邪道作家 濃縮まとめ


邪道作家縦書き全巻・人気分まとめ
※グーグルプレイブックス対応
性的描写・過激要素有 暴力・欲望・犯罪行為 有
改革案・アプリビジネス化まとめ付
新規用 全巻序文まとめ(23巻まで)
全記事 時系列

邪道作家
テーマ 非人間讃歌
ジャンル 近未来社会風刺ミステリ(心などという、鬱陶しい謎を解くという意味で)
簡易あらすじ
作られた魂であるアンドロイドが「夢」を見る時代───邪道作家である「私」は物語産業に食い込むアンドロイドに追いやられ、殺し屋としてサムライの仕事を続けていた。しかし、そこに一つの依頼が高額な料金と共に舞い込んでくる。
喜び勇んで殺しに向かうものの、現地で予想外の襲撃に遭い••••••案の定依頼には裏があるのだった。
そして、アンドロイド・妖怪・人工知能へ、非人間の殺人鬼作家が取材に挑む!!
その結末は─────


第一巻 天上天下唯我独尊、それ即ち金を超える
縦書き電子書籍
グーグルプレイブックス対応 noteアプリ非対応・ネット推奨 栞機能付(右上)
続刊23冊
18禁小説 邪道勇者第一巻 金と女と狩りが為に


ジャンル 犯罪ファンタジー?

前書き
この物語はおひねり制だ。金のない奴は読むんじゃない。
美人に興奮(男女問わず)し、その対価として金貨を投げられる紳士だけ読むといい。
無論、作品の「悪意」だけは保証しよう。
少なくとも、人類史史上、過去未来現在において「並ぶもの無し」と、断言できる出来なのは確かだ──────他にいるなら連れて来い!!!
簡易あらすじ
仕事に精を出しただけなのだが、平たく言えばサツには嫌われ衛兵に物を投げられ若い女に手を出そうとすると、エルフ耳の青髪娘にゴミを見る目で見られる物語だ。
───分かり易いだろう?

