『エイリアン:ロムルス』 栄光と崩壊のシリーズ一気通貫今更レビュー⑦
宇宙では、あなたの悲鳴は誰にも聞こえない。無限に広がる大宇宙を舞台に、こんなにも閉所恐怖症になりそうで、しかも恐ろしいSF映画が撮れるのかと、公開当時衝撃を受けたのを思い出す。
リドリー・スコット監督を一躍ヒットメーカーに押し上げた一作目からじきに50年になろうというのに、いまだにシリーズが続いているような様子も窺える。
才能なる監督たちが入れ替わりで続編を撮っていた時代には迷走もあったが、どうにか軌道修正も果たせたか。そんなエイリアンシリーズを今更ながら一気通貫レビュー(このページはAmazonアソシエイトの広告を含みます)。
『エイリアン:ロムルス』
Alien: Romulus
公開:2024 年 監督:フェデ・アルバレス
時間:119分 製作国:アメリカ
勝手に評点:★★★★☆4.0

閉所空間SFホラーの金字塔、『エイリアン』シリーズのスピンオフ。
時系列的には、原点である1作目『エイリアン』と『エイリアン2』の間に入る作品で、リドリー・スコット監修のもと、『ドント・ブリーズ』で知られるフェデ・アルバレス監督がメガホンを取る。
サム・ライミの傑作ホラー『死霊のはらわた』のリブート作でデビューした監督だけに、この手の金字塔作品の換骨堕胎は得意なのかもしれない。
原点回帰するように、宇宙船の中に突如闖入したエイリアンに、乗組員がひとりずつ襲われていく。言ってしまえば、それだけの映画なのだが、いかに観客をハラハラさせられるかを愚直に考えて作られている。

映画は冒頭、宇宙空間で爆散した宇宙船から無人探査機が生命体の繭のようなものを持ち帰る。
船体にはノストロモ号の文字、運び込まれた研究用宇宙施設ロムルスのシステムはウェイランド・ユタニ社製。何の説明もなく、『エイリアン』の悪夢が45年を経て受け継がれていることに感動。
主人公のレイン・キャラダイン(ケイリー・スピーニー)は劣悪な植民地惑星で鉱山労働者として働く女性。
弟アンディ(デヴィッド・ジョンソン)とともに、違う惑星に転職移住する予定が、労働契約の不当延長で、まだ5~6年はここで働かざるを得ないと分かる。絶望するレイン。

さて、弟に見えたアンディは亡父が拾ってきた古い型のアンドロイド。
ウェイランド・ユタニ社製である彼のIDを使って、廃棄施設となっていたロムルスに潜入し、冬眠ポッドを盗んで他の惑星に逃げ出すことを、レインの元カレのタイラー(アーチー・ルノー)らが考えつく。
気乗りしないレインだったが、アンディとともに、昔の仲間たちの犯行に参画することになる。分かり易い導入部分。あとはロムルスの施設内を逃げ回れ。
エイリアンの恐怖に逃げ場もなく、餌食になって人生を終えてしまうのは、いつもこのような底辺層の労働者階級だ。シリーズを通じて変わることがない。そして労働者を搾取する層は、事態の重大さに気づかず、初動を誤る。
『プロメテウス』や『エイリアン:コヴェナント』はマイケル・ファスベンダー演じるアンドロイドにより人類創造に関わる哲学的な問いかけが多く投げかけられ、物語の深みとエイリアンの怖さを共存させるユニークな試みだった。
そういう作品も良いが、本作は原点回帰だから、人類のことなど何も考える余裕なく、ただひたすら逃げ回る。これもまた潔くて好感。
レインの仲間たちは、元カレのタイラーとその妹のケイ(イザベラ・メルセード)、タイラーの従弟でアンドロイドを憎悪するビヨン(スパイク・ファーン)と女性操縦士ナヴァロ(アイリーン・ウー)。
あとはアンドロイドのアンディだから、冬眠ポッド5つで、全員無事に惑星へと脱出できる計算ではある。
エイリアンについてはフェイスハガーから始まり、レギュラーメンバーが勢ぞろい。完全生命体だわ、こりゃ。と、毎度ながら感心する。
獲物の喉深くまで差し込んでくる蛇のような頭から、殺したあとにも相手を苦しめる硫酸のような体液まで、なんとも不気味な生き物だが、機能美のようなデザインにH・R・ギーガーの美的センスを再認識する。

