見出し画像

奈良博「世界探検の旅」~東大寺とその近傍をめぐる⑬

前回はこちらです

バスで近鉄奈良駅まで戻ってそのまま南へ約850m下り、「あしびや本舗」で昼食を摂りました。
お腹を満たしただけでなく精神的にもたっぷり充電できました!

エアコンだけではなく敷地内の緑が癒しの空間となり、
なんとも涼しく快適に過ごすことができます。


さて、午後はどうしようか?
この日のメインは「五劫院」へ行く事で、あとはゆるゆるとその時の気分で決めようと思っていたのです。
暑さをしのげて楽しめるところと言えば、近くではやはり「奈良国立博物館」しか思い浮かびません。

たっぷりの休息のあと、私たちは再び意を決して猛暑の中へ飛び出しました。


人類6千年の歩みと世界の民族文化

奈良博ではちょうど特別展「世界探検の旅ー美と驚異の遺産」が開催されています。

天理大学附属天理参考館の約30万点に及ぶコレクションから厳選された作品と奈良博所蔵の仏教美術作品など、希少な作品を通して考古学や民俗学を目で観て探求できる展覧会です。

天理大学すごい!
というのが正直な感想で、素人目にも珍しいものがあるとわかりました。
初めて見るもの、あるいはテレビでしか見た事ないような異世界の作品群に、私はただただ唸るしかありませんでした。

おおまかに3つのカテゴリーに分かれてそれぞれが異彩を放ち、それは「異国情緒」という生易しいものではなく、強烈なインパクトで迫ってくるものがありました。

作品の総点数は220点!
しかもどの作品も撮影はOKなので、気になるものは撮りまくりましたが、全てを紹介するわけにはいきません。
印象に残ったものを自分のための記録として残しておきたいと思います。

文明の交差する世界

数千年前、シルクロードを介してユーラシア大陸に起こった様々な文明は東西の交流により影響を与え合いました。
その中で生まれた文化と工芸品や文字などの発達した過程が、今回の展示品から偲ばれました。
交易の様子や驚愕の技術力の進化が見られ、そこには先人たちの確かな足跡がみられるのです。

写真下中央のリュトン。
耳慣れない単語ですが、”古代の儀式や祭祀で使われる液体を注ぎ入れるための器”との事。
その多くが、動物の角や頭部を模しており、底に注ぎ口が付いているのが特徴なのですが、単純にこぼれるでしょう?
カタチ的に自立できないのを見ると、ただの飾りなのかもしれません。

三彩駱駝さんさいらくだ」は過去に大阪の「藤田美術館」でも観ましたが、こちらで見た物の方が凝っていて、体つきもどっしりしていました。
この陶器は、いかにも「シルクロード」を代表する展示品のひとつですね。

なんか西洋っぽいのですよ。
バリバリのインド風のもあったりギリシャ風のものがあったり。
いかにもシルクロード経由で東西の文化が融合した事が、仏像などから強く感じます。

着目すべきは写真左の釈迦如来立像。
注意したいのは「清涼寺」というところで、これは清凉寺のものではありません。
前回の国宝展でその本家本元はたっぷり見させていただきましたが、釈迦の本来の姿そのままと伝わり、日本の仏像の全てはこの清凉寺の物が基本となっているそうです。
これはあくまでも清凉寺の釈迦像を忠実に倣った像なのです。

兜跋毘沙門天とばつ びしゃもんてん」も過去に訪問した京都の東寺のものと比べると、似て非なるもの。
こうやって並べてみると一目瞭然で、写真右の東寺のものは平安時代に唐から請来されたもので、これを元にいくつも模造されたようで、左の今回展示はそのうちの一つです。

今回、目を引いたのはなんといってもこの中国の「鎮墓獣ちんぼじゅう」たち!
墓主を護る目的で侵入者を怖がらせようとしている姿なのですが、私には可愛くて仕方がない。
墓や建物などを護るための一対の像と言えば、やはりエジプトのスフィンクスに起源を持つ「狛犬」たちを連想し、これらもその祖先だと思うと、その進化の一端を見る事ができますね。