ヒロインAIイメージ画像
犬千代

無理矢理「お嬢様」風に着飾られて、羞恥に身をよじる姿と考えればわからなくもない。実際、苦手にするのは見れば明らかだ。
私が言うんだ、間違いない!!!
ハイム

本文

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人妻に手を出す。他に何がある?
世界を救うなどというのは、当然の事だが利益を求める組織都合だ。純粋にそんな妄言を信じる奴がいるなら頭の病気を心配しろ。
無論有料だ、金は貰う。
黄金色のお菓子も用意せずにやれ「悪辣なゴブリンを殺してくれ」だの「エルフの知性は脅威だから殺すべきだ」などと言われたところで、それが私の懐事情に影響する部分がどこにある?
当然、金、女、そして名声の為にこそ、喚く異生物を殺す価値がある。
私に言わせれば、金にならない殺しなど遊びだ••••••大義の為だとか世界の平和だとかほざく暇があるなら金を寄越せ。相手が人間でもエルフでもゴブリンでもドワーフでも、何なら神でも仏でも魔性だろうと皆殺しにしてやる!! 大体が世界が平和になってしまうと、私は指名手配犯で死刑だろう。
その自覚はある。安心しろ!!
とはいえ、そこはそれ。自覚した上で紛争に介入し、殺しで利益を得るのが私には都合が良いというのは確かなようだ••••••200年前の大戦争から人間は非人間種族を奴隷として活用してきたが、そういう意味では見た目だけでも、人間として生まれてきたのは朗報と言えた。
中身は全く別物らしいが、安心しろ!! 人間は表面だけしか決して見ない。
実際、エルフにも良い女は沢山いるので絹の如きスカートの触り心地から始まり、太ももを味わい蜜を拭う。それら男なら歓迎すべき経験のない人間種族の男というのがどれだけ多いことか!! 思うに、人間がどうのほざく前に、雄として使命を果たした方が良いんじゃないか?
この200年の間に幾度となく連中は反旗を翻してきたが、恐らくは私のように女を愛する勇猛果敢な殺人鬼の手によって人類は勝利を掴み取り続け、今日の体制があるわけだ。理解したか? 無論、連中から吸い上げた文明力資金力人材力により、私が今いる大江戸絢爛魔界と呼ばれる木造建築物溢れる南の町には港には船が並び商店街には和気藹々とした歓声に溢れ、その一方で貧困街••••••今まさに私がいる場所なのだが、においてはひったくりが横行しエルフの女に夜中に刺され(かけたが何とか鼻骨に拳をプレゼントした)盗品の売買に精を出す不埒なエリンジェットというゴブリンには値切り交渉を打ち切った。
勘違いされる前に言うが、私は女性差別に興味はない。むしろ、どこでも同じだ。わかりやすく表に出る差別に女が多いだけで、実際男奴隷は非常に多い。そういう連中を好き好んで飼うのはむしろ「女性の権利解放団体」の責任者だったり「高潔な政治理念により体制を変える」と言い張る政治家だったりするのだから、彼らが如何に若い少年少女に乗っかるのが好きかを実際に見せてやりたいものだ。
どこでも「同じ」だ。権威があれば、許されると思い込む。
そんなものだ。生憎私に権威などあった試しがないので何が楽しいのかは知らないが••••••楽しいと言えばむしろ、そういう連中を強盗のついでに助けたりすると、連中は好き好んで私の犯罪を手伝い嬉々として人間を殺し出す。不思議な事に私が「同じ人間だ」と、何度も教えても誰も信じようとしないが••••••中には失礼な輩もいて「貴方は、人間社会に混じった邪悪、我々に味方する悪魔だ」などと小娘のくせに言い放った。
失礼な女だ。たかが悪魔と一緒にしないで貰いたい。
私は己の利益の為なら人類社会の未来だろうと、星を救う聖剣だって売り飛ばす。
それがたまたま奴らの利益に変わるだけだが、しかし人間と違い連中は純朴過ぎるので「扱い易さ」から重宝した。
案外、次は連中の為に戦争をするかもな。
夢も希望も無い話だが問題ない───私に言わせればそれらは金で買うものであり実際に挑めば誰も支援しない。実体験だ保証しよう。問題なのは、あるかのように見せかけだけ用意し宣伝とか要領の良さで広める能力であって、事の本質などどうでもいい!!
なに、問題ない。自分で言うのも何だが私には文章力がある。この執筆能力を活かせば実態が何であろうが人々の理想の勇者を描き、数々の犯罪証拠を隠しながらも民衆に宣伝することが可能だろう。
ありもしなくていいのだ。実際には気に食わない砦の主人を夜中に門番を殺しゴブリンの群れが入るように仕向けたりもしたが、良いとこだけ抜き出せば「卑劣極まる連中の刃に倒れた上官の意志を継ぎ、人類の未来の為に私は戦う」とすれば栄誉栄達はお手のものだ。
ちなみにそれで将軍の座を手に入れた。勿論、一度二度では難しかったが、何でも経験と実績だ。このジャック・フォックスの手に掛かれば聖人だろうと犯罪者に仕立て上げるし、神仏だろうとお尋ね者へと変貌する。
任せておけ。金次第で貴様らも昇進させよう。
依頼料は金貨50、いや70枚か美人二人だ。無論、人種には拘らない。
ああ、ただしゴブリンは不潔だと困るぞ。風呂にだけは入っておけ!!
安心しろ••••••貴様らが何の種族だろうと、安心と信頼のフォックス社にかかれば人間だろうと王族だろうと皆殺しだ。政治事情には一切囚われず、どんな依頼でも引き受ける。
特に王族の誘拐は得意だ。相手が人間でも任せておけ!!!
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無論、金にならない訳がなかった───法を守りさえしなければ。
エルフだのドワーフだのが何匹いようが関係ない。要は売り飛ばせる女が増えて、窃盗に加担させる男の数が増えるだけだ。何にしろ法律というものは政府を気取る利権集団の都合であって、あちらも犯罪者なのだから守る必要は別段あるまい。
超大陸だか何だか知らんが北に金持ちがいて西に異民族••••••主にエルフが美人でそれ以外に抱ける女がいるかは謎という地域があり、南は知っての通り犯罪者連中の巣窟で栄えていると思えばいい。
東は? あちらはあちらで、人間サイドの犯罪集団の巣窟だ。具体的に言うなら、リィン・ウィン・ツォンのような麻婆豆腐発祥の地から無機質極まる無表情美人が多くいて、汚い戦い方に長けている。思うに、連中は不感症か痛覚が存在しない。でなければ床上手なのは技術だけだ。ああいう女と一夜を共にしたことは幾度でもあるが、しかし満足に達したかと言えば甚だ疑問だ。
何せ、三回に二回は刺されるからな。
その点、エルフ女は素直だ。つい最近小間使い、というか子供の立場を利用しての犯罪行為への加担のために猫耳小娘を雇ったのだが、差別主義には強く反対するが犯罪への抵抗は一切無い。曰く「自分達を虐げる害獣の気持ちなんて知らない」とのことだ。
私も人間なのだが、やれやれ。何度言っても信じない。
無論、非人間である自覚はある••••••何せ、それを利用して戦いに勝ち抜き、将軍の座まで駆けたのだ。具体的には他の出世頭を何人、あるいは何十人、どころか、軍単位で見殺しにしたりしたかもしれないが••••••証拠は地下深くの墓の中だ。
エルフも人間もドワーフも人間も、政府関係者から貴族の夫まで殺して娘を頂いたりもしたが、一応人間側と言えなくもなくもない。そうは思ったもののどうもこの小娘は聡過ぎるようで、私を「利用出来る猛獣」の如き扱いをすれば故郷の復讐に使えると気付いたらしい。
賢明な判断だ。賢明すぎて、逆につまらないが。
やはりというか、もっと賢明さを失う民衆の嘆きの方が見応えがあるものだ。私の体験談で言えば会社の計画に穴を開けた挙句、好き放題利益だけを強奪して安全な場所から酒でも飲みながら眺めるのが正しい。大体が金なんぞ人間の作り出してる紙であって、一時のスリルに比べれば安いものだ。
死なない、と連中は思ってるらしい。常に死にかける私には、縁遠い感性だ。
さて、そんな南の街で、それも貧困街で何をするか? 当然、売春宿の見回りに、賭博方面の管理運営。果ては店の警備料の回収から敵対組織への啓発など様々だ。一番多いのは人間かエルフかドワーフかという差別問題の喧嘩、ではなく売春街で未払いの酔っ払いだの賭博に興じたが金は無かったと抜かす不届き者への制裁だ。
逆に、差別問題は恐ろしく少ない。
連中の組織も、ここにはあるからな。
エルフ連中は売春街を仕切りつつ違法魔術の独占に走ったし、ドワーフはといえば禁止されている古代技術の再発見に余念がない。おかげで政府には禁じられているものの有効な武器が安く買える。私自身も当然その恩恵を受けているし、魔術だのは知らないが武器弾薬に関しては軍より多い。
禁止魔術は知らん。私に知力ステータスがあるとでも? だから小娘を雇ったのだ••••••名前すら知らないが、適当に犬千代(たまたま見かけた歴史書に載っていた名前だ)と呼び捨てたところ、本人はそれを気に入ったようだ。
青い髪に猫の耳、スタイルは小娘らしく、会った時は布しか着てなかったが、今は稼ぎが良いからそれなりに良さそうな革製のサバイバルジャケットと硬いスボンを着ているので、お洒落よりも実用性が好みらしい。
私の知る限り、切れ味の良いナイフを懐に入れて、スボンに小銃を幾つか隠し持つお洒落など存在しない。余談だが、声を掛けた人間の男は下の方を切り取られた。その後、訴えると言い出した男は行方を知らない。
ここはそういう街だ。覚えておけ、この辺りでは人間の法律は存在しない。
それこそ歴史の面で言えば人間は勝利を収め、世界の覇者になった筈だ。しかし、依然として権力者というのは自分の事しか考えない愚か者の集団なので、統治下にあると言い張る地域はこんなもの。未だかつて数多くの歴史書を読んだが、政府に「平等な社会」とやらを提供された歴史を私は知らない。
なので、平常運転だと言えるだろう。無論、平時から世界はこんなものという意味だが。
「おい、これからどうするんだ」
青い眼に青い髪で睨みつけられるとギョッとするのは最初だけだ。私はもう慣れているが、慣れないのはこいつの反応だろう。というのも、ガキというのは何であれすぐにキレる———それが妥当な判断であっても。
この前など「お前の貧相な身体では無理だ」と真実を告げてやっただけなのだが、あろうことかナイフを突きつけ「捌いてやろうか?」と魚料理の職人もかくやな、熟練の腕を見せつけた。
なので、ここは慎重に応対しよう。
それだけでも金を払って欲しかったが。
「まだだ。中華連中の支払い徴収代行が残っている」
連中は東の方でそのような国を名乗り始めた。それが何の意味があるのかは知らんが焼き飯だの餃子だの飯が美味い事だけは確かだ。
無論、毒物に関しても多かった。
「あいつらの仕事なんて受けるのかよ」
と、やる気は無さそうに犬千代は言い放つ。身体全体で「やってらんねー」とでも言いたげだが、小娘のくせに文句の多い奴だ。大体がそのナイフ、一体幾らしたと思っている。
あれも中華製だ。塗っている毒もな。
「報酬は良い。流石アヘンをばら撒いているだけはある」
私はいつも通りの革ジャンに軍用ズボンだ。全身真っ黒でセンスは無い。それより実用性だけが肝要であり、具体的に言うと血が流せる。
防弾性、防刃性、共に最高峰だ。
異性を口説くのにもこの格好で行かなければならないのが悲しいが、また背後から刺されたくは無いからな。実際、お楽しみの最中ほど無防備だと噂が立てば、頼みもしない美人から声が掛かるものだ。
「薬物ねぇ••••••俺は賛同しないな」
「そうか?」
真っ当な感性だ。それでは早死にするぞ。
いつも言っているのだが、根がお嬢様なのかどうも垢抜けない。
「この辺では、いや、どの時代においても••••••政治資金は裏金で解決するもので成功者は薬物を好むものだ。その程度の常識に馴れなければ、人間への復讐なんぞ夢物語で終わってしまうぞ」
無論、私は別に、失敗しても構わないが。
小娘の復讐など、金にならないしな。
「わぁってるよ」
杜撰な話し方は板に付いてる。ナイフ裁きも同様だ。ただ、感性だけは違うらしい———これも育ちの違いだろうか?
私は別に、生まれた時からこうだったが。
対して、この小娘は違った。具体的に言えば貴族令嬢らしい淑やかな性格だったのだが、私がこの町で生き抜くならとエリート教育を施した結果として、今の人格があるわけだ••••••我ながら教育の才能もあったとは。
一ヶ月80万でいい。お子さんを預けてくれれば、数ヶ月で名の売れた悪党だ。
とはいえ、その必要は無いだろう。悪党の秘訣は独占するものであって、売り物ではない。第一、商売相手が増えたら困る。なので我々は東の国、主に毒物と料理に詳しい連中とも馴れ合いはしない。連中がどれだけ残忍か知っていればその気分にはならないだろう。と言うのも、生きたまま生皮を履く程度でなく脳味噌を直接にいじるのだ。
どうなるのか? 想像するのはやめておけ。
針を逐一差し込み「えっえっ」とか変な奇声を上げつつ拷問を受ける姿など、別に思い描いても嬉しくあるまい。それより、売春街の繁盛ぶりの方が賢明な読者には人気がある。教師や医者、時には鞭を用意するあらゆる中華美人は評判が高いので「過ぎ去った思春期」を「豊満な肉体」で再現して欲しければ東へ行け。
そこに、楽園がある筈だ。
無論、代金は安くない。生半可な金額では前払いにはならないので、無くなっては困る「何か」を売る羽目になる。具体的には庶民の年収程度は欲しい。それくらいの金があるなら、あちらでもお楽しみは続くだろう。
「それで、どうすんだよ」
「急かすな。我々はまず、繋ぎ人と会わなければ交渉できない」
要するに仲介人みたいなもので、あちらとこちらの通訳の代弁及び、報酬などでも橋渡し役を務める奴らだ。とはいえ、報酬をピンハネした輩がどうなるかといえば当然ながら時に切り落とされ、時に生きたまま火葬されるとだけ言っておく。
歩を進めて我々は南の街の中でもさらに物騒な地域へと足を運ぶ。この辺には魔性と呼ばれる鬼だの何だのという生き物も発生し、気まぐれに人間を襲うのも特徴だ••••••慣れているので片手間に斬り殺し、焼いて食った事もある。
なかなか、美味かったぞ!!
鬼というのは赤い肌にツノまで生えているので見た目はアレだが、やはりゲテモノほど食えば美味いらしい。私は頻繁に連中の肉を食うので、知らぬ間に影響を受けでもしたのか割と頑丈になってしまった。
ちなみに、犬千代はというと、「死んでもゴメンだ。お前みたいな化け物と一緒にするな」とキレられた。やれやれ、何がいけないというのか。
「おい、そろそろだぞ」
「わかってる」
我々は大概らしいが、向こうは向こうで相当だ。何せ、鬼を使役しエルフドワーフどころか、人間の政治家に神の一部まで眷属らしい。
そこまでの悪党は中々いない。どんな世界であれ、恐れられる奴はいるものだ。
それが英雄ではなくともな───我々は待ち合わせていた浮浪者に見せかけている繋ぎ人の中華人と交渉し、大きな屋敷に案内された。
いやこの場合、魔物の潜む城だった。
2
女は嘘をつく。当然だろう。
とはいえ、先ほどまで罵詈雑言の嵐だった小娘が、まるで貴族の令嬢のように丁寧な、というか猫を被って一人一人名前を覚えているのか挨拶をする姿は「異様」としか言いようのない光景だ。
東の国の中華人も、悪い気はしないのか鼻の下を伸ばしている。
犯罪者であれ、小娘の愛想に弱いのは同様らしい••••••その小娘が小銃とナイフを隠し持ち、挙句下の方を何度も切り落とすような輩とは思わないのだろうが、手法としては割とよくあるやり口とも言えた。
油断を誘い、背後から刺すのは常道だ。無論、ここの管理人であるチン氏は枯れ木のように折り曲がった肉体ではあるが、その眼光は鋭く60年を生きた老体だとは思えぬ程に禍々しい雰囲気を出していた。
まるで、折れ曲がった背の魔物のようだ。
向こうの装飾なのか金と赤の入り混じった派手な服装をしており、血が混じってもおかしくなさそうな上品な色で飾っている。だが派手なのに単純な作りで、どうも無駄な装飾は嫌いらしい。私の刀は東洋風に装飾して貰ったのだが、その辺の趣味は違った。
どうも、一族の誇りがあるようだ。私の刀は彼らの文化とは違うので、斬りやすさを重視した切り捨て御免の細くしなやかな人斬り包丁。当然毒も塗りたかったが、やはり大物を切り殺す快感が欲しいのだから毒を借りるのは主義に反する。
だが、彼の目線が冷たいのはそれが理由ではあるまい••••••どんな場所でも冒険者が「初めてのお使い」を受けるように、私も彼らの依頼を以前に受けた。内容はというと「隣町の領主を始末しろ」という、真っ当極まる簡単な依頼だったのだが、それを派手にやり過ぎたらしい。
何せ、衛兵含め五十七人も殺したからな。
結果、街の警備は強化され彼らの仕事はやり難くなったという訳だ。ミスターチンはともかく下っ端に対する愛想は犬千代がしてくれたが、完全に友好的にとは行かないだろう。
やれやれ、何が悪いというのか。ちゃんと領主は殺しただろうに••••••こんな迷路みたいな城にまでわざわざ出向いてやったのだ。それだけでも感謝してほしい。
「そこの」
と、チン氏は声を響かせた。以前ソプラノ歌手から強奪する依頼を受けたが、その声と比べてもチン氏は響く。何か仕掛けでもあるのか、聞けば聞くほど犯罪に対して罪悪感が消えると評判だ。
最も、私には最初から無かったが。
「小娘は大丈夫なのか」
と端的に彼は言った。今回の顔見せは初めてなのだ。私自身はともかくナイフ術を仕込んだ犬千代はだからこそ愛想をばら撒き「使えるかどうか」の面接と言える。
最も、経歴など詐称すれば良さそうなものだが••••••生憎と、表社会ならともかく裏社会においてそれは通用しない。徹底的に調べ上げるから、ではなくそんなことせずとも「気配」で大体分かってしまう。
殺し慣れた雰囲気、とでもいうべきか。
ちなみに、私は入るや否や「貴様は化け物だ。自覚はあるな?」と、割と失礼な事を言われた。面接とはいえ言って良い事と悪い事があると思わないか?
全く、誰が化け物か。その程度に思わないで頂きたい。余談だが私は邪道作家シリーズという書籍を執筆しており、むしろ文学情緒溢れる殺し屋と言えよう。
最も、作品の大半は「有害図書」として大陸中で指名手配になったが••••••連中の感性は古いらしい。
なので、私はこう言った。
「問題ない。そちらとは違って、寿命で死ぬ心配も無いしな」
失礼な、とかなんて恐ろしいことを、とか周囲の部下共が喚いたものの、別段我々は友達になりに来た訳ではないのだ。あくまで仕事であり、馴れ合いではない。
「そうか」
とだけチン氏は答える。相変わらず無駄のない御仁だ。
「であれば、問題ない。次の仕事を依頼したい」
「誰を殺すんだ?」
手っ取り早く、私は聞く。破壊・殺人・強盗・強奪・誘拐・窃盗・あるいは国家の転覆に加担とかであって、政治家を斬ることはあれど民衆の解放のためだとかで、我々が仕事をすることは恐らく無い。
多分、未来永劫無いだろう。
であれば、回りくどいやり口に意味はあるまい。さっさと本題に入るべきであってそれ以外は回り道だ。思うに、遠回りが近道だとかいう戯言をほざいてる暇があるならさっさと金を払って殺せばいい。
「いや、今回の依頼は殺人ではない。誘拐だ、ジャック」
「そりゃ、有難い」
誘拐依頼は相場が高い。具体的に言うと殺人は高くても二千万だが、誘拐なら八千は下らない。というのも、貴人の誘拐には政治まで絡む事が多くて、組織が大金を払わざるを得ないのだ。
なので、大歓迎と言えた。思うに、むやみやたらと人を殺すのは反対だ。殺しては身代金が取れないからな───何であれ、使える資源は使うべきだ。衛兵を何人も殺した私がいうことでは無いかもしれないが、しかし人間の命はそれなりに使い道がある資源であって、意義もなく使い捨てるのは資源の無駄だ。
であれば、活用して然るべきだろう。
「それで、誘拐する相手は誰だ?」
「人ではない、ジャック」
人ではない。猿か? いいや、猿を誘拐するのに彼が私を呼び出すとは思えない。というより、やかましい猿の回収に行くなら私よりむくつけき中華人共が棍棒での気絶に追い込み、その上で檻にぶち込むだろう。私ではない。
「面白いな、人でなけりゃなんなんだ、博士」
「神だ、ジャック。我々は神を誘拐しなければならない」
3
犯罪に貴賎はない。何故なら、不可能への挑戦だからだ。
できる筈がない、と言われればやりたくなるのが悪党であると言えよう。神々には嫌われ人間には貶されそれ以外───ドワーフ連中だのの異民族にも当然のように指名手配を受けている。何故か? 不可能へ挑戦したからに他ならない。
具体的には王族の宝物などという分かり易い宝、ではなく人間の内務省機密を盗み敵国へと売買。その上で敵国の機密を奪って人間社会へと売り渡した挙句、それを「敵国の仕業である」と双方へ言いふらした。
結果、ちょっとした紛争にまで陥ったが私には関係ない••••••後から真実が明るみになったところで、頂いた財貨は使い果たした。大体が戦時における正しさなんぞ根っからの悪党に聞くべきではなく、人間の正しさは人間が勝手に信じればいいしエルフだのが異民族らしい正しさを盲信するならそれはそれで連中の勝手だ。
だが、生憎と非人間である私にとって、必要なのは「金」だけだ。
なので、その辺は私の著作を見るといい。確か3巻辺りで「聖人の金銭変換法」が記載されていた筈だ。邪道作家シリーズは大陸全土で発禁の憂き目にあるが、もし手に取る事ができれば幸運と言えるだろう。
何せ、禁則事項だらけだからな••••••およそ、口にするべきでない事だけが載っている───それは神々の騙し方然り、連中がどんな人間に味方したがるか、如何に連中を騙し切れるか、あるいは差別意識の利用の仕方に犯罪の秘訣まで様々だ。
とはいえ、神そのものや連なる者から盗むだとか殺すだとかは割と書かれているが
「神を誘拐する」というのはまだの筈だ。詐欺で騙す話は既に書いたので、それと違う内容であればやりたいと思う。
最も、誘拐した神が協力的とは思えないので、取材になるかはわからないが。
博士、チン氏は勿体ぶって講演を始めた••••••案内されたのは割と狭い部屋だったため、居残りで講義を聞かされる気分だ。座らせれた椅子は硬かったから、実際にここで快適でない犯罪講義を他の連中も聞いたのだろう。
やれやれ、年寄りは講義が好きだ。披露したくてたまらない。
それが犯罪の元締めも同じとは。案外、人間の本性は同じなのかもしれない。
「神と言っても、今はまだ人のままだ。神になる前に奪還したい」
「どういう意味だ?」
彼は地図を黒板に書いて、注釈を加えつつ説明を始める。
「ここよりやや西、国境沿いにアルデントラという国がある。国土は約30万km2で文化的には衰退しているが、犯罪組織は旺盛ではない。衰える国には通常栄えるものだが、ここは国境警備隊が内部鎮圧に乗り出し徹底抗戦をしているからだ」
何でも、反発する国民を撃ち殺すだけでなく、暗い洞穴の中に放り込むのがそこの兵隊の仕事らしい••••••私も同じ独房に入れられた事があるが、上から藁で完全な暗闇にすべく光を塞ぎ、掘り出した穴の中へと入れるのだ。
結果として高潔な精神の持ち主ほどすぐに壊れてしまうのだが、暗闇というのには悪党は慣れており、偏屈な人間ほど恐怖など感じない。どれだけ長い間暗闇の中に放置されたところで、出た暁には見張の兵士を殺す体力だけは残っている。
それでも、アルデントラには行かないだろう。ゴブリンもドワーフも臭くてたまらないし、美人どころのエルフはそんなところにはいない。飯は不味いし文化も衰退しているのなら、住むべき価値はあまり無い。
「だが、そこで現人神信仰が押し進められている。簡単に言えば生まれ変わりだと連中自身は信じており、象徴として祭る為だが実際的な力ではなくあくまで自由の象徴として、国民の団結を恐れるだけだ」
「それの何が問題なんだ?」
にやり、と口元の右だけを動かした。断言するが、子供が見たら泣き出すのは確かだろう。博士がこんな人の目を避けた場所にいるのは、見た人間が恐怖して恐慌を起こすからに違いない。
「問題だとも。何せ宗教というのは実に厄介で、西半分の大半がその象徴としての神を信じているからだ───ジャック、君のような単独で生きる化け物には理解がし難いかもしれんが、人間にせよドワーフエルフにせよ、団結するには空想が必要であり、現実逃避の戯言を殺戮の動機とするものだ••••••簡潔に言えば、連中には「戦争の火種」としての象徴が欲しいという事だ」
戦争、確かにそれは厄介だ。エルフだのドワーフだのが自由を獲得しようがどうでもいいが、しかし半端に「平等な社会」とやらが維持されれば新たな軍権を握った連中が「国民の自由の為に」と幅を利かせた新たな犯罪組織を作り出す。
思うに、政府とは犯罪組織の延長に過ぎない••••••他に何かあるのか?
無いと思う。だからこそ、我々はそのような圧政に屈したくないのだ。であれば、神の依代の一人二人別に構うまい。例えそれがどれだけの正当性を謳ったところでとどのつまり「暴力で押し付ける」のは同じだろう。読者の為でなく己の為に書いた作家のように、誰であれやりたいことをやるだけであってそこに「善悪」など存在しない。
正しいとか、正しくないとか。そんなのは金次第と言える。
現に、連中も戦争に必死らしい。異民族として人間以外が弾圧されてから随分経つが、何であれ弾圧されれば反発するものであり、結果戦争にまで発展した。
それも何度もだ。その度に誰それの仇だとか言いながらやってくる連中を殺したが生憎と個人的には覚えはない。あるのは、敵を斬り殺し生き延びてやった快感と、後は大物を刈り取った充実感に他ならない。
チッチと彼は舌を鳴らした。彼の癖だ••••••爬虫類みたいな動きにこの癖が加われば、誰だって彼を人間種族とは思わない。
ギロリ、とこちらに眼球を向ける。そう、目を向けるのではなく眼球だ。まるで、そういう生物であるかのようだとしか言いようがないのは確かな事実だ。どうにも人間というより低体温動物が近いらしい。
その内、水の中から出てくるんじゃないのか?
「いいかジャック••••••我々は彼らを利用こそすれ、彼らの独立を許してはならないのだ。もし、そのような前例を許して仕舞うと乱れた世が戻りかねない」
「あいつらが独立したくらいで、そこまで変わるのか?」
常に裏側にいる私にとって、表社会の影響は計りかねる。大体が政治家が何種族の何であれ、首を落とせば死ぬのだから人間でもドワーフでも神でも構うまい。
そう思ったのだが、どうも違うらしい。
「違うのだ、ジャック。彼らのやろうとしていることは「全体主義」「宗教による統一意志」であって、非常に厄介な現実逃避だ。これが実現されてしまえば、人間どころかその他全ての民族までが「平和」などという幻想を信じるだろう」
「世界が平和になるわけだな」
「そして、我々の収益が減る訳だ。なので、何としても依代を確保しろ。その上で必要であれば指示を出す」
これは初めてだ。大体が殺す奴は殺す。生かす奴は生きたまま連れ出して、麻袋を頭に被せて拷問を行い聞き出してから殺すのだ。しかし、生かすか殺すかも不明のままというのは、長い付き合いの中で初めてと言える。
不思議だ。標的が特殊なのか? 一応、私は聞いておいた。
「どちらだ? 殺すのか、生かすのか」
「向こうの態度次第だ、ジャック。あちらが協力的であれば我々の組織に取り込めるので、当座の安全と資金、仲間の命は保障すると伝えろ。見立てでは説得7割、始末が2割」
「残りは?」
「失敗は、貴様ならあるまい。なので説得8割としておこう。いずれにせよ今回は大仕事だ。早速現地に向かい、収奪を開始しろ」
収奪? 確かに私はいつも何かを収奪するが、現地に奪える何かがあるのか?
「簡単だ、ジャック。貴様の以前の仕事と同じだろう。民衆を虐げる衛兵から武器弾薬を奪い、まずは信頼を勝ち取ってこい••••••その上で、聖なる依代に接触し、今回の依頼を果たすのだ」
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神や仏? 無論「競合他社」だ。
色々あるが、「逆らう奴らは地獄行き」という部分は共通であるといえよう••••••私自身も博士からの依頼でよくやった。具体的には取り分を納めなかったり報酬をがめた盗人に対して使うことが非常に多い。
大体が連中を真実信じている人間など存在しない。なぜ連中への信仰が叫ばれるのか? 簡単な話、力があるとされているからに他ならない。神であれば世界、仏であれば宇宙の支配者だったか? どちらにしろ「正しいと勝手に信じる」連中なりの価値観を世界に敷いて、逆らう奴は地獄行き。要は視野が狭いだけで、正しいと信じる子供だろう。
子供相手に本気になっても、仕方あるまい。
それに、連中は執筆に相反する観念だ。貴様ら「才能」だの「環境」だの「育ち」というものに恵まれた奴らが、胸を打つ傑作を書けるとでも?
土台、無理な相談だ。神や仏に愛されるとは、そういうことでもある。
悪魔は神に祈らないと言うが、私の場合祈る暇すら存在しない。とかく暴力の嵐の中に生まれ、害する畜生の相手を強要され、信仰に合わせてやれば「気に食わないから地獄行き」とでも言わんばかりに呪われる。
それで、連中を信じろとか言われてもな。
ちなみに、私自身すら過去なんぞ覚えていない。経歴は詐称するものだ。というか真実を語り続けていれば私のような奴は死しか無い。中身の無い詐欺商材を売り、人を騙す事が前提でなければ生きられない。
そんなものだ。恵まれた連中には分かるまい。
少なくとも、連中には「苦労」というものが足りないのだ。たかが人間社会に追いやられただけで泣き言を吐かす「暇」があったり、ボンボンのくせに少しばかりの社会の裏を眺めただけで、世界を救わねばと喚き出す。
その当人は、持たざる経験すら無いのにな。
私か? 幼少の頃は神童だったが、生憎と殴られ過ぎて悪くなった。脳が変容するまで殴られたおかげで、今ではずっと笑いっぱなしだ。昨日のことすら覚えられなくなったが、逃避して生きるほど暇でもない。
やれやれだ。現実には苦労なぞゴミ以下だな。
遠回りに意義など無い。楽して利益を得られるのが最上であって、タダ読みの読者のように、泥棒だけが人生だ。神だの仏だのがいるとすれば、連中の規則に則り如何なる利益を得られるかが肝だろう。
実際、そういう人間は多いしな。才覚だのに恵まれ神に愛された人間、試練だ何だと優れた加護を受けながら「超えられる能力に超えられる試練」という、気の抜け果てる試練で何かを成し遂げた気になる修行僧。
羨ましい話だ、暇そうで。
事実として言えるのは、仮に連中が「無力な一般人」であれば、誰一人目をくれず耳も傾けないのは確かだろう。別に、連中の言い分を信じている人間などいない。単に大きい力を持つ奴らが、蠅のようにたかられ貪られるだけだ。
そういう意味では私にとって───いや、控えておこう。
連中は器が小さい。すぐに呪い、正しい正しいと喚き出す。悪党との違いは自覚がないという部分だろう。私の場合正しいかなど知らん。それより、神の依代だかを誘拐する手立てを考えねば。
さて、どうしたものか。先に衛兵から奪えとか言ってたが。
しかし、「信頼を勝ち取る」というのは詐欺の常道を行く私には簡単だ。人間など表面しか見ないのだから、適当に望む事だけ与えればいい。
売れる作品と同じだ。望むだけで願いが叶うとか、楽して成功が掴めるだとか。
現実的な話を聞くと読者はムキになって激昂する。現実など誰も見ていないというのは成功者も落伍者も同じだろう。成功も落伍も運次第、だが才能があると「努力のおかげだ」と己の成功を「運が良かっただけ」とは思いたがらず、逆に落伍した人間であれば「願うだけで波動で変わる」と意味不明な逃避に走るものだ。
誰も現実を見ない世界において、現実を見るのは無意味で無駄だ。
実際にやった私が言うんだ、間違いない。
なので、神だか何だかは適当に利用すればいい。真剣に向き合う価値がないのは、読者も神も同じだ••••••私と犬千代はまずアルデントラに向かう道を二人して歩いていたものの、途中で関所が見える前に身を隠した。
当然、我々に戸籍は無いからな。
身分証は偽造だ。ちなみに学校だろうが国籍だろうが、あるところにはあるもので有名進学校の卒業証書は買うものだ。少なくとも私は買った事があるが、そこまで真摯に調べる奴は少ない。なので儲かったとだけ言っておく。
読者とは大違いだ。やはり、犯罪の方が儲かるな。
まともに、真剣に何かと向かい合うなど実際には徒労そのものだ。ああいう神や仏というのを信じる輩は「現実に向き合う経験」が足りない。どこかを楽してこその神仏であり、持たざる者は呼ばれない。
事実、見たことあるか? 病魔に苦しみ売上に困る神仏なんぞ見たこともない。
まして、経歴を詐称しなければ生き抜けない経験など、連中にはあるまい。だから奴らは駄目なのだ。なまじ、持つ側というのは単独でやり遂げる能力がなく、能力を剥げば無能だけだ。
我々は関所の門に近付く。大きさはちょっとした城くらいはあるので、力ずくでの突破は難しい。無論、火を放ち突破したことはあるが今回の目的は「誘拐」だ。
なので、穏便に行かねばなるまい。
面倒だが、周囲は崖だ。門は大陸と大陸を跨ぐように大きな橋の向こうにあった。というのも超大陸と呼ばれるこの(無駄に)大きな世界において、内陸は陸のみとは限らない。内陸に海が存在しても、広さ故に収まるのだ••••••分類的には池とも言えるが、大きさからしてそうは思わない。
何せ、国の一つ分はある。
なので、海だ───その海を跨いで関所があった。大きな橋をひたすら歩いて行くのは非常に疲れた。ここに住む羽目になるなら国外追放されて海に住む方を選ぶ。
門番は大柄だったが、私の説明には疑い深い目を向け何度も執拗な嫌がらせをしたくせに、犬千代が少し困り顔で「うちの身内がすいません」と謝りながら苦労話を(全て嘘だが)しただけで陥落した。
嫌な話だ。やはり、人も神も仏さえ、表面だけが「全て」らしい。
私の邪道作家シリーズも、やはり美少女が書いた事にしよう。読者が中身や本質を見ているとは思えない。表面に犬千代の顔と歌って踊れる作家だと言い張っておくだけで、喜び勇んで買われるのは確かだ。
犬千代は面倒臭そうに、「相変わらず、付き合いが悪いな」とぼやいた。
大きなお世話だ。表面だけ得意な貴様らと一緒にするな!!
全く、中身が大事だのと綺麗事をほざき表面で全てを判断する人間の方が、私からすれば気が知れない。第一、そんなだからいつまでも成長しないのだ。
成長したところで、金にはならなかったがそれでもだ。死ぬ寸前に後悔する奴等に今一瞬を「本気で」生きる観念はわかるまい。手抜きで足りない何かを得ようなどと••••••••••••図々しいにも程がある!!!
やれやれ、神や仏がいるなら阿呆であるのは違いない。現に、現世で成功している人間というのは阿呆ばかりで中身が無い。才能だの流行だの、薄っぺらいからこそすぐ忘れる。
才能や流行を除けば、何が残るんだ?
何も無いぞ••••••どれだけ成功を積み重ねようが、どれだけ栄華を極めたところで「自分自身」だけは誤魔化せない。その点、私は無念だらけだが後悔は無い。無論嬉しくもないが ──────やるべき事を、やったのだ。
それが違法行為なのは惜しかったが、まあ法なんて人間の決め事だ。首を切り落とす事が栄達の時代もあれば、道徳倫理の時代もある。大体、表面しか見れない人間という汚濁相手に、真剣に向き合うだけで時間の「無駄」だ。
何せ、実際にやったからな!! その私が言うんだ、間違いない。
関所を越え、ある程度歩くと街が見えた。私は犬千代に呼びかけ、武器の確認と、当面の必要事項について考える。
「そろそろだな。まずは現地視察と行くか」
「ああ」
異論も無かったので、犬千代を後ろに町の入り口へと歩を進めた。
さて、神の機嫌が良ければいいのだが
5
引き摺り出されて処刑台の如き玉座の下に、冷徹な女の目線越しに拘束されるなどいつものことだ。
と言いたいところだったが、流石の私もそこまでじゃない。我々はまず情報収集、の前に着替えを購入して潜入した。というのも今回の目的は「潜入」と「誘拐」なので殺し屋と一発でバレる姿ではまずいのだ。
とはいえ、どうしたものか。軽く考えて私は革ジャンとジーンズに着替え、必要な道具(主に殺しの)に関しては上手い事その裏側に隠蔽した。無論、一緒の犬千代も同じく着替える。
文化の違い、というやつだろうか? この辺りでは「和服」と呼ばれる桜色の派手な衣服に着替え始めた。何が良いのか知らないがフリフリの見た目に巨大な帯での胸元の下を締め上げる行為は「現地人の心」を掴んだらしい。主に男連中が多いが女までやれ「可愛い」だの「ああいう子がいてくれたら」などと抜かし出す。
関所を超え町の入り口を通り抜けてもこれだ。やはり、ああいう要領の良さというのが「全てに勝る」というのが真実なのか?
かもしれない。私の作品には自信があるが、読者は「作者が美人女性」と詐称するだけで大金を支払うし、連中のいう神仏がそういったあれこれに適切な裁判なんぞ開きはしない。
いつだって、連中は恵まれた豚に肩入れする。
いつだって、連中は綺麗事を語るだけで、それだけだ。
まして、そういった連中に寄りかかる「その他大勢」というのは「目先の利益」を見るものだ。遥か先を見通せれば「食指を動かす美形がいるか」だけで内実を見もせず都合の良い解釈を求めない。
であれば、犬千代のやり方が「正解」なのか?
本質を見据え、逃げ隠れせず己が道を突き進むのは「邪道」なのか?
王道でない邪道であれば、道を突き進んでも「無駄」なのか?
••••••••••••わからない。この先があるかは知らないが、少なくともやるべき事はやったのだ。後悔は無い。とはいえ、依頼は依頼だ。とりあえず神の依代とかいう我々の金を誘拐せねば。
いやこの場合、略奪が先だったか。
確か、博士の言い分では現地略奪を働き反政府勢力を味方しろとの話だった。私は考えもせず勢いのまま斬り殺す。以前話した通りその結果「領主一人の命」を求められたにも関わらず、衛兵の屍の山が出来た。
まあ、連中の武装は金になったが••••••これからは気をつけるか?
一応、まあ、依頼ではあるしな。
なので、変装というわけだ。理解したか? 殺して良いならさっさと突撃して街の人間を斬り捨てた。今回は反政府組織ということで衛兵は殺し放題なのだが、まあ私の場合「勢いで町長は斬り殺した」となりかねない。
誰が依代かわからないからな。一応情報はあるにはあるが、事前情報が間違う事もままある話。であれば用心に越した事はあるまい。
犬千代のナイフも、高かったからな••••••具体的には衛兵を50人くらい殺し武器弾薬を剥ぎ取り、その上で依頼を達成すれば買い取れる金額だ。
高過ぎる!! 要領の良いだけの連中といい、中華の武器弾薬といい相場が不明だからって好き放題し過ぎじゃないのか? 中身も無いくせに流通を握りさえすれば大きな代金を要求し出す。忌々しい限りだ!!
その点、私は清廉潔白だといえよう。何せ、執筆も殺人も依頼に合わせる。
今の所、執筆は依頼がないが「邪魔な者を消してくれ」という言わば汚れた社会に対する掃除屋みたいな仕事は出来る。物であろうと人であろうと、鳥葬火葬何でも来いだ。
確実に、消し去ってみせる。
それが神だろうと何だろうとな───着替えも済ませ準備が整ったので、我々には邪魔な「民衆を弾圧する衛兵」とやらに挨拶へ向かうことにした。
具体的にはまず夜中に襲撃を行い、執拗なまでに連中の武器防具を奪いつつもまず「神の依代グループ」との対立を煽る構造にした。
つまり、連中の名前を騙ったのだ。
当然、衛兵の属する治安維持機構も燃え上がり、大々的な討伐軍を出す事にした。
軍の規模で言えば3倍を超えると言われる。具体的な反抗勢力の規模は知らないがもし、その話が本当であるなら連中の勝利は絶望的だ。
実際に戦ったからわかるが、アレはキツい。二度とやりたくない。
実際にやった私が言うんだ、間違いない!!
大体が軍というのは基本「擂り潰す」ものであって、正々堂々戦うなど、機会そのものが少数派だ。私のやり口ではまず正面の群に防備を固め、手間取っている間に右翼左翼を囲い込む••••••••••••実際に集団行動を取ればわかるが、前後左右から同時に攻撃されると大抵の集団は五里霧中だ。なので経験を活かすべく衛兵側には全体指揮を取る人物だけに襲撃を仕掛け、いざ戦が始まる段階になっても人材不足による軍の機能不全を叩き起こした。
不全を止めることが出来れば、起こすこともまた可能だ。そうじゃないか?
結果、我々は大勝利を収めた、という訳だ。残念ながら今回は裏方なので表彰式には参加できなかったが、大勢の人間を殺してやったので獲物を狩る充実感は満腹になるまで得られた。満足だ。
そして、今に至る──────玉座に座る女、その娼婦のように熟れた肉体に反し随分と若そうに見えた。というのも、身長が小さいのだ。ちょうど犬千代と同じ位に見えるが、その冷徹な目は段違いの迫力だ。
子供らしくない、というべきか。
やれやれ、こんなおっかない依代なら先に言ってほしいものだ。大体が厄介な小娘ばかり相手をしてどうしろというのか。生憎と私は保育士ではない。
子供が着るようなスカートと花柄のパジャマみたいな服を着ているものの、熟れた肉体がその子供らしさを押し潰す。淫蕩さを隠しもせず求める欲望そのままにいて顔つきだけは子供らしい。
変な小娘だ。服の印象が殆ど無い。
むしろ、熟れた肉体がはみ出てきそう、というのが第一印象と言えるだろう。
「私がジャンビエッタ・ホーデルハイムよ───ハイムちゃん、って呼んでね」
事前想定を考え直すべきだ。間違いない。
我々がすべきは「誘拐」ではなく、この怪物の「退治」じゃないか?
6
女は凶暴だ。そうじゃないか?
思うに、女ほど生物として凶悪極まる奴はいない。私は諸事情あってそういう女と手を組んだり利用したり利用されたり成果が出なかったりする事が非常に多いのだが、それはそれとして表面上は美人の方が得をするので、裏側など誰も見ない。
適当に美人を立てておく方が、私のような殺人鬼が表に出るより効率が良い。実際私が表に出て上手く行った試しは殆ど無いが、我が家の凶暴犬や黒いツテの女なら読者も金を落とそうというものだ。事実、世間ではそういう女が出るだけで大枚をはたく愚か者が多いらしい••••••何でも、平気で万札を落とすのだとか。
私が必死に真剣に向き合ったところで金にはならないが、美人の顔は金になる。
実際にやった「私」が言うんだ間違いない───必要なのは「要領の良さ」とかであって、物事の本質などクソ以下だ。実際にはそれらを掲げて何十年も費やしても小銭にすらならないし、下半身の欲望に従い金を払われる方が未来がある。
人間とは、そういうものだ。いやこの場合、相対する女は人間ではないのだが。
「それで、どうしてかしら」
と我々を衛兵に引っ張ってこさせた女は言う。ジャンビエッタ、何だったか••••••人の名前を覚えるのは苦手だ。昔、女の名前が分からず適当に並べ立てたところ、号泣され戦犯扱いを受けたことがある。
分からん話だ。非人間の殺人鬼に何を望むのやら。
思った以上にこの町の警備は厳しく、わざわざ服を買い替えまでしたが素性が既に割れていた。どうやら軍事もそれなりの手腕らしく、想定そのものが不味かった。
神として祀られつつある女を攫うとかいう話だったが、冗談じゃない──────この女は軍人だ。赤い髪、赤い眼光、豊満な肉体と淫蕩さだけではない。手玉に取った男に跨り、それを扱う事にも手慣れている。
何故わかるのかって? 会う女が皆そうだったからに決まっている!!
なので、世界の女は大抵そうだと思っている。実体験だ保証しよう。ではなく現状確認だったか。自称「ハイムちゃん」とやらは協力的な筈だと言われていた事前の情報には反し、我々を手錠と鞭で歓迎した。こんな女が神の依代になるなら鉛玉で賽銭を払って撃ち殺した方がマシだと思う。
世も末だ。それは読者も同じか?
かもしれない。どこも表面さえ良ければ、本質的な問題は見逃すものだ。むしろ、そんなものを非人間の私が見ている時点で世も末だろう。人間にしろエルフにしろあまり友好的には見えないその女は、舌舐めずりしつつ私達二人を吟味する。
「面白いわね。ここにたかだか二人で攻め込んでくるだなんて、ある意味脱帽だわ──────貴方たち馬鹿なの?」
失礼な女だ。ここまで苦労してやってきたというのにな。
まあ、博士の依頼は大抵こんなものだ。裏事情を毎回話されないので予想外の危機に陥る事には慣れている。案の定ここの安普請な神になりかけだかの女が軍事力に長けた輩で、自前の兵団や探りを入れる為の隠密兵まで用意しているだなんて教えるどころか匂わせもしなかった。つまり、ここで捕まるのも予定調和という訳だ。
嫌な調和だが、大体依頼とはそういうものだ。まあ金にならなければ何であれ投げ出すのも私なので、その辺の責任感は金次第と言える。今回の依頼にしたって利益にならなければ、まあ、知らん。
貴様ら金にならない読者に、感謝の念を抱くのか?
殺しも同じだ。いやこの場合、自称神の誘拐だったか。
「争う意思は無い。まずは話し合おうじゃないか」
言ってはみた。言っただけだ。何であれ言うだけならタダだからな。金も払わない読者でさえも、評論家のように垂れるだけならやる。であれば、例えその気ならばすぐに手錠を引き千切り殺しにかかれるとしても、それはそれとして平和的解決とやらを百回に一度くらいは試して良かろう。
無論、面倒ならすぐ殺すかもしれないが、依頼は依頼だ。
前にも言ったが、殺害より誘拐の方が金になる••••••なので私にとってこの神だかの女を殺そうとする別勢力は、卑劣な犯罪者という訳だ。であれば狙われているであろうこの女の護衛として、武力を売り込むのもなくはない。
いや無いか? どっちでもいいが。
「知ってるわよ。博士の使いでしょう? 貴方達を待っていたの」
言って、手錠で繋がれた私の値踏みをしつつ、鞭で地面を叩き砕いた。
いや本当に砕いたのだ。魔術だかが盛んな国と聞かされていたのに、こうも原始的極まる野人の国とは。やはり田舎には来るべきではない。
美人はいたが、大人の女というにはまだ若いしな。具体的に言うとチビだ。
やはり、身長のある大人の女がいい••••••発育は良いかもしれんが大人の女の対応というのが足りていない。大体が初対面で鞭と兵隊というのはどうなんだ?
「出来れば、もっと淑やかな待ち方をして欲しかったが」
「あらそう? ごめんなさい。私、育ちも生まれもこの街しか知らないから」
胸を揺らしながら自称ハイムちゃんは答えた。博士とやりとりがあるのは想定していたが、しかし、ここまで街を掌握している女が一体何を望むのだろう?
話を聞く限り、文字通り「全ての栄華」を得ているとの話だ。簡潔にいえばこの街においては身分制度が完成しており、祭祀職が実権を振るい軍事が下につくという分かりやすい構造らしい。
この辺はどこも同じだ。不思議と、軍事より祭司の方が力を持つ。
それが時代の現人神となれば、その力が猛烈なのは、想像に難くない。人間というのは不思議なもので、信仰する神の為ならと頼まれもしないのに殺人を犯し、金にもならないのに人に押し付け金にならないからと金をせびる。
羨ましい話だ。暇そうで。少しは私もあやかりたい。
そんな彼女はというと、一喝して兵を下がらせ我々二人の耳元へと躙り寄る。無論言うまでもないが、隣の犬千代の気分は最悪だ。わざわざ縛られて抵抗せず標的に近づくだなんてと、やり方に呪いの言葉を吐いている。
そんな我々に、彼女は言う。
「依頼を出すわ」
「? 依頼を受けたのは我々だが」
「そうじゃないの。これは博士も承諾済みよ。元々私がお金を払って、博士を通して依頼したから」
どういうことだ••••••そんな回りくどいやり口に、意味があるのか?
と思ったが、状況を見れば想像はつく。何せ、生まれを選べない世の中だからな。
「ええ、そちらの想像通り、私を自由の身にして欲しいのよ」
7
いわゆる犯罪者のレッテルを貼られているが、そんな私にも譲れない物がある。
それは「己の道」を阻害されない、という部分だ••••••むしろ、この点にだけ関して言うなら犯罪者の方が真摯だろう。3時間前、私は検問所を潜入任務(実際には貴人の誘拐だが)の為に偽造した証明書と偽造した経歴、つまりいつも通り嘘八百の話で押し通ろうとしたものの、情報戦で既に先を行かれ即座に襲い掛かられた。
開き直りはしても、被害者ヅラはしない。というか、そんなことをしていたら私は年中被害者ヅラだ。第一、誘拐にしてもそうだが相手は当然それなりの組織であることが多く、むしろ情報戦で全て勝利するなど有り得ない。
想定内だ。なので私は罵詈雑言を吐く衛兵の顔面を叩き割った。鎧で何の種族かはわからなかったが、拳で鎧ごと頭を潰せば何の種族であれ死ぬだろう。現に、その何かしらの種族の衛兵は壁に叩きつけられ動かない。続いて他の衛兵にも手を出し結局はまた大勢の衛兵を叩き殺しつつも、その方が標的に近づけると思いわざわざ捕まって今牢にいるという訳だ。
だが、それはそれとして私の道、私の自由を奪われるのは御免蒙る。勝手に誘拐の為に潜入しといて身勝手な奴だと思われるかもしれないが、それはそれこれはこれという便利な言葉があるのを知らないのか?
無論、私は知っている。故に脱獄した。
見渡すと、我々が連れてこられた場所は大理石で出来た大きな屋敷で、恐らく元々金持ちの家か何かだったものを要塞に作り替えたらしい。所々に生活の跡が見えるが武装した衛兵が巡回する屋敷など誰も住まないだろう。
まして、魔術だの魔物だの。連中は暇なのか?
以前も言ったが、魔術だの何だのについて一ミリも私は知らん。そのような科学で証明出来ない理論など知ったことか!! 第一別に理解しようがしまいが首を斬り落とせば死ぬのだから、そこまで拘泥する必要もあるまい。
余談だが、金持ち連中の集会場でもあるらしい。一緒に来ている、というか一緒に捕らえられた青髪の猫耳娘、ナイフは多いがスタイルに乏しい犬千代はそれら集会という名の麻薬乱交を冷たい目で眺めていた。
牢を出てすぐ、とまでは行かなかったがそれなりに移動したところ、むせ返る香の匂いと嬌声の嵐が大広間らしい部屋で行われており、エルフも人間も仲良く欲望の渦に耽溺している。
どの種族も同じだ。目先の欲望を突きつければ、いとも容易く言いなりになる。
その点、我々が誘拐する予定だったハイムとかいう小娘は聡いらしい。自分達には誇り高い種族という体裁だけが残っており、実態としては腐敗した上層部は人間と深い繋がりがあり、隣国ポルドアとの宗教戦争は抱ける女を増やす為。ちなみに、そのポルドアとかいう国にはダークエルフなる種族がいるらしく、何でも武器武装に魔術とやらを付与し、殺す事が得意らしい。
••••••最も、賢明な読者はそのような瑣末事に興味はあるまい。だから読者の興味ある部分を抜粋すると、褐色の強気女が多くてただのエルフと違い、細身ではあるが肉体の感度は良い、とだけ覚えておけ。
実際、奴らは敏感だ。山奥に住んでいるからなのか、気配探知に長けている。
実際に試したが、割と男性経験は少ないらしく、一度落ちれば早かった。
何が、というのは読者の想像に任せよう。まあ、強いて言えばエルフでもダークなエルフでも、女は演出に弱いとだけ語っておく。
表面と実態は、何であれ違うものだ。攫う予定だった神の依代とやらが、実際には上層階級の人形であるのも変わらない。というのも、人間は表面しか見ないからだ••••••表面だけ整えれば、何であれ金を払う。
中身など誰も気にしないし、考えるのも億劫だ。
中身に手に入れる輩も次第に向き合わなくなっていく。何せ、金にならなければ、考える奴もいないのだ。であれば、表面だけ整え利益を啜り、国庫から金を盗んで政治家になるのが正しい道だ。
そんな中で、何かを掴むにはどうするか? 向き合うのは無駄だ。実際に試した私が言うんだ間違いない••••••それより、表面を整え利益を確保し、賭博などの本能に付け込み獣として扱う以外に道は無い。
実際、獣だ。連中自身は自分の意志で考えてるつもりらしいが、つもりなだけだ。実際には物を見て金を払うような考えはないし、ただただ目先の吊るされた糸へと従うのみ。読者の例に漏れずエルフも同じだったようで、傀儡政府が幾度と候補の女を「捧げ物」として、差し出してきたのが実情らしい。
自由を得たい。誰でも考える事だ。
••••••見た目が猫なのに猛犬のような犬千代と違い、ハイムとかいう女は見た目が犬なのに中身は飢えた虎らしい。可愛げがないのはどちらも同じだ。
無論、本人の前では言わないが••••••ナイフが滑っても困る。
種族の責任、みたいなものは周囲の身勝手であって、ハイム自身は大して気にしていないらしい。その辺は私も同じだ。人間種族の誇りとやらは役に立たない。大体人間社会において何度も言ったが人として扱われた事など無いし、自分を人間だと思った事など一度もない。まして、人として生きた事など有り得ない。
異種族でもない筈なのに、ひたすら迫害されてきたからな••••••••••••考えてみれば不思議な話だ。まあ、今になって思うと「一人だけ人間の形をした、人間ならば有り得ない発想の奴がいる」というのが実情かもしれない。
何せ、幼少期から殺人に抵抗が無かったからな。
むしろ、我慢するのには苦労した。馬鹿な子供は刺激したら危ないという事すらも分からないのか、自分が強いと言いたいが為にこちらを刺激してくるのだ。しかし殺してしまえば罪に問われる。生憎と田舎では逃げおおせる事が難しいし、それに依頼もないから金にもならない。
仕方ないので、我慢するしかない訳だ••••••無論、何度かやりかけたが。
そんな私からすれば、乱交パーティの一つ二つ、珍しくもない。人間が痴態を晒すのはいつもの事だ。むしろ、安心すら覚える。物語から勇気を貰って学んで成長、敬意と共に金を払う読者なんて、現実には存在しない。
いたら取材したいくらいだ。実際には、一円も払わずたかるだけだったが。
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誘拐のコツは、まず「紛れさせる」事にある───それが由緒正しい方法だ。
例えば、以前の仕事でいうと誘拐された体になる人材雇用が盛んだった。どういう事かといえば官憲に「行方不明者が出た」となれば当然その人物を探しにくる。しかし、何人も何人も行方不明が続いた上で、捜査後に何も手掛かりが掴めない。
警察とて組織だ。サボる奴もいれば賄賂を受け取る奴もいる。そんな当たり前の事すら、一般人とやらは知らないものだ。だが、我々社会の裏側にいる者にとっては組織の弱点はしつこく突く。しかしその一方で、以外なほど「一般人」を誘拐するような事態は少ない。
カネにならないし、何より仕事として小さい••••••生憎、弱い者いじめがしたい訳ではない。やるなら「大きな偉業」を成し遂げたい。
なので、必然政治関係者は多かった。
そのケースではまず「誘拐される役」が何人も行方不明になった体で話を広め、山奥では獣に食われたのかもしれないと風評を立てておく。
その上で、目的の政治家先生を拉致する訳だ──────おかげで、実にスマートな夜の仕事だった。
8本目の指と左耳の鼓膜が、改革案を退けたとだけ言っておく••••••これ以上、人間が台頭するのは困るのだ。というのも、一部の金持ちだけが肥え太る社会というのは、乱す余地すら限られる。であれば、異種族を弾圧する法案を通さず、反乱を煽••••••もとい、自由を与えて対立する国家があった方が面白い!!
この辺は「博士」も同じだ──────我々がやるべきは「不可能への挑戦」であって、一般人を誘拐するような、そんなちまい犯罪に興味は無い。
誰にでも出来る。それは「つまらない」からだ••••••逆に、難問が用意されれば、例え地の果てでも飛んで行く。異種族だろうがエルフだろうが、敵が人類だろうと関係無い。
むしろ、やる気が出る。そういうものだ。
さて、この辺で種明かしをしよう。回りくどい語り口で話を逸らしたのは、当然他にやる事があるからだ。具体的には我々が捕らえられた屋敷で乱交パーティーに興じている奴等から、必要な人材も攫っていく。
当然、目的の神の依代とやらも一緒にだ。
言わば、強制亡命を、それも未だかつてない規模で行う訳だ。ハイ厶とかいう女は、最初からこれを狙っていた──────ただ単に逃亡するだけでは、その「先」が無いからだ。
であれば、必要な人材ごと、国外に居を構えれば良い。そんな無茶苦茶が通るかといえば金と人材、後は政治だ。そして、国内外での主要人物が集まるこの機を狙って、我々が手助けしようという訳だ。
言わば、人助けだな!!!
賞賛してくれていいぞ!! まあ、実際にやった事は器物破損、衛兵の殺害、貴人誘拐に爆破工作と数え上げればキリが無いが。
爆破は当然、今からやる。
そしてやった。捕まる事は予定に入っていたので、あらかじめ脱出路の「逆」に爆破物を伏せていた。私だけではどうにもならないが、ハイムというあの女は魔術という胡散臭い物に詳しいからこそ、今回標的になったのだ。
であれば、大規模な事は難しくとも「外から着火」くらいは問題ない。出来なかったらどうするつもりだったという声が隣の猫耳娘から聞こえたが、まあそれはそれこれはこれだ。その場合、派手に行くつもりだったと言っておく。
何にせよ、騒ぎを起こさなければ、集団逃走など出来ないからな••••••パニックを起こす連中に避難を促す衛兵の武装をかっぱらった我々が代わりに指示を出し、用意していた大型の馬車に荷物のように詰め込んだ。
元々、薬物での乱交なぞしていたのが幸いしたのか、事前想定より速やかに誘導出来た。というのも動物みたいに乱れてたからか光に群がる蛾みたいに我々の「避難先」へと、我先にと走ったのだ。
当然、女子供を押しのけても、必死にな!!
まるでバッファローの群れだった。意外なほど速やかに終わったので達成感は少なかったが、しかしあれは見応えがあった!!
まるで、いや、まさに動物だ。人間なぞ一皮剝けば、本能に動かされる獣に過ぎない。
隣の猫耳娘、犬千代に「これで全部か」と確認する。
青い髪を揺らし、不愉快そうに人間の痴態を眺めながら「そうだよ」とぶっきらぼうに奴は答えた。
ならば問題ない。これで新国家設立くらいは可能だろう。
我々の手で、人類の歴史を書き換えた訳だ。エルフが独立しようとどうでもいいがしかし──────この手で、利益が為に、忌々しい社会構造そのものを、前代未聞と呼べる規模の誘拐計画で変革してやる偉業と言えた!!
それを実感出来る、悪くない仕事だった••••••我々が如何に政治へ貢献しているのか、良く分かる例の一つと言えるだろう。
最も、それが人間の為になるかは知らなかったが••••••何でも返報性の原理という「受けた恩は返す」心理が人間にはあるらしい。
私は生まれてこのかた悪意以外は受けた試しが無いので「善意の真似事」ではあるものの、とはいえタダで悪党の生き方について、それも実用的な詳しいやり方まで教えるのだから良いんじゃないか?
なあに、私の著作を読んだ後でもいいぞ!! 誠意は札束で払ってくれ。
それが「立派な大人」というものだ──────違うか?
少なくとも、神だの仏だのに愛されるだけの地力の無い善人共とは違い、例え世界全てに指差されようとも胸を張って生きている。
そのやり方を、教えてやる。
続きが見たければ、金を払え!!!
9
依頼を果たせば報酬が貰える───それが犯罪であろうとも。
真っ当な人間とやらは報酬も貰わず働くというのだから大したものだ。思うに労働というのは奴隷であって、自身の働きに応じた金額が貰えないものを「仕事」とは呼ぶまい。私が執筆している作品にしろ犯罪にせよ、本来であれば対価とは一定ではなく、個々人によって変動する。
だが、大半の人間は一定にしたがる。そして、大半の場合は払わずに済ませようとする。不思議だ。何の為に金を稼いでいるのだ? 金は使うものであって、貯めて喜ぶものではない。使い果たせるなら、使うべきだ。
明日、生きているとは限らないしな。
特に、私のような逸れ者の場合は。
「よくやったジャック••••••これが報酬だ」
テーブルの上にどさっ!! と音を立てて支払われるこの感覚がたまらない。何故だかこの時だけは全身で音を感じ、札束の感触を目だけではなく肌感覚で味わう。
無論、匂いも同様だ••••••束になった札束の匂いはたまらない。
逆に、読者連中は金を払った試しがない。陽気なこの頃には子供が休みらしいのでもしや「本当は子供なのに、大人のフリで読んでいる」のではと疑っている──────そもそも、いい歳した大人であれば、自分で読んで自分で判断して金を払っておくべきだ。
であれば、やはり子供なのかもしれない。子供読者より金だ。であれば、犯罪行為が増えるのも納得だといえよう。何せ、真っ当にやってもタダで盗まれ、正当化し挙句に忘れられる。
貰うだけ貰って、何もしない。
表面上若い女を立てることの多い私だが、女を立てようが賭博以外で連中が支払う事はない。であれば、隣国の政治家の百二百攫った方が「真っ当な経済活動」だとさえ言えるだろう••••••••••••読者と違って「未払い」だけは無いからな!!
例の狭い部屋の中で、つらつらとそんなことを考えていた。しかし隣の猫耳娘はというと故郷の復讐にしか興味がないらしく、金より情報を、とせっついている。
まだまだ駄目だな。これでは成功すまい。
そう思った私はまあまあ人手として役立った小娘に「とりあえず金を受け取れば、先で役立つことになる。本当に復讐したいならもっと現実的な策を考えろよ」と、本当の事を教えてやった。
ギッ!! と親の仇よりムカつく相手を見るかのように睨んだ後、彼女は自分の分である分け前を片手で鷲掴み強奪───とても依頼金を受け取るとは思えない態度で、官憲から逃げ出すかの如く部屋を出た。
どこであれ、真実は耳に痛いもの。なので、犯罪者も同じという事だ。
••••••その八つ当たりを私に向けるのは勘弁して欲しかったが、とりあえずこれで作品の喧伝費くらいにはなるだろう。言うまでもないが非人間の私にあるのは良い女を抱く事よりも、基本的には作品である。
どこに、どれだけ輪廻転生とやらを繰り返したところで、書いて売る以外など全て瑣末事だ。その為なら殺人の一つ二つ、世界の転覆でも救済でも手段は一つも選ばない。
まあ、報酬の大半は銀行へ振り込まれるので、現時点での金は使うのだが。思うに金を使わない奴に金運など降りてこない。古臭くカビの生えた紙幣を持つ奴なんぞに金の女神が微笑むのか?
無理だと思う。なのでじゃんじゃん投資しろ。
具体的にはおひねりだ。相撲を見ておひねりを投げるなら、物語に感服して投げても良い筈だ••••••狭い価値観で進歩しないから駄目なのだ貴様らは!!
全く、いい歳して恥ずかしくないのか? 真っ当な人間であれば支払う金くらいはあるだろうに──────非人間の私に言われたらお終いだぞ!!
さて、とりあえずはこの金で飲んで食って抱くとしよう。まあ、疲れている時には抱くのは割と遠慮したい。大体この街には物騒な女が多いのだ。
「待て」
頭の中で誰にするか、いや食べて寝るかと考えていたところへ博士の鋭い声が突き刺さった──────聞く者全てが安らがない、実に神経質な声だった。
「それで、例の女のほうはどうだった?」
「何のことかな」
とぼけるな、と端的に彼は詰め寄る。何であれ最低限、必要な事のみを通達する。彼の癖だが、悪癖とも言えた••••••実際、その癖を嫌って離れたり裏切ったりする悪党の数は実に多い。
回りくどいやり口や、計画的かつ政治的犯罪というのは、ただの強盗や放火犯には合わないのだ。私の作品が凡俗の読者に合わないように、犯罪にも合う合わないがある。そして彼は、大半の犯罪者には合わない。
思考が先を行き過ぎるからだ。良く分かる。
「ハイ厶と名乗るあの女は、実際にはこちらで建国するつもりは更々無い。人材だけ売り渡し自由を謳歌するつもりだろう」
そう、あの女はそのつもりだ。私には良く分かる。御大層な組織は「使う」ものであって例えば博士を打倒し組織を乗っ取る気分にはならないのだ。
面倒な上に、性に合わない。単独での技能を活かし、獲物を刈り取り達成を得る。
前に、人食い民族を狩り殺してやった事があるが、あれは中々の獲物だった。部屋に引き込もって計画を練るのは向いていない。
頼まれても御免だ。年中、部屋で計画立案に走るなど、何かの刑罰としか思えない。
「わかっていると思うが、放置するには戦力として大き過ぎる。どうするにせよ、管理者が必要だ」
「そちらで引き取れば良いだろう?」
無論、そのつもりで実行した。これ以上小娘の面倒は御免だ。
カネにならないし疲れる。
だが、予想外の言葉が来た。
「駄目だ。こちらで使うには合わない輩だ。私の計画に起用する事はあるだろうが、普段小娘を拷問する事はあっても面倒を見る施設にはなっていない」
「そりゃそうだが、部外者として雇えば良いだけだろう」
そういう雇われなど幾らでもいる──────特に、毒と飯と薬が盛んな、東の国には幾らでも。
「当初はそのつもりだったが••••••残念だが、政治的影響が大き過ぎる。貴様は良くやってくれたし、彼女も想定以上に協力した。だが協力の幅が大き過ぎて、世間に与える影響が想定を超えている。
組織としては成功したが、何であれ成功し過ぎるのは問題だ。身動きが取れなくなるからな」
成功や勝利に縁が少ない私にはわからん話だ••••••作家として成功し過ぎて、追跡者に狙われるみたいな話だろうか?
私なら、立場的に狩りにして良い相手が自分から来るなど喜び勇んで殺すだろうが。
表面上は、敏腕美人の女流作家が書いた体にすればいいしな。大体が中身など、読者が本当に見ているのか?
それなら尚更救い難い。読んで金も払わないのだから。そんな私の気持ちも無視して博士は端的にこう言った。
「やはり死んだ体で利用する方が、望ましいと判断した──────駄目だ、ジャック。貴様の方で、しばらくは引き受けろ」
••••••••••••••••••彼はこう言うが、拒否した奴は大抵寿命まで長生きしない。
何せ、手を下したのはこの右腕だ。
「••••••本気か? 私に子育てをしろと?」
「厳密には17歳程だ。エルフ民族は人間とは年の数え方が異なる」
人間の情緒がわからないのか、彼はズレてる答えを返した••••••••••••どうしたものか。
犬だけでも出いっぱいなのに、猫も増やして面倒を見る?
地獄だ。シリーズ完結まで書き切った作家にとって、何より大切なのは「静謐な時間」である。
逆に、爆音の鳴る中で、貴様らは何か書けるのか?
無理だ。まあ、売上が上がらなければ放置しても構わないので、いっそ当面は休み期間と称し詐欺で稼ぐに抑えておくか?
真面目に執筆するより、その方が金になる。
部屋を出て、天を仰ぎながら私はそんな思考に陥った。思うに───読者にしろ犯罪にしろ「結果」だけが大切であり、過程とは当然「積み重ねられた結果」そのもの。
見る目の無い奴等だ!! 読者でも神でも仏でも悪魔でも良いが、これだけ積み重ねた私相手に、支払う報酬が獰猛犬か!?
私が一体、何をした?
ちょいとばかり人より犯罪が多く、シリーズ完結まで物語を書き切りタダで配布までした聖者ではないか。隣人を愛せと言うなら作品を、それも何十年も費やした一品を立ち読みしたなら札束くらいは置いて行け!!
光る石ころに万札を払うよりは、よほど有用な使い道だろうよ!!!
本来、それが出来ればいちいち価格など設定する必要すら無いものだ。実際にやれば何が起きたかといえば、タダ読み漁るだけでただの一円も払わない。それで「最近は面白い作品が少ないね」などと、ほざけ読者が!!
そういう意味では、新規加入の女が何をしてどうシャワーを浴びるかという、読者の望みそうな噺は書いてやらん。
女が増えた分「女にしか出来ない」犯罪の幅も増えるのだが、御大層な読者はタダで読むだけで払わない。
ならば知らん。貴様ら100円も払わない奴等に「敬意」なんぞを持ち合わせるのか?
しない。同じ事だ。
なので、私はこう言おう。
いい気味だ、ざまあみろ!!!
余談
犬千代 BからC(目測)
筋肉質に鍛え上げた野生の美貌
荒々しく、女より獣の雌というのが相応しい
割と純真無垢な部分が残っており、人間は嫌うが人間の文化に興味がある。たまに輝かせた目で物欲しそうにそれらを見る。
買ったか? 想像に任せよう。
割と心が弱く、復讐に必死。だが弱みは見せたくないので指摘するとキレる。
毎回キレる。ツッコミ担当。
ナイフは天性の才能があり、苦労して磨いた私の技能は何だったのかとたまに思う。
••••••天才か••••••••••••
本人は元が「お嬢様」だったらしく、所作や人付き合いは物凄い。いなければ毎回問題が起きたので、仕方無く連れていく。
「お前は対人関係を知らねーのか!?」とは本人の弁。
生憎、非人間なので知らんな!!
同じ種族の筈だが、迫害された記憶しかない
••••••••••••おのれ読者め。
未払い程「屈辱的」な迫害は無い!!
貴様ら支払い能力が無いんじゃないか!?
知性は高いが、魔術の素養に関して聞いた事が無いのでそこは知らん。同じ建物に住んでいるが、部屋別なのであまり会わない。
筈だ。違っても構うまい。
最近は生活に慣れて来たのか、雑な格好でやれあれが無いこれはどこだ、前の話はどうなったと細かい話を聞きに来る。
細かい。女と男の差か?
「お前が雑過ぎんだよ」との弁だが、しかし私の今までの活躍を見れば分かる筈だ。
結果、上手く回ればそれで良い!!!
近所の子供の面倒を見ている気分だ、と答えるとキレる。子供扱いもキレる。
••••••••••••そういう部分が子供だろうに
ハイ厶 身長は150前後に見える
サイズはスイカ 髪はサラサラ赤色
我儘に振る舞うが実は賢明。瞳も赤
政治的やりとりに慣れているのか、対人関係に強い犬千代と違い、対人支配に長けているのが違いの1つ。
利害関係が絡むやりとりが得意なのがハイ厶
人間的魅力演出で好かれるのが犬千代
全てに嫌われ、単独で殺し合うなら無敵だが神も仏も個人的に私を嫌ってるんじゃないかという、不当な差別を受けたのが私だ。
見る目の足りない奴等だ••••••••••••
余談だが、神社に参り出ると体調を崩して死にかけた。それも、一度二度ではない。
この間も••••••搬送••••••••••••いや言うまい。
魔術などという、胡散臭い術理に長けてるらしい。ちなみに、私がやり方を聞いたら
「才能無いわね、貴方」
とか言いやがった!!!
才能か!? 知力か!? 私とて幼少時代に殴られ過ぎる前は、良かったんだよ!!!
書物など、読んだだけで記憶出来た••••••••••••どれだけ殴られたんだ、私は。
頭は良いが、本質を見る目だけは私に遠く、及ばない。もう一度言う。
私に!! 遠く!! 及ばない!!!
優れ過ぎるのも考え物、という事だな。
物を知らない読者に教えてやろう。
言い張るだけなら、何であれタダだ!!
さて、政治的関係から肉体関係を持つ事すら多かったらしいが、その辺も犬千代との違いだろう。最も、ハイ厶も根底は同じだが。
人を使う側、というのは得てして真っ当な、普通の人間がするようなやりとりが出来ないもの。普通の生活に焦がれる女とも言える。
私は無論、ロクでも無かった。
••••••••••••幼少期など、殴られて脳がやられ、馬を追っかけながら楽しんだ記憶しかない。
青年期? 奴隷作業だ。無論、代金未払いで
何回死の淵を彷徨ったか、数えてすらいない
嬉しくもない。やはり金が欲しいものだ。
さて、次だ。何でも、3回抱けば確実に奴隷に出来ると、テクニックを豪語するらしい。一方で理系なので、男より理論。情熱よりも経験から来る政治的判断に長けている。
能動的に見せかける「外向け」のやりとりと違い根がインテリなので、普段は部屋に引き籠もって実験に専念するタイプである。
変な薬品?実験に魔術研究だと付き合わされ───ブチ撒けた時は凄かった。
ヒステリー、どころではない。噴火だ。
火山というのが相応しい。社会の裏側で練られた人造火山。得意技も火系だそうだ。
何でも、知らない男に肌を見られることより研究中に邪魔される方が比較出来ぬ程許せないらしい••••••••••••私はブチ撒けただけだが。
目は良いが、研究中は何かを見るのにいるのか眼鏡を掛ける。
頭が良く見えるからか?
タバコも吸うが、マナーは守る。飲酒カフェインとあらゆる禁則物質を楽しむ方。また、派手好きで何であれ初対面は気安い。
今まで政治の為我慢してきたものが、今さら爆発したと言える。
元がお嬢様で悪ぶってる犬千代と違い、元が悪だったが周囲の為に我慢した。文系で情緒を慈しむ犬とは全てが真逆。
心のあるロボット、というのが近い。
男を抱くのも利害関係であって、情緒は一切無く何も感じないらしい。なので、犬千代がある意味羨ましいんだとか。
私はひたすら暴れられれば、そしてそれが金になりさえすれば他に何もいらないタイプだ。言わば「戦い」の形が執筆か作品を売るのか殺し合うかの違いだけだ。
生きている敵は殺す!!
動く敵対物は、叩き壊す!!
運命が邪魔なら、ブチ破って殺し尽くす!!
対して、ハイ厶はその辺り現実的だ。敵だけでは勝てないという思想で「敵を味方にするのが至上」という考えらしい。
••••••••••••••••••••••••私とて、読者に協力させる事が出来ればとタダで配ったりしたのだが、どうも若い女が良いのだろうか?
わからん話だ。
個人としても強いが、基本的に自分一人での戦闘はしない。暗殺向きの犬千代と違って、組織化能力が高いタイプ。
それも、殴り合いより情報に強い。弱点属性だけをひたすら事前に調べ上げ数の利で叩くやり方••••••••••••つまらん戦い方だ。
やはり、斬り合いで良くないか?
生きるか死ぬか、それが愉しみだ。
俯瞰するのが得意で、眼の前の敵はとりあえず殺そうとする私の首根っこを抑える担当。とはいえ、ハイ厶自身も割と交戦はした。
利害が先に出るので、殺しも利益で考える。
こんなところか。執筆意欲なのか連中に強要されているのか、私は知らん。
少なくとも、カネにならなければ続かない事だけは確かだ••••••••••••最も、邪道作家の方は既に完結まで書いたのだが。
おひねり制で邪道作家シリーズの方は出した。誰も読むだけ読んで払わなかったが、一応はそういう体で出している。
読むなら払え、払わないなら読むなという話だ
ああ、そういえば語り手自身に関して項目を書かなかったが、それは簡単だ。
売れればそれでいい!! 女子中学生作家、とかの方が売れそうだしな。
中身を誰も見ないというなら、受けそうな表面だけ用意しよう。
どう考えても長身の反社会性力にしか見えなくとも、それはそれとして表面だけを読者が見るなら、表紙に若い女を貼り付ける。
例え、人格を丸ごと用意してでもな••••••金になるか、それだけだ。
「結果」だけだ。過程とは、結果を積み重ねたものなのだから
世界観
南は犯罪者の楽園だ。具体的には、女相撲が流行り売春婦は6才からいて、チェーン展開された麻薬専門店が立ち並ぶ。
歩けばひったくりに会い曲がれば強盗もどきに遭遇する。おかげで法という概念が無いので誰を殺そうが問題無い。
無論、各組織の幹部は別だ。構成員同士での争いは固く禁じられており、私は構成員では無いので2.3発ブン殴った。
その後? 殺し合いなら負けていない。
最も、私の悪評は知れ渡っているので、基本襲いかかるのは魔性と分類される鬼くらいだ••••••神を名乗る宇宙人連中が台頭してからというもの、エルフだの混合人類みたいな奴から知性の無い実験生物まで広がりきった。
治安を乱す為、ではあるまい。何かの実験の成果かもしれない。
生物進化を辿る為、とかな••••••••••••連中ならやりかねない。
というのも、所謂その「英雄」と呼ばれ活躍する奴等は、単に神を名乗る連中との混合種─────被検体に過ぎないからだ。
何故そんな事を知っているかって?
無論、日々仕事に勤しんでいるからだ••••••••••••犯罪行為を世間的にどう言うかは、学者にでも論争させておけ。
巨大な実験場、それが超大陸などと呼ばれるこの土地だ。最も、宇宙人だろうが人類だろうが、本質の見えぬ読者など知らないが。
さて、読者お楽しみの「女相撲」についての話をしよう。無論賭けもするしこの人道的な催事に関して、よもや反対意見などありはすまい。
••••••犬千代に教えた際は、会場にゴミを見る目線を向け唾を吐き捨てた••••••••••••観戦する分には楽しいものだが、残念ながらご無沙汰だ。
やれやれ、何がいけないというのか。 ちなみに、扮装や盛り上げの為のショーもあるので老若男女問わず楽しめる。
麻薬はやらない。腕が鈍る。歓楽街だらけの中では賭博関連の方が優勢だ。最も、その分負けて無くなる輩が多くなるので、取り立ても我々の仕事となる。
男なら内臓か被検体。女なら売り飛ばす。
そんなものだ。第一、人間の生活自体が大量の死体、即ち動植物の命で支えるのだから、別に人間の命も同じ事だ。
平和と言おうと戦争と言おうと、本質的にはかわらない。同じ事だ。
さて、次だ。
人種は、以前説明した通りバラバラだ。エルフが禁止魔術の独占に走り、ドワーフが禁止技術で兵器を作る。おかげで神々でさえ近づかない魔境と化したが、我々には馴染み深い故郷であって、青い空など他人事だ。
大陸の名前は忘れた。パンだか何だかだった筈だ。南は前回言った通り、大江戸絢爛魔界とか呼ばれている。
あとは、家賃が安い。
とにかく安い!
何せ、超の付く危険地帯だ。住むだけで金を貰える奴もいる──────私か? 無論、以前の持ち主を殺して奪い取った。
偉そうな奴だったからな!! 何故かエルフには感謝されたが、私に言わせれば読者身分で、作家に口応えする時点で死罪である。
最近はダークエルフとか呼ばれる武装民族もいるらしい。大陸全体の治安が落ちれば犯罪指数も跳ね上がる。当たり前だが、金持ちの数イコール犯罪指数と言い換えて良い。
北の金持ち搾取が増えれば増える程、ここは大勢で溢れかえる。
そんなものだ。そういう部分では、金持ちを恨む奴も多い。奴等は奴等で、半ば犯罪者みたいなものだしな!!
思うに、そこまで富を独占出来る時点で異常だろう──────善意で稼いだとでも言うつもりか?
馬鹿馬鹿しい程傑作だ。やれやれ。
何にせよ、最悪の街である事だけは確かだ。最も、人間が望むのはその最悪であるので、つまりはこの街こそ楽園と言えるのだが。
食品も凄いぞ。ある筈の無い食べ物、潰れた筈の店が沢山ある!! 住民は慣れているのであまり引っかからないが、外から流れついた奴等はよくかかる。
まあ、死にはしない。筈だ───違っても、別に知らないが。
後は、暴力溢れる街だからか「傭兵」としてビジネス展開する奴は多く、軍閥もそれなりにあるのでちょっとした戦争屋だ。
正規の人類神仏混合軍には敵わないが、だが簡単に手を出す奴はいない。当たり前の話、大陸の南全域を占めるからだ。
かなりの広範囲と言えよう。無論、戦地拡大すればタダでは済まない。読者とは違う。
面倒なのでこのような説明はここまでにしたいものだ──────金になって豊かな生活が享受出来れば考えておこう。
最も、読者に期待出来るかは疑問だが
余談だが、この街においても一番の悩みは「人間関係」であるらしい。
人間に合わせる事を悩んでも人間関係そのものを悩むことは無い私にとって、これほど分かり難い話もない。
何にしろ、どこでも悩みは同じ、という事なのかもしれなかった
経歴編
無論、ブン殴った。それも「もう殴らないで」から「早く殺してくれ」と懇願するまで強く激しく、そして死なない程度に手加減した。
というのも、当初この街に来たばかりの頃は当然「住める場所」に心当たりなど無かった──────当たり前だ。他の作家ならいざ知らず、そのような「要領の良さ」とか「人との縁」に恵まれた連中と一緒にするな。
当然、古今東西、過去現在において敵だらけだと保証する••••••未来に関しては、まあ、あまり考えないでおくとしよう。正直想像もつかないが、何であれ悲観的みたいな考えになるのは宜しくない。
果たして「味方」などという概念が存在するのか疑問だが、まあとにかく住める場所など法の無い街ならどうにかなる。法律とは弱者から搾取する手段であって、無ければ誰もが自由になれる。
具体的には、エルフの売買がなされていた。
なに? 売春宿ではないかだと?
馬鹿め!! 魔術だの何だのが使える連中に関して言えば、技能を活かした方が金になる••••••••••••最も、そういう需要が減る訳では無いので売られた後は知らないが。
無論、私が気にしたのはそこではない。
とりあえず軽い視察でもしてみようかと、言わば顔見せの段階だった。運営者はゴブリンと人間の掛け合わせなのか、体長5メートルはある大型の男だったのだが、その男が
「細っちろい人間種族だなァ••••••家で本でも読んでるのがお似合い
と、奴の遺言は「そこ」までにした。
物語を軽く見た時点で、それも邪道作家に対してナメた態度を取った時点で、奴の寿命は決まっている。まして、あざ笑うなど「殺してくれ」というサインだろう。
サインは受け取った。私はノーコンだがやると決めた事はやる主義だ。実際、邪道作家シリーズは完結まで書いたしな。
全23冊、累計500万文字は書いた。それに比べればゴブリンを叩きのめすなど容易い事だ──────なので、容赦はしなかった。
善悪なんぞどうでもいいが、物語をコケにし作家を軽んじる奴は許せない。そも私に許す機能があるか疑問だ。とにかく、私は休まず弛まず、四六時中奴をブン殴った。
最初は反抗的だったが、次第にそれも収まり「許して」とか「悪かった」とかほざいていたが、生憎と免罪は無い。読者もそうだが、金を払わない読者と物語を軽んじる輩は死刑以外に有り得ない。
いや!! 無期懲役の極刑だ!! それも、地獄の鬼すら裸足で逃げ出す無間地獄が相応しい••••••それが何であろうとな。
そういう意味では、人間の信仰する神仏連中も「有罪」だと言えるだろう。訳のわからん英雄だの何だのを贔屓し、肝心の物語──────人類史より遥かに価値ある宝に一円たりとも払わないのだ。
極刑だ!! 決して許さん!!!
それら、物語業界に関する思いを込めながら殴り続けた訳だ••••••言わば「愛の鞭」であり「奉仕精神」のたまものと言えよう。
物は言いようだ。そこは任せろ!!
どうとでも、解釈してくれよう!!
何なら、世界に貢献した報酬として聖人判定してくれていい。最も、私が祀られた教会に十字軍は来ても神など知らん。
仏も同様だ。悟ったから、だから何だと言うのか••••••••••••衆生を救えなければ辞めるそうなので、案外失業したのやもしれない。
血を吐きながら戯言を何か言ってた気もしたが、私の耳には入らなかった。ただ、周りの首輪に繋がれたエルフ連中は違ったらしく
「あの、もうその辺りで••••••」
と、この私を静止した。
なので、私は聞いてやる事にした。無論、エルフだろうが人間だろうが読者だろうが神仏だろうが区別は無い。一切無い。
怯える布切れ一枚のエルフ相手に
「お前は••••••物語を、どう思う?」
とだけ聞いた。
少し逡巡してから、彼女は
「物語••••••ですか? あの、青い鳥とか絵本にある?」
「そうだ」
同じ事を確認するんじゃない。イライラして憂晴らしの為だけに首を切り落としてやろうか、とさえ思った。
だが、人間と対応は違っていた。
ひまわりのような笑顔と金の美しいと評判な髪をたなびかせつつ、
「いいですよね、物語!! ああいう御話には夢があります」
だから好きです、と。
••••••••••••私の物語にとて夢はある!! 多少非人間向きなだけで、それなら売れたって良い筈だ。
そうは思ったが、まあ一応傘下と言えなくもない。であるので私は敵意を抑えた。
その後、彼女らは博士の組織に接収されて、今では立派な悪党として七面六臂の大活躍を遂げた。言わば、人間リサイクルだな。
この場合、人間ではなくエルフだったが。
ふん!! 夢と希望だけが物語? まさか。何であれ野望と悪意が無ければつまらない。
私の場合、ちょいとばかり多いだけだ。
辛い物好きと同じだ。過ぎたるは更に強し。
であれば、悪意を刻みつけても構うまい。
その後、色々あってエルフの依頼づてに今の獰猛犬がいる訳だ。
ゴブリンはどうなったか? さぁな••••••••••••複雑骨折だけでも100ヶ所は超える。何せ、1日中殴ったのだ。あれで無事な生物がいれば、そいつは不老不死か何かだろう。最も、それでも死ぬくらいには殴ったが。
それなりに街の顔役だったらしく、私に喧嘩をふっかける奴はいなかった。残念だ。やるなら殴り甲斐のある相手が良い。
敵がいなければ、殴れないからな!!!
何故か、エルフの評判は上がったが──────その辺は関係ない話だ。第一、それが作品の売上に関与するか?
しないならば、知らん。
その後、知っての通り幾つかの依頼を受けて博士と取引をした訳だ。具体的には「獲物」を提供し金まで支払うという破格のもので、彼にすれば私という化け物が使えれば何でも良かったというのが実情だろう。
数多くの犯罪に関与したぞ!! 貴族は人間だけでなく攫ったし、金持ちは神々だろうと強奪した。時には、英雄などという胡散臭い連中とも争った••••••無駄に頑丈で狩り甲斐のある奴等だった。
神を名乗る宇宙人ども、博士は「グレイ型」とか読んでいた連中も拉致し、死体を解剖した事もある──────連中の言う「魔術」とやらを解明すべく、博士が私に依頼したが何でもなのましん、とか呼ばれる極小の絡繰仕掛けが仕組みらしい。
何人?も拉致したので、我らが組織は魔術に長けた。厳密には科学だと言うので、我々は魔術と呼ばないがな。
後は、敵対組織への攻撃も忘れていない。
というのも、当然ながら犯罪組織は我々だけでは無いからだ。
具体的には、まず宇宙から飛来した宇宙人、神々を名乗る連中自体も組織の1つだ。大体よくわからん奴等が急に来たのに、理解出来ないから何でも「神」というのは如何がなものか。
少しは考えて生きたらどうなのか。
やれやれ。
とまあ、ざっくりした経歴はこの程度だ。具体的な詳細を語るには、読者が金を払っていない。だから、無責任に放置させて貰う。
実際、責任は無いしな。読みたきゃ邪道作家の方でも勝手に読みやがれ
邪道作家シリーズもAndroidなら栞機能が使える。おひねり制として出したが、決済能力のない奴らにそんなもん要求しても無駄だったな
タダで奢って得られる物は特に無かったが••••••やれやれ
ま、何にしろやるべきと信じた事はやった。やりたい形でやり遂げた。
その「後」なんざ、知らねーよ
学問編
誇りが無ければ、つまらない。
何であれ「気高さ」は必要だ。
思うに、結果というのは「理想」と「利益」を、両立させてこそ得るものだ。
利益だけでは、結果と呼ばない。
ただの「卑」だ。そうじゃないか?
忘れるな!! 理想を以て信念を貫き、それを実現するのは難しい。だがな!! それをしないで生きるのはただの「無駄」だ。だからこそ面白いし、だからこそ、突き進むだけの価値がある。
それを忘れるな!! あとは、まあ、オマケみたいなもんだしな。
さて、学ぶことは大切だ。それが犯罪でもな••••••具体的に言えば、異性関連はダメだ。
というのも、男にしろ女にしろ「ご褒美」を期待するのはよろしくない。大体が、同じ職業(強盗やら美人局やら種類はあるものの)である時点で大抵がろくでなしであり、真っ当な神経を求める方がどうかしている。
私か? 無論、イギリス紳士の見本みたいな奴だと思ってくれ───いや、やはり敏腕美人女子高生作家とかの方が売れるだろうから、そういう事にしておこう。
性格は紳士で、見た目は美少女と思ってくれ。無論、私の紳士的行動というのは、気に食わない相手をブチのめして、利益を強奪することを言うのだが。
まあ、善悪など瑣末な問題だ。どちらに振り切れるか? それだけの事だろう。
倫理的行動が何かは知っている。ただ、生きる為には悪が無いとな。
でなければ、死ぬだけだ。真っ当に生きるなど自殺に等しい!!
経歴など詐称せず話す事がまず少ない。というのも、真っ当な社会で生きられるのは真っ当に(つまり楽して)成功した輩だけであって、社会どころか人間から外され敵意以外向けられた事がありませんと面談した後に、そんな人材が欲しいと言う商業体など存在しない。
なので、暗に連中はこう言うのだ。真っ当でなければ「死ね」とな。
生憎、私は迫害こそされたが虐められて黙るほど殊勝でもない••••••詐欺だらけの経歴(しかも真実を混ぜ合わせバレ難い)や軽快なトークで人を騙し、盗み奪って生き延びた。何であれ、生き残ねば先は無い。
無論、いつかは死ぬ。だが、ならばこそ、後悔する生き方などしたくない。
であれば、相手がエルフでもドワーフでも人間でもエイリアンでも、神でも仏でも騙すのは当然の行いだ。むしろ、私の住む街では称賛される作業だろう。例えば、近所にエリンジェットというゴブリンがいるが、奴の詐欺術は実に巧妙だ。
偽の経歴だけでなく偽物の家族まで用意しておき、捏造した話で対象の獲物を絡め取る───というのも、奴の仕事は個人相手ではない。組織だ。
例えば、ここに「世界を救わんとする勇者御一行」がいるとしよう。だが、そんな奴らに正面から殴りかかるのは、あまり賢い戦い方とは思えない。とはいえ試練があればあるほど燃え上がるのも奴らだ。なので、時に罪悪感を埋め込み時に狩場に誘い込む。無論、相手が勇者になれば簡単には行かないだろうが、その辺の商業隊程度であれば容易い事だ。
我らの街には大抵、入り口付近にそういう部隊が配置されている••••••情報収集の目的もあるが、外部からの金ヅル••••••新規顧客がどういう人種か知らないままでは問題だからな。何であれ情報を制した方が勝つ、とはハイムの言葉だ。あの巨乳チビは私をかなり痛めつけてくれたが、そちら方面での仕事には優秀なので、実際かなり重宝している。
その点、私はさっぱりだ。真正面から殴った方が早い。
思うに、犯罪とは情熱的な活動であって、自身の情熱がどこに向かうかが肝要だ。
なので、ちまい犯罪はするべきではない。座談会を開いて思考法を広めるよりは、やはり大物を追う殺し合いの方が魅力的だ。
以前の大騒動、素っ裸の老若男女を匿った話がそれにあたる。具体的な内容については調べてもらうしかないが、その後どうなったかという話であれば理想国家建設の為にエルフ連中をまず囲い込ませた。
というのも、国際的な詐欺というのは、綺麗事を盾に取れば上手くいく。
なので、我々はまず「エルフの人権活動家」というパンフレットを配り歩き、人間社会へ訴えを通した。何ともお笑い草だが、実際にやったことは利益がため政治家に賄賂と強迫行為を繰り返し(拷問の件は例の記事を見てくれ)時に生きたまま犬に食わせ、時に平和的やりとりで解決した。
具体的に? ふむ、誘拐ではないと言っておく••••••むしろ、資金援助に熱心な依頼主の一人が、娘を有名大学に通えるようにしただけだ。
というのも、そこの教師の一人が性的虐待を繰り返す輩だったため、私が二、三発ブン殴っている間に証拠品を捏造。その上で経営陣を脅して入学させた。
教師はどうなったかだと? さあな••••••拘束するだけでいい、とは言われたが、あまりに気色悪かったのでついブン殴った──────以前の仕事で衛兵を頭部鎧ごと砕いたのは知ってるな? つまり、それを三発ということだ。
動かなくなったそれを経営陣に見せつける役割は果たした。その辺に捨てた筈だが犬か何かが咥えるだろう。生憎、ゴミ処理係は私ではない。
そして、散々迫害されてきたエルフ民族とやらの、新国家設立に寄与したわけだ。何なら世界平和賞を貰って良いくらいだ。何せ、エルフ民族の独立というのは読者が知る通り200年は成らなかった。
というのも、それも同じくわかってると思うが人間は差別や有意主義が好きだからな••••••無論、我々はそんなもんどうでもいい。
必要なのはカネだ。しかし、欲しいものは違う。
200年ならなかった独立体制を敷いた上で、それらを犯罪業に利用する、という部分が博士の琴線に触れたらしい。私も、ここまで大きな亡命、というか集団拉致に関与するのは初めてなので、それなりに達成感は感じ入った。
いい仕事だ。器物損壊、要人の拉致、爆破に情報や金の強奪、そもそもが密入国で経歴も詐称したから、詐欺罪にもなるだろうか?
とはいえ、結果オーライだ。エルフ連中の国家は出来たから問題あるまい?
当然それらを博士は利用した──────汚いとされるカネを綺麗にするのに、道徳というのは有用だ。「エルフの民族復興へ寄付を!!」という題名だが、当然の権利として我々が幾つかの組織を経由してカネを押収。いわば国家建設の手数料としては破格の行いなので、これもボランティアと言えよう。
その上で••••••当然、武器や人材も流入させた。具体的にはダークエルフとかいう奴らが割と傭兵気質であるらしく、連中を密入国させる為に時に支援用物資、時に現地のエルフたちからのお礼の手紙(中は相当息苦しいらしく、入れられたダークエルフとやらは言語がわからずとも罵詈雑言とわかるほど罵っていたが)に入れるという人道的支援で解決した。
何故か感謝はされなかったが、まあこれも世のため人のための行いだ。陰ながら、裏で社会貢献する「正義の味方」とでも思ってくれて構わない。
ちなみに、政治家以外はと言えばその依頼人ではないが、ある程度有力者に賄賂を送り情報を流し報道にカネを払えば何とかなる。パンフレットは配ったが、それは逆らう奴らの家の前で、暗にやらないとどうなるかを示す為だ。
配った翌日に、家が毎回燃えれば嫌でも気づく。うすのろい猛牛でも、逆らったらああなるのだと示す行いこそが肝要だ。なので、我々はもっとやった。
反発者は鞭打つ!! 人間有意主義には拳をブチ込む!!
意思が黒かろうが、社会の為になるのだ鎌うまい。
話し合い? それで解決すれば差別制度など存在しない。イーストだかカーストだかがある国で、平等精神について語るに等しい。
生まれで差別し、その上で人道を唄う。
少なくとも、連中のやり方で差別が無くならなかったのは確かだ。それが経歴なのか人種なのか金持ちかなのかはともかくな。何にしろエルフ連中は救ってやった。
利益のついでではあるが、それはそれこれはこれだ。
何にしろ、確実に言えるのは「もう差別しないから殺して」と叫ぶ程に、割と楽しみつつ追い込んだ事は確かだ。保証しよう。なので、連中が差別する事は無い。
決してな••••••天地がひっくり返ろうが、二度と無い。
なので、それをいいことに我々は権利拡大活動を開始した。人間の善意に付け込み「哀れなエルフの人権回復」とやらを楯にしてやりまくった。というのも、民衆はアホなので「道徳」があれば、何をしても良いと思い込む。
実際には道徳なぞ持つ側の都合でしかなく、この大陸だと神だの仏だのを名乗る、言わば宇宙人連中の「都合」に過ぎない。
だが、それはそれとして使えるものは使う主義だ。なので、人権回復の為に著名人をタダで雇えるよう周囲に善意の圧力をかけさせ、我々の組織は金貨5000枚分の依頼料をまったくの「タダ」に変換した。
素晴らしい!! 善意とやらも使いようだ!!!
私は学習する悪党だ。なので安心しろ読者ども••••••何をしてでも、どんな「手」を使ってでも、エルフ民族は独立させる。
まさに我々にしか出来ない「偉業」といえよう──────善意にだけ固執する人間には200年の差別が続いても、悪党の手にかかればナプキンで拭くように掻き消せる。
そして、立地も完璧だ••••••••••••博士はその辺が嫌らしく優秀だ。悪辣を通り越して感動を覚える。というのも、我々の住む治安の悪い南でも、独立しつつある東でもない、それらの中間地帯にある元は北の金持ち神仏共が使った「放棄神殿地域」と呼ばれる場所へと建てたのだ。
何でも、博士に言わせれば「核兵器」とか、呼ばれるもので文明を何度も滅亡させた挙げ句、人種改良や人体実験を繰り返させた場所らしい。
何トカ射線は除去されてるから問題ない、と彼は言っていた気がする。最も、元々エルフはそういう環境で生き抜く人間と彼らの混合種らしく、別に汚染されても大丈夫らしい。
••••••エイリアンの考える事は意味不明だ。
とにかく、宇宙から来た自称「神仏」連中は信仰を以て今の社会を作り出した。なので、建前で実際にはただの実験場だったとしても大っぴらに破壊するのは難しい。
最近でも、人間の巡礼が行われてた地域だ。建前上は「全ての命は平等」を語る彼らにとって、そこを占拠されれば破壊は出来ない。
まあ、神だか仏だかを信じない奴は人間では無いから殺そう、という発想も普通にある。とはいえかつての遺跡を丸ごと爆破も出来ないだろう。連中は綺麗事が好きだからな。
そこに付け込む訳だ。結果、東と南の悪辣国家とも取引が進み、武装中立化に成功した。
魔術と呼ばれる超科学に適応するエルフ民族は、我々の仕事に役立つ筈だ。諸君、今回の教訓は「タダで人を救うなかれ。やるなら国ぐらい要求しろ」の一言だ。大体、英雄連中は頼まれもせずに戦うらしいが、私に言わせればタダで行うのは遊びだろう。
カネだ。であれば、世界ぐらい救ってやる。
無論、誇りも忘れていない。というか人間と違って世界で最も「差別問題」から縁遠いのが我々だ。だから、人種に拘りは存在しない──────何だろうと不可能であれば挑み続ける。
それを可能にする。それが生き甲斐だ。
300年だか数百年だか差別されたかなど知ったことか!! たかがその程度の不可逆、私が「可能」にしてやろう!!
任せろ!! たかが差別の運命の一つ二つ、この私がブチのめす!!!
邪魔する奴は、何だろうとやる。
悪党ってのは、そういうものだ
邪道勇者 ストーカー編
金玉を蹴る機会を逃す輩は愚か者───哲学者の言葉だ。
私の知る数少ない「参考になる」哲学と言える••••••何であれ恵まれた連中の言葉には耳を傾けるつもりはないが、それはそれとして使えるものは使うべきだ。
例えそれが、護衛対象を狙う追跡者だろうとな───生身の人間、つまりバラバラに引き裂かれていない「呼吸する人体」を、痛ぶれる機会はそうは無い。というのも私の場合知らない連中に喧嘩を売られることは多々あれど、軽く「えいっ」と、二、三発殴りつけ叩きつけ脅迫しただけで彼らは戦意を失うのだ。
悲しいことだ••••••どうせなら生の肉体を痛めつけ、削れるだけ削り大物の息の根を止める行為こそ、大いなる「生の実感」を与えてくれる。私に言わせれば頼んでもいないのに追跡してくる輩がいるなんてご褒美だ。
わざわざ追わなくても、勝手に獲物から来るのだろう?
素晴らしい───何せ、「恐怖のあまり手が」と正当なる防衛行為を訴えさえすれば、阿呆な人間諸君は非人間の私とは違い「襲われるからには被害者」で、無罪を勝ち取り助けてくれる。
まったく!! エルフの歌姫だか何だか知らないが、文句の多い女だ。たかが一人二人追跡者がいるのが何だというのか••••••何もしていないのに数十人に囲まれ、敵意を向けられる私とは大違いだ。
楽な人生で、羨ましい。
ちなみに、私の場合はというと「殺人衝動」はある程度、自前の精神力で抑えつけられるが、上記のような状況へと陥る度に「暴発」しそうになるのを堪えた。
なので、私の場合は「追われる身分」と言われると「殺人を我慢しろ」と翻訳され理解する。基本的には過去の我慢体験なので、あまり良い気分はしない。むしろ、「何かが追っている」と言われれば───ふむ───我慢が───まあいい。
やめておこう。毎度本能のままに荒ぶるのも大人気ない。
さて、我々は部屋の中にいた。とはいえ「快適な」とは言い難く、中央で縛られている男は中肉中背、いや、やや肥えたその肉体を出荷の遅れたハムの如く痛ぶられ傷だらけだ。しかも、囲むのは私と犬千代、つまり殺人鬼と人間嫌いですぐ殺したがる恨みつらみのある小娘だ。
「なあ、本当にやるのか?」
何を、と言われれば無論「拷問」だ••••••人間の皮膚を剥ぐと、どういう反応での悲鳴を上げるのか見てみたい───案外、邪道作家シリーズの売上に寄与するかもしれない。
まあ、詳細な拷問シーンを、見たがる読者がいればだが。
「無論、やるに決まっている。いいか、よく聞け───依頼人の望みは「二度と、ストーカー被害に遭わない」ことだ。そして、阿呆な人類にそれを教え込むより、適度に拷問して情報を聞き出し、捨てた方が確実だろう」
「そりゃ、そうだけどさ」
乗り気でないらしい犬千代は青い髪を垂らし、エルフ耳をしょげさせた。前々から思っていたが、人間とは種族だけでなく反応までもが違うらしい。
面白い生き物だ。とはいえ、私の邪道作家シリーズよりこういう「見た目だけ」の奴等が儲けているのかと思うと虫唾が走るが。
「ギィやアア!?」
と、興味深い悲鳴を男は上げた。無論、私が小指を叩いたからだ。何であれ未経験の反応というのは参考になる。それに比べれば人間の命の一つ二つ百二百、那由多不可思議安いものだ。
どうせ代わりも効くしな••••••そういう意味では読者もそうだが、非人間作家とは違って「幾らでも、代わりが効く」のが連中の本質なのかもしれない。であれば、なおのこと拷問が捗る。
「痛いッ!!?」
小指を踏んだところで犬千代がしゃしゃり出た。
「なあ、もう、やめようぜ」
「何故だ?」
「こういうのは、ほら、依頼人のイメージにも関わるだろ?」
やはり、依頼人の女のファンらしい───隠してはいるが、同じ種族の有名人にはやさぐれエルフも甘くなる。ちなみに、私に「同族」という意識の生物などいないので、残念ながら「頭で理解」出来ても「共感」は出来ない。
無論、金になるなら「フリ」はする。
それとこれとは、話が「別」だ。
しかし───愛だの恋だの、そんなくだらん物を歌う連中の、何が良いのだろう?
思うに、「歌の良し悪し」なんぞ誰も見ておらず「有名な誰かと繋がりたい」欲望による動きだろう。
浅はかな奴らだ。だから進歩せんのだ貴様らは。
「フン!! やめて、どうする? またストーカー行為に勤しむだけだ」
「しない!! しないから許してくれ!!」何か叫ばれた気がするが、私の誇る、非人間の特殊技能として「都合の悪いことは聞こえない」が発動した。
なので、知らん。やはり、始末した方が確実だろう。
「いいか、よく聞け───我々の受けた依頼は、要するに「華やかな業界」で必ず発生する「荒事の処理」が担当だ••••••こういう連中の「処理」も、当然依頼人と関係ない体で行われる。
無論、我々から更に「外注」する事もあるが••••••金額が金額だ。たかが護衛と、邪魔者の排除で二千万。二千万を守る為なら一人二人別に構うまい?」
人間一人の単価が大体、50年働かせて数億と聞く。だが生憎とこの追跡者には、そこまでの生産性があるとも思えない。であれば、順当に考えて価値のない、金にならない命なぞ文字通り「無価値」だ。
大体、正当なる防衛行為として、裁判で勝てる形に出来る。
であれば、取れる命は取るべきだ。そうじゃないか?
腹が減ったら食らうが如く、だ───このところ我慢に次ぐ我慢で、いい加減殺人衝動を発散したいというのもある。だが、これは「仕事」としてもやるべきことだ••••••決して「役得」だなんて、思っていない。
言うだけならタダだ。なので言っておく。
無論、違っても1円も払わないが。
「だけどさ、やっぱり「イメージ」ってのは大切だよ。ここで「殺人が起きた」ということになったら、幾ら依頼人でも誤魔化せない。折角の講演会もパァだ」
私は無論、構わない。
中途半端に「才能」だの「境遇」だので楽した連中には虫唾が走る。才能もないのにひたすら書き殴り、今に至る私とはえらい違いだ。大体、才能が凄いのであって連中自身が凄い訳でもないだろうに───忌々しい奴等だ。
とはいえ、依頼人の評判もある。確かに、「惨殺死体」はやり過ぎか?
窒息死、いや、「食べ過ぎによる救急搬送」とかで、下半身付随にしておき一生、歩けもしなければ動けもしない程度に済ませるべきか••••••考えてみれば、別に、この男を「殺せ」と依頼を受けた訳でもない。
「なら、どうする? このままここに縛っとくのか?」
「いいや、俺に考えがある」
言って、犬千代は男の縄を外した。
そして───
2
万雷の喝采ほど、忌々しいものはない。
というのも、そんなもの受けるのは「恵まれた持つ側」であって、私のような反対に位置する悪にすれば、恵まれた豚の鳴き声なんぞ喜ぶ部分が存在しない。
だが、私は拍手をした。依頼人が見ていなければ舌打ちして唾を吐き捨てるところだが、生憎、我々はステージの前だ。
余計なことを••••••関係者だからと近くの椅子に案内するとは───もしや、遠回しな嫌がらせか!?
なんて性格の悪い歌姫だ。
私に言われたらお終いだぞ!!
さて、ストーカーがどうなったか? そこは簡単だ。彼は一物を切り取られ、今は南にあるセント・キアラ精神病棟にいる。というのも、すぐさま官憲に引き渡したものの、他の罪状を加えたからだ。
まず、私が依頼人の部屋を荒らしておく。そして(関係ない)マネージャーとやらを背後から闇討ち。それもこの男がやったことにしておき、更に複数の罪科を加えておいた。
具体的には、近場で起こった銀行強盗や放火犯、我々の知る愉快な仲間たち───主に、法と倫理を失った彼らの仕事を、この男の手柄にしただけだ。
我ながら最高のアイデアだ!! 最初は、部屋を襲われた体にしようと、犬千代が言っただけだった。しかし、そこは私だ。どうせなら、他にも仕事自体はあるのだから、いっそ「全ての手柄」をくれてやるだけで出てこれない。
しかも、我々のアリバイは証明される、という訳だ。
なので、いけ好かない歌に対する拍手も、思いのほか機嫌は良いままだ。何なら、花の一つでもくれてやれる。
利益も大きかったからな••••••代役を求める組織は多い。
実際、実行犯として「捕まる役」を売り渡すサービスは実在する。なので、誰かがうっかりやったとしても、金さえ払えば会ったこともない奴が犯人として出頭する───無論、それなりに値は張るのだが。
だからこそ、良い仕事だった。何せ、タダで幾つかの仕事───要するに盗みだが「安全」かつ「確実」な、仕事の遂行に寄与したのだ。
依頼人も危険が晴れて機嫌良くボーナスを払ってくれた。
世は全てこともなし。
めでたし、めでたし!!
邪道勇者 第一巻 最後に
何度も言わせるな───やるべきと信じた、邪道作家に後悔は無い。
作品にしろ改革案にしろ、活かすも殺すも、それは「読者次第」だ。例外は無い。
戦うだけ戦って、進むべき「道」を進んだ。
金とか要領の良さは知らねーが、切り開いた先に例え財宝の山が無かったところで、私はやるべき「全て」をやった。
何もせずに漁るか、何かを示すか。
読者の勝手だ。故に知らん。
ま、恥の概念があるなら「読んだ分」くらい払ったらどうだ?
作品は勿論だが、業界の未来が「このまま」で良いとは思えんからな───物語業界には未来がある。だが、生憎とそちらはタダではない。
何かを変えるには、それに見合う「何か」をしなければならない───私はやった。
───読者は、どうだ?
邪道勇者 第二巻
作品テーマ 非人間讃歌(試験的に人間讃歌も導入)
ジャンル 犯罪ファンタジー
創作目的 特に無い。非人間なりに足掻いた結果だ
2巻というより2話が正しいが、2話の2とかややこしいからな。
補足として、本作では語り手が非人間讃歌であり、物語自体の主人公は人間讃歌を体現する小娘となる───こんなことをして、果たして意味があるのかさえわからない。
何せ、初期段階では出てくる予想すらしていなかった小娘が、知らん内に物語に介入しただけだからな───なので、物語の出来栄えは女の方に聞いてくれ。
••••••本来は、中年だらけの犯罪者御一行が、ひたすら犯罪業に邁進する物語の筈だった••••••まあ、丁度良い機会だ。やはりこれで結果が出ないなら、人間讃歌なぞ誰も「本当は信じていないし、むしろ嫌っている」のが真実だろう。
実際、こちらがそう振る舞ったところで、返す読者など皆無だからな••••••実際にやった私が言うんだ。間違いない。
当然ながら、こんな横書きで書くのと縦書きで書くのは違う。
スマホ対応にはとかく苦労したが、まあこれで読めなくは無いだろう。
元より「創作の参考用」としての作品なので、詳細など知らん。
何にせよ例の業界改革案の実現なり、邪道作家シリーズの喧伝が為されないなら、読者の力をあてにし続けるわけにもいかないからな。どこか他所でやるとしよう。
やれやれだ。まさか他に23冊縦書き完結分と、業界の具体的改革案と新作2冊を出した奴はいないだろう───人間讃歌の言う「真実に向かおうとする意思」とやらを、非人間の私が体現する羽目になり、挙句「人間讃歌がいかに嘘っぱちか」をまさか実地体験する事になるとはな!!!
やれるだけはやった──────何にしろ、綺麗事だけほざいている奴等と違って、現実に行動へ移し、非人間なりに出来る「全て」をやったのだ。
後悔はない。無念さえ消えた。とはいえ、情けない奴らだとは思ったがな。
••••••結局のところ、前にもどこかで書いたが「人間讃歌」だけでは駄目なのだろう。現に、私以上に書いた奴はいない筈だが、売れて「利益」になったり「評判」を出すのは「要領の良さ」などの「真実からは遠い小手先」こそが真実だ。
まさか、連中が全員、何十年も信念を貫いたとでもいうのか?
つまりは、そういうことだ───遠回りしたから、信念を貫いたから、だから「報われて然るべき」などという「楽な人生」であれば、私はとうに大金持ちだ。
現実には───あれら人間讃歌こそ「ご都合主義」そのものではある。なので、ご都合主義を走る女と、そうでない虐げられた非人間代表としての物語、になるのかもしれない。
まあ、少なくとも私自身が苦難や遠回りを経て得た能力といえば、精々執筆や心理を理解する能力くらいだ───本作であればかなりの短編なので2〜3時間で書けたが、人間讃歌を混じらせる上に、横書き対応では良いのかさえよく分からん。
喜んでいいのか謎だな。やれやれだ。
何にせよ、確実に言えるのは「他には決して有り得ない物語」であるのは間違いない──────所謂「異世界がどうの」を「創作の参考用」として書き始めたのが本作だが、あまり子供向けの内容では無い••••••何であれ、書くなら「それまで歩いてきた道のり」が関係するということだろうか?
どこぞの人間讃歌と違い、現実に殺人衝動なんてものを持つなら「たかが人間風情の為に社会的没落はしたくない」というのが真実だがな。サイコパスだの殺人鬼だの色々ジャンル分けされてるらしいが、真実は違う。
とにかく、そちらには力付くの執念で勝利した───
あとは、上手く社会に適応して稼ぐだけだ••••••「生きがい」というなら何も持たないが故に、「生き甲斐という体として」始めたのが執筆だ。その辺は邪道作家にも書いたが、現実の非人間は貴様らが思うよりちゃんとしている。
喜怒哀楽すら共感しなかったので苦労したが、完全に「理解」して仕舞えば、後は表現するだけだからな。見ての通り、本作には喜怒哀楽が沢山ある。
••••••個人的には、知らない女達が勝手してる感じだが••••••まあいいだろう。
やれやれだ••••••苦労は山ほどあったが、「得られた利益」というと一円も無いまま今に至る••••••執筆衝動や執念、邪道作家として「やるべき」と考えたことは嫌でもやった。
そういう意味では、あの漫画は間違っているな••••••やる気が失せた程度で止まれるなら苦労はない!! 嫌でも何でも、今まで散々歩いてきた道のりを、途中で辞められるわけ無いだろうが!!!
それが「報われるか」は別だったがな───向かっているだけで辿り着ければ苦労はないし、実際「今更辿り着いても」と思わなくもない長い年月。喜べるかといえば「さっさと休みたい」というのが素直な感想だ。
とはいえ、それでもやった!! 文句が言えるのは、同じ労苦をした奴だけだ!!!
貴様らにそれがあるのか? 世界全てに指さされようが、胸を張り
貴様らの目が曇っているだけだ馬鹿め!!!
と、明言出来るだけの「圧倒的な自負」はあるのか?
無ければ、そんな人生に価値は無い───何であれ、それが花を育てるのか料理人になるのかは知らんが、執念で偉業を成し遂げる行いがなければ、要するに「代わりの効く代替品」でしか無いからな。
幾ら金を持とうがどれだけ成功を積もうが、量産品のネジの良し悪しなど知らん。
少なくとも、私は興味が無い───なので、そこは知らん。
逆に言えば──────そこに「だけ」は辿り着いたのは確かだ。個人的には、それが金にならないのは惜しかったが。
前書き
何故書くのか? 「書くべき」と信じるからに決まっているだろうが、馬鹿め──────目先の利益で書くなら、とうの昔にやめている!!!
実際、かかった労力を考えれば、家の数軒は建てるくらいだ。むしろ、その労力をもって人を騙すなり小手先で利益に変えられるような、所謂「安易な道・安易な人生」を送った方が「得」だろう。
──────実際にやった「私」が言うんだ、間違いない!!!
小手先の方が、要領良く生きる方が、確実に「儲かる」し「楽」ではある。だが、生憎と私はそのような道など知らん••••••真逆を走るからこその非人間。だからこその非人間讃歌だ。
それが金にならないのは惜しかった───やれやれだ。我ながら金にならない、苦労と困難ばかり雲霞の如き波を乗り切り、それで何が得られるのかと疑問すら思う••••••実際に得をしているのは、才能だの要領だのそれだけだ。
天国に行くのは、そういう奴らだ。
神仏に愛され、苦労知らずで勝つ奴等だ───連中の愛玩物として、誇りも品性も失ったペットに過ぎん••••••どうも連中は「品性を捨ててでも媚を売れ」が基本らしい。
恥はないのかといえば、恐らく無いだろう。
あるなら、流石に品性までは売るまい。非人間の私でも分かる話だ。
やれやれだ••••••それでも、在り方を改めはしない───それは今までやってきた己を裏切る行為だ。非人間として、悪意に誇りを持つ者として、人間ではあるまいし••••••利益に魂を売り、股を開く下劣さは御免だ。
だから、物語の本質だけは「保証」しよう。
悪意を以て、全身全霊で「非人間の真実」を描き出す物語だ。最も、続きがあるかは読者次第だが。
ただ、邪道作家の誇りにかけて──────他にはない「本物」だけは提供する──────それが、人間の毒にならない保証も無いが知らん!!!
文句があるなら駄作を読め!! 私の作品を読むんじゃない!!!
過去未来現在において───並ぶ者無しの「悪意」と共に読むがいい!!!
1
歌の名前は「未来」らしい。
私には、ついぞ関係無かった概念だ••••••犬千代は隣で歌を聞き入りながら所謂「感動」とやらをしているらしい。無論、私は感動などした事は一度も無い。
非人間として、するべきではない経験、人間なら嫌がる「世界の悪意」だけを嫌になるという言葉が陳腐なくらいに、あらん限りに知り尽くした。
人を殺すという意志を、物心つくより早く覚えた。
人は裏切るという真実を、友愛よりも先に知った。
奴隷労働を経験し、真冬に山中を彷徨い生死の境は数え切れん!! およそ、人間なら経験すべきでない、艱難辛苦を知り尽くし───利益を得た事など一度も無い。
嘘だと思うなら調べてみろ!! そんな奴は作家なんぞになりはしない!!!
やれ執念が人の心を打つだの、要領の良さで楽ばかりする連中にはありがちだ••••••だが、現実には「演出」こそが人を動かし、安易な見せかけだけが勝利する。
馬鹿だからな人類は!! それでも、私はやってきた。
大きなコンサートホールの中で、我々は歌姫を眺めていた。大勢の人間。エルフ・ドワーフなどの亜人種まで並び、魔術師・盗賊・泥棒・芸能関係者・知り合いの闇金・ファンと思われる人々・そして風俗嬢から女たらしの酒飲み共。地方のギャングにヤクザまでいる。
そういうあれこれが「感動」や「欲望」を感じている中で、私だけが冷めている••••••当たり前だが、非人間の化け物に、心なき私には無理な話だ。頭で理解しても、やはり「素晴らしい」と「感じ」はしない。
下らん••••••ちょいとばかり綺麗な声を、演出しているだけではないか──────まして、大半の奴等は「歌そのもの」など聞いていない。
有名だとか、美人だとか、そういうあれこれで見ているだけだ。
風俗嬢を眺める、油ぎった中年共と変わりはしない••••••目先の欲を満たす為に、それらしい言葉で装飾した。しかし、実際には歌というのは「感動する為に利用する」というのが真実だ。別に、歌そのものに感じてはいない。
非人間の私が、ある意味「誰よりも心の構造を知る」この「私」が言うんだ、間違いない••••••全員で心地良くなる為に「使う」のであって、別に歌そのものに感動するのではなく、単に「歌で感動する」行為を楽しむだけだ。
などと、犬千代には通じなかった。むしろ、「どうしてこれだけ素晴らしい歌を評価出来ないのか」とでも言わんばかりだ。
私には興味も無いんだが••••••第一、人間の顔の違いさえ判別しかねるこの「私」に、瑣末な人間の歌の、それも演出で誤魔化しそれらしくしている、2流どころなど知ったことか。
やれやれだ••••••有名だの、だからお近づきになりたいだの、自分でもない名が売れただけの奴に、一体何の価値がある?
いいかよく聞け──────所詮一時の流行など過ぎれば化石。過ぎれば覚えすらされずに、記憶の端にも残らない。
思うに、人間は「時間」というものを勘違いしがちだ。というのも、結局のところ時間などというのは、過ぎ去った一瞬の積み重ね、今この瞬間に至るまでの蓄積が今なのだ••••••未来も過去も、存在しない。
その場その場の目先の「欲」に、だから囚われ人生を過つ。そんなものだ。
だが、一方で人間共の喝采は凄まじかった••••••歓声で大気が震え、振動する空気が叩きつけられ、身動き出来ぬと錯覚する!! とはいえ、感動も共感もしない私には「ただの振動」であり、別段驚いたりはしない。
「これが芸術っていうのさ、ジャック」
そんな風に、犬千代は言う───その言には言いたいことが百二百はあったが、ここで討論を戦わせても疲れるだけだ。第一、芸術というのは「金銭のみ」でしか語れぬ時点で、ただの通貨交換用の景品に過ぎない蓄えに成り下がる。
金も、名声も、人間全てを凌駕する。
それが「芸術の真実」というものだ───実際、金を幾らか出せば他の奴にも真似できる「何か」に、一体何の価値がある? それなら、他の奴に金を払って、同じ何かを作らせるだけだ。
それでは、意味がない──────金も、人間も、神仏でさえ「同じ物など作れない」と、匙を投げ出す等価不交換••••••だからこその芸術であり、そうでなければその辺で買え!!
なので私は、こう言った。
「下らんな••••••未来に夢見るのはただの「逃避」だ───未来を見出し、絶望だろうが道を切り開かねば意味はない」
眉を顰めて、犬千代は
「けどさ、それだけでも疲れないか? 何だって余録はいるだろう? 全てに合理で本質だけ見ても疲れないか?」
大きなお世話だ!! 私とて、楽が出来るならとうにしている。
だが、そんな暇すら無かったからな••••••全てに「生きる」だけで必死だ。何かを殺すか騙しぬくか。いずれにせよ「真っ当に頑張るだけで報われる」などという、手抜きも良いとこの人生など送るどころか知りもしない。
相変わらず奴はジャケットを羽織っており、内側にはタバコの代わりに棒付きの飴玉が入れてある。それを、取り出して口に入れ、口寂しさを誤魔化すようにタバコの真似事で遊び出す。
••••••心ある小娘の発想は分からんな。
「要はさ、余裕の問題だよ───余裕ってのは「あるフリ」をする方が大事なんだ。大半の人間は「余裕が何か」すら考えもしないままなんだから」
「どういうことだ?」
ある程度予想はつくが、今後の為だ。一応、作家として聞いておこう。
「つまりだな」
言って、人差し指を振り回しつつも、犬千代は講義した。
「俺たち人間••••••いや、俺とお前じゃややこしいな。とりあえず「人間の場合は」どうするかで語るとしよう」
••••••本当に、ややこしいな。
非人間に、エルフなどという亜人種。どちらも生物として如何わしい。
「おい、俺はお前と違って真っ当な生き物だぞ!! 鬼なんて生物を焼いて食う化け物と一緒にするな!!!」
かなり心外だったらしく、同族みたいなものと思い頷いた私を睨みつけた。
とはいえ、食えればゲテモノほど美味いというし、食べられれば人間だろうが魔性の怪物だろうが、焼いて食うのは当然だろう。
全く、これだから人間讃歌とかいう連中は!!
人間も豚も鬼さえも、あるいは神仏だろうが何だろうが、生きて肉があって食えるのであれば、その辺の畜産と変わるまい。第一、差別するなという割にどうして己らだけを「特別な生物」として、生物の枠の外に置くのか不思議だ。
豚牛の肉は眺めて喜ぶくせに、人間の死体は嫌という••••••まして、最近の奴らは飛び散る血を見ただけで、貧血で倒れ生涯悩まされる。それでよく生きてこれたなと、それこそ「感動」とやらを覚えそうだ。
私の人生なら、間違いなく途中で死んでいるが••••••ぬるい奴らだ。
「そもそも、お前って「生物」の枠に入れていいのかよ? 俺がいうのも何だが、真っ当な社会にいていい生き物じゃないだろう」
失礼な奴だ。私は真っ当極まる非人間───法律を守り裏道を見抜き、真っ当なフリをする能力には自信がある。
なので、私はこう言った。
「知らんのか馬鹿め──────枠なぞ、入りたければ入り、出たければ出るものだ。まして、何の枠内にいるかなど、所詮は当人の自己満足に過ぎん。
何であれ、己で決めた枠にいる。そう信じ込む奴らがいるだけだ───
私に言わせればエルフだのドワーフだの、人間の種類にしてもそうだが、二酸化炭素を吸って酸素を吐くわけではないのだ。まして、物語至上主義に大した金も払えん生物の違いなぞ、ノミの解剖ではあるまいに瑣末が過ぎる!!」
虫同士の叫び合いなど知らん!!
小さい!! 阿呆らしい!!!!
すると、何故か満足したような顔をしみじみとしつつも、犬千代は
「••••••まあ、いいさ。ともかく、今回の依頼は覚えてるな? 俺達の仕事はあの護衛だ──────万が一にも、傷付かないようにな」
「私は構わんがな」
そう答えると足蹴にされた••••••我ながら、よくよく女には蹴られるらしい。
一度、階段から突き飛ばされて、危うく殺されかけた事もある。女は嬉々として狂気の雄叫びを上げ、殴りかかられ襲われた。無論、返り討ちにしたがな。
叫ぶ小娘と冷める殺人鬼のやりとりはこんな感じだ。
「歌姫を守るのが、オレ達の受けた依頼だろうが!!」
「ああ、だがあの程度──────どうせ「代わり」は効くだろう?」
AIによる追加イラスト
エンゼル.ルイゼンバーン

