【いつか語ってくれた話の続きをしよう】ななし的名盤解説#11 フジファブリック『TEENAGER』
こんにちは。ななしです。
本日は、予告していた通り「フジファブリック月間」の一発目の記事をアップします。4500字あります!それだけの熱をもって、皆様にこのアルバムの魅力をお伝えしたい!それではいきましょう!
『TEENAGER』基本情報
・リリース:2008年1月23日
・レーベル:東芝EMI
・前作から2年2ヶ月ぶり、3作目のアルバム
・全13曲入り
・「Surfer King」、「パッションフルーツ」、「若者のすべて」は、シングルリリースされている
・サポートドラマーとして、城戸紘志が参加
アルバム全体解説
このアルバムを聴いてまず思うことは、「変な曲が多すぎる」だと思うんですよね。フジファブリックの中で一番有名な「若者のすべて」が収録されているアルバムがこれで、初めて聴く人は驚きでひっくり返ってしまうかもしれません。
ただ、私としては、若者のすべてだけでなく、アルバムとしてちゃんと聞いてほしい、他の楽曲も知ってほしいという願いがあります。
アルバムという媒体が、一般リスナーから音楽好きのためのものになって久しいですが、フジファブリックの真髄はストレートな楽曲と変な楽曲を、アルバムで同時に聴くことによってようやく理解することができます。
Apple Musicの解説文には、『志村正彦がかねてから関心を持っていた、若さや時間の経過というテーマ性を持つメジャーでの3作目』と書かれています。
この「若さや時間の経過」というテーマだけだと、ありきたりなものが作られそうです。しかしながら、志村正彦は「脳内でおきる妄想」を音楽という形で付け加えています。ここが志村正彦の極めて優れている点なのです。
志村正彦のセンス大爆発
さて、「脳内でおきる妄想」という部分は、メジャーデビュー前から、垣間見えることができます。例えば、インディーズ時代にリリースした『アラモード』に収録されている「花屋の娘」がそれです。このような「脳内でおきる妄想」というのが、一旦の完成形を見るのが、本作『TEENAGER』です。
私が考えた、『TEENAGER』に収録されている妄想性のある楽曲を以下列挙してみます。
「B.O.I.P」、「Chocolate Panic」、「Strawberry Shortcakes」、「Surfer King」、「パッション・フルーツ」、「東京炎上」、が該当します。
13曲中7曲に妄想性が含まれているわけです。他のアルバムと比較しても群を抜いています。
志村正彦の妄想性は、基本的に自信のなさからくる後ろめたさを感じつつも、「女性に打ちのめされる」ということに喜びを感じるというものです。
志村正彦は基本的に冴えない男と変態性を演じてきたのです。本作でいえば、「B.O.I.P」、「Chocolate Panic」、「Strawberry Shortcakes」、「Surfer King」、「東京炎上」「パッション・フルーツ」が該当します。若干卑下しつつも、それを受け入れるというMっぽさがあるわけです。
考えると、「妄想」はその人の人となりが一番出る部分です。夢であれ、恋愛関係であれ、自分自身の欲望や願望が一番出る部分だからです。
現実に行動してしまったら、社会的に良くない行動でも、妄想をする分には、許されるわけです。だからこそ一番素直な気持ちが出やすいです。また、人には喋りにくいものです。
その妄想を、余すことなく赤裸々に音楽という媒体を使って、全世界に発表するという勝負を志村正彦は行ってきたのであり、他のバンドとの差になるわけです。
これまで志村正彦が取り組んできた、他のバンドと差を出すための取り組みの一つであり、頭の中にあるマゾヒズムを遺憾なく音楽に昇華させ、ユーモアたっぷりに演奏している点が、本作の優れた特徴になっています。
では、女性に翻弄される自分をどこか楽しんでいるようなユーモアだけで、アルバムが構成されているのか。この質問に対しては全くそうではないという回答をすることができます。
永遠の若者性の獲得
13曲中の6曲は「妄想性のある楽曲群」に割り振りませんでした。それはなぜかというと、普遍性があるからです。どのような普遍性かと言いますと、「風景・情景と一緒に思い起こされる若さ」というものです。
では、私が思う「普遍性」のある楽曲を以下列挙します。「記念写真」、「ロマネ」、「まばたき」、「星降る夜になったら」です。(「ペダル」「若者のすべて」、「Teenager」に関しては後述。)
これらの曲は、演奏も歌詞もこねくり回していません。どちらかというと素直な楽曲であると言えます。素直に少年時代の心象や、相手を思う気持ちを歌っています。
普遍性のある楽曲の方が妄想性のある楽曲よりも少ないですが、かえって普遍的な歌詞や演奏がストレートに入ってくる効果を生み出しています。例えば、「ロマネ」が「若者のすべて」の後に流れてきたら、それはそれで合うかもしれません。しかし「Surfer King」という、なんでもありのヘンテコな曲の後にあるからこそ、「本音」をより深く聴いている感覚に陥るわけです。
「妄想」を喋ることも恥ずかしいような気がしますが、「素直」な気持ちを喋ることよりは簡単かもしれません。なぜなら、「また冗談を言ってるよ」で済むからです。軽く流せるのが「冗談」であり「妄想」ですが、「本音」は言う方も受け入れる方も勇気がいるものです。
「妄想」と「本音」の駆け引きがおもしろくもあり、また経験の浅い「若さ」を象徴するものでもある気がします。
この若さを、哀愁を漂わせながら懐かしむのが「ペダル」であり、「若者のすべて」であり、いつまでも若くいたい、今を楽しみたいと思うのが「TEENAGER」なのです。この三曲に関しては、「達観した大人が新たな楽しみを見つける」曲であり、また違った種類の普遍性だと思います。