神々と摩訶不思議な世界

出た!
という感じで、次のカテゴリーではガラリと雰囲気は変わり、まるで異世界。

本当に不思議な世界!
私たちとは信仰のカタチがまるで違うことが一目瞭然!
世界各国の全人類が想像する「死後の世界」の捉え方が多種多様である事を痛感します。

神話、舞踊や演劇などで祭として形式化される背景には、霊的存在を信じ、神がかりともいえる「呪術」が実際に存在するのをみると、根本的な「死生観」の違いを感じます。

写真右のニューギニア島南西部のアスマット地方では「自然死」という概念はなく、「戦死」か何者かによる「呪術による悪霊」の仕業だと信じられていたそうです。
だから、常に「死」は誰かのせいであり、復讐すべきもの
呪術だなんて、そんな非科学的なと一蹴できないほどのリアルさは、彼らに根付いた強烈な「信仰のカタチ」なのです。
呪術第一主義なので「シャーマン」は欠かせない存在だったため、呪術グッズを一見するとドキリとするほど怖い仮面や装飾が多い。

写真左のバリのチャロナラン。
私は随分昔にバリを訪ねた事がありますが、こういう雰囲気の仮面や肖像が多かったことを思い出しました。
今見ると、もっと感じるものがあるだろうなぁ。

ヒンドゥー教ってそもそも「仏教」の元ですよね。
どちらもインドを起源とし、仏教はそこから派生したもの。
地域により進化の違いはあれど、双方は切っても切れない密接な関係がる事が伺えます。

紀元前3千年も前に誕生したエジプト王朝。
エジプトにも世界を創世した神々の存在があったとされる神話が存在します。
そのとんでもない長い時間は日本神話の比でなく、遥かな悠久の物語なのです。
そしてエジプト王朝が世界に与えた影響は大きく、各国に伝播された後にそれぞれに独自の進化を遂げていくのですから面白いです。
総距離は35,000kmを超えるとも言われているシルクロードは、つくづく世界の文明の発達にはなくてはならない動脈ですね。

追憶の20世紀

最後のカテゴリーでは疲れてしまって、すでに集中力が喪失していました。
それまでの展示内容があまりにも濃く点数も多かったので、「まだあるの?」というのが正直なところでした。

写真左の中国の「幌子ホァンツ」は20世紀前半頃まで北京などで使用されていた看板●●です。
看板とはいえ文字はほぼ使わず、一目で商品がわかる模型みたいなものばかりです。
これもまた去り行く20世紀の貴重な遺物となっています。

すでに四半世紀が経った21世紀の現在、私たち人類はより効率の良い暮らしを目指すとともに、その反面、姿を消したものも多い。
そして何より、これだけ多様性に富んだ国々の文化も失われてゆく現実があります。
これら全ては懐かしむための産物となり、やがては記憶の中からも消去されていくでしょう。

非効率的な生活や非科学的な信仰が、確かに存在してたことをせめて忘れずにいたいものです。


寧楽菓子司 中西与三郎

この日の〆はこちらです。

先ほどランチを食べた「あしびや本舗」のすぐお隣の和菓子屋さんに立ち寄り、二人でじっくりおしゃべりしながら涼みました。

とても落ち着いた雰囲気の心地よい空間は、暑い中を歩いたあとだけに、身に染みるほどありがたかった。

それにしても、つきふねさんはこのあたりの地理に詳しく、目的地までのルートに迷いがありません。
彼女の頭の中には、最短距離を一発で検索できる特殊能力が備わっているようです。
私は関西人のくせに、まだまだこのあたりの地理には未熟だというより、元来持っている方向感覚自体にも差があるようです。

この暑い中、つきふねさんがいなかったら、私は効率の悪い移動をして疲れは倍増していたことでしょう。
そう考えると心から感謝です✨


画像クリックでGooglemap
実際に歩いたルートは違うかも💦


いいなと思ったら応援しよう!

千世(ちせ) サポートいただけましたら、歴史探訪並びに本の執筆のための取材費に役立てたいと思います。 どうぞご協力よろしくお願いします。