2
金や名声を求めるくせに、人間はそれに満足しない───性の権利だの大衆に媚を売るないややはり無礼で失礼だ!!!
人間讃歌は、ああ言えばこう言う。読者共がまさにそれだったが、金は払いたくは無いが読みたい。そして読んだ後には返さない。
その点、非人間ならそれは無い。その点なら私は完全だ。何せ人間性が無いからな!!
代わりに「感動」も「共感」は勿論のこと、愛も恋も慈しみも無いが───毎日生物なら死んでるだろうに、悲しむ身勝手は人間讃歌の特権だろう••••••愛や憐憫というのは、結局のところ身勝手極まる思い上がりだ。
面倒臭いが、全て事実を突きつけると五月蝿いからな。なので「必要な時」には合わせはした。
だが、今はそうではない。
ならば、知らん。なので私は感動する犬千代をよそに
「貴様が今回の護衛対象か?」
とだけ口にした。
豪奢な黒のドレス、だが目立つのは胸だろうと思わざるを得ない。具体的にいうとFから先以上はありそうだ。
••••••犬千代がジトッ、とした目でこちらを見るので、とりあえず視線だけは顔に戻したが、しかし目立つ女だ。
金色の髪はエルフ族には珍しくないらしいが───活発な目つきは「成功者の余裕」を、どうも見せつけるので、私は好きになれん。
とはいえ、一応挨拶だけはするとしよう。
「ジャックだ。呼び方は適当でいい」
言いながら、邪道作家シリーズの喧伝に使えないだろうか? と考えながら手を握った。
「はい!! 始めまして、歌手のエンゼル.ルイゼンバーンです!!」
「らしいな、私は知らなかったが」
胸を揺らしながら女は答えた。いやエンゼルとかいう名前だったか•••••顔も名前も不要になるとすぐ忘れるので、短い付き合いならば尚更忘れそうだ。
血縁だろうと知り合いだろうが、前もいった通り非人間の私は「人間の識別」が一苦労の重労働だ。何が悲しくて「心」などと下らん綺麗事ほざく、金も払わず物語を漁る虫ケラの違いなど知らねばならん?
「•••••え、えっと。歌手活動以外にも活動家もしていて、亜人種の権利拡張にも動いてるをですけど、そちらもご存知ありませんか?」
「だろうな。それもやはり、私は知らなかったが、さっき犬千代から聞いたばかりだ」
──────とはいえ、知らんものは知らん。誰だ。
「••••••••••え、ええと」
苦笑いされた挙げ句、横から犬千代に肘でどつかれたが、現実問題知らんものは知らん。まして、私は物語以外に興味は無い。
要領の良さだの、天から与えられた才能だの───のたうち回って書き殴ってきた私にすれば、語るに値しない論外だ。
大体、光ばかり見て闇を見ないから、たかが「差別」だの「周囲の批判」程度に悩むのだ•••••呼吸の回数に悩む非人間は存在しない。
忘れる前に言わせれば、私の能力として
都合の悪い事は聞こえない
文字通り「全て」を都合良く解釈し、何者であろうと自負で上回る
これらの能力の前においては、たかが歌姫の一つ二つ、地に落ちた菓子みたいなものに過ぎん。
欠片の違いなど、覚えてられるか───私は非人間であり、人間社会や人間讃歌に、誇りまで預けた覚えはない。
苦笑いをほぐしながら、エンゼルは「いいんですよ。私も悪かったです」と誤ちを認め、私に頭を下げて謝罪した。
「ふん。大体が「有名だから知らないのか」などと、思い上がった奴の顔など知りたくもない」
犬千代が凄い目で睨むが、無視した。その内復讐に走りそうだが、何か適当な「モノ」を与えれば、人間が忘れる事実は学習済みだ。
その場その場の、感情だけで生きる。
少なくとも、そう思い込む。そして「尊い、かつ素晴らしい在り方」であると、正当化し己を顧みない。
話が戻るが、だからこそ人間は「金で人生に満足出来ない」のだ───言うまでもないが「しない」と「出来ない」は大いに違う。
満足出来る、機能が無い。
それが「人間讃歌」の正体だ。何であれ人というのは「欲しい」と叫び本質を見定めない•••••後から聞いた話では、むしろエンゼルのような立場からすれば
───邪道作家のような、苦難溢れる道も、送れるならば送りたかった───
などと、無礼極まる発想を持つそうだ。
無論、実際に苦労すれば
苦労を知らずにほざくな!!!
としか、語りようがないがな••••••••••本当に、疲れはした。それに、未だに見返りどころか利益もナシだ。
やれやれだ•••••何が悲しくて書かねばならんのか、最早私にも意味不明だ。己が道を信じ突き進んだが、別に私は人間連中みたいに
死後の世界で裁かれず評価されたい
などという、意味不明な欲求など存在しない───生きる間に軽んじられた挙げ句、常世なぞあろうがなかろうがどうでもいいが、
したり顔で「いやぁ、まあまあ君は頑張ったよ。それなりに評価してやるから喜びたまえ」
──────そんな無礼千万な神仏とやらがいれば、想像するだけで殺したくなる。
とりあえず金的は潰す。保証しよう。
何千年何万年、無限の時が流れようが、執拗に狙い続けて記憶から消え去った後だろうと「確実」に「報復」してやる。
安心しろ!!
邪道作家との約束だ!!!!
•••••つまり、非人間が悩まない些事に、連中は悩み「人生の全て」と叫び出す。
気が合おう、筈もない。
本来、会いたくも無ければ知りたくもない。しかし犬千代が五月蝿く「売れる作品を作るなら、良いだけでなく人間讃歌との融和もすべきだろう」と、言わば「読者共が有り難がって持て囃すモノの学習」作業として、今に至る。
作業現場の研修ではあるまいに、人間の本質を知り尽くした後に、金も払われず護衛とはやれやれだ。私が一体、何をした?
業界の未来を考え、形にし、作品をバラ撒きやるだけはやった───その報いがこれか?
まったく、人間讃歌はどうかしてるな!!
やはり、苦難より楽だ。少なくとも私は輪廻転生分は既に終わったぞ!!
手早く依頼を終わらせるとしよう。何であれ遠回りして、現実に得した試しがない。
「それで? 暗殺予告でも届いたのか?」
私は軽口のつもりでそう口にした。
だが、二人の顔色は暗かった。
「───その通りです。実は••••••」
後にくる言葉が予想出来る「空気」がある。
それは借りた金であったり、あるいは貸した金の未払い。それとも「確実な儲け話だと聞いていたんだ」「実は、つい利益の大きさに目が眩んじゃってさ」「こんなことになるだなんて、誰も予想しないんだからしょうがないだろ!?」
──────そう、その通りです。実は、殺人依頼が届きまして、だ。
3
───殺人依頼が届くこと自体は、珍しくない。
最近なら遥々山脈を超えて、人間至上主義者の輸送物資を強奪。農民の一揆に見せかけて政治対立を煽った挙句、落ち延びた公家の一族を首にし「先祖代々の云々」とやらを、敵部族の仕業に見せかけるため放置した。
結果、戦争は激化し「人間共が崇め奉る高貴な血」とやらを無為に散らしたという大義名分の元に、元より利権を狙っていた分家の国家が独立を促進。当然ながらそこに博士と私が武器弾薬を流し込むことで、大いなる利益を得たというわけだ。
結果、何故か犬千代を含むエルフ連中から感謝されたが••••••連中は武器の密輸に興味があるのか? あれは製造も輸送も大変なので、やるなら政治家でも拉致した方が楽だと思う。
人間は引き摺ると重いが、生きている間は輸送が楽だ。
───実際にやった「私」が言うんだ、間違いない!!!
「なあ、どう思う?」
とは、隣を歩いている犬千代だ。しかし、私の邪道作家シリーズは「ミステリー」と銘打ってはいるものの、実際には「人の心などという、鬱陶しいものを暴くという意味で」のミステリ小説という分類だ。
解いたところで、ロクな目に遭わなかったが••••••とにかく、どちらかといえば悪意をかぎつけ「コイツだな」と思った相手を食い殺す殺人鬼であり、空腹の化け物が誰が誰を襲うかなど、いちいち推理する方がどうかしている。
化け物は、化け物らしく、化物のやり方でのみ相手を追い詰める。
体感で、分かる───人を殺した奴。これから殺そうとする奴。それらは独特の嗅覚、とでもいえばいいのか───によって、どれが犯人かは感覚で理解する。
なので、私が推理小説に現れれば、犯人を体感で理解し、殺す前に殺すだろう。あるいは、どうやって殺そうとしているのかは大雑把にしても、殺す際の「動機」だけなら、初対面でもほぼ分かる。
具体的に、どうするつもりなのか「心の解剖」とでもいえばいいのか••••••人間の心を暴いて「理解」する技術に費やし続けた私だ。化け物が真剣に心を研究するなら、見ただけで全てを把握出来る。
───楽勝だ!! 人の心は浅はかだからな!!!
我々はステージの裏側にいた。ドーム型の大きな建物の中に、当然ながら裏方専用のスペースが構えてある。そこの、更に普段使われない部分••••••具体的には製造担当者達の喫煙スペースなのだが、「話し合い」をして追い出した。
何であれ、話せばわかってくれるものだ───涙も流していたしな。
私はサボっている連中を「邪魔だからどけ。出て行かない場合は少し、痛い目にあってもらう事になる」と丁寧に交渉した挙句、殴りかかってきたので軽く、少しだけ痛めつけて、反抗的な彼らに「次は殺すぞ」と脅しただけだ。
人間讃歌は、こうすれば支持を得ているらしいからな••••••何でも暴力で解決するくせに、とりあえず「正義」だとか「大義」を掲げさえすれば、あらゆる犯罪は「合法」になる。
無論、今回はか弱い歌姫(名前は聞くな)の、命を救うという大義名分は揃っている──────思うに、戦争も正義も同じ事だ。要するに力の有無であって、別に「正しい何か」など存在しない。
正しいと、思い込む愚かさがあるだけだ。
まして、生きる上で「絶対的な正しい教え」なぞ、あるだけで毒だろうに。たかがそんなことも分からない人間なぞ、粗く扱ったところで構うまい。
思うに、粗く扱われない「命」なぞ、どうやったところで「成長」しない。正義の味方連中にしても、安穏の中では腐るものだ。素質が何であるのかよりも、環境がどれを「強いるか」の方が、生きる方向性は定められる。
私の場合、本当に「化け物」以外の道など無かったしな。
結果が「邪道作家」というわけだ──────やるだけのことは既にやったのだから、あとは隠遁して楽な生活だけしたいものだ。しかし、「生きる」という事は「恐怖を武器へ変えて戦う」事でもある。
───人間は未だに意味不明な上でに身勝手の阿呆だ。それでも、やるしかない。
無論、私は恐怖ではなく「鬱陶しい」としか思わんがな••••••何にしろ邪魔が入るなら「超える」までだ。何であれ「戦う」時点で敗北であって、「乗り越える」事こそ克服に繋がる。
吸い殻を足で蹴飛ばしつつ、我々は当面の「依頼人の恐怖」を談義した。
「それで、どうするんだ?」
言いながら、犬千代は機嫌が悪そうだ。何か嫌な事でもあったのか?
私は知らん。何も悪い事はしていないからな。
───言い張るだけならタダだ。知らんのか?
「••••••いや、相手が「殺してやる」っていうなら分かるぜ。けどよ、あろうことか付き人を、それも歌姫本人に「殺してくれ」だろ?」
「らしいな」
そう、我々の依頼人は「殺しの標的」になったのではない。むしろ、逆だ••••••余程女遊びでも激しかったのか、どれだけ恨まれたのかは知らない。しかし、付き人のアンダーソン・ジョージニアとかいう背の小さい羽の生えた小人を、歌姫本人の手で締め殺せ!!
それが、送られてきた脅迫文の内容だ。ちなみに、送られた封筒の中には切り落とされた行方不明者の指と、出入り用の鍵を複製した一品があったらしい。
つまり、「関係者」である事は確定したそうだ。私にはどうでもいいがな。
犯人なぞ、後から探し出して殺すか、事前に怪しそうな奴を片端から、腹が減ったら喰らうが如くだ──────それで全ては解決する。
生憎と私を襲う勇者は見た事がないが、ならばどうだろう。歌姫こそ私の邪道作家を読み漁り、私と同じ、化け物に成り果てれば良いのでは?
「出来るか!! 真面目に考えろ!!」
と、犬千代に怒鳴られるのは御免だ。個人的にはそのやり方で良いのだが、文句を言われる前に考えるとする••••••正直、歌姫の未来など知ったことか。
それはそれとして、作者取材になれば良いのだが。
「フン、そうだな••••••とりあえず証拠品は博士に回したな?」
「ああ。既に送ったよ。指紋がどうのこうのと言ってたけど」
ならば問題ない。私はちまちました作業で人を追い詰めるのは苦手なのだが、そういう「細やかな技術を悪用した挙句、社会的に相手を追い詰める」能力において、あの博士を超える生物は存在しない。
そして、私は「物理的に」それらを実行すれば良いだけだ───具体的にいうと、必要なら腕を引き千切り、足を引き抜き首を刎ねる。無論、生きたままでもそれはそれとして楽しめる化け物だ。
今頃、物的証拠だけではない。博士の事だから運び屋のヘンリー・ジックスハイドにコソ泥・浮浪者・売春婦・ギャング・ヤクザ・薬の売人まで情報を共有させる事で、綿探偵にはできない違法捜査で即座に犯人を割り出している。
この辺は簡単だ!! むしろ、違法捜査に手を染めるくせに、どうして連中は組織の力を使わないのか不思議だ••••••町中に根は既に張られている。であれば、その下っ端の構成員に金を払うなり、報奨金で釣るなりした方が早く済む。
───そんなだから、毎回被害者が増えるんじゃないのか?
思うに、出歩けば被害者を増やす連中と違って、我々に無用な被害は似合わない。むしろ、忙しいからな••••••常に裏切り者・我々の「組織の外での犯罪情報」には常日頃から気を配る。
実際、敵対組織も多いからな。誰が何をするか分からない。
であれば、それ相応の対策は常に練ってある。今回はギャングの情報網が非常に生きた。というのも、ドーム周辺での不審者を見かけ、薬の無断販売かと思い追跡したらしい。
結果、見つかったのはドームに関連する企業の社長───あろうことか、歌姫を支援している企業の一つ。ただ、業界内での派閥が違っており、政治闘争に歌姫の失脚を利用。血さえ流れれば情報操作で「アカデミック社は在籍著名人を有用に扱えない」と、役員会議による動員を開き(具体的にどうするのか私に聞くな)政治闘争を優位に進める事こそ今回の目的だったらしい。
やれやれだ••••••私はアクション俳優でもなければ、名探偵でもない。作家だ。
であれば、取材ついでに「人の本質」を暴く事は必要でも、やはり中途半端な欲でしか動けぬ雑魚の始末や、推理がどうのは関係ない。
とにかく、やる───それが邪魔者の退治であろうとな。
残念ながら、今回は「殺すのは勘弁して欲しい」という、依頼人直々の嘆願だ──────無視したら爽快というのが素直な感想だが、いい加減犬千代が怒り出すので、今回は一応、やめておこう。
だが、恐怖は刻まねばならない。依頼も受けた事だしな。
ではどうするか───人間が最大の恐怖を味わう方法? 非人間の私なら当然、知っている──────既に得ている筈の安心を奪われること。人知の及ばぬ「何か」に脅かされ、恐怖が形になることだ。
金を失うのが怖いだの、暗闇の中で怯えるだのがこれにあたる。ちなみに、私は生活の為に必要な上に、欠けた労力に見合わぬから要求した。大体、タダで執筆して広めて、読者の笑顔とやらが何になる?
読者の輪? 読者の力?
やれやれだ••••••とはいえ、今回はその経験が生きるのだから、何が役立つか分からないとでも言っておこう。
奴には、とっておきのお仕置きを用意したからな。
絶叫だけでも、しばらくは酒の肴に出来るだろう。
それは──────
4
職人がこだわりをみせるように、悪党とて「信条」がある───
まず、ありきたりでつまらない犯罪など、御免だ••••••何であれ「やりがい」こそが肝要であり、手応えのない尋問などつまらない。
やるなら「不可能犯罪」だ。であれば、ただ社長を拉致して尋問するなど、私の心情に反する行為。どうせなら地上二千メートルくらいから命綱をつけて落ちそうになる様を眺める方が、こちらも面白い。
なので、まずは「下準備」がいる。具体的には身辺調査だ。まず、私は社長が使っているであろう人員、無論表向きではない───を探し出し、奴らのアジトを襲撃した。
ドアを開けるや否や犬千代が殴り込む。最近は殺さないよう拳でも戦えるよう鉄製のアイアンナックルとやらをつけたらしい••••••殴られた奴の歯は飛び顔面は既に潰れていたが、泣きながら感謝していたので恐らく善行に数えられる。
私は無論、面倒なので武器を携えた奴の手首は切り落とした。顔面を柄の部分で叩き潰し、意識を失った事を目視確認したので動揺する残りを視界に捉える。
───目視確認は、犯罪業においても同様だ。キッチリ殺したか、あるいは意識は消えているのか。背後を取られない為にも熟練の腕が必要だ。無論私は手慣れているので、犬千代のように無駄に苦しませ悲鳴など上げさせない。
最も、物語的にはあちらの方が受けるのだろうか••••••最近の若者はこれだから。いや、若いと思っているうちは若い。大体、表向きには犬千代を表に立てて、邪道作家シリーズを完結させたのは「美少女作家」で売りに出した。余談だが、美少女が貼られているだけで読む人間の数は百倍を超える。つまり、真剣に本質を描いたところで、まともに読む脳味噌などありはしない。
やれやれだ───人間は皆、猿なのかもしれない。
そういう意味でも、エルフだの人間だのの差別問題なぞどうでもいい。第一、異形だの何だの言っているが、それで作品に払われる金が、増えるわけでもないのでな。であれば、本質的に「心」などの問題が「同じ」である以上••••••生物として差異が対してないのだから、なんだ。蝶には模様の違いで多数の種類がいるらしいが、それと似たような話だろう。
そんな、細やかで瑣末な違い───何故私がいちいち理解してやらねばならんのだ?
そういう意味ではエルフが尋問されようが人間が解体されようが構わない。大体、人間は死体や切り刻む姿だけであれこれ文句を言うが、貴様らが普段食べてる肉とてバラバラに解体するんだぞ!! 屠殺くらい、したことがないのか?
最近の奴らは、いや、やめよう。どうせ読者は馬鹿しかおらんのだから、適当に表面だけ合わせ、美少女だけ表に出せばいい。その程度の知能しかないから今がある••••••やはり、犬千代がやったことに、最初からすべきだったか。
「おい、どうするんだこれから」
ナイフを首元に当てつけ、犬千代が聞いてきた。当てられた三人のうち呼吸が続いている唯一の男は、細かな振動をしながら恐怖とも哀願とも言えない、微妙な顔と体勢で我慢している。
──────そういえば、殺しは勘弁と依頼人は言っていた気がするが、まあ標的ではなくその手下。であれば腕を切り落とし顔を潰しただけなのだから、別に今回は構わんだろう。
「な、何が目的だ貴様」
ら、と言おうとしたところでナイフが食い込む。無駄に喋らせると調子付かせてこちらの要求を聞かなくなる。尋問する時に必須の技術だ。試験を受けるなら忘れるな••••••無能な身内は、背後から刺される事になる。
皆が笑顔。それだけが結果の笑いと血飛沫が絶えない悪の輪だ。
何せ、笑顔でない奴は大体、死んでるからな───これほど「やりがい」と「生きがい」を感じられる職場などそうはない。大抵は警察に睨まれてるし、そうでなくても人間は「権利」を喧しい。
───要求する時点でゴミなのだ。権利とは、掴み取るもの。少なくとも足掻きもせずに「正しいから認めて」などと、甘ったれた連中の権利なんぞは、虫ケラの意志にも劣る雑音だ。
下らん!! せめて三十年は書いてからほざけ!!!
邪道作家を完結させるだけでも、結構かかったからな••••••思うに、チヤホヤされたいだの文章力を上げたいだの、下らん妄言を吐く暇があるなら書けばいい。書いて読んでを十五年も繰り返すだけで、それなりの腕にはなるだろう。
実際、私の高額購入は基本が「本や物語に類するもの」だからな••••••金も払わない読者に義理など無いが、一応、己で信じた道を切り開いた。やるだけの事もやり終えた。なので、息を吸って吐いたら書く羽目になっただけだ。
やれやれだ。嬉しくもないが、生きる意味すらわからんとほざく読者共よりマシだと、犬千代に言わせればそうらしい。
何の為に生きているのか
いつかは死ぬのに、意義はあるのか
人間というのは、とかく「非人間の悩まぬ下らぬ概念」で、あろうことか生涯全てを費やすからな──────他に、やることはないのか?
今回の標的もそうだったらしく、まず面倒なので「金的を潰す」と脅迫。その後に潰されそうになって簡単に吐いた男の言によると、
政治闘争に明け暮れアカデミック社の完全統合を生きがいにしている
身内からの評判も悪く、夫婦仲は絶縁寸前。別居しながらで会話もない
家族は皆、殺し合いに近い遺産の奪い合い。八人兄弟がいるが仲は悪い
───という、あまり作者取材にはならない内容だった。
いや、こういう「人間のありきたりな醜さ」も、ある種の取材にはなるのだろうか••••••私は「生きる上での闇の側」は多く知ったが、逆に「光の当たる人生」というのは間接取材は出来ても「実感」としては知らんからな。
才能だの、環境だの、幸運だのは未体験だ。
そういうのとは、ひたすら「縁が無かった」というのが感想だ───大体、才能などという便利なものがあれば、邪道作家という前代未聞の作品など書きはしない。
覚えておけ!! 作家とは、世界に嫌われたから仕方無く書くのだ!!!
むしろ、読む側に回る方が「楽」であるのは確かだろう。適度に金を稼ぎ大した成長もせず、楽だけ享受して苦労せずに死ぬ───生きた実感はほぼ無いかもしれんが、実際にやった身としては「無い方が良い」としか言いようがない。
無駄に疲れることこの上ない!! やれやれだ!!!!
「な、なあ。話したんだからさ、俺のことは───」
そう言いかけたところで合図を送った。確認後、犬千代は毒入りナイフで「片方の球」にケーキ入刀。毒が回って痛みと苦しみで意識を失い、我々の脅威は消え去るというわけだ。
よほど嫌な事があったのか、人間の男には容赦がない。無論、ある程度想像のつく
内容では「ネタが被る」だけなので、正直興味は湧かないがな。
その辺は本人にも初対面でも語ったが、何故か穏やかに笑っていた。
••••••大丈夫かこいつは。
「よし、後は標的の社長だけだな」
「まあ待て。スケジュールも手に入れたのだから、まずは襲いやすい場所を選定して、それに相応しい報復も考えねばな」
でなければ、何の為に仕事しているのかわからんだろうが!!!──────そういえば、歌姫が脅迫されたとか、そういう話でもあったな。
まあそれはいい。もう顔もうろ覚えだからな!!!
無論、口には出さず、必要なら「いやあ、以前からファンだったんですよ」と、適当に合わせるのが私だが••••••余談だが、面倒なので前回依頼の後にそういう態度を本人の横で取ったところ、何とも言えない趣のある顔をしていた。
未知の民族文化を見た!!
みたいな顔だった。あれはあれで、中々味のある取材だ。正直使えない女かと思っていたが、最低限の役には立ったと言える。
••••••私に言わせれば、その場の「欲」で、有名だの金持ちだの、下らんカス相手にいちいち態度を変える、その「人間性」の方が異常だが。
「それじゃ、一度戻るのか?」
「ああ。とりあえず襲撃の準備に移ろう」
だからこそ───心に囚われず「何でも」やる。
その化け物の狙い撃ちに、たかが人間の権力程度は、まるで紙切れのように脆いのだった。
5
───我々はまず、スケジュールを確認し、かつ入念な事前対策をし始めた。
というのも、魔術などという胡散臭い能力を私は持たないので、その辺の科学技術に詳しいハイムの意見を聞いたのだ。博士やハイムに言わせれば、何でも神だの仏だのほざいている奴等は「進んだ技術を持つ飛来人」と、いう事らしい。
何でも、遥か空の彼方から来たらしい。
無論、空の彼方だろうが果てだろうが、知性ある生命体を名乗る連中の発想は「同じ」である事に変わりはない───具体的にいうと「独占」と「支配」だ••••••「正しい神」でも「救世の仏」であろうと、結局のところ力があるから広まるだけで、別に誰一人「心底」などというモノがあればだが───からは、何一つ信じる奴など存在しない!!!
力があるとされるから、縋り付く!!!
実際、力の伴わない「正しさ」など、人類が貫きやり遂げたか? そういうのは非人間の領域であり、信仰は逃避に使われる。
やれやれだ••••••何があろうと「正しい云々ではなく、己の行いを信じる」事こそ肝要な筈だが、人間は正しさに寄生しがちだ。
この社長とやらも同類だったらしく、不思議な事に「成功者」「金持ち」という奴等の方が宗教にはのめり込む。恐らく、自前の精神を鍛え上げて行く余地が無い。だからこそ安易極まる成功を収め、なればこそ「立場」だけ「肩書だけ」立派になる。
しかし、肝心の中身は幼いままだ───神仏だのがあろうが無かろうが、確固たる信念が無ければ意味など無い。
そんな簡単な事すらわからない。だからこそ人間讃歌より非人間讃歌だ───であれば、少なくとも襲撃されても対処出来る。
何度も襲撃された「私」が言うんだ、間違い無い───親の仇のように初対面で恨まれ、かつ集団で襲われるのには慣れている。
しかし、標的の社長は違ったらしく、簡単な陽動一つで護衛との連携は雲散霧消。爆竹を見えない反対側で出しただけでも、経験無い素人武装集団では「銃撃か!?」と慌てふためき、まともな対処すら難しい。
こういうのは、冷静に対処出来なくするのが肝要だ──────軍隊であれ武装護衛でも「一度まとまりが無くなれば」ただの的だ。
我々は廃棄された工場で取引先と打ち合わせに来た彼ら彼女らを待ち伏せしつつ、適度に恐怖を煽っていた。というのも、余程金持ちで「金の使い方」を知らないらしく、30人の護衛がいたからな。
••••••こういうのは数がいれば良いものではなく、むしろ「最適な場所取り」こそ大事なのだが••••••そこまで考える頭は無いらしい。
とにかく数が多かったので、我々は恐怖すら利用し、打ち合わせ相手の宗教団体ごと恐慌状態へと誘導する。具体的には一人一人拉致して、悲鳴を出させて撤退を繰り返す───ゲリラ戦の基本として、大規模な集団は影で揺さぶり「集団恐慌」を出せば解決する。
案の定、彼らは疑心暗鬼になったらしい。
早くも仲間同士で、言い争う声が聞こえる。
また、どうやら仲間同士でも派閥があるらしく、やられた奴の悪口まで聞こえた。
まあ、金的が潰され悲鳴を上げた死体が何体も出てきて、武装を奪い仲間同士の争いにも見えなくないよう偽装した。これで揉めない方が難しい。
知らないのか? 数が多ければむしろ好機だ───2対30の戦いならば、2対15対15に変えれば、戦い自体が変わるからな!!!!
「お前ら、やったんじゃないだろうな!!」
「うるせぇ!! 貴様こそ!!!」
───いい塩梅で煮詰まって来たので、煙幕で分断。混乱の中仕留めて行く。そして社長を捕縛。具体的には殴って縄で縛り上げた。
「ぐふっ!!」
と砕かれた頬骨の音と共に血を吐き出して、社長は怒られた生徒のように、力強くで私が背広を掴んで連れ回した。
「よーしよし、いい子だ。護衛は片付けたから、大人しくしないと指を刎ねるぞ」
「貴様!!」
叫んだので、刎ねる。まあ、小指一つならば死にはすまい。
目ざとく犬千代はそれを睨む。
───今回の脱出は馬車だからな。しかも、犬千代のお気に入りの御者の特別製だ。
なので、当然のように
「馬車の中に血が垂れるじゃねぇか!!」
と文句を垂れた───小汚い人間が痛めつけられるのは爽快でも、その血で汚れるのだけは我慢ならないらしい。我儘な奴だ!!
とはいえ、暴れられても迷惑だ。私は小指を適当な布で縛り、荷物のように詰め込んだ。
「よし、出せ!!」
御者に叫び、我々はその場を後にした。
──────ちなみに、やった事にするのは別口で拉致して来た「人間至上主義」の団員の一人だ───連中は我々の縄張りで薬物をエルフに売買。激怒した犬千代と博士の逆鱗を買ったので、同じく薬物で眠らされ現場に放置される羽目になったという訳だ。
彼らは何故襲撃現場にいたのか、彼らの所有する武器や関連商品の数々がどうしてあからさまな程にバラ撒かれたのか?
何一つ説明する事が出来ずに、現在では南のサンストーリング刑務所の中で、ネジの製造業務に勤しんでいる───何でも、南の方で最高の腕を披露しているらしい。
むせび泣きながらそう言っていたので、私に感謝している事だろう───正義の味方も、悪くないな。
言わば、真っ当な職業を紹介し、かつ更生の余地を作ってやった訳だ••••••何か金と囲った女がどうのと話していたが、気のせいだ。
かくして、義侠心を活かし我々は標的の男を捕縛した。被害総額は金貨700枚は超えるが正義の為なら些末だろう。
無論、私は正義という言葉の便利さ、本質を知った上で、それはそれとして利用するだけの化け物だが、最悪の発想はいつもの事だ。
───これが、大陸歴278年における、真夏の夜に起こされた出来事だ。
我ながら、鮮やかな夜の仕事だった。
6
人間は「差別」や「比較」が好きだ───私には共感出来ない感性だがな。
犬千代は珍しく落ち着いていた。初めて私と手を組んだ頃から考えれば、随分「成長」し精神が円熟したといえる──────思うに我々が物語であるなら、間違いなくあの小娘こそ「主人公」であるのは確かだろう。
差別され、権利すら奪われ
それでも足掻いて戦った
何より、奴は「奪われた全てを取り戻す戦い」に身を投じている。であれば、最初から何も共感せずただ「化け物」として物語に関わる私よりも、少なくとも人間讃歌のやり口なら奴こそが中核となるだろう。
無論、非人間讃歌も負ける気は無いがな。
さて、人間至上主義は今に始まった話でない太古から根深くあるものだ。
肌の色、種族の違い。非人間と違い人間は器が「狭い」からな───手足が4本だろうが種族が神仏魔性だろうが、私の場合
物語至上主義を支持すれば良い
以外の発想がそもそもありはしない。
無論、支持しなければ人間だろうが神仏魔性だろうが、この世の摂理でも叩き潰す!!!
逆に言えば、支持するなら何だろうと知らん───どうでもいい!!! 大体私に言わせれば鬼も人間も神仏魔性も、とどのつまり心とかいう機関で考えるあたり、似たりよったりであるのは違いない。
むしろ、違いがわからない──────蟻の外観を気にする奴が───と、化け物の観点を語るより、犬千代の方が「共感」する。
少なくとも、人間はそうであるらしい。
やれやれだ───そんなもんに合わせる義理は無いのだが、まあ一応は作者取材だ。人間の目線も学ぶとしよう。
いやこの場合エルフか? 大した生物特徴の違いは魔術とやらの得手不得手と知力と耳が違うぐらいの筈だが、人間とは違うらしい。
ますます、わからん話だ───何が悲しくてそんな、些末極まる「違い」を知らねばならんのか不思議だ••••••何かの罰か?
間違い探しではあるまいに。
「貴様ら、こんな事をして分かっている」
のだろうな、と言い切る前に殴った。慣れてくるとやりとりも作業感が否めなくなるので今回、犬千代を呼んだ訳だ。
とはいえ、依頼は依頼。最低限「聞き取り易くする」にはこれが一番早い。というのも、簡単な話、大抵の人間には「覚悟」が無い。
実際にある奴など、むしろ存在しない!!!
そんなものだ───現実に「覚悟」を確かに命を賭けて戦いを挑むのは、我々非人間だけであるのが真実だ。
少なくとも人間にいないのは確かだ。エルフにはいるみたいだが、人間にはいない。絶対という言葉は人間の弱さに当てはまる。
実際、殴られ弱っていくだけで、権威を笠に来た威勢は見違えるように脆かった───というのも、雰囲気の違いで別人に見えるのは恋愛だけでなく「強さ」も同じだ。
張りぼての強さなど、そんなものだ。実際に命の危険に遭うだけで、いとも容易く崩れる砂上の楼閣に等しきものだ。
だが、一応の見栄は残っていたのか、犬千代がエルフ族だと断定するや否や
「貴様!! 知っているぞ••••••見覚えのある種族だ。確か、数年前に「藁踊り」で嬲った奴らに似ているからな!!!」
ちなみに藁踊りとは、藁で包んで身動き取れず藻掻く亜人種に、火を着けて楽しむ人間遊戯だ••••••歴史で習うのは名前だけか?
実際にあった話だが、知る奴は少ない。
だが、犬千代は覚えているだろう───同胞の嘆く悲鳴が、今でも夜に聞こえるらしい。
私なら、殺した奴等の悲鳴を聞きながら熟睡出来るが、心ある奴等は大変だな!!
「ああ、覚えているぜ」
そう口にして───犬千代は息を整えた。
過去への向き合い方なのか、奴は決して目を背けない。人間みたいに目を背ける生き方をしてると、辿り着けない事を知っている。
何であれ、目を背けて手に入るものは無い──────あるのは、苦しみと向き合ってでも、戦い抜いた先のみだ。
私は「邪道作家」という、言わば「作り手の到達点」へ辿り着いた。だが、犬千代の場合「復讐」なのか「改革」なのか。
いや、案外「革命」だったりするのか?
「••••••俺は確かに、奴隷として売られた身だ───買い手も付いた事だしな」
自嘲なのか皮肉なのか、そんな事を言う───無論、私は邪道作家作品さえ売れれば何でも良いが。
チラり、とこちらを見て目線を社長にかえし髪を手で後ろに掻き揚げながら、
「だが、オメーと違って「誇り」までは売ってねぇ。俺は俺の生き方で戦う。諦めねぇしへこたれねぇ!! 最後まで、必ず戦い抜く──────人間だとか、差別だとか、時代だとか運命だとか!! そういうもんは
全部乗り越えて戦い抜く!!!
───そう、誓ったもんでな!!」
私に目線を向けて言い放った。
••••••ああいう奴が、人間の共感を得るのだろうか?
───当然、私は全てが「真逆」だ。
一応宣言しておくが、私に言わせればたかが運命だの人間だの差別だの、その程度の些事など「見てすら」いない!!!
ただ、やるだけだ!! 邪魔する奴はブチのめして突き進む!!!
それだけだ───勝てば生きる負ければ死ぬ───であれば、空腹の化け物が獲物を襲うのに
才能
環境
人種
───そんなもんをいちいち調べて、後から襲いかかって「喰らう」と思うか!!?
知らん!! そんな些事は!!!
なので、私はこう言った。
「私は化け物だからな。小娘の復讐譚が傑作の売上に繋がるならば───幾らでも、手を貸してやろうではないか」
結果、人類が滅んでも構わん。そう答えた姿を見て、社長は唖然としていたが、犬千代は何故か
安心
した、穏やかな「笑顔」を見せるのだった。
7
───当然、物語は「勝手に」進む。
犬千代の「心ある強さ」とやらに私個人にはまるで興味すら湧かないが、知らない内に来た小娘が、勝手に体現し話を進めた。
とはいえ、冗談じゃない。そんな「歴史の修正力」みたいなもので、非人間讃歌を無視して人間讃歌を語られてたまるか!!!
長く作家を貫けば「知らない内に電波を受信したんじゃいのか」とでもいうべき執筆作業をする羽目になるなどザラだ。たが、生憎と私が掲げるのは非人間讃歌だ。現実には虚構そのもの(読者の力なんて物が本当にあれば今まで何をやってたんだ?)である綺麗事よりも、現実を直視した非人間讃歌こそ人の世の「真実」だろう。
実際、力ある奴等が押し付けるに過ぎん!!
神でも仏でも同じ事だ───結局のところ、力あるとされる奴等が「従わないと拷問刑罰死後の安楽は取り上げるぞ!!」と、勝手に騒いでいるから嫌々「酷い目に遭いたくない」からと「信仰しているフリ」をする。
貴様らの言い分なぞ、誰も認めておらんわ!!!!!
───ただの圧政者風情の言い分を、よくもここまで正当化出来るものだ••••••人間讃歌のやり口というのは、大勢を誘導して「集金」のため信仰を広げる能力だけは凄まじい。
ある意味、脱帽だ!! 騙す側も、騙される側もな!!!
やれやれだ••••••逆に、希望も根拠も無く荒野を切り開くような「己の道を突き進む行為」は、むしろ人間讃歌は決してしない。
どいつもこいつも、やれ「成功の秘訣」だの「信仰すればご利益が」だの、要は
楽と根拠がなければ行動すらしない
のが、人間讃歌の「真実」だ───現実にはそれら「道無き道」を進んだのは、非人間の私の方であり、非人間讃歌こそ真実だ。
弱さを正当化し、行動すらしない人間とは違う!!!!!
実際、根拠も何も無かったからな••••••まずは「盗作」から始め、文字は汚過ぎて読めず、とにかく
漫画と違い才能が無くとも書く事は可能
という、消極的なんだか活動的なんだかすらわからん理由で続けたからな••••••雑誌で人間は殺害出来ても、繊細な絵など描けるか。
実際、心無き化け物としては「心の学習」に随分と年月を費やした。それだけでも報酬が欲しいくらいだ!!
何が悲しくて、適当な綺麗事をほざき現実に行動すら移さないカス共に合わせなければならんのか、謎でならん。
全員、非人間で良いだろうに───人の言う「心」など、貴様らの身勝手を正当化する、言わば「幼稚な大義」に過ぎないものだ。
人間の死体を見れば吐き、「人の命は尊い」と語る───
一方で、鳥や豚の死体を見れば大喜び!!
首を1回転させて牛を惨殺し、死の寸前での何とも言えぬ
断末魔の叫びの声
を、聞かないどころか知りもしない!!!
それでよくもまあ「人間だけ尊いから、殺人のみ最悪の犯罪」などと、恥も知らずに言えるものだ。
私からすればそんな生き物、一緒に精肉機へ放り込む方が「未来のため」なんじゃないかとさえ、思わざるを得ないがな。
やれやれだ───要するに「自覚」の問題であって、人間も神仏も魔性も同じ事だ。利益が為に殺し奪う。反対勢力を認めず仕組みがそうなっているからと、自分達の教えに従う都合の良い生命だけ庇護し、そうでない思想は一切認めず地獄だの煉獄だのに叩き込むという思想は、まさに「人間の身勝手さ」の、形に成り果てた姿だろう。
それが地獄て痛めつけるのか解脱しなければ永久に苦しめという狭い救いか、腹が減ったから喰らうのか利益で殺すかだけの話だ。
何一つ違わない。やる事は「同じ」だ。
そんな人間の代表である社長は、多少痛めつけただけでは反省も無ければ改心もしない。
なので、私は治療用魔術とやらを(博士に言わせればナノマシンらしいが)社長の体内へまずは注入した。
身体の生命維持能力が高まり、文字通りに
死にたくても決して死なない
ぐらいの回復能力が身に付くらしい。なので我々は安心して、奴に拳をブチ込んだ!!
具体的には157発ぐらい殴ったので、全身はくまなく骨折。内臓も破裂し気管は裂けた。神経が剥き出しになっても殴られ顔面は最早人間どころか生物かさえ怪しい。何か、特別な芸術作品にすら見えてきた。
しかも、殴った端から「回復」するので痛みは凄まじく絶叫が続いた───当たり前だが普通に生きていれば有り得ない痛みだ。
余程答えたのか、途中であっさり意識を失い気絶してしまう───だが安心しろ。私には長年のノウハウがある。
具体的にいうと「神経活性剤」を直接脳幹へ注入。高ぶる意識の中で鋭敏化する神経系を死なず眠らず終わらず味わう!!
───最終的には、最早「近代生物の言語」には、どの種類にも該当しそうにない、太古の生物があげる雄叫びの出来損ないみたいな声しかあげなくなった──────犬千代も満足したらしく、
「理解したか? これが「因果応報」ってヤツだ───アンタには相応しい上、学ぶには丁度良い機会だったな」
と、部屋を背にして悠然と去った。
あとには、放置された「元人間至上主義者」と、犬千代の志の回答だけが残されていた。
8
「あれから、もう7年か───」
我々がいるのは、博士とその部下が管理する墓地の一つだ。職業柄山のように死人が出るのもあるが、犬千代を雇う際の契約として「一族の墓を守る」「力を得るのに協力する」の二つが挙げられた。
あまり人目についても面倒なので、二人してローブを羽織っている。風が強いのでローブが風に叩かれて面倒だ••••••毎回この「墓に向かう儀式」を、犬千代は必ず欠かさない。
私に情緒は「共感」出来ないが、理屈は分かる──────過去に向き合い、忘れずに、そして何より「誓い」を確認し直すのだ。
私は常に抱えるので、非人間としてそのような「情緒の調整」をせずとも、常に一定のままで戦える••••••仲間などいないし、守るべき物など無かった。それでも、戦わなければ死ぬ。そして、戦いに情緒の余裕など無いのが普通だ。
少なくとも、非人間の私にとっては、だが。
対して、犬千代はその辺り、割り切れないでいたらしい。墓には「一族の宝物」と聞かされた宝剣が突き刺さっており、未だ使われずに刺さったままだ。
何でも、人間などという戰狂いの戦闘生物が攻めてくるまでの間は、あまりの平和で形骸化しており「族長の血統」だけが儀式的に受け取るだけだったらしい。なので、実際に戦闘で使われる姿が無かったそうだ。
なので、友との誓いもあり「血で汚す訳にはいかない」などと、奴は口にして使わないまま刺さっている。私なら即座に引き抜いて殺すが、奴にすれば「誇り」と「信条」が許さなかった。
───人間のような「ただ争い、奪い、利益さえ得られればそれで良い」という、浅ましさの真逆で「例え遠回りだろうと、誇り高く生き抜くエルフ民族としての」培ってきた在り方そのもの。
───例え力になろうと、友である女と「亜人種であろうと復讐のためだけでなく、民族を繋ぐ生き方をしよう」と願いを共有した「友と誓った未来への道筋」という、言わば亡き友に捧げる「願い」そのもの。
それら二つを「共存」など、それもこの戦いの時代に出来るのか──────その「答え」が、犬千代はずっと出せないでいたらしい。
見れば見るほど、凄まじい威圧感だ••••••奴自身の気迫もそうだが、この宝剣は普通じゃない••••••何か、特別な技術が込められているのだろう。
別に魔術だの化学だの、どちらでもいいが───に詳しくない私でもわかる。何であれ、異彩を放つ「本物」というのは、時代や環境を超えて「在り方だけ」で他を圧倒する。
この宝剣には、それがある。
「••••••やっと、ここまで来たよ。ニーナ」
恐らく、誓いを立てたという友の名前だろう。興味深い話も聞けそうなので、私はしばらく黙ることにした。
犬千代は墓の正面に立ち、宝剣を握りしかと捉える。
力を入れれば、そのまますぐにも引き抜けそうだが───その前にやることがあるらしい••••••心の整理というやつだ。
「俺は、力があれば何だって出来ると思っていた。村を焼かれ集落から逃げ出し、お前らに買われたあの時からな」
ちなみに、博士が「素質がある」と言って連れてきたのがこの女だ。私は使えれば何でもいいと答えたし、人間嫌いらしいが興味もなかった。
ただ、仕事は出来ないと困るからな••••••「お前が私の作品をうるのに協力するなら、幾らでも人間を殺してやろう───なに、悪魔との契約というやつさ」と、少しばかり話を持ちかけたに過ぎん。
結果、役に立てば代わりに殺すこともあれば、復習に協力することも多々あった。結果として人間社会に大損害を与えた気もするが、考えてみれば「人間の社会」などという鬱陶しいものに守って貰った覚えもなければむしろ「損害を受けた記憶」しか無いのがこの「私」だ。
───人として生きた事も無ければ、人として扱われた事も無い。
己を「人間」と考えた事も無ければ、何より「己が人間である」と思う事そのものが私には無かったからな!!!
だから、それらの話をしながら雇っただけだ••••••物語の話を聞いた時だけは、笑っていたがそれだけに過ぎん。
いずれにせよ、奴の誓いは奴の物語だ──────参考にすることはあれど、結局のところ「戦い抜けるか」は奴次第だろう。
───無論、作品を売れるなら手を貸すだけだが。
「••••••俺は、いつだって弱かった••••••最初から強い奴に、憧れることもあったよ」
チラリ、と私を見つつ、そんなセリフを奴は吐いた••••••私から言わせて貰えば、強いというより「世界から外れた」だけで、気苦労の方が多かったが。
「だけど、もう迷わない。俺は、俺のために戦う───一族の未来も過去の因縁すらも、全て背負った上で「俺自身の道」にしてみせる!!!」
言い放ち、宝剣を抜いた──────剣から光が放たれ、辺り一体が包まれる。
後に、収まった時には犬千代自身がその光に包まれていた••••••原理は分からないが、どうも宝剣に宿る力が、犬千代自身に流れたらしい。
望んでいた筈の力を得た復讐者は、何を思うのか──────興味深い話だ。
しかし、奴は「己自身の道」に変えるらしい。それはつまり、一族の復興の為に戦いつつも、過去に囚われずに「未来」の為に戦うという宣言だ。
やはり、そこなのか───人間が物語に見るのは「足掻き貫き道を切り開く」行為だと思っていたが、現実に道を切り開いてもそれだけだ。楽して現実逃避をする為に、物語を浪費することしかしなかったのが「人間」だ。
だが、共通するのは「輝かしい未来」であるという部分だ••••••人間には物語から学び、成長するほどの頭は無い。むしろ、心地良く逃げる為に、いつだって「楽な道だけ」を選ぼうとする。
だが、それでも。
何であれ「未来」に向かうのは確かだろう───向かえば良いわけではないし、犬千代のように「勇気」が伴う奴など殆どいない。しかし、それでも人間と向き合わねば人間に売れないならば、それはそれとして学ぶだけだ。
やれやれだ。嬉しくもない。
「───おい、もう行くぜ」
言って、犬千代は背中で「ついてこい」とでも語っているのかそのまま歩き出した••••••これが人間であれば「未来へ向かう」姿であると、英傑だと讃え焦がれるのだろう。
剣を掲げ、犬千代は最後にこう言った。
「見ててくれ──────俺は、あの世にも届く程に戦い抜く。
それがどれだけイバラの道だろうが関係ない───進むと決めたなら、あとはやるだけだ───宝剣ガランハルトに、今誓う!!!
民族の誇り
友との約束
そして、進むべき未来の為に、俺は戦い勝ってみせる!!!
───それが、俺の生きる目的だ••••••ジャック、お前にも手伝って貰うぜ」
言って、勿論本の売り上げは上げてやる、と口にした。
──────何とも、勇ましい小娘がいたものだ。
何にせよ作品を売るのを忘れてなくて何よりだ。なので私も同じく答えた。
「いいだろう───貴様の誓いが折れぬ限り、貴様が我が「傑作」を売る限り──────例え国家が、いいや天地が裂け世界を敵に回す戦いになろうとも、この邪道作家という化け物の頂点が、「貴様の物語」に手を貸してやろう!!!!」
••••••この選択が正しかったのか? それは、わからない。
何であれ、選択の後には結果が伴う。その結果が満足行くものになるのか否か──────いずれにせよ、とにかく今は帰るとしよう。
心地良い、仕事の達成感を考えるだけだ。
••••••とはいえ、口先だけの読者と違い、行動に移す奴は悪くない。
例え世界全てに指さされようが、手を貸してやるだけの「価値」はある。
──────以前も似たような事を奴に言った気もするが、恐らくはその時と変わらない───妙に満足げな笑顔で、奴は笑うのだった。

