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第5回:ヨハネ3章の「旧約の時代」の舞台はモーセからヨシュア、そしてダビデへ

◆ニコデモの登場

 ヨハネの福音書の3章を「地動説」で読むと、背後にモーセ・ヨシュア・サムエル・ダビデたちの時代が透けて見えます。ヨハネ1章がアブラハム・イサク・ヤコブの時代(第3回参照)、ヨハネ2章がモーセの時代(第4回参照)だけであったのと比べると、ヨハネ3章では時代が大きく動いています。

ヨハネ3章ではニコデモが登場します。

ヨハネ3:1 さて、パリサイ人の一人で、ニコデモという名の人がいた。ユダヤ人の議員であった。

マタイ・マルコ・ルカの福音書はニコデモについて何も書いていません。ニコデモはヨハネの福音書だけに登場する人物です。このことだけでも、ヨハネの福音書がマタイ・マルコ・ルカの福音書とは全く異なる書であることが分かると思います。この連載で何度も書いている通り、ヨハネの福音書は時空を超えた「天のイエス」を描いており、マタイ・マルコ・ルカの福音書は「地上のイエス」の生涯を描いています。地上生涯の伝記(天動説)という枠を超え、旧約から新約にいたる壮大な歴史を統べる「天のイエス」の視点(地動説)だからこそ、ニコデモの登場が必要だったのでしょう。

さて、ニコデモは律法の専門家ですから、ヨハネ3章ではまず「モーセの律法の授与」が重ねられています。このニコデモに対してイエスは聖霊の話をしていますが、それはヨハネの福音書が「旧約の時代」と「使徒の時代」を重ねた重層構造を持つ書だからです。「天のイエス」は「旧約の時代」は預言者たちに、「使徒の時代」は弟子たちに聖霊を通して神のことばを伝えていました。

「使徒の時代」については、「旧約の時代」について一通り説明した後で、詳しく解説する予定です。


◆律法の授与から40年間の荒野の放浪へ
 モーセに率いられてエジプトを脱出したイスラエルの民は、神から律法が与えられました。いわゆる「モーセの律法の授与」です。モーセの律法というと出エジプト記20章の「十戒」が有名です。しかし、イスラエルの民に与えられた律法は出エジプト記からレビ記、そして民数記にまで跨(またが)る、長大なものです。

この「モーセの律法の授与」が「旧約の時代」におけるイスラエルの民の信仰の頂点と言えるかもしれません。もしイスラエルの民が不平不満を言わずに神と共に歩めば、神と人とは最高の関係にあったと言えるでしょう。しかし、そうはなりませんでした。イスラエルの民は神に背を向けました。約束の地であるカナン入りを目前にして彼らは泣き叫びました。

民数記14:1 全会衆は大声をあげて叫び、民はその夜、泣き明かした。
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イスラエルの子らはみな、モーセとアロンに不平を言った。全会衆は彼らに言った。「われわれはエジプトの地で死んでいたらよかった。あるいは、この荒野で死んでいたらよかったのだ。
3
なぜ主は、われわれをこの地に導いて来て、剣に倒れるようにされるのか。妻や子どもは、かすめ奪われてしまう。エジプトに帰るほうが、われわれにとって良くはないか。」
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そして互いに言った。「さあ、われわれは、かしらを一人立ててエジプトに帰ろう。」

この不信仰に神は怒り、イスラエルの民は荒野を40年間も放浪することになってしまいました。


◆荒野で蛇を上げたモーセ
 モーセが荒野で蛇を上げたのも、きっかけはイスラエルの民が不平不満を言ったことでした。

民数記21:4 彼らはホル山から、エドムの地を迂回しようとして、葦の海の道に旅立った。しかし民は、途中で我慢ができなくなり、
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神とモーセに逆らって言った。「なぜ、あなたがたはわれわれをエジプトから連れ上って、この荒野で死なせようとするのか。パンもなく、水もない。われわれはこのみじめな食べ物に飽き飽きしている。」
6
そこで主は民の中に燃える蛇を送られた。蛇は民にかみついたので、イスラエルのうちの多くの者が死んだ。

恐怖のあまりイスラエルの民はモーセに懇願しました。

民数記21:7 民はモーセのところに来て言った。「私たちは主とあなたを非難したりして、罪を犯しました。どうか、蛇を私たちから取り去ってくださるよう主に祈ってください。」モーセは民のために祈った。

モーセの祈りを聞いた神は青銅の蛇を上げるように指示して、モーセがその通りにしたことでイスラエルの民は救われました。

民数記21:9 モーセは一つの青銅の蛇を作り、それを旗ざおの上に付けた。蛇が人をかんでも、その人が青銅の蛇を仰ぎ見ると生きた。

このことについてイエスはニコデモに言いました。

ヨハネ3:14 「モーセが荒野で蛇を上げたように、人の子も上げられなければなりません。」

「人の子も上げられなければなりません」とは、イエスが十字架に付けられたことを示します。罪を赦すために十字架で死んだイエスを信じるなら、その人には永遠の命が与えられます。

