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『ゲーム』 今更レビュー|デヴィッド・フィンチャーで、震えて眠れ③

サイコ・スリラーで名を馳せた完璧主義者のデヴィッド・フィンチャー。デビュー作の『エイリアン3』は本人が初監督作を否定するほどの黒歴史だった(『エイリアン』シリーズのレビューをご参照)。

だが、次作の『セブン』からは『ゲーム』、『ファイト・クラブ』とコンスタントに傑作を繰り出し、一気に注目を浴びる存在に。最近はNETFLIXとの契約のおかげでWEB配信作ばかりが続いているのがファンとしてはやや寂しいが、一気通貫に再観賞してみると、やっぱり凄い才能だと再認識。

今回はそんなフィンチャー監督作品を今更レビュー(このページはAmazonアソシエイトの広告を含みます)。

『ゲーム』 
The Game

公開:1998 年 監督:デヴィッド・フィンチャー
時間:128分 製作国:アメリカ
勝手に評点:★★★★★5.0

フィンチャーの代表作といえば、『セブン』という声が多いだろう。彼の監督作品の中で、ブラッド・ピットを三度も主演に起用していることで強い印象を与えているのかもしれない。

だが、私にとってフィンチャーの最高傑作といえば、この『ゲーム』をおいてほかにない。

落ち着きのある映像の洗練度と、最後まで真相が分からないスリリングな展開。サスペンス・スリラーとしての完成度は今なお高い。

広大な敷地の大邸宅に住む投資銀行家のニコラス(マイケル・ダグラス)が、自由気ままに生きる弟のコンラッド(ショーン・ペン)から、48歳の誕生日プレゼントにとあるものを受け取る。

「何でも持っている兄さんを喜ばせるものを選ぶのは難しいけど、僕には最高の体験だったよ」

それはCRS社が提供するゲームの招待状。だが、その会社の実態も、ゲームの内容も全く分からない。

仕事で多忙を極めるニコラスは、胡散臭そうなその招待状に関心を示さずにいたが、ある日偶然商談で訪れたビルに、CRSのオフィスが入居していることに気づき、受付を訪ねてみる。

ああ、これ以上は一言たりともネタバレすべきではない。もしあなたが本作を未見なら、ここから先の展開は、何も知らずに観てほしい。私の中では<もう一度記憶を消して楽しみたい映画>のトップランカーだ。

主演はマイケル・ダグラス。さすが『ウォール街』の男だけあって、カネの亡者の投資銀行家を演じさせると、実に似合う。

そして、高慢で堅物の兄貴と対照的に、社会常識に縛られずに生きていたい弟コンラッド役に名優ショーン・ペン。惜しむらくは、出番が少ないことか。もう少し、彼の登場シーンが多かったら、なおよいのに。

この二人以外には、失礼ながら、私には顔で名前が分かる共演者は現れなかった。だが、これは望外な効果に繋がった。

例えばニコラスにCRSの受付手続を行ったファインゴールドを演じたジェームズ・レブホーンや、後半に登場するウェイトレスのクリスティーン役のデボラ・カーラ・アンガーなどは、私には見慣れない俳優だっただけに、CRSの正体を一層謎めいた雰囲気にしてくれた。

CRSとはどんな組織で、ゲームとは一体何か。このテーマだけをブレることなく追いかけて、128分間、中だるみすることなく、映画は緊張感を持続させ、そして見事に完結させる。

この手の映画は普通、中盤でその謎が概ね解き明かされ、後半は違った展開に移っていくことが多い。ブレずに初志貫徹するような作品を撮りきったフィンチャー監督は、称賛に値する。

本作はネタバレ厳禁の作品なので、以下、くれぐれも鑑賞後にお読みいただくことをお薦めします。

感心したのは、ニコラスが初めは胡散臭いと感じていたCRSに惹き込まれていく様子の描き方だ。

偶然みつけたオフィスで、対応したファインゴールドは中華デリのテイクアウトを片手にニコラスのカウンセリング開始。まるで『ブレードランナー』のレプリカント検査みたいな質問を延々と続け、結局多忙な彼を一日がかりのテストに付き合わせる。