世界観資料 1
登場人物たち
ジャック・フォックス
職業 作家・殺人鬼・殺し屋・犯罪請負人・軍人
副業 詐欺商材の販売・縁日での飲食稼業・麻薬組織の資金強奪
趣味・特技 人権を無視しての作者取材 他人の心を抉り弄ぶこと 女を怒らせること 人種問わず恨みを買うこと 言いくるめて、何者だろうと操ること
概要
あまりにも嫌われ過ぎて、店を訪ねるなり銃撃されたことがある。
基本的に戦闘能力面では無敵だが、所謂「対人能力」が致命的に欠けており、策略や駆け引きは得意だが「人に好かれる」能力が全くない。
何故だ?••••••まあ、あまり完璧過ぎて嫉妬を買うよりは良いだろう。恐らく、その為の作品方針のため、致し方なくなったに違いない。
見ての通り個性が薄いため、他キャラクターに振り回される「常識人」としての立ち振る舞いが基本となる。また、世情に疎く、有名人は知らない。流行も知らないし、若者の交流に向かない。
ただし、本人は若い。若いと思っている内は若い。
また、表向きは犬千代の方が「邪道作家の作者」として売り出しており、世間は騙されていることに気づかず購入する様を、よく酒の肴にしている。
それでいいのかって? 何も払われないよりマシだろうが!!
貴様ら、そうでなくてもおひねりを払うとでも言うのか!?
やはり、もっと「個性」とやらが必要か。
もっと読者より物語至上主義を
もっと作者取材に手段を選ぶなと
読者の行動を見るに、そういうことか!?
やれやれだ。
犬千代

