見出し画像

大学職員に転職して「得たもの」

前回の記事では、「失ったもの」について書きました。

転職は、何かを手に入れる行為であると同時に、それまで当たり前に持っていたものを手放すことにもなる。という点は前回の結びで触れた通りです。

では、大学職員に転職して、実際に何を得たのか。

きれいに整理できるようなものばかりではありませんが、振り返ってみると、確かに変わった感覚がいくつもあります。

今回は、そのあたりを少しラフに書いてみます。

たぶん、これを読むと大学職員になりたいと思う人が増えると思いますが、あくまで私個人の感覚での話ですので、参考程度にとどめてください。

また、大学や部署によって状況が変わりますので、過度な期待も禁物です。



①「仕事振り回されなくなった」という感覚

大学職員に転職して、戸惑ったのは、仕事の“重さ”の感覚がこれまでとかなり異なるということでした。

転職なので当たり前なのですが(笑)。

誤解を恐れずにいうと、前職と比較して、仕事の難易度が下がったということです。

もちろん、だからといって卑下するわけでもなく、手を抜くないたり、侮ったりすることは決してありません。

窓口に立てば、その場で判断を求められますし、ミスが許されない緊張感漂う場面も普通にあります。

ただ、それでもなお感じるのは、「背負っているものの質が違う」ということです。

前職では、

• 判断一つで大きな損失につながる
• 数字や成果が常に評価に直結する
• 外部との関係で仕事が大きく左右される

といった、常にどこか張り詰めた状態がありました。

それに比べると、大学の仕事は、

• 影響範囲が限定されている
• 業務の多くが学内で完結する
• 極端なリスクを背負う場面が少ない

という特徴があります。

言い換えると、

どこかで「取り返しがつく」範囲の中で仕事をしている感覚に近いです。

が、いい加減にやっていいという意味ではありません

ただ、常に気を張り続けなくてもいい状態であることは確かです。

そしてこの違いは、日々の働き方にも影響します。

前職のように、「まだやれる」「もう少し詰められる」と無理に引き延ばすのではなく、
ある程度のところで区切りをつけて帰る、という判断がしやすくなりました。

休みについても同じで、業務の見通しが立てやすい分、無理なく取れる。

結果として、

仕事に追い込まれている感覚がかなり薄くなりました。

少し言い方を変えると、

「仕事に振り回されたり、悩んだりする感覚が減った」とでも言うべきかもしれません。

この感覚は、実際に入ってみないと分かりにくい部分ですが、転職して得られた変化の中では、かなり大きいものの一つです。



②「目立たない仕事」をそのまま受け止められるようになったこと

大学職員の仕事は、うまくいって当たり前という側面があります。

つまり、問題が起きなければ、それでいい。
それが求められている状態です。

前職では、同じことをやっていればライバルに市場を奪われる、追い越されるいつ焦燥感に駆られ、新商品や新システムなどを次々と立ち上げ、世に送り出す。

そうすることで成果が見えやすい分、評価も分かりやすかったのですが、今はそういう分かりやすさはあまりありません。

だからといって、モチベーションが下がるかというと、少し違います。

いつの間にか、「評価されるかどうか」と「やるべきこと」を切り離して考えるようになっていました。



③安心して「今日はここまで」と言える日がある

転職して一番分かりやすかった変化は、これかもしれません。

一日の終わりに、「今日はもうおしまい!さて帰るか」とすっきり割り切れる日が本当に多い。

当たり前のようでいて、前職ではあまりなかった感覚です。

前職では、後ろ髪引かれるような、まだやることはたくさんあるが、疲れたし、、と言ったような後ろめたい気持ちで職場を後にしていた日がほとんどだったような気がします。
それが当たり前過ぎて、麻痺していたのかも知れません。