ニコラスは後日、CRSについて雑談している会員制クラブのメンバーに、ゲームについて尋ねてみるが、適当にあしらわれる。

「そうですね、まるで聖書の一節のようですよ。昔は盲目だったが、今は見える」

いつしかCRSに興味津々になっているニコラス。だが、CRSからの電話で、不合格だったと伝えられる。このじらされ感がいい。

そして、電話とは裏腹に、ゲームは始まる。邸宅前に置かれたピエロ人形の口の中の鍵。リビングのテレビから、お馴染みのニュースキャスターがニコラスに語りかける不気味さ。

空港でもみんなが怪しい人物に見える。ウェイトレスのクリスティーンにはワインをかけられ、その後成り行きで路上に倒れた男を救急車に同乗して病院へ。そして、病院では大停電が起き、エレベータに閉じこめられ…。

次々と遭遇するトラブルに、これがゲームなのかと気づくニコラス。窮地に追い込まれたときに、予めCRSから届けられている鍵を使ってピンチを逃れるという設定も面白い。

かなり早い段階から、彼らがヤバい連中なのではと思わせる演出になっている。それが確信に変わるタイミングは人それぞれだ。

弟のコンラッドが、連中に騙されたと騒ぎだす場面という人もいるだろう。私は、ニコラスの乗せたタクシーの運転手が、クルマを暴走させ、自分は脱出してニコラスごとクルマを海に沈めるシーンで、ここまでやったら犯罪集団だと結論づけた。

ちなみにCRSの目的はというと、彼の莫大な個人資産だ。言葉巧みに彼を誘導し、銀行口座のパスワードまで盗み出している。

ニコラスが唯一の味方と思っていたクリスティーンの家に行き、ランプシェードの裏に値札があったり、蛇口や冷蔵庫や書棚の本までセットだったりという発見で、彼女もCRSと気づく見せ方も秀逸。

もはや、彼の身の回りで起きていることは全てゲームなのだ。

絶望するニコラスはテレビのコマーシャルに、CRSで彼を受け付けたファインゴールドが出演していることに気づく。ヤツは役者だったのだ! そこから彼はCRSのオフィスをついに割り出す。侵入したオフィスのカフェテリアに、これまでの全ての登場人物があちこちで談笑している風景は衝撃的だ。

すべてが仕組まれたことだった。サスペンス・スリラーとしては、ここまでで十分満足な出来だと思う。だが、この後さらに二転三転する。

CRSのオフィスで激昂してビルの屋上で銃を振り回すニコラス。これは本物の銃だと驚くクリスティーン。

そして、扉が開いて突如現れた弟のコンラッドを、ニコラスは誤射してしまう。割れるシャンパンボトル。そう、これは弟が仕組んだサプライズパーティだった。だが、そこに待っていた悲劇。

更にサプライズは続く。弟を殺してしまい悲嘆にくれたニコラスは、そこから投身自殺を図る。

彼が高層ビルの屋上から飛び降りた一階部分には、なんと巨大なマットが置かれ、彼の行動を予期するかのように、着地点には標的マークが。そう、この発作的な飛び降りまでもが、ゲームでは織り込み済だった。コンラッドは死んでいなかったのだ。

からんでくる人物は俳優が演じており、家の中は作り物のセットだし、撃たれようが飛び込もうが、実際に死んではいない。映画が持つ虚構性を逆手にとる面白さ。

いや、CRSの仕事ぶり、まじすげえ。資産家の兄貴を喜ばすには、ここまでサプライズ演出しないとダメなのか。請求額、気になるわあ。

エイリアン3(1992)
セブン(1995)
ゲーム(1997)
ファイト・クラブ (1999)
パニック・ルーム (2002)
ゾディアック (2007)
ベンジャミン・バトン 数奇な人生(2008)
ソーシャル・ネットワーク(2010)
ドラゴン・タトゥーの女(2011)
ゴーン・ガール(2014)
Mank/ マンク (2020)
ザ・キラー(2023)

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