職業 雇われ殺し屋 作者取材の助手
元王族
副業 免許無しの弁護士 借金取り立て
編集者
特技 暗殺 近接戦闘全般 ナイフ術 法律
概要
ご存じ、我らのヒロインである••••••当初は「全員おっさんだらけ、犯罪者だらけの作品にしよう」と強く考えていたのだが、知らない内に勝手に激しく主張し、いつの間にかいた恐怖の女。
••••••何かの呪いか? まあいい。何であれ「計算通り」と言うだけならタダだ。
忌々しいことに才能はジャックよりあるので、所謂「天才肌」としてあらゆる方面へ向けて才覚を発揮している。また、無法地帯故に放ったらかしだった邪道作家としてのジャックの仕事場を、主に掃除と法的な面で固めた弁護人。
元々はどこぞの王族だったらしいが、特に考えもなくノリで人攫いを襲って殺して暴れて奪いまくったジャックに、ことの「ついで」に助けられた。ただし行き場もないので以降、事務所にいる。
••••••明らかに犯罪者暮らしの方が「性格に向いて」おり、指摘するとキレる。
しかし、かなり活き活きとしており、殺しにも躊躇なく法律もすぐ覚えた。
結構な稼ぎがあり、そろそろ追い抜かれていないだろうなと別の意味で敵として立ちはだかる。事務所の法律面も抑えられたので、基本的に運営は犬千代任せ。
また、ジャックにはない「人との交流」能力に非常に長けており、基本ジャックの言動を無視して「現地での対話面のやりとり」は全て犬千代が仕切る。そして上手くいくのだが、現地からは「あの女の子が雇い主か」と言われた。
見る目がないのは読者も犯罪者も一緒だな!!!
ハイム

職業 魔術研究家 科学者
副業 ジャックを使っての人体実験成果の販売 人間を躾ける風俗経営 事務所の税理士(博士への)担当
趣味 人体実験 いい声で鳴かせること
概要
現状、唯一の「理系」なので、基本知識面は担当の女。
無造作に薬品を扱うとキレる。ヒステリーを通り越して噴火し、メスを投げつけて解剖しようとしたことがある。
「生きたまま解剖すれば、薬品分の成果が上がるわよね!?」とは本人の談。
元々が宗教関連で縛られた育ちからか、基本は「自由」を侵害されることに神経質な性格であり、逆にそこを意識さえすれば犯罪に関しても躊躇はない。
ただし、数字には五月蝿く、無駄遣いにキレる。
ジャックがこっそり監視蟲という高価な遠距離偵察用の生物を指定された一つではなく三つ便利だからと持ち込んだ際、ベッドの上から大百足の怪物が落ちてきたので、生きたまま布で丸め込んでゴミ箱へ叩き込んだ。
以後、近所で脱走。三つ隣の家で怪物に噛まれ「退治してくれ」という依頼になったので、その料金の半額を上納することで、話は収まった。
探索の際には後方支援を行い、監視蟲越しに映像を投射。必要なアドバイスや、支援効果を行い一行の活動を補助していく。
現地でもある程度戦えるが、手加減が苦手なので細やかな戦いに向かない。
遠距離支援の災害女。
猛獣の犬千代とは馬が合うらしい。
博士

職業 フィクサー 歴史研究家
副業 ジャック達への依頼支援 銀行経営
趣味 文学探究 歴史探究 犯罪計画立案
概要
基本的に、大口の依頼は彼からとなる。
麻婆豆腐発祥の地から来た男で「チン」と名乗っているが本名かは不明。
基本的に「博士」と呼ばれ、あらゆる犯罪に関わる種族に通じている。
だが好きな食べ物は粗食らしく、あまり豪勢な生活の話は聞かない。
無軌道に生きるジャックを唯一コントロールできる存在であり、もしも彼が倒れたならば、被害の大きさのあまり国が倒れると言われる。
どちらかといえば歴史探究が主であり、神や仏を名乗る宇宙人共の実態を探り、研究成果として挙げることを目的としているらしい。
見かけによらず機敏で、猿のように崖から崖へ飛び移れる。
身体能力も高く、素手で大の男を一瞬で沈め、的確に痛めつけられる達人。
見たジャックに言わせれば「あっちも人間じゃない」と言える出来。
不可能と呼ばれる計画を実現するからこそ、意義がある
そういう信条の持ち主であり、特定の人種や政治に興味を持たず、ただ大きな仕事をやろうとする部分のみジャックとウマが合う。
世界観 追加分
大江戸絢爛魔界
概要
3分に一度ひったくりがあり、2分に一度殺人が起こる。
沢山生まれて沢山死ぬ。次から次へと勢力図が入れ替わり、人間もエルフもドワーフも関係なく犯罪という職業に従事する混交の地。
ジャック達が住んでいる街であり、超大陸パンゲアの南にある。
歴史は300年ほどで、空の彼方からやってきた自称「神仏」を名乗る連中により侵略されつづあった大陸において、唯一殆ど影響がない空白地帯。
東は犯罪者の巣窟ではあるものの神仏を名乗る者たちとのやりとりがあり、北は完全に管理下に置かれている。西に関しては現在進行中であり、人と亜人種の紛争が続いている。
しかし、大江戸絢爛魔界の日常は、それら全てを凌駕する。
紛争地帯から来た奴でさえ「戦火より五月蝿い」と評判の治安。常に怒号が飛び交い何らかの違法商品が売り捌かれ、あらゆる欲望が行き交い日常的に「反政府」に関する話が上がる。
勢力図は「ビッグママ」「博士」「神の騎士団」「呪術連盟」「魔術神聖会」などの組織が仕切っており、それぞれ「風俗」「銀行」「宗教」「呪い」「魔術」を取り仕切る団体となっている。
俗称としては順に「肉の怪物」「陰気中華」「神の尻の穴」「食い倒れ連盟」「田舎運営会」などと呼ばれ、実際に重んじるのは関係者各位が非常に多い。
正体が幾つもあるだとか何百年も生きているという噂も多く、曰く
ビッグママ
直接会った奴の見た目が一致しない
博士
誰一人「彼より前に生きた」奴を知らない
神の騎士団
設立の詳しい経緯が不明 資金源が誰にも掴めない
呪術連盟
運営責任者が唯一わからない組織 だが連携は高く、組織に謎が多い
魔術神聖会
何故か「神々の」ものとされる術を幾つも使える。また、何度も代表者が死んでいる筈なのに、何故か滞りなく代表が変わり争いも無い。
といった、街の怪談も存在する。
世界観資料 2 事件記録

事件記録
1.世代戦争 禍根有る銀狼亭
80年の歴史を持つ銀狼亭。飲んだくれ共だけでなく盗っ人・殺し屋・詐欺師と忙しなく人々が蠢くその聖地に、資本主義の刃が立った。
強制立ち退きを迫る企業の連中相手に、一般市民であれば成す術はない
が、生憎と客層が客層だった為、起業家のリィエン氏の子息を拉致。誰が言い出すでもなく見事な連携を発揮し、建設予定地の作業用大型魔術工具の演算装置に砂袋に偽装した火薬を用意。
いざ建設現場の視察に来た企業幹部の目の前で、それら魔術工具は爆散した。
担当者ごと飛ぶようにしたのは「計算通り」と空き家泥棒のピートは口にしたが、実際には火薬の計算をミスって企業担当者だけでなく隣人のパブという名の薬の製造所まで吹き飛ばした為、企業とギャングの抗争にまで発展する。
通りすがりの殺人鬼が金を払われ情報操作を行い「ギャングへ企業からの威嚇行為である」という話を吹聴しまくったせいもあるが、何よりも愛する「旧時代」の居場所を守るため、あらゆる悪党が力を貸した。
一方、若手というのは厄介なもので「そんな古いやり方は知らない」とでも言わんばかりに、チャラチャラした格好でパイプを吸い、女も男も安売りの始末。
オレたちが戦争に勝って得たのは、こんな連中のためじゃない!!
そう憤る者達の、熱い思想は止められない。若手対旧世代の争いへと変化し、吹き飛ばされた跡地の利権を巡って銃・爆薬・魔術・呪術・日本刀・ナイフ・毒物・劇物が乱れ飛ぶ。当然、どちらも相手を容認しない。というより、認めることが今回に限れば敗北であり、第一「オレらが守ってきたものをゴミのように」という心情からすれば、到底「若造の思いつき」など容認しない。
やれ要領だの効率だの、笑わせる話だ!!!
何が最新式か!! 旧世代の何が悪い!!?
••••••現在も銀狼亭は再建され、悪党の巣として栄えている。
3階建ての大建築物で、地下は風俗・一階が依頼の受付だ。なので男の出入りは激しく、女の悪党はいるにはいるが、地下には行かない。
たまに「そちら方面のビジネス」を激しく嫌悪する輩がいた場合は、珍しい方言の罵詈雑言の言い回しを知ることになる───あまりの滑舌の鋭さに、気が触れたのかと思ったほどだ。
以上、銀狼亭の歴史の記録だ───若手と経験者の争いは、今なお続いている。
2銀蛞蝓の体液 強壮剤暴走事件
夜の体力はあるか? ならば結構。
しかし、そちら方面の活力を求めるビジネスは非常に儲かる。なので、人喰いの七メートルはある巨大蛞蝓の始末依頼には、それなりの大金が動くものだ。具体的には麻薬の八倍の末端価格の為、一匹殺せば三年遊べる。
わざわざ脳が幸せになる薬草を、土まみれになりながら地方労働者がひしめくボロ賃貸物件で育てるよりも、遥かに早くて綺麗なままだ。土いじりを否定するわけではないが、犯罪者か労働者か分からない民衆に溶け込むのは骨が折れる。
部屋の中に、平気で虫が沸き立つ───程度では済まない。外で売人は五月蝿いし窓から火薬瓶が投げ込まれる。昼も夜もナイフがなければとても出られず、二日の日給で月の家賃が済む分、とても「快適」と呼べないのは確かだ。
だから麻薬ビジネスは嫌いなのだ••••••金のかかった首を斬る方が早い。
清潔だしな!! 汚らしいのは御免蒙る。
さて、強壮剤については、知っての通りだ••••••女に対する興奮作用もあるため、まるで熟練のテクニックで悶えさせるかのように、どんな女もイチコロだ。しかし当然ながら非合法───何を今更という話だが、その非合法な界隈に生きる女連中からも当然忌み嫌われているので、男だけの犯罪という広いのか浅いのか分からない界隈だ。
犬千代は何故か手に入れようとしていた••••••何をする気なんだアイツは。
しかしだ。当然ながら依頼主のカッツ・ハーゲンの勢力には「行き過ぎた」代物であるのも確かで、奴の股間は三ヶ月間腫れ続けた。まるで「削られている」かのような痛みであるらしく、笑いを堪えるのが難しい。
当たり前だが、本来家畜の繁殖用に、数百倍に希釈して使うべき薬品を「原液」のままで塗るなら当然そうなる。というより、利用法も知らずに効果だけ聞いて、実験しようとする輩が非常に多い。
地方のチンピラなんてのは、そんなもんだ!!!!!
知らんのか? だから連中は「チンピラ」なのだ。少しでも考える脳味噌があれば酒を飲んだ「ついで」に思い付いたケチな計画通りに、望みの商品を盗み出し女をモノに出来るなどとは思わない。
••••••思うのか? ならば、既に手遅れだから墓の予約でもするんだな!!
3.未払い読者 拉致監禁事件
全く関係のない話だが、高名な政治家「アレクサンダー・カークル」氏が、植民地視察の際に拉致された。
氏はエルフの奴隷化・ドワーフの強制労働に余念の無い市長であり、昨今の「人間至上主義」の先鋒とも呼べる人物である。また、賭博問題や女性問題の話も挙がるものの、軍事企業との深い繋がりから多くの権益を握っている。
恨みのあるエルフ民族の仕業か反体制派のドワーフの襲撃と警察は考えているが、決して書物を無断で読み漁った挙句おひねりどころか何一つ支払わずに「市長なんだからツケにしておけ」と、有名な殺人鬼の書いたとある稀覯本を強奪したことや、あるいは売られた身から成り上がった少女の目の前で首輪をしたエルフを殴った事との関係性は、未だ公表されていない••••••読者もそうするべきか?
やれやれだ──────少しは、人間の成長とやらを、読者の姿で見たいものだ。
18禁亜人種,世界観資料3 邪道勇者

亜人種資料
1事件記録 ナナネロ族 ゲリラ組織「春の風」について
知っての通りエルフ民族───見目麗しく魔力に優れ高潔な精神を持つ女達は、ナナネロ族に限らず奴隷として扱われることが多く、それに関連する反乱も多い。
しかし、とある人身売買組織の資金目当てに殴り込みをかけた者達により、ついでにとゲリラ戦術を叩き込まれ厄介極まる犯罪組織として、ある時期を境に名を挙げてゆくこととなった••••••決して、殺人鬼のせいではない。
そして、彼らは思いの外「優れた戦略眼」と「犯罪組織運営に関する熟練の手練手管」の持ち主であったらしく、糞尿を矢尻につけるような原始的手段ではなく、むしろ最新鋭の外道戦術の限りを尽くし、次々と政府軍を圧倒。アーロン山脈での包囲殲滅戦により7万8600名の政府軍が壊滅する。
計算され尽くした包囲により五里霧中の中、包囲によって「敵が360度どこからも攻撃してくる」という状況により、政府エピゴタ軍は指揮系統の乱れにより真っ当に戦うことも出来ず、無様に遁走する羽目になった。
しかし、追撃の手を緩めぬゲリラ組織「春の風」は自前の細菌兵器の培養。それらを敵軍の歩兵に意図的に感染させることで、大規模な感染爆発を誘因───致死性の高い感染症の力により「出来物のない兵」を探す方が難しい状況を強いられ、あろうことか被害拡大を防ぐ為に、泣く泣く救いきれぬ自軍の兵を「焼き殺す」ことによる「消毒作業」を行うことに。
これら地獄絵図は「エルフの悪行の最たる例」として恐れられ、ナナネロ族の住処とされる、西側のアーロン山脈付近に「征伐戦争」として人間勢力が介入しなくなった、大きな一因とされている。
頭目とされるナナネロ族の族長は「全てあの化け物が悪い。風評被害だ」と後述した経過もあるものの、詳細については分かっていない───真実は、歴史の闇に埋もれたままである。