もちろん忙しい時期はありますが、毎日が延長戦のような状態ではない。

なので、転職したての頃は、本当に拍子抜けしました。

もう帰っていいのか」と。

まだ外が昼のように明るい時間に退勤して駅までの道を歩いている。
とてもソワソワする。。

晩御飯の時間まで何をしようかな、、、

なんて今まで考えたことが無かったので衝撃でした。

しばらくはそんな帰り道に慣れるのに随分時間がかかりました。

でも、この区切りがあるだけで、仕事との付き合い方が劇的に変わりました。

一日の仕事に“終わり”があるという安心感は、自分の生活を豊かにしていく上でとても大事なポイントでした。



④「先が読める」働き方

大学の仕事は、年間の流れがある程度決まっています。

入試、オープンキャンパス、定期試験期間、新入生の受け入れ、各種行事、等々。

毎年だいたい同じタイミングで同じような波が来ます。

つまり、忙しさに“予測”がつきます。

そしてこの波はよほどのことが無い限り変わらない。

これが意外と大きい。

前職では、「いつ落ち着くのか分からない」という状態が続いていたので、先が読めるだけで気持ちの負担はかなり違います。

私はこれが大学職員が働きやすい環境だといえる真髄なのではないかと思います。

「ここを乗り切ればいい」と思えるだけで、かなり楽になる(私は楽になった)。

この“波”の話は、別の記事でも触れていますので、興味があるかたは是非こちらもご覧になってみてください。

参考)

波が読めるので、旅行の計画も立てやすいし、休みも取りやすい。
これはほんとにありがたい。



⑤「何もない時間」を受け入れられるようになったこと

これは少し意外だった変化です。

学生の長期休暇中など、業務が落ち着く時期があります。

本当に落ち着きます。特に学生対応部署だった頃は、窓口に学生が来ないので、通常時の 業務の半分以上がカットされます。

時間が空くので、先々の業務を先回りして済ませようとしても他部署が関わる業務だと、着手できる時期が決まっているので、どうしようもないものもあります。

これらの業務ついてできることは、せいぜい考えて予習しておくことくらいです。

最初の頃は、この時期の時間の使い方に困りました。

何かやるべきでは?」という焦りが抜けなかったからです。

ただ、やはりその環境にも徐々に慣れていくもので、何も詰まっていない時間があること自体に、あまり違和感がなくなりました。

むしろ、その余白があることで、普段見落としていた業務の穴や欠点に気づけたりもしますし、家族と思いっきり時間を過ごすことができる大切な期間にもなったからです。

仕事で忙しくしている=組織での存在価値」ではないと気づけたことは、自分の仕事観を変えるだけではなく、どうやって生きていきたいかを見直すきっかけにもなりました。 



⑥「働き方と給料の“釣り合い”に納得できるようになった」

あまり大きな声で言う話でもないですが、ここは正直に書いておきます。

私が勤めている大学の給料は、私立大学の中では標準くらいだと思いますが、世間的に見て「すごく高い」というわけではありません。

ただ、それでも今の自分の中では、「この働き方なら、この給料でも十分納得できる」

という感覚があります。

転職前は、どちらかというと逆でした。

• 業務量が多い
• 残業時間も読めない
• 突発対応も多い

それでも給料が見合っているのか、正直よく分からないまま働いていた感覚があります。

一方で今は、

• 繁忙期と閑散期のメリハリがある
• 業務の見通しが立つ
• 極端に負荷がかかり続ける状態ではない

といった働き方になりました。

たとえば、学生の夏休み中は業務が落ち着く時期なので、8月、9月は週に2,3日しか出勤しないという時代もありました。

そういう日がある中で給与明細を見ると、

「あれ、これでこの額もらえるのか」

と感じることがあるのも事実です。

もちろん、仕事が楽だと言いたいわけではありませんし、責任が無いわけでもありません。

ただ少なくとも、前職で抱いていた

「これだけやっているのに、この給料か」という不満はなくなりました。

これは、自分の中では大きな変化でした。

結果として、

労働と報酬のバランスに対して、変に引っかかることがなくなりました。

むしろ、こんなにもらっていいのかな?と思う瞬間さえあります。

以前はどこかにあった“モヤっとした違和感”が、今はかなり薄くなっています。

この「納得して働けている感覚」は、数字以上に大きいものかもしれません。

ただし、注意があります!

