商人』と比べ読みしてみるのも面白そうです。

おすすめの7:周年作家と物故作歌

本年に没後あるいは生年でメモリアルに当たる作家さんと、お亡くなりになった作家さんの作品を選んでみました。三島由紀夫が生誕100年、谷崎潤一郎と江戸川乱歩が没後60年になります。トーマス・マンは生誕150年で、没後70年になります。

『葉隠入門』は三島由紀夫作品のなかでも特に好きな作品で、本書を読んだことがきっかけになって葉隠の解説書を書いたこともあります。そして、去年はプレミアムカバー枠だった『痴人の愛』、江戸川乱歩のデビュー作「二銭銅貨」が収録された『江戸川乱歩傑作選』、ルキノ・ヴィスコンティによって映画化もされた『ヴェニスに死す』と、耽美的な作品もおすすめです。

そして昨年お亡くなりになった方がお二人。谷川俊太郎さんと、ポール・オースターさんです。谷川さんは『さよならは仮のことば』という詩集、ポールオースターさんは第一作で柴田元幸さんが翻訳された『ガラスの街』を選びました。これからも作品を噛みしめるように過ごしていきたいです。

おすすめの8:夏だからこそ長編を選ぶ

勝手におすすめしてきた「私の新潮文庫の100冊2025」も、いよいよ後半戦になってきました。夏と言えば、やはり長編小説。それも歯ごたえのある小説をガツンといきたいものです。

ここではこの夏こそ読破したい、あるいは再読したい長編小説を5作品選んでみました。まず一作目は言わずと知れたドフトエフスキーの傑作『カラマーゾフの兄弟』です。

詳しくはこの記事に譲りますが、『カラマーゾフの兄弟』という作品は、私の人生を変えてしまいました。実は「文章を書く」という仕事に、そして「編集者」という仕事になるきっかけをつくった本なのです。

この作品について言えることは「この本を読め。答えは必ず見つかる」ということしかありません。これから社会生活を迎える方、社会の中で生きづらい思いをしている方、そしてそろそろ人生をペースダウンしていこうと考えている方、すべての方におすすめしたいと思います。

そして、次につづく3冊はいずれも愛の物語です。『嵐が丘』は情念の愛と憎悪を、そして『アンナ・カレーニナ』は社会と個人の愛の悲劇を、『ナナ』は男を破滅させる宿命の女性の愛を描きます。

振り返って思いました。私が金原ひとみさんの作品を読むのは、愛の中にある光と闇の深淵をのぞき込もうとしているのかもしれないと。あなたも一緒にのぞいてみませんか。そこにはきっと、魔術的な何かが生まれるはず。

最後の長編小説は、読書で一線を越えた深淵から平常の世界へとわが身を呼び戻す意味を込めて、『海底二万里』をご用意しました。

おすすめの9 とにかく私が好きな本

最後はタイトルが示すように、とにかく私が好きな本や読みたい本にしました。本でいうとあとがきのようなものです。スイカでも食べながら、どうぞリラックスしてお楽しみください。

子どもの頃から森の植物が好きだったんですが、幸田文さんの植物エッセイ『木』は、そんな私を癒してくれる一冊です。最初の出会いは図書館。ページを開けたまま、森林浴をするようにしばし文字に見とれていたのを覚えています。そのときこころの中に見つけた輝き、それを「センス・オブ・ワンダー」と呼ぶと教えてくれたのが、レイチェル・カーソンの『センス・オブ・ワンダー』でした。

文庫化の話を耳にしたとき、もともとページ数の少ない小さな本なのに、どうやって文庫にするんだろうと考えていました。でも、編集者さんはすごいですね、まるで日本で息をして生まれたような本に変わっていました。それはまさにセンス・オブ・ワンダーとでもいうべき魔術でした。

本というのはたくさんの人のちからが合わさって、この世に生まれてくる音楽のようなものです。そして編集者とは、その音楽をまさにセンス・オブ・ワンダーであるように、調節していく調律師。

私にとってこの二冊はお守り。ただその存在を思い浮かべるだけで心が落ち着いていきます。

そして、心に幸せを注ぎ込んでくれる物語が、吉本ばななさんの『キッチン』と、リチャード・バックの『かもめのジョナサン 完成版』です。前の2冊と同じく、ときどきふと思い出して読みたくなる作品です。

次の3冊は人生という重みを考えさせられる作品たちです。妄執と戦い、貪欲と戦い、貧困の中でも輝く月に力をもらう。物語の力は、時に人を狂わせるけれども、決して見捨てることはないと思い起こさせてくれます。

31音という限られた音数の中に「センス・オブ・ワンダー」を結晶化させる文芸が短歌です。新潮文庫さんの中で歌集を探していたら、石川啄木の作品を見つけました。ぜひ短歌を読んでください。そしてもし心に刻み込みたい記憶があったなら、皆さん自身が短歌を詠んでみてください。大切なものは実はすでに持っている。そんなことに気付かされるかもしれません。

ときに病は、いのちが本来持っている「センス・オブ・ワンダー」に気付かされるきっかけを作ってくれます。うつ病を患って12年が過ぎようとしていますが、もし病に見舞われていなければ気付かなかったこと、たくさんあります。決して福音とは言えません。でも、この2冊の闘病記がみずからの12年を肯定してくれるような気がしています。

最後の一冊はやっぱり編集者の本。一人出版社である夏葉社の島田潤一郎さんのエッセイです。

編集者という仕事は、ジャンルの壁を越えどんどん広がっていっています。一方で出版という世界のパイは、どんどん小さくなっています。そんななかで、なぜ編集者は本を作り続けるのか、作家は文章を書き続けるのか。それは、出版というものが、「出版業」ではなく出版という「業」を抱えて生きるということだからです。

いまや私は出版業界人ではありません。出版社に勤めていたのはもう15年以上前。もし戯事をひとつだけ言わせていただけるなら、私は「ただ書かずにいられない、作らずにいられない」という「業」を背負い込んで生きている人間です。

こんなに長い記事を読んでくださる皆さんも、おそらく「読まずにいられない」という「業」を抱えた方々なのでしょう。私は、そして「業」を背負った出版人たちは、その期待に応えるべくボロボロになります。

ただ栄光のためでなく、その作品に輝く「センス・オブ・ワンダー」を、読む「業」を持つ読者の皆様に伝えていきたい。そして自らも輝きを生み出していきたい。

古くてあたらしい仕事をてがけるということは、畢竟そういうことなのではないでしょうか。

上下巻やシリーズがありますので、これでとりあえず100冊は越えたと思います。ただあくまで暫定版。明日リストをながめたら、あの作品を入れなきゃ! と選ぶ本が違ってくるかもしれません。

熟読した本もあれば、未読の本もありますが、選書というものがこれほどに面白いものだとは思いませんでした。かなり攻めた本も選んでいるので、新潮文庫さんの実際のリストから漏れる本もかなりあるでしょう。

でも選ぶのに迷うほどの物語やエッセイと出会うことができて、私は本当に幸せ者です。そして、こんなに長い記事におつきあいいただきまして、誠にありがとうございました。重ね重ねお礼申し上げます。もし「わたしは、この本が好き」などコメントをいただけたら、とてもうれしいです。

最後は映画評論家であった淀川長治さんの名台詞を真似て話を締めたいと思います。いやあ、書籍って本当に面白いですね。
それでは、さよなら、さよなら、さよなら。


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