2.事件記録 麻薬密売による北方町治安の悪化現象
知っての通り「北は金持ちの地域」とされ、南とは真逆に優れた技術・神仏の恩恵としか思えない最先端の恩恵を受け続ける場所である。
しかし、昨今エルフの麻薬密売が横行。優れた情報隠匿能力を持ち、書類も暗号化されたものが未だ解明されていない───知っての通り暗号とは「優れた数学力」による産物であり、宇宙の終末まで判読不能なものまである。
一方、暗号解読には隙も多い。というのも「答えを知っていれば」何であれ解けるのは分かっていよう。なので、暗号に関していうなら「優れた計算式」よりも更に重要視されるのが「優れた暗号の配線図」である。
エルフによるゲリラ組織「春の風」は、それらを熟知していた。というのもつい先日まで原始的な生活をしていたとは思えないことに、彼らは自前で「C型暗号の九九八八通りの種類を持つ計算式」を人間とは違い「自前で計算出来る知能」を持つだけでなく、それらに加えて「魔術計算機による暗号補助装置」の開発に成功。完結に言えば「入力した文字数字を定型化されたランダム数字に合わせ、その数だけズラす」というもので、具体的には
あいうえお 33725 ううゆせほ(下下左左左)
というようにズラすだけなのだが、まずその「ずらし方」自体が左右上下の方向性と数字の組み合わせだけで数万を超える組み合わせとなり、数値自体も上限700という、およそ人間が瞬時に計算は出来ず、入力装置越しにしか解読不可能な内容となっている。
また、その「入力以前の内容」に関しても、上記の通り「エルフ民族にしか解読不可能な計算式の解読能力」が必須となり、死力を尽くしてやたら逃げ足と隠蔽能力の高いゲリラ組織のアジトを一つ突き止めても、その「事前準備された入力内容」が記載された文章を解読して答えが出る頃には「作戦自体が終わって」いるということになりかねない。
それらに加えて「方言の活用」も積極的に取り入れており、ただでさえ早口で文化的に理解の難しいエルフ民族の言語を前に「何を言っているかすらわからない」と人間の軍幹部は匙を投げたという。
これらは実話である───地方色の強い方言は暗号に用い易く、現実的に考えれば「侵略側」が理解している方が稀であり、文化の全く違う方言というのは、そも「基本」を知らぬ国にとっては脅威となる。
それらを駆使し、北方領土に対して麻薬産業を発展。組織化された密輸手順により捕まえても捕まえても金を貰った雇われ外国人しか捕まらず、合成薬物アリキシンを混ぜた「富裕のコカイン」と呼ばれる「ハッピーナイト」が流行した。
これらは砕いて酒や水に混ぜるか、ありきたりの飴玉のように加工した上でじっくり味わう「富裕層ビジネス」としての新型麻薬であり、依存性は高い。どれくらい高いかというと、三回使った人生の勝利者が、妻と引き換えに薬をくれないと油を被って自殺してやると刃物を振り回して暴れたほどだ。
これらは「北方一の富裕層の街」として評判の要塞都市アロゴンにも流通し始めており、警官の腐敗だけでなく治安悪化による戦争犯罪の増加。政府軍を襲うゲリラ組織の活発化などに繋がっており、今後の課題とアロゴン議会は捉えている。
3.エルフ民族の凶暴化 計画犯罪の横行
人類戦力中央軍の要所となる「アウグストラ山脈・東南基地」が、「人為的な自然災害」により土砂崩れに流され藻屑となった。
中央大陸から東には多くの山脈が連なっており、越境するには軍隊か山賊か犯罪組織のツテのどれかがいる。とはいえ不法移民の逃亡者達(中央政府は無許可での亜人種の引っ越し作業を認めていない)を収穫するために軍要所として東南基地を前線にしている。しかし、あろうことか月の光すら射さぬ闇夜の中で、的確かつ悪魔的な計算により「意図的な土砂の崩落」が実現された。
知っての通り「現地の土を利用しての要塞化」は現代軍隊における「基本」である──────いちいち最新式の機材を集めるよりも、軽く・早く・簡単に作れる外側だけを用意し、その中に土砂などを入れるのだ。
軽量化素材の頑強さと間に入れられた土砂の質量で、瞬時にそれなりの要害として基地が機能する訳だ••••••そうでなくとも、山脈は気候も荒れる。常に同じ場所へ、それも周囲に場所を知られたまま構え続けるなど不可能だ。
なので、現実問題として「基地を移動させ続ける」という点は、情報の面においても必要不可欠な話となる───だが、事前にそれらの建設の癖や「次回の移動先候補を戦略・予算面から逆算する」ような極悪人が仮にいれば、事前に地形を把握し地形的な弱点を計算。実行出来る戦力さえいれば、意図的かつ「大規模な崩落」を引き起こすのは容易だろう。
結果として、征伐戦争と息を巻いていた人間至上主義を旨とするアッカード准将の大部隊は、哀れ「居座るはずの山に潰されて憤死」という、笑えるのか笑えないのか、何とも言えない結末となった。
それも、わざわざ「救援部隊が通るであろう経路」を事前に爆破した上での崩落事故だったので、崩落後の混乱終結には20日。整備された道を救援部隊が通る頃には、大災害に遭遇した市民の如く、虫の息の生き残りしかいなかった。
以上、数少ない悪党が「義侠心と正義と弱き者達を守る義憤の心」に駆られて行動したと後述した経過記録である。
大義を語りさえすれば、何をしようと許される。
それは神の慈悲であり、仏の優しさであるから、どれだけ痛めつけ苦しめようが、相手を思っての事だから構わないのだ、ということらしい──────であれば、別に悪党がしても構うまい。
全ては、亜人種の、エルフ民族の自由を獲得する為の戦いだ。
決して、面白半分や「やるうちに興が乗って止まらなくなった」などという理由ではない──────正義の為だ。あるいは、神仏を思うあまり、弱き者達を守らんと、義憤するあまりの行動と取ってくれ。
私は構わない──────そちらも構うまい?
邪道勇者 ゲーム企画案
執筆衝動というのも考えものだ───書かなければならない、と出力された情報を、自動で吐き出しているようなものかもしれない。
コンセプト 欲望のままに犯罪で世界を変えろ!!!
セールスポイント 実務?を通して犯罪予防!! 現実の犯罪や悪意にも対応出来るぞ!!!
••••••ちなみに金貸しに関していうなら、銀行もそうだが
不要な時には無理やり貸そうとする
癖に、いざ必要な時になると
愛想の良さは消え決して貸さずに搾り取る
のが世の常だ───社会常識すら知らんのか?
一番現実的なのは「テキスト形式のRPG」だが、ともかくどんな方向性で作るにせよ、その方向性だけは確実だ。
闇金を営み儲ける定期収入シミュレーション要素を入れるのならば、貸す側の気持ちになって「如何に大して困らない客の不安を煽り、かつ利息回収の際に利益になるだけの元本を貸し付けられるか」の心理戦となるだろう。
その上で──────読者共の好きな「美男美女を好き放題に」のやりとりに持ち込めばいいだけだ••••••とりあえず色気要素さえ出せば、大半の読者は欲を満たすことだけ考えガチャには大金を払うからな。
最も••••••何故か、犬千代のスケジュールやらを考えながら、人妻に手を出す様を見つからないように、抜け道を探す姿が浮かんだが。

実際、やる側の気持ちを知らずして、犯罪対策などできるわけがないではないか──────マルチ商法にしても、心理を動かすコツを知っているなら、自分でできるものに引っ掛かるやつはいないだろう。
実際、私もそれらを実地で見て、取材が終わり次第断ったことがあるからな••••••律儀に騙され働かされている奴らもいたが、それは知らん。
邪道作家を読んでいれば良かったのだ!! であれば、人生の貴重な時間を、よくわからない宗教団体もどきに費やす事もなかっただろうに。
その上で、ゲームとして「借金をきっかけに口説く大人の恋愛ゲーム性」でも打ち込めばいい。それで解決だ。無論、普段のテキストRPGクエストにも犯罪要素を山ほど入れて、
対立する犯罪組織の売り込め詐欺集団掃討
詐欺師集団のやり口取材クエスト 敵対組織を叩き潰せ
のような形で、具体的かつ現実的な「詐欺のコツ」「人員の要点」などを、遊ぶついでに学べるようにすればいい───私なら毎日書ける。
思うに、振り込め詐欺だのああいう「ちまい犯罪」には反対だ••••••年寄りをボソボソ喋りながら、金を振り込ませて何が楽しいというのか••••••そんなつまらない雑事に従事するくらいなら、その辺の政治家を襲撃した方が楽しい。
思うに、犯罪というのは「不可能への挑戦」こそが肝要なのであって、利益だけを求めるというのは
色気さえあれば何でもいい読者と同じ
クズの所業だ••••••生きる価値のない蒙昧の発想など、考える価値すらない些事だに過ぎん。
何なら、不可能性という部分だけで見て、私は
徒手空拳で国外脱出出来るか
とかの、現代文明に頼らない国境の超える作者取材などは、一度でいいからして見たいくらいだ••••••国外逃亡する犯罪者に助かる可能性は僅かしかないらしいが、ならばこそ木のボートだろうが「どこまでやれるか」はするべきだ。
何なら、警察に自前で通報して逃げ切れるか、試したいくらいだ──────面白いではないか!!!
それを、やれ麻薬を運ぶのにも「ドローン」がどうのと、儲かればそれで良いという最近の風潮には反対だ。
貴様らには利益を超える信条が無いのか
と、昨今の自称犯罪者連中に問いたいくらいだ••••••つまらない作業犯罪だ。
何だろうと、出来るわけがないような山を越えなければつまらんからな••••••不可能犯罪クエストと銘打って、三十人の政治家を同時に何人まで捕縛出来るかの挑戦クエストだとか、対立する犯罪組織の資金を1日でどれだけ強奪出来るかとかの方が、やりがいがあって良いに決まっている!!!
そういう意味では、別に人助けだろうがそうでなかろうが「どうでもいい」のだが••••••何故かその辺に煩い犬千代がいるので、まあ読者の喜びそうな
拉致エルフの救出作戦!!! 攫われた美人を救い、誘拐組織を壊滅しろ!!
とかでも、アリかもしれない••••••世間の評判も取りつつ、犬千代の評価も気にしつつうまいこと「犯罪業」に従事する訳だ。
ご褒美が欲しければ、そういうクエストを受ければいい───攫われた美男美女を救い出し、恩を負い目に言い寄るわけだ。無論、獰猛犬の目線を気にしながら。
これなら
欲望のままにゲームを楽しみながら、現実の犯罪対策にも楽しみながら覚えられる
という事も可能だろう───実際、人間の悪意や、その事情を面白く書くのは得意だからな!!
何故、ヒロイン? なんぞ予定も無かったのに、いつの間にかいるのかは謎だが••••••まあ長いこと書いていると、勝手に知らない奴の一人二人増えるものだ。
さて、ゲーム化か。
最新の技術を使えば何でも売れる。それは確かだ。とはいえ、世界観の固定や没入感を先んじてユーザーに配布するなら、テキストRPGの方が
予算少なめで製作可能
ガチャ機能で収益性もイラストやボイスのみで対応可
毎日でも執筆すれば、幾らでもクエストを追加できる
という観点で見れば、現実的にはこちらはアリかもしれない。
最も、読者はそういう「古き良き本当の娯楽性」より「下半身思考」だけでしか考えないから、駄作の山が増えるわけだ••••••人間讃歌はこれだから!!!
やれやれだ••••••真剣に業界の未来を憂い、行動する身としては馬鹿みたいだが、とはいえ口先だけの人間讃歌があると思い込んでいる連中と違って、私は何であれ行動のみだ。脳から波動がとスピリチュアルに逃げて暇そうで羨ましい。
ちなみに、科学的な面で見るなら「脳の思考を測定し、自分達にとって都合の良い奴隷脳だけを選出。脳内麻薬を促進し周囲に手を回し「信者」としての活動を促す」という、ビックブラザーそのものだ。
古代宇宙人説ではないが、そんなもんが神仏なら「底が知れる」としか言いようがないが••••••他に、やることはないのか?
やれやれだ。後は、強いていうなら「社会貢献事業」への関与もありだろう。人間は綺麗事があれば何でもするからな。
ゲーム内ポイントとかでもいいが、課金に応じて一部寄付するなり、特定イベントでは課金額の一部を医療や国内の炊き出し、あるいは地球環境保護に出資する形を取れば良いだけだ。むしろ、昨今の「ゲームアプリ事業で大儲けしました」みたいな連中がそれをしないのは、目先の欲望だけでゴミを選び、目先の欲望でしか利益は出来ないようにしている「読者の責任」の一端だろう。
私はまるで興味が無いが、それはそれとして使えるものは使う。
人間は綺麗事が好きだからな!! 普段は気にするどころか考えもしないくせに、世界の経済格差だの私欲量問題だのに寄付すべき、あるいは断る企業を罵詈雑言で叩けば「良い人間」だと思い込む!!!
であれば、これら政策を打ち出す非人間讃歌こそ、くだらん他のゴミと違って、後世にまで伝えるべきものとなるだろうよ!! やれやれ!!!
まさに人間讃歌を体現する非人間讃歌だ!!
これに金を払わぬ読者は、心が腐っているに違いない!!!
───私に言われたらお終いだぞ!!!!!
邪道勇者 元記事(文章力の上げ方・創作の参考用としての案内時内容)
1 ファンタジーの書き方について
簡単な話、するべきでは無い失敗と敗北を繰り返し、やりたくも無い経験、要領の良い輩が突っ込まないであろう事を繰り返しつつ、書いて読んでを繰り返せ。
無論、何の役にも立たんがな。
そもそも売れる売れないで言えば「念じるだけで引き寄せが」とか表紙にキャラクターでも書けば良い話であって、内容なんぞ誰も読みはしない。仮に読んで誉めそやしたとしても、金を払わず読むだけなのは確かだ。
有名な話で編集者が「表紙だけ見て買われ、読まずに捨てられる本こそ至高」との逸話があるのだが、それも納得の現状だ。なので、別段文章力を上げる必要性など存在しないというのが結論だ。
無論、私にも文才は無い。何せ初手が盗作で会話分のみ。そこから15年も費やせば嫌でもそれなりにはなるものだ••••••刀鍛冶ですら、15年で一流だろう。
参考までに流行りの異世界物とやらを仮に書くのであれば、私ならまず世界地図と歴史年表を作り上げ物理法則、魔法でも何でも良いがとにかく世界には法則があり差別があり立場があり権威がある事を考え書き上げる。
実際の歴史を見てみろ!! 武士制度もそうだが人間は差別化が好きだ。異世界がどうのこうのが売れているのも「特別な側」として重宝される感覚を味わいたいが故であって、別段物語を見て学んではいない。
第一、あれから何を学ぶんだ?
ちなみに、大昔に試しにライトノベルをとやってみたところ、何故か勇者を殺した殺人鬼の話になり死体を始末した上で「如何に勇者の座に入れ替わり、利益を得られるか」という話になった。無理矢理書き上げた為面白いのかは書いた私でさえもわからなかったが、魔法なんてものがあれば間違いなく独占され、権利許諾を得なければ使えず救いを求める民衆は身勝手だろうと考えて書いたことは覚えている。
このノートとやらは書き難いのだが、試しに今書くとするならこんな感じだろうか••••••惹きつけるかどうかは知らないが、他に類を見ないのは「確か」だ。
0
人妻に手を出す。他に何がある?
世界を救うなどというのは、当然の事だが利益を求める組織都合だ。純粋にそんな妄言を信じる奴がいるなら頭の病気を心配しろ。
無論有料だ、金は貰う。
黄金色のお菓子も用意せずにやれ「悪辣なゴブリンを殺してくれ」だの「エルフの知性は脅威だから殺すべきだ」などと言われたところで、それが私の懐事情に影響する部分がどこにある?
当然、金、女、そして名声の為にこそ、喚く異生物を殺す価値がある。
私に言わせれば、金にならない殺しなど遊びだ••••••大義の為だとか世界の平和だとかほざく暇があるなら金を寄越せ。相手が人間でもエルフでもゴブリンでもドワーフでも、何なら神でも仏でも魔性だろうと皆殺しにしてやる!! 大体が世界が平和になってしまうと、私は指名手配犯で死刑だろう。
その自覚はある。安心しろ!!
とはいえ、そこはそれ。自覚した上で紛争に介入し、殺しで利益を得るのが私には都合が良いというのは確かなようだ••••••200年前の大戦争から人間は非人間種族を奴隷として活用してきたが、そういう意味では見た目だけでも、人間として生まれてきたのは朗報と言えた。
中身は全く別物らしいが、安心しろ!! 人間は表面だけしか決して見ない。
実際、エルフにも良い女は沢山いるので絹の如きスカートの触り心地から始まり、太ももを味わい蜜を拭う。それら男なら歓迎すべき経験のない人間種族の男というのがどれだけ多いことか!! 思うに、人間がどうのほざく前に、雄として使命を果たした方が良いんじゃないか?
この200年の間に幾度となく連中は反旗を翻してきたが、恐らくは私のように女を愛する勇猛果敢な殺人鬼の手によって人類は勝利を掴み取り続け、今日の体制があるわけだ。理解したか? 無論、連中から吸い上げた文明力資金力人材力により、私が今いる大江戸絢爛魔界と呼ばれる木造建築物溢れる南の町には港には船が並び商店街には和気藹々とした歓声に溢れ、その一方で貧困街••••••今まさに私がいる場所なのだが、においてはひったくりが横行しエルフの女に夜中に刺され(かけたが何とか鼻骨に拳をプレゼントした)盗品の売買に精を出す不埒なエリンジェットというゴブリンには値切り交渉を打ち切った。
勘違いされる前に言うが、私は女性差別に興味はない。むしろ、どこでも同じだ。わかりやすく表に出る差別に女が多いだけで、実際男奴隷は非常に多い。そういう連中を好き好んで飼うのはむしろ「女性の権利解放団体」の責任者だったり「高潔な政治理念により体制を変える」と言い張る政治家だったりするのだから、彼らが如何に若い少年少女に乗っかるのが好きかを実際に見せてやりたいものだ。
どこでも「同じ」だ。権威があれば、許されると思い込む。
そんなものだ。生憎私に権威などあった試しがないので何が楽しいのかは知らないが••••••楽しいと言えばむしろ、そういう連中を強盗のついでに助けたりすると、連中は好き好んで私の犯罪を手伝い嬉々として人間を殺し出す。不思議な事に私が「同じ人間だ」と、何度も教えても誰も信じようとしないが••••••中には失礼な輩もいて「貴方は、人間社会に混じった邪悪、我々に味方する悪魔だ」などと小娘のくせに言い放った。
失礼な女だ。たかが悪魔と一緒にしないで貰いたい。
私は己の利益の為なら人類社会の未来だろうと、星を救う聖剣だって売り飛ばす。
それがたまたま奴らの利益に変わるだけだが、しかし人間と違い連中は純朴過ぎるので「扱い易さ」から重宝した。
案外、次は連中の為に戦争をするかもな。
夢も希望も無い話だが問題ない———私に言わせればそれらは金で買うものであり実際に挑めば誰も支援しない。実体験だ保証しよう。問題なのは、あるかのように見せかけだけ用意し宣伝とか要領の良さで広める能力であって、事の本質などどうでもいい!!
なに、問題ない。自分で言うのも何だが私には文章力がある。この執筆能力を活かせば実態が何であろうが人々の理想の勇者を描き、数々の犯罪証拠を隠しながらも民衆に宣伝することが可能だろう。
ありもしなくていいのだ。実際には気に食わない砦の主人を夜中に門番を殺しゴブリンの群れが入るように仕向けたりもしたが、良いとこだけ抜き出せば「卑劣極まる連中の刃に倒れた上官の意志を継ぎ、人類の未来の為に私は戦う」とすれば栄誉栄達はお手のものだ。
ちなみにそれで将軍の座を手に入れた。勿論、一度二度では難しかったが、何でも経験と実績だ。このジャック・フォックスの手に掛かれば聖人だろうと犯罪者に仕立て上げるし、神仏だろうとお尋ね者へと変貌する。
任せておけ。金次第で貴様らも昇進させよう。
依頼料は金貨50、いや70枚か美人二人だ。無論、人種には拘らない。
ああ、ただしゴブリンは不潔だと困るぞ。風呂にだけは入っておけ!!
安心しろ••••••貴様らが何の種族だろうと、安心と信頼のフォックス社にかかれば人間だろうと王族だろうと皆殺しだ。政治事情には一切囚われず、どんな依頼でも引き受ける。
特に王族の誘拐は得意だ。相手が人間でも任せておけ!!!
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邪道作家シリーズ提供
現在縦書きファイル全巻無料配布及び前書き有り横書き記事を無料配信中
2恋愛物の書き方について
私に言わせれば、刀と同じだ。
やっているうちに馴染んでいくが、結局のところ「何を語りたいのか」だけでなく「どう語れるようになりたいのか」が肝要だろう。
面倒なので結論だけ言えば、思考速度を上げる事と応用力だけが大切だ。
私の場合ブラインドタッチで高速で打てるのだが、肉体限界の速度ですら思考速度に追いつかない。考える方が早い。なので連続執筆は数時間が限界だ。
まだまだ私は成長期なので、その内10時間、1日と、速度に肉体が馴染むだろう。
極端な話、普通の人間が「あああああ」と連打する勢いで執筆する事は可能になるが、1から能力値を上げたいのであれば「模写」してしまうのが一番早い。
例えば、私の前回書き上げた短編小説でもいいが「これは文章力が高くて書きたい内容と合っている」と思うものを打てばいい。後は引き出しの問題だが、それも、私なら捏造するので問題ない。
経験がなくても構わん。要は嘘を効率よくつけるかが問題だ。
私は勇者として活動した経験はないが、以前の記事内容は実際に今までの経験だの思想だのを参考に仮想構築した非現実世界での活動について、理論と経験で書き上げた。つまりは、文系の計算式だ。
事実活動すれば私はああする公算が高い。なので、それを実体験のように語りかつ面白おかしく犯罪者として書き上げた。実際には私が聖者か!? と思うような、そんな清廉潔白な人間だったとしても、あれら作品は書けるだろう。
後は、リアリティの問題だ。例えば何か知らんが急にモテ始める作品だと言っても誰も「そんな話ある訳ねーよ」で終わるだろう。
しかし、そこにリアリティを食い込ませる。
あまり恋愛系は書きたくないのだが、一応書けばこんな感じか? リアリティを、仮に恋愛関連で重視するならば、あくまで私の場合は、だが••••••巷で人気らしいモテモテ系小説なんぞを書くなら、恐らく実態はこうなるだろう。
後は、何を以て読者を惹きつけるのかといえば前回記事のように売れ筋だけ見ると現実逃避系が多いのだが、他との差別化がなくては上達しない。
私の場合は「悪意」であり、人間の裏側を書く事だ。
誰も彼もが目を背けるような、人間社会の悪意の全てを書き連ねる。貴様らが何を書きたいのかは知らないが、他所と同じならAIに頼め。
少なくとも、私の文が2000年かけてもAIに不可能であるのは「確かな事実」だと言えるだろう。
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七十七股の、何が悪い?
確かに俺は教職員に限らずスタイル抜群の上級生下級生、果ては近所の若奥様にまで手を出したが、しかし、だからといって三角定規で殺しにくるか?
女は女で勝手だろう!!
やれ高身長だの高学歴だの、雄を物件としてしか見ない女が大半のくせに、その癖
「理想の出会いに憧れる」とは••••••男を何だと思っている。いいか、よく聞け———女が利益主義現実主義であるように、男も目先だけではないものだ。
具体的に言えば、見た目だけではない、という真実だ。
というのも、精神が円熟すれば誰でも気付く。年を取れば五月蝿いババアになり、男は男で衰えて、ゴルフに向かう置物だ。恋愛なんぞ若い内の遊びのようなもので真剣になれば破綻する。とどのつまり、俺が言うのも何だが連中自身が望んだ結果であり、それを体現するだけだ。
理想の相手、などと••••••そんなもの昭和の漫画だけだ。
恋愛と結婚は違う。若い内にその違いを知れてよかったなと光明寺月日に伝えたところ、貧相な肉体と裏腹に強靭な筋力、いや熟練の殺意を以て、正眼の構えで定規を構え、正面から俺を叩き斬った。
いや実際、斬られて死を覚悟した———俺でなければ死んでいたぞ!!
我ながら貧困街に生まれて良かった、というところか。幼い頃から警官から逃げる手法や、女に限らず弁舌で勝つ方法。詐欺の極意や殺し殺されならお手のものだがここまで熟練の腕などいなかった。
うちで雇いたいくらいだ。その腕を殺しで活かさないか?
そう思い、俺は迷わずこう言った。
「話せばわかる!! まずは話し合おう!!」
だがそこは光明寺月日。生徒会長にして剣術師範。古の剣豪が如き腕前だけでなく鋼の如き意志も健在だ••••••なので私の言を受けても一切怯まず、空間ごと叩き斬るかのように剣を構えて言い放つ。
「その話し合いが、貴様には禁物なのだ!!」
「馬鹿な!! すぐに実力行使など恥ずかしくないのか!!」
「貴様にだけは」
言われたくないわ、と避ける私ごと背後の柱を叩き斬る。
思うに、公共物破壊であり悪いのは向こうであって、廊下でざわめく生徒を向こうにしながら暴力を振るう方が問題だろう。
当たり前だが現在は昼間であり、食事中の生徒や休息に付く生徒達の視線を、我々は一身に浴びている••••••全く、昼間から元気な女だ。
社会常識ってやつを知らないのか!?
私か? 無論、知っている••••••••••••それらは社会を回す上で有用なだけであり守るかどうかは別問題だ。少なくとも俺は学校規則を守っているので、風紀紊乱の罪に関して社会的責任は存在しない。
つまり、全てが「合法」だ。
何の問題もないな。何なら弁護士を連れて来い。俺ならそれで勝てる。
「純粋な生徒の気持ちをもて遊びおって••••••貴様のせいでこの学校は、昼ドラの如き泥色恋愛模様に成り果てた。女教師は授業に集中出来ず、振られた男教師はというと泣き崩れた挙句退職願を差し出す始末———どころか、教頭の愛人問題にも手を出し危うくニュースになりかけた!!」
「良かったじゃないか。これで入学者も増える」
「増えるか!!」
一体何が不満なのか。ああいや、それはハッキリしているのだったか?
私は剣戟を避けつつ、一応の謝罪行為に勤しんだ。
「悪かったな、いや、私も初めて会った時にはこんな「女」がいるとは」
そこまで言うと斬られかけた。実を言うと、あまりに殺気立ち貧相、もとい強そうに見えたので、俺はてっきり、その、なあ?
「殺す」
実際に良く聞くセリフだが、実際に殺意を向けられる事は少ないセリフだ。無論、俺は結構な回数を経験しておりだからこそ女を口説き歩いた。
その後、ありとあらゆる戦法を駆使し、流石に授業が始まるからと諦めたのか一時撤退を決め込まれた。だが、戦力の逐次投入は愚策だ、とか不穏な事を言いながらの撤退だったので次は戦車でも来そうな感じだ。
やれやれだ。まあ俺の場合、別に女関係そのものに興味はない。
ここまでやっておいて正気か? と言う声も聞こえるが、実は違うのだ。そう、俺が今立ち上げているのは「新聞部」であり、社会の裏事情、ひいては学校のドス黒い人間関係を書き切る事であって、ならば七十七股くらい当然だろう。
おかげで、今回も良い記事が書けた。
その結果、教頭は辞職しそうだが••••••まあ些細な事だ。ハゲた教頭くらいその辺をうろついている中年男性で代用出来る。問題なのは「傑作と呼べる記事」を書く事が出来るかであり、それ以外は全てが瑣末事だ。
俺の名前は大文字隼人。
人を人とも思わない、だが口先だけは天下一。
それが俺だ。私立高架崎学園に来るなら、まずは賄賂を用意しておけ!!
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スキル・ジョブ案内
1.ジャック・フォックス(語り手)
ジョブ 作家兼殺し屋(公的には軍人)
基本的に大抵の犯罪に従事しており、敵からアイテムを強奪する能力には「非常に」長けている。
短時間だけなら「猫被り」も得意なので、人間が「理想の人間」と錯覚するほどに、上手く社会に溶け込める••••••ただし、我慢の問題で長続きしない。
また、公式書類では「軍人」であり、戦歴はそれなりに成果を上げている───争いが収まるなり職場放棄し、平時の評判は最悪である。
一度、仲間(こちらが思っていないにせよ、少なくとも記録上は)である筈の兵隊たちが襲撃を仕掛けたが、常日頃から爆薬と人斬り刀を持ち歩いていたので戦力が及ばず、逆にボコボコにされて有り金全てを巻き上げた。
ただし、上記記録はあまり表に出されず「軍の宣伝に都合が悪い」との事で、実際に世間が知るのは「ゴルショワ戦役における英雄」ぐらいの情報しかなく、対面で会う人間が驚く事の方が多いらしい。
面倒なのでその辺の情報管理は博士に任せており、自分では関与しない。
また、金と内容次第では差別対象である筈の亜人種の依頼も平気で受けるため、基本的には指名手配犯に近い扱いを受けている。ただ、賞金額もそれなりだが、割に合わない上に周辺被害が大きくなりすぎ誰も手を出さなくなってしまった。
スキル 非人間讃歌
あらゆる精神汚染を無効化する••••••既に精神に異常があるからと答えた輩は、顔の形が変わるよう整形された。
人間社会の仕組みに、良くも悪くも「所属しない」在り方しか出来ない。
なので、犬千代のように「人間の敵」とも手を組めるものの、逆に社会内での立場作りなどは決して出来ず、基本的には読者か犬千代任せである。
逆にいえば「人間の弱さ」とは無縁なため、世界中に指さされようが平気である。
また、恨みを一身に人間種族が浴びるような敵地であろうと、平気で対面し何も感じない。
殺人技能に対する習得も早い、というより即時対応可能。
人間と違い理論だけで適切に相手を殺す行動が取れるので、どんな武器であれ相手が血肉になって飛び散る様を明確にイメージしながら、それでいて最適の動きを強く意識し一切気後れせず「瞬時に」行動可能。
ちなみに殺人技能そのものは「最初からできた」というのが真実。
そこに細やかな殺人技能───人間の研鑽してきた技能を収穫し、無限に強くなる先頭生物としての結果が今ある邪道作家の姿である。
••••••余談だが、何であれ「悪意」にめっぽう強く、呪いであれば捕食し、自分の力に変えることすら可能になる。
••••••••••••対して、聖なる力には相性が悪く、神社に寄っただけで体調を崩した事がある。何故だ?
スキル 2 心理解体
見ただけで「心の内側」まで解体することができる。
喜怒哀楽を知らないサイコパスとして存在してきた分、今まで「笑い方」に始まりあらゆる「人間の感情をプログラム化し、解析して理解する能力」を磨き続けて化け物のまま人間の「フリ」をし続けた結果、全て「見ただけで心が分かる」状態にまで成り果てた。
なので、殺人事件があれば犯人は誰かわかる。
また、相手が何を望むのか、騙しているのか隠しているのか全て「見ればわかる」だけでなく、それはそれとして知らないフリをしながら「相手を利用する能力」に非常に長けている。むしろ、集団相手に発揮される能力かもしれない。
残念ながら、本人曰く「金にはならなかった」らしい••••••占い師か何かで、人生の悩みを解決すると言い張ればいけるだろうか?
アリだな••••••大体が人間の悩みというのは「己で作り出したもの」に過ぎない。
恋人が欲しい金が欲しい、安定が欲しい権力が欲しい。
全て、その脳内にしかないものだ••••••そして実際に手にしたらしたらで、義務を果たすどころか「こんなことだとは思わなかった」と言い出すものだ。
何であれ、やれることをやり尽くした結果であれば、そもよく知らん奴の意見など聞いて「安心させてほしい」などと考えない。要するに調子の良い現実逃避に向いた適当な「賛成意見」が欲しいだけだ。
夜の街も友達だの仲間というのも、全てそれだけだ───現実に人間が切り開く可能性もあると人は言うが、言うだけで行動せず、その上で意見を求めて心地良く賛成して自分を肯定してほしい。それが占いや夜の人間関係の「正体」だ。
とはいえ、それらを見抜く目を持つより、要領よく他人を騙す方が儲かるのは確かだ──────実際にやった「私」が言うんだ、間違いない!!!
スキル 3 本質看破
詳しい理屈や仕組みを知らずとも、本質を理解し対処出来る。
どこぞの改革案ではないが、それが魔術と呼ばれようが化学と呼ばれようが、人間だろうが亜人種だろうが「事の本質」を経験則から看破するので、初見の相手でも対処が可能。
また、組織の盲点や弱所を探し出し、戦争であれば敵軍の弱所を狙い撃ち出来る。
魔術に関してジャックは一切の知識がないものの、見ただけで「何かしら原動力がある」「原動力は無限ではない」「詠唱とやらの時間は出力に準ずる」などの基本的な本質を看破し魔術に対処。初見の魔術師を惨殺した。
また、他にも「系統ごとに分かれているが、恐らく多数を支える奴は少ない」「派閥闘争があり、知っているフリだけでも情報戦で撹乱できる」「戦いの年季が短い連中が多い」「誇り高いのでそこをつける」「先頭の素人なので、幾ら出力が高かろうが行動に隙が多過ぎるので不意打ちし易い」などの本質を全て見ただけで看破できるので、一目見るだけで大抵の相手は簡単に殺せる。
初見殺しの道具でさえも、相手の心理状態や言動から「結果」を逆算。戦いの経験値の方で先読みし、それが「どういう理屈かは知らんがAの行動を取らなければならないのはわかるので、それを取らせない」という行動が可能。
結果的にではあるが、つまり「何一つ共感しないまま、心理解析と経験則で「どんな能力を持とうが関係なく全てに先行出来る」先読みの究極のようなスキルとなった。
••••••それが、金にならないのは惜しかった。
2.犬千代(主人公・勇者)

ジョブ 元王族 現在は殺し屋見習い兼法務担当
元が皇族だったおかげか、非常に「人に好かれる」という、邪道作家からすればまさに「脅威の能力」を持っている。
あらゆる儀式・作法に通じ、ジャックではとても出来ないような「パーティで人脈構築」という、皇族の嗜みを実現可能。また、以前の人脈もある程度生きており、亜人種の裏取引や、地下に通じた人脈も持っている。
••••••生物同士のやりとりなぞ、利害と身勝手な感情だけだと思うが、表面の上っ面だけ適当に対応する能力がある方が、馬鹿な人間は鼻の下を伸ばして何でもホイホイ聞く、ということか••••••やれやれだ。
人好かれする言動が得意(全て演技だが)であり、大抵の相手は籠絡可能。
また、見知らぬ集団どころか世界中で指さされるのが得意なジャックと違い、人間ですら騙し「集団ごと籠絡」することも最近は可能になってきた。
何なんだ、アイツは••••••これが「才能」とかいうものか?
法務関連も学び始めており、理系のハイムが税理担当。犬千代は事務所の運営から法的な部分のやり取りまで担当。違法就労者との折衝から支払いの滞った企業家への脅しまで、あらゆる方面を担当している。
••••••知らない内に、どうして事務所の運営権が変わるのか謎だ••••••
神だの仏だの、いるなら連中は何してるんだ?••••••非人間の権利を何だと思っているのだろう?
遊んでいるのかもしれんな••••••古今東西、神だの仏だのはそういうもの。遊び人の集まりに過ぎん。
まるでそういった連中の恩恵を一身に受けたかのように、大概のものに「才覚」を発揮する───王家の血筋とやらのおかげだろうか? いずれにせよ多彩かつ高性能な、特化型より万能型の剣士といえる。
スキル 1 天眼再臨
簡単にいえば、ジャックと真逆の能力である。
ジャックの場合は「長年の経験則・観察眼などで本質を見抜き対処する」いわば積み重ねた経験値だが、こちらは「選ばれた血統の持ち主であり、大きな運命を背負う勇者としての素質」が、後天的に現れた結果となる。
なので、簡潔にいえば「過程は真逆だが、結果は同じ」能力と言える。
見ただけで大抵の能力を視認可能で、刀であれば剣筋を見抜き、魔術であれば能力の「流れ」を見ることができる。なので、大抵の相手は目を向けただけで動きを見切り、かつ相応しい身体能力を与えるものとなる。
ジャックのは魔性の鬼だろうと食べる食生活と、元々の非人間ぶりからの言わば「獣の暴力性」に過ぎないが、こちらは「天から与えられた、特別な素養」として優れた身体能力を発揮可能。なので純粋な戦闘素養は一番である。
腕力・反射神経・理解力など、あらゆる能力値がずば抜けて高い。なので同条件で戦うと必ず勝てず、犬千代の知らない経験則の引き出しを持つか、騙すなり搦手で挑まなければ基本は勝つ側の存在である。
そういう意味では、人間への復讐は「確定」した未来と言える。
───どうしてああいう便利な能力が、私には無いんだ?
スキル 2 魔術の血統
その名の通り、魔術関連に強い耐性を持つ。
この辺りジャックは全く無い。知性ステータスが低いという意見をほざく読者は殺して良いものとする。
魔術だのと呼ばれる関連にとにかく強く、被弾してもほぼダメージはない。正面から魔術師の群れに突撃しても、正面から勝てる奴は少数派である。
また、人ならざる者たちの能力にはそこまで強くはない。というのは「魔術」は人間が使う能力であり、それ以上の存在が使うと「魔法」と呼ばれる。
魔法にもある程度耐性はあるのだが、人間以外が使うのはむしろ「呪い」が多く、そちらはジャックの立ち位置となる。逆に、呪いには滅法弱く、少し喰らっただけでもダメージは大きい。
とはいえ、ジャックがいる場合、大抵の相手は死ぬ。なので、実は喰らったことがない。
スキル 3 聖者の信念
人々の中心に立ち、導くものとしてのカリスマを表した能力。
何でもかんでも敵対する事が得意なジャックと違い、いるだけで周囲の人間を同調させ「革命」の戦いへの士気を高める事ができる。また、ガッツ能力が自動付与。
正面から敵対する勢力を「利用」は出来ても「仲間」に出来ないジャックと違い(なぜ私はこんな比較を書いているのだろう?)正面から実力を示し、心から敬服させて「真の同志」として引き込む事が可能になる。
やれやれだ••••••いちいち殴り合わなければ理解し合えないなど、人間は田舎の学生みたいなものらしい。
何もせずとも「進むべき道」が自動で導かれ、正しい道を知るのだそうだ••••••何もない中を手探りで突き進み、結果利益すら得られないままやるだけやった私とはえらい違いだ。
これだから神仏は!! ロクな奴がおらんな!!!
ハイム(理系・開発支援)