結局のところ、「妄想性」「普遍性」という二つの性質を「若さ」や「時間の経過」というテーマに落とし込んだ、なんでもありのバラエティパックがこの「TEENAGER」というアルバムなのです。私はこのアルバムが、フジファブリックにとって最高傑作であると強く信じています。
個別楽曲解説
今回「若者のすべて」に関しては紹介しません。「若者のすべて」に関する私の考えは、以下の記事に記載されていますので、もしよろしければ以下の記事も読んでみてください。
・ペダル
この曲の広がり方が好きです。アコースティックのギターから始まり、ギターのレイヤーを何重にもかけて、ゴージャスに曲が進行していく様は、まるで幼少期の頃の、街に出るだけで何かしらの発見があった時を思い出させます。
田んぼの畦道をガタガタ走りながら、カエルを見つけたり、入道雲が果てしない空に向かってもくもく広がっていたりする景色が見えます。大人になった今よりも間違いなく世間は狭かったのに、それが楽しかった頃の面影を思い起こさせます。
そして、ひとしきり盛り上がった後、ちょっと苦笑いしながら、こういうのです。
そういえばいつか語ってくれた話の
続きはこの間 人から聞いてしまったよ
ここで分かるのは、引用した歌詞が来る前は「昔話」の盛り上がり方だったのです。
「生まれた場所」を想像したり、誰かと一緒に歩いたりしながら、「大人になった視点」で話をしています。
大人になったら、どれだけ一緒にいた人でもある程度は疎遠になってしまいます。この淋しさが上手く表現できています。
・B.O.I.P
本曲は、私が例に上げた「妄想性」のある楽曲の一曲ですが、なんと作曲者は志村正彦ではありません。ギターの山内総一郎が担当しています。編曲は全員でやっているはずなので、普段と変わらない「妄想性」のあるへなちょこロックになっています。
B.O.I.Pとは何か。BATTLE OF INOKASHIRA PARKの略です。
バトルっぽく、ぐるぐる回るギターと、どっしり構えながら確実に慌てさせてくるベース、おちょくってくるかのようなキーボード、ずっと走るドラム。
これらの楽器隊が聴き手に、まるでいたずらをしているかのような気分の高ぶりを催させます。
歌詞はまるでわかりません。語感の良い言葉を入れ込んでいるような気がします。
男子高校生が悪友とふざけ合っているときのハラハラ感もありますし、男女との駆け引きの感じもあります。後者の場合は、語るのは野暮なのでやめておきます。
まあ、男という生き物はくだらない事でガチになります。それがかけがえのない思い出だったりするわけです。そんな感じの曲です。
・ロマネ
多分「ロマネコンティ」からきていると思われます。また、Queenの「We Will Rock You」のフレーズが使われており、参照元が分かりやすい楽曲です。
曲自体は、本音を言えない弱い男の素直な独白といった印象です。一番は素面で悩んでおり、二番はワイン(ロマネコンティ)を飲んで気が大きくなってますね。
一番では眠れなくなるほど悩んでいたのに、2番では、怖いものなんか一切なく、でかいステージで拍手喝采を受けているようです。酒の力は絶大です。
どれだけ大きくなっても、「君」が大切だそうで、すべてさらけ出したいようです。すべてさらけ出すには、お酒の力を借りなければならない。素直な言葉を素面でいうのはなかなかハードルが高い。
だけれども、こうやって音楽に乗せたら嘘も本当もさらけ出せるようです。一体「君」と「音楽」どっちが好きなのか分かったもんじゃない。こういわれたら、解答に困りそうです。眠れなくなるほど回答に悩んで、酒を飲んで答えを言えばいいのです。そんな感じの曲です。
・星降る夜になったら
志村正彦にしては珍しく、ストレートでキザな恋愛ソングです。普段だったら、「君を迎えにいく」なんて絶対言わないでしょう。嘘みたいな曲です。
この曲はやはり、ドラムとキーボードがいいですよね。疾走感のある高速シンバルと、間奏の星が落ちてきそうなキーボードのキラキラした音。さわやかな音で、真夏でもこの曲を聴きながら歩けば、少しは涼しくなるかもしれません。
志村正彦は、「夏」が大好きみたいです。今日7月10日が誕生日ということで、夏生まれでもあります。また、志村は野球少年でもあり、野球のシーズンと言えば夏でしょう。また、生まれ故郷の富士吉田は、寒い地域でもあるので、冬が好きではなかったのかもしれません。夏に志村正彦の喜怒哀楽が詰まっている気がします。夏の喜びを表すのが本曲だと思います。
ちなみに、一部分をキーボードの金澤ダイスケが作曲しております。本作『TEENAGER』は、志村主導ではありますが、メンバーの息ががっちりあってできた作品でもあります。一番それが分かるのが本曲だと思います。
終わりに
さて、今回はフジファブリック『TEENAGER』の名盤解説をお届けしました。個人的に思い入れのあるアルバムですが、ここまで掘り下げたことがなかったため、書くのに結構苦労しました。が、何とか形になってよかったです。本作の魅力がより伝わればうれしいですし、面と向かって聴いたことのなかった人は、ぜひこの機会に聴いてみてください。聴いた感想、本記事の感想などを寄せてくださったらうれしいです。
今月は、フジファブリック月間として、できるだけ毎週金曜日にフジファブリックに関する記事を配信したいと考えています。本記事を読んで、次回も気になる!という方がいましたら、ぜひフォローしてお待ちください!それでは次回の記事でお会いしましょう。
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