これは私が、転職、つまり中途採用者という他所から来た者だからの感覚であって、プロパーの職員は、この水準が当たり前なので、彼らと私とでは感覚が違うと思います。

その感覚の違いを受け入れられない他所者は、いずれイライラして疲弊していくのだと思います、、、。



⑦「出張が嫌じゃない」こと

これは完全に個人的な感覚ですが、少し書いておきます。

入試業務の関係で地方都市に行くことや、他大学の視察であったり、合同研修会であったり、学会の関係や、学生の引率など出張は様々です。

前職の出張は、成果を持ち帰るのが当たり前。

だからこそ出張手当や交通費が支給されるので、負担のイメージが強かったのですが、今は当時ほど重く感じません。

むしろ軽い。
出張に行きたい。

前職での過酷な海外出張や、展示会運営の出張などを思うと、「この程度の内容で出張扱いなの?」と思うような出張も何度かありました。

業務の性質もありますが、環境が変わるだけで、同じ「出張」でもこうも違うのかと思いました。

過去にあったストレス・不安が、確実に減っていったという実感があります。

大きな声では言えませんがね、、、。



⑧「最後はなんとかなるだろう」と思える安心感

大学の仕事をしていて感じるのは、いい意味で「崩れにくい環境」だということです。

たとえば、民間企業にいた頃は、

• 取引先の都合で案件が突然止まる
• 売上が立たなければ評価に直結する
• 外部環境の変化で仕事そのものがなくなる

といった、“自分ではコントロールできない要因”に振り回される場面が少なくありませんでした。

一方で、大学の仕事はどうかというと、もちろんトラブルがゼロなわけではありません。

学生対応でイレギュラーが起きることもありますし、教員との調整が難航することもあります。

ただそれでも、

• 業務の多くが学内で完結する
• 最終的には組織内で判断
・調整ができる
• 極端に外部要因でひっくり返ることが少ない

という特徴があります。

たとえば、何か対応に迷うことがあっても、

• 上司に相談できる
• 過去の前例を確認できる
• 他部署とすり合わせができる

といった「逃げ道」がきちんと用意されていて、結果として、

「どうにもならない状況にはなりにくい」という感覚があります。

特に転職を考えている方にとっては、 仕事が回らなくなる不安や、 責任を一人で背負わされる不安といった点が気になると思いますが、大学職員の仕事は、どちらかというと「組織で支える前提の仕事」だと私は捉えていますので、安定感があるように思います。

ただし、ここは誤解されやすいので補足しておきます。

大学という組織そのものが、将来にわたって安定しているという意味ではありません

少子化の影響は確実にありますし、大学間の競争も年々厳しくなっています。

廃校の危機に瀕している経営状態が厳しい大学があるのも事実です。

あくまでここで言いたいのは、「日々の業務レベルでは、極端に崩れにくい構造になっている」という点です。

この“日常の安心感”と、“組織としての将来性”は別の話です。

その両方を切り分けて考えられるようになったことも、一つの変化かもしれません。


派手さはありませんが、この安心感は、長く働くうえではかなり大きいものだと感じています。

興味がある方はこちらもご覧ください。
参考)



おわりに

こうして並べてみると、本当に大学に転職して良かったなとしみじみ思いました。

「得たもの」は分かりやすいスキルや成果ではなく、感覚や前提が少しずつ変わっていった、というものばかりです。

ただ、この変化は確実に積み重なっていて、その効果はじんわりと私の生活に「余裕」と「豊かさ」をもたらしてくれました。

もちろん働き方そのものにも影響しています。

そして当然ながら、これらは前回書いた「失ったもの」と引き換えに手に入れたものでもあります。

スピードを手放したからこそ得た余裕

成果主義を手放したからこその納得感

どちらが良いかは、人によると思います。

ただ少なくとも、転職前に思い描いていたものとは少し違う形で、今の働き方は成り立っています。

そのあたりも含めて、参考になればと思います。

機会があれば、大学職員に転職した者が、また転職する(できる)見込みがあるかどうか?についても考えてみたいと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました。

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集