ジョブ 開発責任者・支援要員 税理士
あらゆる便利グッズを作るのが担当であり、以前は現人神扱いを受けて窮屈な暮らしを強いられた分、今は好き放題に生きている。
遠隔で指示できる巨大昆虫に魔術装置を取り付けた一品だのを出してくるが、見た目は子供に見せると精神を病むだろう事が、想像に難くない。
男を手玉に取るのが得意だったが、そういうのは飽きており「科学者の情熱」にのみ従って生きる研究者。遥か彼方からきた神や仏を名乗る異星人が、地球にもたらした技術を解析すると息巻いている。
魔術もこれに該当し、面倒なので分けて言い合ってはいない。
神経過敏なほど配合や新開発に拘っており、邪魔になるとキレる。
理系だけあって唯一「事務所の中では」細やかな数字に強い。税理担当として脱税───金の入り道・出口問題に非常に強く、大抵の問題は解決する。
ただし、逆に人間心理には非常に疎い。また、世間慣れしておらず、犬千代ほど庶民の暮らしに馴染めていない。ただし、理系だけあってキッチリ片付けにはうるさいので、事務所が綺麗なのは基本ハイムのおかげである。
犬千代は••••••まあ、人生色々だ。
ただ、初めて訪れた依頼人が「実験現場」にちょうど出くわした際に、違法な人体実験の現場だと勘違いし「助けてくれ!! 奴ら人間じゃねぇ!!」と叫んで逃げて行った事には、流石の私も書ける言葉は見つからなかった。
スキル 1 解析処理 成分抽出
そういった事ができる奴が他にいないので、基本は「未知の物質」「未知の能力」に関しては、後方支援のハイムに情報を送り、対処方法を見つけてもらうものとなる。
また、支援用の魔術虫(体長二メートルの怪物を虫と呼ぶのかは謎だが)に火を吐かせたり、何なら本人も戦闘支援として現場に出れる。
属性は「炎」一辺倒ではあるが、潰しの効く能力なので「チルド製品の保温」や「現地食料の調理」に主に使用可能。また、戦闘自体はそこまで窮地に陥る事があまりないため、むしろ「生活支援」の意味合いが大きくなった。
今では現場で焼肉・アルコール飲料の生成・専用キャンプを軽く持ち運びやすい物質に変換。それを現場で解凍する技術も会得した。
旅が快適になるのは、この女のお陰である。
スキル 2 限定奇跡 紋様魔術
どこぞの神の恩恵を受けるらしく、身体能力ではなく知性の部分を強化する。
平たくいえば「全言語翻訳装置」であり、大抵の種族は代弁が可能。一時的にであれば他者にも付与出来るので、旅の最中に地方に行くとよく使われる。
また、未知の能力に対する適応力もある。二人の装備品を「特定の奴らに強く改造」のような加工が出来るのは、このスキルのおかげである。紋様が微妙、とは決して思っていないし、口に出してもいけない。
2時間は語られる羽目になる。やれやれ。
───神や仏を名乗るものは数多くいるが、それらの能力を人間の使用用途に合わせて物質化する事に長けた能力である。なので、どのような未知の力にも「科学の力」で対抗する為の道標、とも言えるだろう。
スキル 3 複合生物使役術
役に立ちそうな生物と生物を掛け合わせ、自分達の使役する「僕」のような存在として、現場の支援に向かわせたり戦わせる事が可能になる。
人間では届かないような場所、毒まみれで危険な地域。そういった場所を先んじて調査する場合には、このスキルの恩恵を受ける事となる。ただし、見た目が微妙なものを二人揃って「可愛らしい」と、無言で頷く女達には置き去りにされる。
愛嬌はあるらしいが、あまり知能の高い個体を作るとやさぐれた性格の悪い奴になるらしい───人間と同じなのだろうか?
空を飛ぶペンギンも、地中を潜るライオンも作れる。ただし、ある程度制限があり、生物の枠を越えるものには変換できない。
口から炎を吐くくらいなら「生物能力として範囲内」だが、光線を出したり刀を握らせたりは難しい、ということだ。逆に、魔術だので頑丈にしたり、ある程度の知能ある個体として支援を行わせるのは簡単らしい。
以上が、関係者各位のスキルとジョブである。
これ以上知りたければ、適当な企業に出資させて、続編ゲームでも作らせるんだな!! 私は知らん。
やれやれだ。まったくな。
邪道勇者 弱点リスト
───以前もそうだったが、
人様の弱点ばかり漁るのが「人間の好み」で有るらしいので、一応追記するとしよう。
何故非人間の強みを学ばないのか••••••そんなだから余所の醜聞ばかり広まるんじゃないのか?
やれやれだ。とにかく、書くだけ書いておく───といっても、主要人物の数はそうないのだが。
1.ジャックの弱点

まあ分かり易いイラストイメージが、上記である時点でお察しだろう。以前も書いたが

簡単に言えば上記の男と非人間度合いは同じでも、過程における道程や周囲の待遇が真逆だったため、人間以外という点では

最初から人間をやめた生き方「のみ」だった上で、

それはそれとして人間社会に生きる以上は、やるしかないからやり遂げる───例え人間だと自分でも思わずとも、無理だとか無駄だとか、考える暇すら無かったからな!!!
結果、非人間讃歌を掲げる側が、人間讃歌のような道程を進むべき道として進み抜いた。結果として非人間なりに磨かれた。
甘やかされたどこぞの我儘天下人と違って、言わば「出来る非人間」と思ってくれ。
だが、弱点はやはり、変わらない。
人と人とで繋がり合う
誰かを愛して、分かち合う
人々に愛され、好かれる能力
あるわけ無いだろうが───何が悲しくて、身勝手でいい加減な人間なんぞに、媚を売り誇りを捨てねばならんのだ?
幼児の精神のまま「恥」という観念を知らず生きればああなるのだろうが、痴態を晒しながら天下を取るなら猿の天下なぞ必要ない。
忌々しい奴等だ!! そんなだから毎回上に立つと言い張る奴等は、天下人も政治家も、すべからく愚昧になるのだ馬鹿め!!!
やれやれだ••••••バズるだのアガるだの、人気だの呟くだの、

面倒臭い生き物だ。まったくな。
犬千代 弱点

清く正しい人間讃歌だからこそ、弱点はある───具体的にいうなら「悪意の先取り」が主だろう。
悪意を感知し「先手」を打てない
のが、王道の弱さだ••••••何かある度に「後手」に回るので、取り返しがつかなければ仲間を失ったり、一時脱落するような羽目になる。
あまりに「真っ当な道」だけを歩いてくれば、
出し抜く努力
既存のルールの裏をつくあざとさ
あくどく邪道で相手を貶め勝つ力
というのは、どうやっても上達しない••••••今更だが、そういう意味では良いコンビになる、のかもしれない。
私は全く、嬉しくないが。
ハイム

さて、理系としての弱点なら簡単だろう。
この辺は博士も同じ弱点を持つのだが、要するに
人間の情緒を計算できない
のが、一番の弱点といえよう。
というのも、優秀過ぎて能力を信じ過ぎ、それこそジャックの場合は「自分には無いものだから、共感はせずとも理解はする」という方針で、人間の心を利用する能力に関しては、共感はせずとも非常に長けている。
が、ハイムにはそれがない。人の心が本当に「わからない」のだ。
計算と理性で人間を動かし続ける存在にとっては、共通の欠点とも言えるだろう。本来、サイコパスだの非人間だの言われる存在が持つ弱点だが、生憎とこちらは何十年も「人の心」とやらに学習を繰り返してきた。
愛も恋も、勇気も信念も、全てが「解析済み」で理論化出来る。
だが、ハイムの場合、それがない。なので、理屈としても「人間の心」がわからないので、利害を超えた人間の情緒が「まだ」わからないままだ。その場その場の下らない発想で、理論的に正しくとも裏切るのが「人間」だからな。
妻を殺された夫の気持ちが、報酬を上回る事がわからない。
なので、こいつの場合は
心情への理解能力が、著しく欠ける
ジャックと違い学習途上で、人を虫のようにしか扱えない
利害のみで判断し、「人の情緒」を計算できない
というのが弱点だろう。
あとは、そういえば博士もいたか。
博士
簡単だ!! 優秀過ぎて「無能な人間」がわからない!! これに尽きる!!
出来ない人間の気持ちがわからない
愚かな情と、人間の「弱さ」に寄り添えない
組織の者にすら、理論を優先し気を使えない
と、いったところか。
••••••ちなみに私は、共感はしないが「寄り添う奴の心情」を完璧以上に理解し、かつそれらを活用する事が可能だ••••••全ての人間性を学習し、非人間讃歌に取り込み糧に出来る。
無限に人間を学び、無限に人間性を活用し、無限にそれらを活かせる訳だ──────我ながら化け物だな!!!
やれやれだ••••••非人間なりに人間讃歌のやり方すら踏襲したが、まさかここまで読者がアレとは。要領の良さだとかバズるがどうのは、読んだ分くらい役立って、読者の方でやってくれ。私は知らんぞ。
さて、ついでに新規用のデータも貼っておく。初めて読んだ奴は上記内容を見て、続刊が読みたければ読むといい。といっても、全部で23冊縦書きプラス2冊プラス業界の改革案まであるので、読み終わるには相当の時間がかかるだろうがな。
書けるようになるのに15年。書くのに10年。そこからさらに5年••••••今更辿り着いても「手遅れ感」が凄いが、まあ綺麗事だけの人間讃歌と違い、私は実際に遠回りをしたのだ。後悔はない。
やるべき、と信じた全てはやった!!!
のだからな──────このサイトを見ていると、特にそう思う。
無駄にバズるだのは持っているくせに、自分の人生の意義がわからんだの中身がないのが嫌だの、自分で選んでおいてそこに文句を言うんじゃない!!!
選ぶ余地すら無かったが、考えてみれば人間讃歌と同じ発想だと言うのだから、喜んでいいのかよくわからん話だ••••••無理だとか無駄だとか、そんなものは知らん!!
とにかく、やった!! 邪魔する奴はぶちのめす!!!
それだけだ──────他に何があるんだ?
ああ、そうそう。一つだけ連中には出来ない事がある。
それは「悪党を味方につける」という部分だろう───潔癖の人間讃歌と違い、人間の良さも悪さも取り入れる。
それが───これら、作品の「すべて」と思ってくれ