ヨハネ3:15 「それは、信じる者がみな、人の子にあって永遠のいのちを持つためです。」

このイエスのことばに続くヨハネ3:16は「聖書の中の聖書」とも呼ばれていて、聖書の教えを一言で言い表す中心聖句であるとされています。

ヨハネ3:16 神は、実に、そのひとり子をお与えになったほどに世を愛された。それは御子を信じる者が、一人として滅びることなく、永遠のいのちを持つためである。


◆「ヨハネ3:14=民数記21:9」の基準点
 民数記21:9とヨハネ3:14の重なりは誰の目にも明らかであり、疑う余地がありません。

民数記21:9 モーセは一つの青銅の蛇を作り、それを旗ざおの上に付けた。蛇が人をかんでも、その人が青銅の蛇を仰ぎ見ると生きた。

ヨハネ3:14 「モーセが荒野で蛇を上げたように、人の子も上げられなければなりません。」

それゆえヨハネ3:14が「基準点」となります。この基準点があるのでヨハネ3:1のニコデモの登場が「モーセの律法の授与」であることが分かりますし、次のヨハネ3:22が何を示すのかも明確になります。


◆ヨシュア記の「ヨルダン渡河」の出来事
 旧約聖書の民数記の次の書の申命記によれば、モーセはカナン入りの目前に亡くなり、120年の生涯を閉じます。そして、ヨシュアが次のリーダーになりました。

ヨシュアはイスラエルの民を率いてヨルダン川を渡り、遂に約束の地のカナンに入ることができました。

ヨシュア記3:6 ヨシュアは祭司たちに「契約の箱を担ぎ、民の先頭に立って渡りなさい」と命じた。そこで彼らは契約の箱を担ぎ、民の先頭に立って進んだ。
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主の契約の箱を担ぐ祭司たちは、ヨルダン川の真ん中の乾いたところにしっかりと立ち止まった。イスラエル全体は乾いたところを渡り、ついに民全員がヨルダン川を渡り終えた。

 

ヨハネ3章は、この「ヨルダン渡河」の出来事を22節で示しています。

ヨハネ3:22 その後、イエスは弟子たちとユダヤの地に行き、彼らとともにそこに滞在して、バプテスマを授けておられた。

ヨシュアもまた神の霊(聖霊)を受けた預言者でしたから、ヨシュアの内には「天のイエス」がいました。かつてヨハネがバプテスマを授けていた「ヨルダン川の向こう側(1:28)」から、イエスが弟子たちと川を渡って西側の「ユダヤの地」へと移動したことは、まさにヨシュアとイスラエルの民がヨルダン川を渡って荒野からカナン(ユダヤ)へと入ったことを表しています。

このヨハネ3:22が「ヨルダン渡河」を表していることには、一見すると気づきにくいかもしれません。しかし、上述の通りモーセが蛇を上げたことに言及した「ヨハネ3:14=民数記21:9」の基準点があるので、3:22は「ヨルダン渡河」であると分かります。


◆「士師の時代」から「王の時代」へ
 ヨシュアに率いられて約束の地のカナンに入ったイスラエルの民は、そこに定住するようになりました。そしてヨハネ3章はジェットコースターが坂を下るように猛スピードでヨシュア記からサムエル記へと進んで行きます。

ヨハネ3:30 「あの方は盛んになり、私は衰えなければなりません。」

これは表面的にはバプテスマのヨハネ(洗礼者ヨハネ)がイエスについて語ったことばですが、このことばの背後には「旧約の時代」が「サムエルの時代」から「ダビデの時代」へと移った出来事が隠されています。

サムエルは「最後の士師」として知られ、ダビデに油を注ぎました。そうして初代王のサウルを経てダビデが二代目の王になり、さらにダビデの息子のソロモンが王を継ぎました。そうしてダビデ・ソロモンの子孫たちが王国を引き継いで行きました。つまり時代は、「士師の時代」から「王の時代」へと移りました。

それゆえヨハネ3:30の「あの方は盛んになり」の「あの方」とはダビデのことであり、「私は衰えなければなりません」の「私」とはサムエルのことです。


◆ジグソーパズルのピースをはめる楽しさ
 なぜヨハネ3:30が「士師の時代」から「王の時代」への移り変わりを示すと分かるのか、それはヨハネ4章では時代がすでに列王記の時代に移行しているからです(ヨハネ4章は次回の第6回で詳しく解説します)。

ヨハネ3:22がヨシュア記の時代で、ヨハネ4:1が列王記の時代であるなら、ヨハネ3:30は必然的に士師記かルツ記かサムエル記の時代だということになります。この三つの書の中ではサムエル記を当てはめるのが、もっともふさわしいでしょう。

このようにヨハネの福音書を読み解く過程では、「ジグソーパズルのピースをはめる楽しさ」を味わうことができます。

「ヨハネ3:14=民数記21:9」という絶対的な基準点がありますから、前後の時代のことが次々と分かって来ます。

次の第6回からの「列王記の時代」のことも、ぜひ楽しみにしていていただきたいと思います。

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(※仕事と家族の介護で多忙なため、コメントへの返信は行いません。大変申し訳ありませんが、あらかじめご了承ください。よろしくお願い致します。)

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