宇宙のプロポーズを数えた日
↓この話の続きです。
朝9時過ぎから欠け始めた太陽が、いよいよ皆既日食に入る。
辺りが急に薄暗くなり、ヒンヤリする。
鳥たちが「何事だ!?」と鳴き叫んでいる。
そして。
「3、2、1、ゼロ」
皆既日食に入った。
「1、2、3、…」
中心食に入るとカウントアップに変わる。
俺のカウントは続く。
世界が闇に包まれる。
古代の人たちは、さぞかし怖かったことだろう。
団員の観測が真剣味を帯びる。
一度しかないチャンス。
「ああ、これが」
ダイヤモンドリングが見える。
宇宙のプロポーズ。
コロナ。
黒い月の向こうから光が乱反射する。
そして再びダイヤモンドリングが現れ、皆既日食が終わる。
3分41秒。
世界が光を取り戻す。
安堵の空気が流れ、どこからともなく拍手が巻き起こる。
俺のカウントも終わる。
泣いている先輩がいた。
宿泊施設を離れ、みんなでシュラスコを食べに行った。
巨大な鉄の串に牛肉が刺さり、それを剣で削ぎ落とす。
焼き鳥の親分。
おそらく焼き鳥をいじめると、シュラスコが仕返しに来るのだろう。
そんな妄想をした、幹夫20歳。
パラグアイを後にし、帰路はハワイに寄った。
マウナケア天文台。
標高4,200メートルで、富士山よりも高い。
万年雪が残る中、オフロードカーで登っていく。
俺だけがシートベルトをしている。
当時から慎重派だった、幹夫20歳。
成田空港での解団式。
団長の教授が「この経験は宝だ。今は分からないかもしれないが、君たちは何十年も経ってから、その価値に気づく」と言っていた。
当時の俺は「またまたー」と思っていたが、31年経った今では、「その教授は予言者か!?」と思う。
たしかに宝だ。
その後家族旅行で香港、姉の結婚式でハワイ、大学のサークルの卒業旅行でグアムに行ったが、それ以降海外から遠ざかっている。
パラグアイ?
そりゃあ、なかなか行けない。
でもこうやって振り返ってみると、また海外に行きたくなった。
別にパラグアイでなくてもいい。
イースター島に生モアイを見に行きたい。
人生は一度きりなので、行きたい場所に行きたい。
「自分の土地」というのは、固定資産税を払ってる自宅敷地ではなく、地球全体である。
時間とお金をやりくりすれば、どこにでも行ける。
生活費や教育費の都合があるので「じゃあ今すぐ海外へ」というわけにはいかないが、今から貯蓄や投資をして、行けるようになりたい。
とりあえず来月、伊豆に温泉旅行に行く。
