党首討論の大人の会話での高市総理
期待の中で行われた党首討論は、3人の代表とのやり取りに主な論点が凝縮されています。それぞれの議論を振り返りつつ、高市総理のユニークな答弁の姿勢について考えてみます。
まず、国民民主党の玉木代表とのやり取りです。玉木氏は、食料品の消費税率を引き下げるタイミングについて、状況の悪化を想定して2年待つべきだと提案しました。また、骨太の方針の原案公表後に長期金利が上昇した、いわゆる骨太ショックに触れ、政府や日銀にインフレを抑える意思があるのかと問いかけました。これに対し高市総理は、閣議決定前の一文書で市場が反応するわけがないと一蹴し、今は経済成長のエンジンを吹かすチャンスだと強気に語りました。
次に、中道改革連合の小川代表との議論です。小川氏は、皇室典範の改正法案や衆議院の議員定数削減法案について、与野党が対立したまま数の力で押し切る姿勢を批判し、少数政党を含む幅広い合意形成に努めるよう求めました。高市総理は、皇室典範については従来の答弁通りとし、議員立法の進め方については総理の立場では答えられないと回答を避けました。
そして、公明党の竹谷代表とのやり取りです。竹谷氏は、高市政権の積極財政が歴史的な円安や物価高を招いていると指摘しました。その上で、予備費の2.5兆円を使って家計や中小企業への支援を直ちに行うべきだと迫りました。しかし、高市総理は、これが自分たちの政策による円安なのか分からない、私のせいではないと主張し、経済を強くすることこそが困っている人を助ける道だという持論を繰り返すにとどまりました。
ここからは、今回の討論で見られた高市総理の姿勢について、少し客観的かつユニークな視点で解説してみます。
もっとも印象的だったのは、円安と物価高に対する高市総理の驚くほどのスルー技術です。1ドル162円という歴史的な円安水準や、スーパーの棚で次々と値上がりしていく身近な食料品を前にしても、高市総理のスタンスは一貫しています。高市円安だなんて言われてもそんなの私には分かりません、私のせいではありません、というものです。
これはまるで、部屋の中で大音量で音楽をかけて近所から苦情が来ているのに、このスピーカーの性能が良すぎるだけだし、私がうるさくしているわけではない、と耳を塞いでいるかのようです。家計のやりくりに頭を抱える国民に対して、大丈夫、今はとにかくエンジンの回転数を上げてアクセルを全開に踏み込む絶好のチャンスだから、と、燃料切れ寸前の車を猛スピードで走らせようとするような、不思議な気合いと精神論で乗り切ろうとしているようにも見えます。
また、皇室典範改正案を衆議院の数の論理で押し切ろうとする姿勢も独特です。これだけデリケートで、国民の間でも意見が分かれる皇室の未来という大問題に対して、国会での丁寧な話し合いや合意形成は後回しにされている印象を受けます。最後は多数決のボタンを連打して勝てば問題ない、というシンプルで割り切ったゲーム感覚のような進め方です。
小川氏から数の力で押し切るなと突っ込まれると、これは議員立法の話だから総理大臣の私に聞かれても答えられません、と一蹴しました。都合の良い時だけ総理の仮面と党首の仮面を器用に付け替えて、軽やかなステップでかわしていく徹底ぶりです。
このように、目の前の現実の厳しさや他者からの具体的な批判を、すべて熱い気合いと巧妙な役割分担で受け流していく姿は、どこかシュールでもあります。ある意味で、絶対にブレないエンターテイナーのような強さを感じさせる討論でした。