性別や肌の色などをバランスよく配置するのは本作の常だが、今回はアンドロイドのアンディがアフリカ系というのが特徴的。更に、機械なのに鈍くさいしオヤジギャグを好むという、ゆるキャラ的な存在。
一方、ロムルスに生き残っていた、半身を酸に溶かされたアンドロイドのルークは、1作目のノストロモ号でイアン・ホルムが演じた白い汗をかく初代アンドロイドを思わせる造形。
イアン・ホルムはすでに亡くなっているが、その顔をCGで再現しているそうだ。ブラウン管に写る彼の顔が、当時の懐かしい雰囲気を醸す。
本作は1作目のリメイクではなく後日譚だが、内容的にはオリジナルの斬新さや興奮を超えるものではない。まあ、それは誰がやっても無理というものだ。
では、二番煎じの駄作かというと、そうではない。既視感はあっても、きちんとしたオマージュになっており、本質を理解しない模倣とは違う。
45年前の1作目を知らない世代は、本作の美しい映像でこの世界の恐怖と興奮にはじめて触れることになるのかもしれず、それだけでも大きな存在意義があるように思う。
エイリアンには視覚がなく、音と温度変化で敵を感知するという。逃げ延びるのに音を立てない(『クワイエットプレイス』)、汗をかかない(『ミッション:インポッシブル』)といった作品にも似たスリル。手に汗握る演出に監督の手腕が光る。
善人アンドロイドのアンディは、途中、必要があってOSのアップグレードを行うと、社畜の先輩アンドロイド・ルークの配下に置かれてしまう。これは映像的にも面白い。
もはやアンディの至上命令は、レインの保護ではなく会社の利益。仲間が敵の策に嵌って操られてしまう、科特隊やウルトラ警備隊にみられるパターンだ。
ルークが会社のために最優先しているのは、エイリアンからの合成物質の持ち帰り。
ウェイランド・ユタニ社は、エイリアンからの摘出成分で、マウスを蘇生する実験を行なっていたのだ。人間をエイリアン化できれば、過酷な環境でも労働ができるとでも考えたか。
本シリーズで妊婦がでてきたら、エイリアンを出産することになるのがお約束だが、今回の妊婦ケイはルークの口車に乗って、化合物を注射してしまう。
こうして彼女は、エイリアンと人間の合成生物を産む。超長身の怪物だ。ルークは、この化合物を「ウェイランド氏の念願を叶えるプロメテウスの火」だと表現する。
ライセンス契約上、『プロメテウス』は明示的に本シリーズの前日譚ではないらしいが、同作で創業者のウェイランドは、人類の創造主である<エンジニア>を探し求め、永遠の生命を手に入れようとしていた。

その希望の火が、この化合物なのだろう。『エイリアン4』でも、人間とエイリアンが合成した怪物をエイリアンが産み落とすのだが、こちらの方がより見た目が人間に近く、不気味度もマシマシ。
「つよい、はやい、グロい」という、エイリアンが時代を越えて守り続ける吉野家的な理念は、本作にもしっかりと受け継がれていた。
エイリアン(1979、スコット)
エイリアン2(1986、キャメロン)
エイリアン3(1992、フィンチャー)
エイリアン4(1997、ジュネ)
プロメテウス(2012、スコット)
エイリアン:コヴェナント(2017、同上)
エイリアン:ロムルス(2024、アルバレス)
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