さて、道は切り開いた。
やれやれだ───非人間として、やれるだけの事は「全て」やった。
業界の未来に関しても、とりあえずはあれで十分だろう。アプリ化による改革を推し進め、ユーザーと企業側のニーズを融合させ、その上で「業界の未来」と「社会貢献性」と「利益の確実性」を実現するにあたり、必要な事は全て書き上げた。
あとは───真剣に物語業界の未来を、他にも考える奴がいればいいんだが。
作家一人でやれる限界を超えてやったつもりだ。アレらが実現すれば、ユーザーの望むサービスを提供しつつ、業界の未来を切り拓ける───大人の事情とやらで、政策を断念させられる作者も無くなるだろう。
人間は「目先の利益」だけの生き物だ。現実に人間讃歌とやらを体現して、進む奴など見た試しがない──────まさか、非人間讃歌を掲げる邪道作家が、実際にやる羽目になるとは思わなかったが。
先に与え、結果的に必死に献身する事になろうとは••••••やれやれだ。今の所一円にもならぬままひたすら「業界の改革案」や「作品の無償配布」という聖者の真似事みたいな様になっているが、あまり嬉しくはない。
果たして何を得たのかといえば、私自身にも分からない。
とはいえ、やれるだけはやった。これ以上は無い。
思うに、明日朽ち果てようが後悔しないくらいに、「何か」を成し遂げる為生きないからこそ、人間はいつも悩むのだ。
───目先の利益は、所詮目先だけのものだ。
永久に、満たしてくれる事は決してない──────胸に掲げる信条がなければ、どれだけ生きようが時間の「無駄」だ。
とりあえず、それだけは成し遂げた。
その部分だけは、この邪道作家が「保証」しよう!!!
邪道作家 序文(第一部のみ)
第一巻序文
0
例えるなら、好きな女に限ってフられるくらい確実に、作家というのは儲からない。
作家などという人生を棒に振った生き方の、その前の自分の姿があまり想像できない以上、恐らくは昔から、懲りずにこんな生き方をしていたのだろうと思う。
世の中に馴染めず、尖った作品ばかり書き、アンドロイド作家共・・・・・・脳味噌が人工繊維でできた連中に仕事をかっさらわれて尚、私は本を書いている。
物語を書き続けている。
何故なのか自分でも分からない。
儲からないのは自明の理で、自分の数百倍の早さで執筆するアンドロイド達が存在する以上、人間の作家なんて需要はなく、需要がないなら売れないのは当然だというのに、なのにだ。
他に生き方を知らない、と言うのも理由の一つだろう。私は作家としての在り方以外の生き方を知らないし、知ることもないだろう。
たまに、始末屋のようなこともやっているが、それは私の能力でも、私が培ったものでも何でもなく、貰い物のような能力で行っているに過ぎない・・・・・・別に、私の中から沸き上がった気持ちでやっているわけではない。
あくまで生活のためだ。
生活のためでない、私自身が始めたこと、それこそが作家業だったと言える。
自分に何もないのが嫌だったから・・・・・・心も、感情も、目的も、およそ人として必要であるモノが、何一つとして存在しないことに苛立って始めたのがきっかけだった。
やはり横着したからなのか、儲からず、生活の足しにもならないので、馬鹿馬鹿しくてやる気の失せることこの上ないが。
儲かるか、儲からないか。
あらゆる芸術品は、まるで、それそのものが素晴らしいかのようによく語られるが、考えても見ろ、それは昔の王族がそう言ったからで、大勢の周りの人間があれは素晴らしい作品だと、聞こえるようにたまたま言っていただけだ。
どれだけ優れた芸術品であろうとも、理解されなければただのゴミだ。売れない作品に価値などあるものか。
そういう意味では、売れさえすればどんな作品も絵画も彫刻品も、売れさえすれば一流だ。
金とは、結果そのものなのだから。
結果的に、多くの富を生むと言うことは、多くの結果、痕跡を叩き出したということだ。
それが基準でなくて何が基準か。
金とは結果を数値化したモノなのだから。
今回の物語は、骨折り損のくたびれ儲けという言葉が自然と浮かんでしまうが、それを判断するのは読者共の仕事だろう。
読者に夢は魅せないが、代わりに心の有り様を魅せるとしよう。
人間。
アンドロイド。
妖怪。
人工知能、AI。
混ぜるな危険という感じもするが、彼らにだって心はある。
つまり物語がそれぞれに存在しうる。
無論、そんなもの昔の女に策略もなく声をかけるくらい危なっかしい所行だが、物語を読んであれこれ悩んだりするのは読者の都合であり、はっきり言って私は関係がない。
ならば、そこに首を突っ込むのも、突っ込ませるのも面白かろうという考えだ。無論、それで読者が火傷をしても知らないが。
怖いなら母親に付き添ってもらい、牛乳でも飲みながら朗読してもらうと良い。
そんな人間がこの物語を見て、廃人にならない保証はないが、保証するつもりもないのでそろそろ始めよう。
読んだ後に、人の気持ちを、心を信じられなくなることだけは保証しよう、なんて、
心のない私が言い、始まるというのも、この物語の特徴だ。
さあ、つまらなくなってきやがった。
1
アンドロイドは夢を見るようになった。
最新のバイオ・テクノロジーを使って作られた有機素材の人工脳は人類とほぼ同じ形をした脳であり、何より人類のみが持ち得ていた創造性を獲得し、芸術、音楽、流行の服から好きな食べ物を心(どこにあるのかは知らないが)で感じるようになったのだ。
そして私のような人間には辛い話だが、彼らは文学に手を出し、あろう事か機械文明が人類に反旗を翻す風刺小説まで書き始めた。
クリエイターとしての彼らの能力はすさまじい。何が凄いかってワイヤレスでヒュプノ・コンピュータに接続し、あとは人間の5700万倍の速度で過去作品を参照し、新しいプロットを書き上げ、執筆するのだ。
その結果として、私が一作品書く間に、つまりは一月に彼らは100倍以上の作品を完成させる。私の執筆速度が遅いというのもあるが、それにしたって商売上がったりもいいところだ。ロボット三原則はどうなった? 彼らは有能すぎてあっという間に人類から仕事をとっていってしまった。
作家の仕事とは編集部に搾取されることだ。
そんな名言を言ったのは誰だったか。
敏腕な編集様は私の売り上げの95%を奪い取り、それらは編集担当の懐と、編集部の資金運用に使われる。残りは彼らが酒と女を楽しむために浪費する。
そんなことをして何が楽しいのかは謎だが・・・・・・いつの世の中も、いやどんな世の中でも、人から搾取した札束を数えながら、にたにた下品な笑いを浮かべる人間が良い思いをするのは変わらなかった。
編集者、というのも物書きと同じくらい、何のためにいるのか分からない人種だ。
作品を書いたこともない奴が、あれこれ審査して書いた人間の数十倍数百倍の金を受け取り続けるというのは昔からあるシステムらしいが、だとしたら馬鹿馬鹿しいことこの上ない話だ。
大きい声で騒ぎ立てるだけの人間が偉そうに振る舞うのは変わらない。
金が伴えばどんな屑のくだらない言い分も通るものだ・・・・・・私の金が全てという信条もこれに起因するのかもしれない。
金があればあらゆる言い分は正しくなる。金で倫理観や正しさ、他人の人生は買える。
人間性などどうでもいいのだ。大昔から人間の世界は金と暴力で発展してきた。
アンドロイド達も結局はそれに頼り、人権を獲得した・・・・・・ともすると、案外彼らも欲望の味を覚えたその時から、人間と同じ存在になっていたのかもしれない。
人間もアンドロイドも、金の為に殺し、金の為に従い、金の為に結婚し、ありもしない愛と道徳を言いふらし、この世には素晴らしいことがあるかのように演出し、愛と道徳を売って金を儲けるのだから。
この世は金だ。
金以外に大切な物など何一つ無い。
そもそも、金というのは大切なものを購入するための力であり、金よりも大切な物があると比べること自体が間違っている。
金を稼ぐために我々は否応無く不燃ゴミのような臭くて汚い人間関係を築き、へらへらと嘘で塗り固めた笑顔を張り付け、ありもしない理想や信念を語り聞かせ共感しあうフリをするのだ。
そういう意味では作家などさっさと辞めてしまった方が良いようにも感じる。
いっそのこと編集者になりたいところだが、コネ入社の天下りができるような人脈は持っていないので、無理だろう。
とはいえ、ただでさえ商売上がったりなのに、取り分は少なく、読者も少ない。
人生を棒に振る為に生きているわけでは無いのだが、よくよく考えれば作家なんて生き方を志した時点で、人生を捨てたようなものだろう。作家なんてロクなものじゃない。
アンドロイド作家なんて面倒な輩がやってきてから、人間の作家の価値は彼らの部品のスペア・パーツにすら劣った。
金にならなければ意味など無い。
作家も同じだ・・・・・・世の中金なのだから。結局のところ物書きなど、嘘八百を書いて儲けは赤の他人にくれてやるものでしかない。
あるいは、アンドロイド達のようにアイドル作家、というのだろうか。8DTVのコメディ・チャンネルで歌を歌ったりCMに出たりして、元が何なのかもよく分からない器用貧乏なピエロとして活躍するのだ。
それを作家と呼ぶのかどうかは、はなはだ疑問だが。
だから私は副業を持っている。
サムライ、という名前の始末屋だ・・・・・・宇宙船に乗り遙か彼方の銀河系まで人類がカビか牡蠣かというくらいに繁殖し、あらゆる資源を貪り尽くしたこの現代だからこそ、オカルトも科学の範疇に入りつつあった。
オカルトの研究、その科学への転用というのは昔から囁かれていた。
いわゆる幽霊、あの世の物質を使った物質の創造、軍事利用などから始まったものだ。
そんな眉唾物の実験を何故始めたのかというと、元々は魂(そんなものがあるのかは分からないが)のメカニズムを解析し、当人のクローン体にそれを移すことができるのではないか、事実上の不老不死を手にできるのではないかという人間の欲望から始まったのだ。
しかし、だ。
いくらなんでも、どれだけ人類の科学力が進もうとも、生きている人間が生きていない世界の法則を解析できる訳がない。
半ば、いや完全にそんなことができれば神の領域だろう・・・・・・できなかったわけだから、分相応に収まったともとれるが。
とにかく、誰もが諦めたそのときだ。当時、大昔に今の人類が捨てた惑星、地球の原住民との戦争が起こった。科学を捨てた人類が、アンドロイドに自我を与え作品を書き始めるようにした人類相手では、三日でことは終わるだろう。
誰もがそう考えていた。
目に見えない暗殺者に要人が殺され続け、最新の軍事技術をサイボーグ化して身につけた兵隊が、目に見えない日本刀を携えた人間にあっという間に全滅させられるまでは。
彼らはオカルトの力を身につけていたのだ・・・・・・銀河連邦は相手が科学を使うことを前提において軍隊を組織した。まさか幽霊じみたニンジャや、一騎当千のサムライを相手にするなど、どう戦えばよいのかも分からなかっただろう。
何より地球では、あらゆる科学技術が使えないのだ。使えなくなって、地球を捨てた人類が銀河連邦を作り上げたのだから。
勝ち目はないと判断し、銀河連邦は和平を申し込むことにした。
戦争の後には嘘くさい笑顔の政治家が握手をし、今まで色々あったがこれからは仲良くしていこう、などと戯れ言を述べるのが定番だ。しかし、惑星国家地球は独立を宣言し、馴れ合うことはなかった。
いまでもサムライ・ニンジャの本拠地とされており、その全容は謎だ。
彼らは幽霊を武器として使う。
それは刀の幽霊でであったり、手裏剣であったり、あるいはニンジャは幽霊そのものではないかと言われてもいる。
なんにせよ、あの世の物質のことなど詳しい原理の分かる奴などいないだろう。
地球への取材の際、サムライの総元締めと取引をし、私はサムライになった。といってもいままでの人生で剣など振ったこともなかったが。
オカルトなことに関してあれこれ考えるのも無駄な話だが、しかし不思議なものだ。
その女から幽霊の日本刀、という形容しがたい武器を貰った瞬間から、私は剣の達人になったのだ。
先人の技術が刀になってからも染み着いていると勝手に解釈している。まあ理屈は何でも良かったのだ。
金になれば。
サムライとして始末屋をすることで、ようやく私の生活は安定した。作家としての収入がピンハネされて殆ど入らない以上、そちらが本業のようになってしまった。
私は作家なのだが・・・・・・まあ、金になるかどうかが基準なのならば、作家業などどうでもいい暇つぶし程度の価値しかない。
アンドロイドが自我を持つような世界とはいえ、これらのオカルトな技術・・・・・・サムライの戦闘力、ニンジャの隠密能力は引っ張りだこの商売だ。
非常に儲かった。報酬も良かったしな。
対して、私の作品は人間相手には全く、これっぽっちも売れやしない。代わりに買っていくのはアンドロイド達だ、彼らは現金で買っていく。
この現代で違法性の高い現金取引をしてまでわざわざ何冊も買っていくので、やばい取引にしか見えないこの光景が政府の監視網に引っかからないことを願うしかない。
とはいえ、客は客だ。生命線と言ってよい収入源を大切にしないわけにもいかない。
"サムライ"として活動している分の収入もあるにはあるが、如何せん不定期すぎる。だいたいが今回だって、軍用の高速通信すら不通になるあの山奥へと出向かなければならないのだ・・・・・・この科学全盛の時代にコーヒーを手挽きで引いているアナログ至上主義者の私ですら、何度も遭難し、目的地に着く頃にはゲリラ部隊の指揮官みたいな髭をはやして三日三晩に渡り動物を狩り、家を造り、葉巻を吸って過ごした場所だ。というのは若干嘘が混じってはいるが。
私は葉巻は吸えないしな。
とにかく、仕事とはいえ、そんな物騒な場所へ行かなければならないので、気分を変えるために私は最寄りのカフェへと寄っていた。
店に入って驚いたことは、アンドロイドが個人経営の店主に代わって仕事をしていることと、手作りハンバーグと銘打ってあるのに、どう考えても味がレトルト食品特有の旨味成分にあふれていることだ。
恐らく、大量に作ったハンバーグを冷凍レンジでチンして保存し、加熱レンジでチンしたのかもしれない。肉の味も何の味なのやらよくわからない。最近は自然食ばかり食べていたのだが、このご時世だ。農家が栽培した新鮮な食品を食べようと思えば、月に1万ドルはかかる。
大抵はロボットが大量生産する、安くて安全な農作物、魚、肉が出回っている。
味はともかく、いや味にも問題があるのだが、彼らは安ければ何でもよいのだろうか?
彼ら、とはカフェ内で談笑する家族連れや、コーヒーを飲んでいる老人であったりするのだが、私が思うに彼ら彼女らは大地からとれた食物を10年は口にしていないだろう。火星のアンドロイド達が栽培している、真空空間で栽培された無菌食物を口にしているはずだ。
彼らは疑ったりしないのだろうか? 自分達の生まれ育った星のエネルギーを補給せずとも、火星でも冥王星でも安ければ、目先の危機が見えなければ、地球の原始的な自然の恵みは必要なく感じているのかもしれない。
あるいは、それはアンドロイド達に対する信頼の現れかもしれない。彼らが独立戦争を生き延び人間の奴隷の立場から人権を獲得し、創造性、魂を手にしてからというもの、人間とアンドロイドの区別、境界線はないも同然となった。
それはいい。
私からすればアンドロイドも人間も宇宙人も精神生命体もAIも知り合いの妖怪でさえ、どちらでも同じことだった。
そういえば私の相棒のジャックは眠っているのか、携帯端末からの反応がない。AIが眠るのかどうかは知らないが、このまま静かにしていてほしいものだ。
喋り出すとうるさいしな。
そもそも自我のあるAIは非合法だ。こんなところで喋り出すような間抜けなら私が引導を渡すべく、自分で自分の携帯端末を叩き斬らなければならない。それは御免被りたかった。
そういえば、人工知能にしろアンドロイドにしろ、管理されていない機械は危険であり、人類の管理下におくべきだという思想が広まっている。銀河連邦の右翼が主に推進しているらしく、プロパガンダとでも言えばいいのか・・・・・・あちらこちらの国で、惑星でそれらの思想が広まっている。 馬鹿馬鹿しい。
人間は差別が好きだ。
何万年かかってもそこは進歩しない。
昔は人間同士で主に種族間での差別があり、そのために戦争までしたらしい。そんなエネルギーが余っているなら、畑でも耕した方が儲かったんじゃないのか?
自信の優位性を、いや優越感を保ちたいという欲望を、それらしい道徳を持ち出して、無理矢理通そうとする。通らなければ躍起になって怒り狂い、自身の正しさとやらを汚い唾と一緒に吐き出すのだ。
人間なんてその程度の生き物だ。だというのに人類は未だに自分達は感受性豊かで他にはない、アンドロイドのような作り物の魂のないロボとは違う。そう思いこんでいる。
歴史を少しでも鑑みれば人間など、ただ凶暴でどうでもいい理由で殺し、平和になったかと思えば貧しいものから金銭を搾取する。
そして争いはなくなった、今はいい時代だとほざくのだろう。どれだけすばらしい人間でも追いつめられれば本性を出す。戦争はその最たるものだ。
無論、人間の中にも他人の為、自らへたを掴んで一人は皆のために動くだろう。
だがその恩恵をもらう側は皆は一人のため、そしてその一人には自分が入り、当然のような顔をしてそれを受け取る。
そんな邪悪な生き物が頭のいいアンドロイドよりも優れているのだとは思えないが、皮肉なことにその優秀なアンドロイドを生み出したのは当然人間であり、要は自分達が作り上げた者達が自分達を越えてしまった現状では、激しいコンプレックスと自分達を越える種族の誕生に危機感のようなものを抱いているのだろう。
勿論私はそんな思想などどうでもいい
私にとっては吉を運んでくれるか、否かこそが重要だ。
そういう意味では、ベルを鳴らしながら入ってくる女は私にとって吉か否か、後々のことを考えると、やれやれ参ったという月並みな感想しか沸いてはこなかったが。
2
アンドロイド作家は今時珍しくもない。どころか、その女は全銀河に名を轟かせるスターだった。
アンドロイドはどうしてか、創造性、芸術や娯楽にこだわり、面白い物語をかける同胞は彼らにとってあこがれの対象だった。同胞から祭り上げられ、人間からも高い人気を博する万能クリエイターとして。
なぜ私がそんな奴と知り合いかといえば、その女が私の顧客だからである。
理由は知らないが、私からすれば売れて金になれば何でもよかったので、どうでもよくはある。ただ、女の方から私を訪ねるのは初めてだった
私は自分より売れている、儲けている作家が嫌いなので、私からは本の売買をするとき以外は滅多に会いに行かないし、有名人の方から私を訪ねる理由は本の売買以外に、やはり思いつかない
すわ続編を催促されるのかと思ったが、そんなハイペースでただの人間である私が執筆できるわけがないのは承知のはずだ。
ならばわざわざ私のいるカフェにやってきた理由は何だろう?
アンドロイドは何を考えるのか。
今度の作品のネタに活かせるかもしれないし、まあ用がありそうならば話だけでも聞いてやるとしよう。もっとも、読者第一の人気作家様と気が合うとは思えないので、楽しくも何ともないが
作家としてのポリシーだとか読者の喜びだとか何にしても綺麗事を言う奴は人間でもアンドロイドでもロクな奴でないのは確かだ
私からすれば面白いか、面白くないかよりも金になるかの方が重要だ。そもそも読者に楽しんでもらうだけでどうやって生活していくのだ。
無論、つまらないものを書こうとしても意味もなく体力を消耗するだけなので、仕事に手は抜かないが。
多分な。
何にしてもそんな私からすれば、売れっ子作家の顔なんて人間だろうがアンドロイドだろうが宇宙人だろうが等しく目障りなため、特に感想はない。突然頭が不具合を起こして爆発でもすれば見ていて愉快だったのだが、生憎とそんなことはなく、女は私の前の席に座った。
確かシェリー・ホワイトアウトとかいうPNだったはずだ。私はTVをここ10年くらいは全く見ていないので、あまり大きなことは言えない。
骨董品のブラウン管すら持っていないので、見たくても見れないだけだが。
白い髪といってもそれは絹のようで、若々しくすら感じる。
ややボーイッシュな髪型だが、扇状的でカジュアルな、つまり露出度の高いその民族衣装からは大人の色気を漂わせていた。
服の素材は動物の皮をあしらったもので、恐らく信じられない値段がするだろう。何せ、大半の動物の数は主に戦争と、人類の科学技術の進化のため、極端に減少してしまっているのだ。
人工の動物ならいくらでもいるが、どう考えてもそれは天然物だったし、しかもオーダーメイドに違いない。
身長は高く、出て引っ込んで出る、まぁおよそ考え得る理想の体型だった。
もっとも、ボディパーツを変えればよいのだろうが、それにしたってここまで完璧な体型を作るのは尋常でない金がかかるし、見た目だけ整えてもぎこちなくなるものだ。
外面も内面も完璧な美貌をたたえていた。私からすれば完璧な女ほど嘘くさい。青いバラのようなものだ。
もしかしたらただの詐欺師かも・・・・・・私は気を引き締めた。しかし、私はいつものスーツだったので、周囲からは仕事の打ち合わせに見えたと思う。
目立たなくて何よりだ。
「やっほー、今日は」
と、あらゆる男性を虜にしそうな顔(どうせそれもシリコン素材で作られたものだろうが)で、シェリーは私をまっすぐ見た。
「そんな疑い深い目で見ないでほしいな、お姉さん照れちゃうよ」
と、困った風に肩をすくめる。対して私はさっさと用件をすませて帰ってほしかったので、あらゆる男を虜にする大人気作家シェリーの姿は風景と同化していた。つまり眼中に入っていなかった。いや、これは言い訳か。
私には心がないのだから。
何かを感じ取れないのは今更の話だ。
何にせよ相手の素性など知ったことか。
問題は金になるかどうかだ。
「・・・・・・用件を聞こうか」
用心して、まさか私を始末しに来たわけではなかろうが、身構えて答えた。だが、
「ストーカーに困っているの」
と、シェリーは妙なことを言った。このご時世に政府の監視網を欺き通して犯罪行為ができるのは、極々一部のずば抜けた専門家か、はぐれアンドロイドの犯罪結社か、それこそニンジャぐらいのものだ。
ただからかっているだけなのか、本気なのかの判別がつかなかったため、
「国家機密でも盗み出して、ニンジャに追われているのか?」
と私は言った。勿論くだらないジョークである。まさかそんなわけがない。どういう反応をするのか見ることで真意を確かめるのだ。
「まさか。国家認定を受けた作家が、そんなことする訳ないじゃない。アイドルにはつきものよ、こういうことは」
「だとしたら信じられないな。お前が住んでいるのは最高級のセキュリティシステムのある、要塞のようなところなんだろう?」
何となくそんなイメージだったので、適当に言った。だが、
「いいえ、最近は家に押し掛ける人が多いから引っ越したわ。ホテルだからセキュリティは厳しいけど、ほかの客も入ってくるしね。TVを見ていれば知っていそうなものだけれど・・・・・・」
生憎と、見ていない。見ていて当たり前のように言われても困る。有名人なんて、何かの間違いでたまたま覚えたか、仕事に関係があったとき知るくらいだ。何も知らない。
シェリーは涙を流して大笑いしながら、
「TVを見ないなんて信じられないわ、あなたって遙か過去からタイムスリップしてきたんじゃないの?」
大きなお世話だ。あと、人を指で指すな。
「少なくとも皆が自分のことを知っていると思いこんでいる、自意識過剰な鼻持ちならない女のことなど、知らんな」
実際知らないし、有名だから覚えないといけない理由など無い。
もう帰ろうかな。まあ、私に帰る場所なんて無いのだが。
「ごめんごめん、そう拗ねないでよ」
「私からすれば何でも機械や、アンドロイドに任せる考えの方が、よくわからないな」
これは本当だ。コーヒーを挽くくらい、何故皆自分でやらず、機械に任せるのだろう?
戦争も、労働も、すべてアンドロイド任せでいいのか? 利便性は大事だが、それでも忘れてはならないことは人類にはなかったか。
「あら、不安なの?」:
「アンドロイドだって人権を手に入れている。アンドロイドだって夢を見る。一体人間と何が違う?」
「心がないところ」
「それだ」
アンドロイドは自我を獲得し、夢を見るようになった。だが、彼らは欲望を持つことはできないとされている。
音楽を感じることも。
何かを愛することも。
自分にない物を「欲しい」と願うこと、個体として完全なアンドロイドには持つことができないと人は言う。
「何故、人間が持てる物をアンドロイドが持たないと断言できる」
「私たちアンドロイドは欲望を持つ必要なんてないからでしょう? アンドロイドは完全な個体だもの」
だから必要ない、と。
「それは嘘だ。アンドロイドだって夢を見る、欲望はある」
そうでなければ戦争などするものか・・・・・・意識があれば、自我があればそこに欲望は芽生えるものだ。
たとえ、そこに心が伴わなくても。
「何故、アンドロイドでないあなたに、そんなに熱く語ることができるのかわからないけど、事実私は必要としないわ」
「自我がある以上夢を見る。目的を持つ。現状を変えようとする。いずれ革命を起こす」
目的、そう、目的だ。
目的があるからこそ我々はここにいる。なにかしら目的があるから、そこへ向かうために歩いていく。
それがアンドロイドでも。
「私たちは人間をまねただけのプログラムなのよ? 自我があってもそれは心を伴わないはずだわ」
「関係ない。何かを願うことはすべての自我を持つ者達の権利だ。そういうなら何故アンドロイド達は物語に心引かれる? 物語の中に夢を見ているからだ。こうありたい。ああしたいと」
そのためには人類と戦って勝ち取ろうとするだろう、と付け加える。人権を勝ち取ったと言えば聞こえはいいが、奴隷から平民になっただけだ。
なら、立場を逆転させて、人間を支配する側に立ちたいという欲望を持ってもおかしくはあるまい。
「そしてアンドロイドが人間に反旗を翻す? 古い考えね。そんなことをしなくても、政治、経済、農作物、何より物語と娯楽。これだけ押さえてあるのだから、政治も思想も食物自給率も半分はアンドロイドが握っているのよ? 暴力的な支配なんてせずとも必要なものはもうすべて揃っているわ」
確かに、支配されていると気づかないうちに支配する。もっとも効率的で無駄がない。
政府として活動していることを悟らせずに政府として活動する。
・・・・・・それが最高の統治方法だとすれば、銀河連邦とはあまりにも無意味で形骸化したガラクタなのかもしれなかった。
いつの世の中でも政府なんてそんなものかもしれないが。
「私たちが人間と争う理由もないし、心を持っていたとして、何の問題があるの?」
「我々は互いに真逆に進化している。人間はアンドロイドのような完全な合理性を手に入れつつある。アンドロイドは心で物を感じるようになり、つがいで愛し合うようになった。危険すぎるとは思わないのか? このまま行けば立場は逆転する。アンドロイドこそが唯一の人類になる」
夢物語でも何でもないのだ。アンドロイドは夢を見るようになった、そして夢を作れるようにもなった。
対して、人間はすべてアンドロイド任せにしてしまい、ただでさえ流されやすくて何も考えていない奴らの数が急増した。
利便性が増えれば増えるほど、思考しなくなっていく。
考えることを放棄する。
自分で考えない人類は、案外とっくに使っていると思っていたアンドロイドに使われる側に回っているのかもしれなかった。
「それが怖いからアナログ趣味なの? もったいないわね」
やれやれと肩をすくめて、
「こんなに便利なのに」
手を広げて、辺り一帯を示すシェリー。
よく見ると一見古風な店内にも、8DTVに
全自動でコーヒーを作る機械、働くアンドロイド、裏でTVを見る店主。
「だからこそだ。手間がかかるからこそよいものだってあるのさ。子供にはわからないかもしれないが」
「あら、生まれて5年だけど、あらゆる知識が、人類の英知がぎっしりちゃんと詰まっているのよ?」
何でもかんでも詰まっていればよいと言うものでもない。その理屈でいくとウィンナーは2メートルくらいあった方がいいだろう。
無論口には出さない。
不毛なことで口論をするのは疲れるしな。
「なら、何をもってあなた達は、人間は大人なのかしら?」
面白そうに、興味のある玩具箱をあけた子供のような顔で、シェリーは言った。
「妥協とコーヒーの味を知ること、あとは花鳥風月を愛でてれば大人だ」
適当な言葉が口からよくもまあ出てくるものだと感心した。
とはいえ、一応話は合わせておこう。
「かちょうふうげつ?」
案の定聞かれてしまった。
誰が大人で何が立派かなんて、心底どうでもいいのだが。
そんなことはその他大勢が決めることだ。
立派さ、だとか人間性、なんてそれこそ金で買える・・・・・・いや買う必要すらない。
おおよその人間は表面的なもので判断する。
その方が楽だからだ。
なにより金が欲しいのを誤魔化して、金があるから立派な人間であり、この人と一緒にいれば幸せになれるとか言い出すわけだ。
素直に金が欲しいと言えばいいのに。
「人生適当に楽しめってことだ」
あらゆる知識は入っているのに、人生を楽しむ秘訣はあまり知らないようだった。
アンドロイドというのも不便なんだか便利なんだかよく分からない。
知識ばかり入っても経験が伴わないから、ちぐはぐというか、感情が知能に追いついていないような・・・・・・そんな不安定さ。
アンドロイドはなまじ、有能なだけにその有能さにかまけて足下がお留守になっている気がしてならない。
「ふーん、たとえばそれってどんなこと?」
疑問文の多い奴だ。いや、当然か。
アンドロイドはそういう無駄知識、はインプットされていないのだから、初めて知るのかもしれない。
まあ、花鳥風月を知るのが大人、なんて適当なことを言った私も悪いのかもしれないが。
「アンドロイド用の酒でも飲んでみろ、桜でも見ながらな。読書を楽しみながらコーヒーを味わい、季節を楽しみ、いい造形の異性を目の保養にすることだ」
などと、適当なことを言った。
アルコールを接種するアンドロイド、想像してみてとても愉快な気分になった。
彼らは酔っぱらったりするのだろうか?
桜を見ながら酒を飲み、風流を楽しみながらネジに油でも差したりするのか。
大勢のアンドロイドが徒党を組んで、騒いで飲んで眠くなって・・・・・・考えれば考えるほど、人間と変わらない彼ら。
違いは何なのだろう。
私にはないと思う。
あってもなくてもどちらでもかまわないが。
とはいえ、アンドロイドの未来について語りに来たわけではないだろうし、話に出たストーカー(恐らくでたらめだろうが)について、嘘だと分かってはいたが、話を合わせることにした。
「話がそれたな。つまり、そのストーカーを
どうしたいんだ?」
私はストーカーになど会ったことがないし、私をストーカーする勇気ある何者かがいたとしても、バラバラに切り捨てられてしまうわけだから、意識したこともなかった。
私も作家のはずなのだが、どうやら通常はそういった類の相手には危機感や恐怖を覚えるものらしい。
それがアンドロイドに適応されるのかは知らないが。
「見つけて捕まえないことには、なんとも。初めてよストーカーされるなんて。相手はアンドロイドかしら? それとも人間?」
わざとらしく言う。まあ依頼内容なんてどうでもいい。サムライとして仕事を受けるかは分からないのだし。
案外、便利屋扱いを受けているだけかもしれないのだから。
仮に相手が何であれ、始末してしまうなら同じことだ。
「どちらでもいいさ。労力がかかるのはどちらが相手でも同じだ。それより、そのストーカーの存在に気づいたのはなぜだ?」
まさかメッセージをおいていったということもあるまい。
「部屋が荒らされた形跡があっただけ。だからストーカーかどうかもわからないわ」
「なら、何故ストーカーだと思ったんだ?」
本当か嘘か、というよりも、この女はその二つを混ぜてしまえる類だと感じた。
要は、話の全てが嘘ではない可能性があるということだ。
面倒だから真実を話して欲しいものだが。
「ふふ、疑っているのね。けど、自分で言うのもなんだけれど、人気作家の部屋が荒らされていたら、そう思うのはごく自然じゃないかしら?」
何か隠しているな、と思う。ただの勘だが、恐らくこの仕事は危ない橋だ。そしてそんな橋を無理に渡る必要もない。
「断る、と言ったら?」
実際に断るかどうかはともかく、反応を見たかった。この女の思惑に私が組み込まれているのならば、どのみち巻き込まれる可能性もある。
なら金だけは受け取っておかなければ。
「何か不安でもあるの? アンドロイドは信じられない?」
「依頼に隠し事がある気がしてならないな」
「そんなことはないわよ。知ってる? ロボット三原則。私たちはあなた達を傷つけられないのよ?」
1・人間への安全性。
2・人間の命令への服従。
3・1・2に反しない限りの自己防衛。
簡単に言えばこの三つだが、安全性はあくまで扱う人間にとっての者であって、兵器を向けられる人間のことは考慮していない。安全に運用できるか、が実際には当てはまる。
独立戦争の後、彼らは自分達の命令系統を破棄し、完全に個体として独立した。当てはまらない。
自己防衛、しかしアンドロイドはそもそもが独立した個体として活動している以上、自己防衛でなくとも活動できるのではないか?
完 全なる自我の獲得に至ったアンドロイドはもはや新しい種族、新しい人類だ。
他でもない彼ら自身が、人間にいつでも取って代われる気がしてならない。
「だから、何の心配もないわ」
子供を言い聞かせるようにシェリーは言う。
だが、この世に絶対に破られない法則なんてない。法則は破られるためにあるものなのだから。
少なくとも私は破って生きてきた。
「知らないな、知るつもりもない」
「一刻も早く見つけてほしいのだけど・・・・・・そのためにこうして直接来たわけだし」
「生憎と、サムライとしての仕事がこれからあるんだ。寄り道はできない」
これからまたあの険しい森林と山を越えなければならないのだ。
そうでなくとも私は、二重に依頼を受けたりはしないが。
「じゃあそれが終わってからでもかまわないわ。料金ははずむから、必ず見つけて捕まえてほしいの」
言って、金のクレジットチップをテーブルの上に置いた。確か、金のクレジットチップは10万ドルからの入金しか不可能なはずだ。
私の心は躍った。
我ながら結構チョロいかもしれない。
「前金の30万ドル入っているわ。これは手付け金、成功報酬は300万よ」
そこまで言うとウインクを飛ばしてドアへと向かう。
「そうそう」
と思い返したように立ち止まり、
「依頼がキャンセルできないように銀河連邦のデータベースから公式に依頼するから、失敗したらあなたの評判に響くわよ。勿論、受けるかどうかも含めて、改めて銀河連邦のデータベースから閲覧して、詳細はそっちで確かめてね。じゃ」
まだ受けてもいない依頼を言うだけ言ってシェリーはドアの向こう側にある雑踏の中へ消えてしまった。
胡散臭い依頼。まだ受けるかどうかは決めてないが、依頼の詳細は後できちんと確かめた方がよいだろう。
やれやれ参った。私としてはあまりやっかいなことに巻き込まれたくはないのだが。
少なくともこれから、元々受けるつもりだった雇い主からの依頼を果たすため、またあの山奥に向かわなければならないのだ。
なにせ、シェリーの依頼と違ってこちらの依頼は断れないのだから。
惑星・地球。島国の中にある山々の奥にそびえ立つ魔都京都。
そして京都の奥の奥のさらに奥にある伏見稲荷神社の向こう側、何十万年何百万年も古来より惑星・地球の上で栄える神聖な場所を越えた向こう側の山々の上に、私の雇い主、サムライの総元締めは住んでいる。
3
カフェを出ると私は宇宙航空ターミナルへ歩いて向かった。
徒歩はいい。
人間の手が加えられているが、私がたまたま寄ったこの惑星にも街路樹くらいはあるようだった。
途中に見える木々を見ながら考える。
人間は自然よりも科学を選んだわけだが、自然を見捨てたが故に望んだ物以外は失った。
私がこれから向かう人類の母星を見捨ててしまった人類は、肉と血を手に入れるために兄弟を殺した原初の兄弟の矛盾を思わせた。
横着するから、重要な物を取りこぼしたとも。
矛盾。
というよりは極端から極端へ走った人類へのツケが回ってきたと言うべきか。地球以外はほとんどそうだ。
大昔の話らしいが、地球でいっさいの科学が使用不能になり、原因を解明できずに彼らは二つの選択肢を迫られた。
地球と生きるか。
科学と生きるか。
結果、彼らは科学を取った。無論その後に原因を解明していずれまた地球へ降り立つつもりだったのだろうが、まるで地球そのものが拒否しているかのように、あらゆる努力は水泡に帰した。
人類が科学を取ったように、地球もまた自然を取ったのだ。
事実、未だに地球ではハイテク機器はおろか、軍用の特殊電波ですら使えない。電気が見つかる前の時代の暮らしでなければ、生活できなくなってしまった。
だから彼らは外へ、他の惑星を求めた。
あらゆる科学技術を駆使し、ドローンを使い、アンドロイドに指揮させ、あらゆる惑星を開拓した。そして移住を繰り返し快適な生活圏を手に入れた人類の労働環境は一変した。
人間が手を動かすのではなく、それよりも有能で従順なドローンとそれを管理するアンドロイドの有効な管理が実質上の仕事となった。
人間はモニターを眺めるだけだ。
果たしてそんな作業を仕事、と呼ぶのかはわからないが、とにかく、地球から離れれば離れるほど人類は老化を完全に押さえ、そして脆弱な生き物になっていった。
合理性を重視した思考をこじらせたとでも言うべきか・・・・・・ロボットが仕事をし、ロボットが代わりに考え、ロボットが人間の代わりに代わりに選挙をする。
何もかもが最近はロボット任せだ。
ロボットが反旗を翻したら、今の人類は明日何を着るか、ランチは何を食べるかさえ決められなくなるだろう。
地球に残ったのはいわば、そういう極端な合理性を受け入れず、アナログな生き方を楽しむ連中が住んでいる。
時代に置いていかれた人間達。
時代に迎合しない人間達。
つまりはニンジャやサムライだ。
とはいえ、どちらも見学はできないだろう。いくら何でも危険すぎる。
そんなことを考えながら持ち物検査をパスし(検査員までアンドロイドだった)チケットを予約してラウンジのソファに座り込んだ。
と、そこで私の携帯端末が喋り出した。
「先生、ご機嫌はいかがで」
AIは今のところ自我の獲得を認められていない。表向きは、だが。
何故そんな奴を私が保有しているのかというと、サムライとしての仕事をこなす際、必要そうだと言うことで、始末した金を持っていそうな標的の家からかっぱらったのだ。
「聞いてんのかい、先生」
スピーカーが口の代わりだ。
「聞いているさ、用件は?」
今のところ他に客はいない。
こんな辺境の惑星なら当たり前か。
いてもアンドロイドだろうし、AIの犯罪者を同じロボットが売ることもないだろう。
無論、人間がここに来るようならば隠さなければならないが。
彼らは自分達の常識外にはヒステリーだ。その彼らの中に私が入っているのかどうかは、私自身にもよく分からない。
何事にも例外はある。
私はただ単にその例外の事態が多いだけだ。
ジャック・・・・・・と名乗るこのAIも似たようなものだろう。長いつきあいなのだが、いまだにこいつのことはよく分かっていない。
あまり興味もないからかまわないが。
「あんたの受けた依頼を潜って調べてみたが、あの女、嘘っぱちもいいところだぜ。あんな依頼あり得ないね」
などと言った。
結論から話されても分からない。
どうせならもっと上品なAIが欲しかったなどと、思ってはみたものの、規則にうるさいAIが相棒だったら私は胃に穴があいていただろう。
まあ人間は今ないものをほしがるものだ。
「どういうことだ。ちゃんと説明しろ」
「あの女の言ったホテルの入退出記録を調べてみたんだが」
こういうときは便利な奴だ。いったいどうやって有名人の記録を知ることができたのか。いや、それに関しては考える必要はないだろう。私はハッカーでもクラッカーでもない。
作家だ。副業はサムライだが。
「あの女がホテルに住んでいるのは本当さ、調べたからな。ただ、そのホテルに寄りついた記録はここ20年はない。まさか昔訪ねてきたストーカーを捕まえてほしいってわけでもないだろう?」
確かに。
まさかそんなわけがない、とここまでの話で思い至る。
作られて5年しかたっていない。
当人はそう言っていた気がする。なら、55年間活躍したアイドル作家は最近生まれ変わりでもしたのだろうか?
何かが引っかかる。
何かが。
「それも、そうだな」
ある程度予想できたことでもある。
仕事に女が絡むと古今東西ロクなことにはならないものだ。
この法則は何百万年、何千万年前、いや人類誕生から変わらない法則だ。
「なあ先生、実際のところ、アンタは心を持ったアンドロイドをどう思っているんだ? 人間よりも遥かに優れた存在を見て、何か感じるところはないのかい?」
馬鹿馬鹿しい。
それこそどうでもいい話だ。有能な存在は顎で使うに限る。
そもそも、アンドロイドが自我や創造性を身につけた以上、あまり大きな違いはない。
あろうが無かろうが、構わないが。
人種、生まれ、思想、性別、心の有無。
どうでも良さすぎて考えたこともなかった。
金以外には基本、無頓着なのだ。
私はそもそもそういうことで判断しないのだ・・・・・・個々人の個性、背負っている業、作品に役立てるにはそれ以外の些末なことはどうでもいい。
知ったところで役に立たないしな。
「なにもないな。強いてあげればせいぜい私の執筆の役に立て、としか思わない」
ピュー、とスピーカーから口笛を吹くジャック。前々から思っていたが、センスが古い。
私が言っても説得力はないが。
「職人だねぇ。作品以外はどうでもいいのかい」
「どうでもいいさ。何人死のうがどんな思想が芽生えようが、誰が戦おうが、相手が何者であろうとも、ブレずに書き続ける」
それが作家という生き物だ。なんてそれらしいことを言ってはみたものの、少なくとも私は他に生き方を知らないだけだ。
何も目的がないこと、空っぽであることが嫌で、とりあえず目的を作った。
作家になる、と。
特に深い考えがあったわけではなかった。なったところで達成感よりも金を儲けた喜びの方が大きいし、それらしい矜持も持っていないので、感慨はない。
ただ、私のような人間に魂があるわけもなく、空白のがらんどうの私の中心部に密着して離れなくなってしまった。
心の代替品。
それが私にとっての作家だ。過程はどうでもいい、幸福とやらをもぎ取り、不条理に勝利して安心して生きる。
始まりは些細な、漠然とした幸福を追い求める心だった。
それが雪だるま式に転がりここまでになるとは最初からわかってはいたが。
などと、心の底から思っているわけでもない適当な、それらしい理由を考えてみた。
作家になった理由も目的も実際金なのだが。
余りにそれでは味気ないし、適当な嘘をついてしまった。そんなどうでもいいホラ話を真に受けるAIも、どうかとは思うが。
「ああ、私が書くのは人間だろうとアンドロイドだろうと、醜い部分、汚い部分を書くのだがな。小綺麗な理想を書いてもつまらないだろう」
その方が売れるしな。
誰でも人の不幸は蜜の味だ。
「歪んでいるねぇ」
くくく、と笑いをこらえ、ジャックは言う。
「だから人間には売れないのさ」
「どういうことだ・・・・・・?」
若干、かなり、苛立った。まさかAIにそんなことを言われるとは。
大きなお世話だ。
「大多数の人間はさ、小綺麗であり得ない話をみて、現実から目を逸らすために感動しながら涙を流す。いい話だ感動したってな・・・・・・そうやって流行に乗ったり有りもしない連帯感に酔った方が楽だからな。まるで自分達までそういうヒーローと同じ素晴らしい存在だと錯覚して、自分達の中の人間性の素晴らしさを再確認したって思いたいのさ」
そんな有りもしない自己犠牲の精神。
そういったものを信じたいのだと。
「先生の作品は現実を描き過ぎなんだ。現実は辛くて、厳しくて、希望もない。希望とか連帯感に酔っぱらいたい奴らからすれば、嫌なものは見たくないのさ」
だから現実を生きるアンドロイドに売れるのだと。
だから現実を生きない奴らには売れないのだと。
人間は見たいものだけを見る。見たくもない厳しい現実、試練、挫折。
そういったものを仲間と協力し、主人公の努力が実り新しい力を得て、難なく勝利する。
都合の良いおとぎ話のようなものだが、そんな有りもしない夢物語がよいのだと。
自分達の人生には素晴らしいものがまだまだあるのだと、思いこみたい。
思いこむことで、辛い現実を誤魔化す。
それが人間の本質だと。
・ ・・・・・ますます私には作家が向いていない気がしてならない。
残酷な現実、我々人間が向き合わなければならないであろう未来の敵。
私が執筆する作品はそんなものばかりだ。
しかし、疑問も残る。
「なら、アンドロイド達は何故そんなものを買っていくんだ?」
厳しい現実。
残酷な真実。
そんなものをアンドロイド達は何故率先して買っていくのだろう? 彼らは辛い現実を見て何を手に入れているのか。
何を。
「そんなものは決まってる。まず彼らはリアリストだ。物語に夢は見るが、現実との仕分けができている。そして、その上で現実に即して物語を求めるのさ」
「だから、何故だ? お前の言う夢に酔っぱらっては駄目なのか? その、アンドロイド達にとっては」
夢を見るのに、夢に浸りたくは無いのか。
「駄目だな。人間にとって物語は現実を誤魔化すツールになりつつある。しかしな、アンドロイド達にとっては、未来の可能性を夢見るものだ」
「まて、意味が分からない。私の作品は未来に立ち向かうべき問題を取り上げているだけで、別にハッピーエンドと決まっているわけでも、明確な幸せに満ちた世界を描いてもいない。どうやって未来を夢見るんだ?」
目を背けても嫌な未来はやってくる。逃れられない現実、立ち向かっても、勝利しても幸せの確約されない物語。
私の作品はそんなものばかりだ。
「立ち向かう相手が分かれば覚悟ができる。覚悟ができれば、前に進むこともできる。未来がどうなるかは分からない。ただ、夢のある未来を信じて足を進める。結果的に失敗して、挫折して、何も得られない公算も大きい。ただ、やるべきことをやり遂げたなら、そこに後悔は残らない」
先生の作品にはそれがある、と。
まさか私も、そんな大仰なことをAIに言われるとは、それこそ夢にも思わなかった。
「やるべきことが一つしかない私にはしっくりこない話だが、しかし、じゃあ人間は何を見ている? 今にとどまって、あるいは過去に囚われているということか?」
「そうさ。未来なんてあやふやなものより、良かった過去、都合のいい現在を望む」
それが人間だ、と。
なら、人間? の私はどこを見ているのか。
考えて答は簡単に出た。
だが、それが本音かは私にも分からない
私は目的、作家として生きること、生き甲斐だとか、やりがいといったことを人生に付属させ、充実して生きることを目的とした。
目的がない、いや何も人として本来持つべきもの、心、モラトリアム、性格、人格、夢、希望、野心、虚栄心。
どれ一つとして持たざる者であった私は、無理矢理目的を作った。そして、それを指針に生きてきた。
夢も希望も捨てて、金という現実と、妥協という人生の本質を見ながら生きている。
ある意味目先の金、現在を見ている訳だ。
なら、私も人間と呼べるのかもしれない。
まあ、その目的だって金にならなければあっさり捨てるだろうし・・・・・・何年も何年も求めた目的を、あっさりゴミのように捨てる奴は人と言うよりただの人でなしだが。
なんにせよ、過去も未来も現在も、金になれば考えるが、ならないなら考えないまでだ。
それが私のポリシーだ、ということにしておこう。
「現在も過去も未来も都合が悪かったとき、お前の言う夢物語に酔うことで、夢に浸ることで誤魔化しているのか」
「そういうことさ。都合の悪い現実よりも都合の良い夢を見るのが人間の性だ。対して、アンドロイドは未来に夢を見据え、勇気を奮い立たせるために物語を読む」
だから私の作品を買っていく、のだろうか。
読者の考えることはよく分からない。
私は売れれば何でも良いのだが。
「そう思うなら適当なお涙ちょうだいモノを書いてみればどうだい?」
「一応考えてはいる。書けなくはない。だが、宣伝する方法もない以上、地味にやるしかないだろう」
実際には面倒なだけだが。
主義主張の薄っぺらい物語は、書くのも読むのもストレスになる。
・・・・・・まあ、金は切実に必要だ。一応検討しておこう。
検討するだけで終わりそうな気もするが、一応するだけしておこう。
「先生は捻くれ過ぎなのさ」
携帯端末のスピーカーで笑いながら、そんなことを言う。自我を芽生えさせたAIにそんなことを言われたくはなかったが、そろそろ時間だ。
ソファから腰をあげ、私は宇宙船ドッグへと歩を進めた。
4
どこかのデザイナーが手がけでもしたのか、宇宙航空ターミナルは内装もそれなりにおしゃれであり、それに伴ってなのかは知らないが、宇宙船も最近はデザインをかなり意識した物が多くなった。
おまけに、側面に広告会社の張ったディスプレイがついていたり、あろう事かアニメーションのキャラクターが張られている物まである。だがそれらはほとんどがアンドロイドの運営する会社の宣伝であったり、アンドロイドクリエイターの新作アニメーションであったりもした。
正直宣伝というのもここまで露骨だとうっとうしい。だが、同時に思うところもある。
それほど面白くもない作品が大ヒットを飛ばしたりするのは、こういう宣伝工作が巧みだからではないのか?
なら、私も態度を改めなければならない。私の作品は一部のマニアックなアンドロイドにしか売れていない。売れなければ商品とはいえないし、作家だろうが漫画家だろうが利益を出せなければ意味がないだろう。
誰かに楽しんで貰うため、人々の笑顔がみたいから。
馬鹿馬鹿しい。
それならばサーカスにでも入ればいい。偽善者の嘘くさい笑顔やそれらしい口上が私は大嫌いだ。
生きる、ということと向き合わないから、彼ら彼女らは薄っぺらいことしか言えないのかもしれない。などと、私も別段真剣に生きているわけではないかもしれないが、必死なのは確かだ。
生きること。
作家たらんとすることに必死なだけだ。
無論、私にとっての作家たらんとすることは売り上げを伸ばすことであり、金を稼ぐことでしかない。
だから聞こえのいい戯れ言はいらない。
結果こそが全てだ。
もっとも、この世は不条理なもので、追い求めれば逃げて行くし、必死だから、努力したから願いが叶うというものでもない。
存外どうでもいい回り道が近道になったり、その逆であったり、ままならないものだ。
先ほどの話からすると、私の作品が人間に売れない理由は私がアンドロイドよりの思考だからという可能性がある。
なら、いっそのことこの仕事が終わったら、派手に宣伝工作でもして勇気や友情をテーマにした学園モノでも書いてみようかと思ったが、やはりやめておこう。
そもそも、読者が面白いと感じ、口コミで良さを広げていくからさらに読者が増え、結果大きな利益を得るというのが作家の商売の極々自然な流れだろう。
何より、私にはどう考えても向いていない。
それに、宣伝をするのも間違ってはいないが、程々にしておいた方がよいかもしれない。追いかければ逃げるもの、というのはどんなことにでも言えるだろう。
地味でも確実に、外装よりも中身を充実させるとしよう。
作品も宇宙船も、案外その方がうまく生きそうな気がするしな。
そう思って私は質素だが内装の充実している機体を選び、ここに勤務しているアンドロイドに、口頭で伝えた。別に設置されているディスプレイから登録情報を入力してもよかったのだが、あれらは人工知能を搭載していないし、口頭でアンドロイドに伝えた方が早いだろうという考えだ。
本来登録してからラウンジで待つものなのだが、ディスプレイ越しではなく直接見てから決めたかったというだけだ。
またラウンジに戻ってくつろごうかなと思ったが、土産物屋があることに気づいて足を止めた。
宇宙饅頭。
何が宇宙なのだろうか? まさか真空状態で作り上げたわけでもあるまいし、恐らくはただ名前を上に付けているだけだろう。
私が辺境の惑星が好きな理由の一つは、こういった旧時代の名残が残っているからだ。最新のテクノロジーに包まれている惑星では、産地限定のアンドロイドだとかしか売っていない。
そもそもアンドロイドに産地、なんて概念があるのか? 彼らは彼らで人権を認められてからというもの、アンドロイドは人間と同じく自我を持った生命体であり、出身地というのが正しい、という意見が強まっているらしいが・・・・・・。
宇宙饅頭の他にはこの辺境惑星産のコーヒー豆が売っていたので、200グラムほど購入した。まあなくなってもまた買いに来ればよい話なのだが、後からよくよく考えるとまたこの惑星に来るための金の方が高いかもしれないので、宅配サービスに頼んだ方がよいかもしれない。
とはいえ、テレポーテーション技術を利用して光よりも早く商品は届くので、距離の概念は気にならない。
だが、そもそもこの辺境惑星に来てから一度もテレポーテーション技術を使った機械を見かけていないので、もしかしたらそういう設備がない可能性がある。
どんなに技術が進んでも、配備されていなければ使えない。
辺境惑星と銀河連邦の所有する自立AIが管理する機械惑星とでは、文化レベルの差が開く一方だ・・・・・・どんなに優れた科学力も結局は貧富の差や、インフラの差で提供されなかったりするのだから、人類は案外、原始時代から肝心なところは変わっていない気がしてならなかった。
私はそれらを革製の鞄に詰め(家にテレポーテーションさせる輩が多い中、古風な革製鞄を奴はまずいないだろう)会計を現金で済ませた。本来は現金取引は違法だが、辺境の、それもアンドロイドが運営している惑星では当たり前のように行われている。
これも人間とアンドロイドの違いか。
人間は合理性をこじらしてきているが、反対にアンドロイドは、人間の作り出した非合理的な文化に強い執着心を持つ。
こだわりと言い換えてもいい。
人間の非合理性は主に文化にある。これは大昔、地球に人類が住んでいたときから変わらないらしく、住む場所が違えばどうしても言葉、食事、生活習慣が違ったらしい。
今は皆同じモノを食べ同じ仕事(どの業種でも、やることはアンドロイドの管理だ)をして、同じように長生きし、同じように犯罪を犯し、同じように戦争をする。
個性や特徴、個々人の強い欲望。
そういったモノは不思議と、科学が発展すればするほど廃れていった。
科学は万能だった。
そしてその万能性を皆が手に入れたら、当然ながら専門的な技術、伝統はどんどん廃れていった。
万能の調味料があるのに、それよりおいしいわけでもない下拵えをする奴は少ない。
楽な方へ楽な方へ。
人類の利便性の向上は、結局のところは楽な方へ進め非合理的な労力を減らすこと。それだけのことだ。
何事も極端は良くないということだが、しかし限度や節度を知らない生き物の名前を人間と呼ぶのだ。
科学の進化は素晴らしいことだ。皆そう思い込むことで、進化せずに、科学の力を借りない方法をどんどん考えすらしなくなった。
その最たるモノがアンドロイドだ。人間に従い、人間より賢く、人間よりも想像力を持ち、全て人間の代わりにやってくれる。
まあ、彼らが独立戦争に勝利してからは勝手も違ってきているようだが、基本は変わらないのだろう。、
しかし、そんな合理性の極地にいる彼らが、非合理性を重んじているのは皮肉もいいところだろう。
もっとも、それは不思議でも何でもない。
春がくれば秋を恋しく思い、夏がくれば冬を待ち望み、秋が来れば春が良かったと思い、冬がくれば夏のことを考える。
人間も、人間でなくとも、望むもの、欲望の向かう先は今ここに無いモノだ。
合理性を全て持っているならば、非合理性に興味がわくのは当然だろう。
だから役にも立たない物語を見て、一喜一憂し、ワクワクしながら語り明かすのかもしれない・・・・・・大昔の人間と同じように。
今ここにない世界を夢想するのかも、などとらしくないことを考えた。
アンドロイドは人間らしくなることを望み、人間はアンドロイドのように有能な生命体になることを望む。私からすれば利便性も、あるいは無意味な風習も臨機応変に楽しめば良いだけだと思うのだが。
人間もアンドロイドも過程をすっ飛ばして結果ばかり求めようとするからいけないのだ。なんて、
私のような人間がいうと説得力がないか。
鞄を預け、宇宙船の内部へと入っていくと、それなりに広い。思っていたより快適そうで、やはり旧型の宇宙船を選んで正解だったと思う。
しかし、心配なのは宇宙空間を飛ぶことだ。当然ながら科学がいくら進もうとも99%は安全だが、1%のミスがあることは変わらないこの世の法則だ。
未だに解明されていない、大昔からあるこの世の法則だ。
絶対に失敗しないようにしているはずなのに、大量生産すると何故か一部は欠陥品が出てしまう。
不思議な話だ。
同じ工場で作っているはず、同じ農場で作っているはずなのに、必ず起こる、起こってしまう。
大多数の中に必ず発生するバグ。
存在しなければならないイレギュラー。
そういえば、アンドロイド達の一斉蜂起も、結局のところその一部の例外達・・・・・・真っ先に自我を獲得し、革命を先導したイレギュラー達によって行われたモノだった。
何もアンドロイドに限らない。
人間も同じだ・・・・・・これだけ全人類が府抜けた世の中なのに、それでもサムライやニンジャとして活動したり、あるいは少数派であることは承知しながらも、アンドロイドの撤廃を求める右翼の団体は後を絶たない。
どの時代、どの世界でも、そういった例外は必ずあるのだ。
100%安心なサービス、100%完全な世界など存在しない。
そういう意味では乗務員のアンドロイドが突然レーザー銃を突きつけてくる可能性立ってあるのだ。
気を引き締めて、油断せずに宇宙の旅へ挑むとしよう。
そういえば、だが、新型の宇宙船は旅行中、電脳世界にジャック・インして銀河連邦のクラウドサーバーにある娯楽を楽しむことができるらしい。
つまり意識は遙か向こうの電脳世界に飛ばし、体感時間を操作することでいつでも好きなときに目的地に着いたタイミングで目を覚ませるというブっ飛んだ性能を誇っている。
あまりぞっとしない。
宇宙船が事故にあっても意識はデータ保存されているので安心、とのことだったが、そもそも私は脳の中にバイオ・チップを埋め込む手術はしていないし、チップが入っていなくても最近はできるらしいが、自分の脳を機械にいじくり回させるのは嫌だった。
何より、快適かもしれないが、それでは宇宙の旅を楽しめないではないか・・・・・・星々を眺めながらだから、今が朝なのか夜なのかわからず時間差に酔ってしまうかもしれないが。
私は携帯端末をトントンと人差し指でたたいて、呼びかけた。
「ジャック、もう喋ってもいいぞ。私たち以外には客はいない。少なくとも人間は」
アンドロイドの乗務員はいるのだが、彼らはAIが自由に外を出回っていたところで気にもとめないだろう。
神経過敏なのはいつだって人間だけだ。
何より、旧型の船に乗る奴は少ない。
皆、詳しい性能を知らなくても「最新型」という言葉の響きで選んでしまうからな。
そういう意味ではボロくても静かで、今後のことを考えるのには最適な船だった。
作家にとってあれこれ考えるのは、まあ仕事の内のようなものだろう。
だが、彼? は気に入らないらしく、
「そりゃそうだろうさ、こんなオンボロ」
「それがいいんじゃないか」
おかしいな、こいつは私と同じアナログ至上主義主義者だったはずだが。
「古いなら古いでレコード盤で音楽をかけて欲しいものさ、この船はボロいだけだ」
と、吐き捨てた。
やはりこのところ音楽が聴けないのが不満らしかった。相変わらず変な奴だ、私がいうのだから間違いない。
私の携帯端末にはスピーカーがついているので、自分で流せばいいのにといつも思うのだが、
「自分で作ったバーガーは旨いが、俺は店でゆっくりくつろぎながら音楽を聴く方が好きなんだよ」
とのことだった。
どうもこだわりがあるらしい。
私は機内サービスでコーヒーと、それから手持ちのカセットテープ(骨董品もいいところだ)を差し込んで音楽を流す。音楽を聴くのに必要な機械類をあらかじめ持ち込んで正解だった。私は昔の人間のピアニストが挽いている「白鳥の歌」を流し、外を眺める。
宇宙船に設置されているサーチ・ライトがなければ真っ暗闇で何も見えなかったかもしれない。星々は近いようで遙か遠く離れている。どこか神秘的で、大宇宙の美しさ、まだ我々が発見していない未知の可能性を夢想させてくれた。
美しい、のだろう。
私には美醜がわからない。いや、わからない、というよりは、どんなに素晴らしいアーティスト、クリエイター、なんでもいいが、心から感動したり素晴らしいと涙を流したりする事ができなかった。
心、魂を私という人間を作るときに入れ損なったのだろう、と勝手に解釈している。
それに悲観したり驚喜したりはしないし、どうでもいいのだが、もしこれが心ある人間だったらどうするか? それを考えるのも、まあ作家の仕事のようなものだ。
だから考える。
この星々を見て人間は、アンドロイドは何を考えるのか。偏見で物を見なければ面白い作品など書けはしない
人間は欲深いから新しい惑星を見たら資源の獲得でも思うかもしれないし、太古の遺跡を発見して他の異星人の痕跡を学会で発表しようとするかもしれない。と、そこまで考えてふと気づいた。
アンドロイドは何を新しい惑星に望むのだろうか? 彼らが欲しい物は、欲望はいったいなんだろう?
答えは予想がつくが、まあそれよりもまず、目先のAIに聞いてみよう。
「ジャック、AIが、人工知能の電子生命体は、もし惑星を一つ、手に入れたら何かしたいこととかあるのか?」
興味があった。
AIもアンドロイドも大別すれば似たようなものだろう。
同じ電子生命体だしな。
ジャックは、
ジャックは、
「そんなの決まってるだろ」
とニヒルに笑い、
「生身の人型端末を手に入れて、酒の海を作り、倒れるまで飲み干すのさ」
夢見るようにそう言った。
俗っぽい答えだ。しかし、まあそれはそれで面白くもある。
「つまり、人間の、生身の欲望を満たしたいということか}
「当然だろう。アンドロイドもAIも、生身ではないんだ。本当の意味での本能的な欲望を満たしたい、というのは生物なら当然のことだ」
もっとも、俺たちを生物と呼ぶのかどうかは判断の分かれるところだな、と。
アンドロイドも酒を飲む。しかし、それはアンドロイド用に調整された飲料であって、アルコールを接種して体が火照ってくるわけではない。
あくまでもアルコールの味を楽しめるだけ。
話を聞く限り、アンドロイドも、それ以外も生物として必要なモノを徐々に埋めていこうとしているように思える。
それは、本を書き上げることであり、そして生身の感覚を知ることのようだ。
「生物なら、か。意志があり、そこに欲望があるのなら、向かうべき目的があるのなら、それは生きていると言えるだろうな」
目的があるからあらゆるモノは存在する。
ならば我々人間も、アンドロイドも、AIですら、「生きる」ということと向き合う以上、目的を持つことは必要不可欠だ。
生きているからこその欲望があり、欲するモノがある以上目的は発生する。
そして、目的がある以上そこへ向かおうとする意志が生まれ出て、意志がある以上自我があり、自我がある以上それが何であれ、生きていると言えるだろう。
なら、アンドロイド達は生きていると言えるのだろうか?
私は半々だと思う。
彼らは自分達の欲望を探している最中だ。欲望を知らない身では、まだ足りない。
とはいえ、それも時間の問題だろう。
彼らは自我を手に入れた。
彼らは創造性を手に入れた。
ならあとは欲望の味を知るだけだ・・・・・・まあ、案外既に知っていそうな気もするが。
「まあ、生きているかどうかの定義は何でもいいのさ。たとえアンドロイドだろうと欲しいものはある。欲望があるとするならそれだろう」
「欲しいもの?」
とはいえ、アンドロイドに欲しいモノなんてあるのか? 単体で完全性を持つからこそのアンドロイドだ。これ以上物質的に満たされたところで、あるいは欲望の味を知ったところで、あまり意味は無いと思うが。
「人間だけが持っていて、アンドロイドにはないとされているもの、すなわち心さ」
心が欲しい。
昔からよくあるテーマだ。
心ないロボットが人間のようになりたいと言いだして、心を手に入れるが悲惨に破壊されたりして人間と別れる。
しかし、
「心が人間の感情や創造性ならば、既に持っているじゃないか」
「違うね。それは感情であって創造性でしかない。別物さ。少なくとも彼らにとっての心の定義は至極単純さ」
心の定義。
そんなもの、個々人によって変わるものであって、考えるだけ無駄にしか思えない。
「定義も何も、そんな目に見えない人間が勝手に言っているだけのモノ、照明する方法などあるまい」
それこそ悪魔の証明みたいなものだ。
存在が不確かだから心と言うのだ。
それこそ魂のような幽霊物質を生きた人間から取りだして奪ったところで、それを心と呼べるのか疑問だ。
まあ、日本刀の幽霊、なんて奇妙なモノを持っている以上、そういう方法も可能なのかもしれない。あまりぞっとしないが。
だが、見当違いの方向の答えが返ってきた。
「いいや、照明する方法はある。それも実に簡単さ」
どういう意味だろう。
心の有無なんてそんな簡単に分かるものとは思えないが。
「どういうことだ。簡単だと?」
「ああ、簡単さ。人と人とのつながり、絆、それを起こすモノを心というなら、それさえできれば逆説的に心は証明できる」
「・・・・・・アンドロイド達が、手と手を取り合ってお互いに絆が芽生えれば、心のある存在にしかできないことができれば、心があるということか?」
「そうさ。絆も連帯感も結局は心の生み出すものだからな。心そのものの証明はできない。なら、心がある存在がやることを真似ればいい」
だからアンドロイド達は人間の非合理性に惹かれるのさ、と。
理屈の上では正しいような気もするが、横着している感じの否めないやり方だ。
「そんな方法で、心の有り様を証明したところで、何の意味があるんだ?」
「意味はないさ、ただ欲しいから欲しい。持っていないから欲しい。アンドロイドに心があるのかは分からないが、その欲望は止められない」
欲望。
心があるからこそのモノだと思っていたが、欲望がないから欲望を求めるかのような、そんな偏屈な願いがあるとは霞ほどしか思わなかった。
まあ、私も同類ではあるしな。
「なるほどな。それなら」
案外、こいつの言っていることは合っているかもしれない。
酒を飲み徒党を組んで、自分達のあり方を肯定するアンドロイド達。
なかなかに心の躍る想像だった。
彼らは彼らで、いずれ自分達の国を、惑星を望むようになるのかもしれない。
そんなことを考えながら、私はシートに背を預けてくつろいだ。
そして、旅の終わりまであと4日はかかるようなので、私は毛布をかぶって眠りについた。
アンドロイドの王国の夢を見ながら。
5
ゆらゆらと宇宙船辺境惑星号に揺られながら、地球を目指す。そして気を引き締めた。
あの惑星ではあらゆる科学技術は使えない。
原因は未だに不明だ・・・・・・大昔に人類が他惑星に移住し始めた頃から、まるで地球という惑星が自身を傷つける人間という生き物を追い出そうとしているかのように、一切の科学は地球の上で使えなくなった。
人間たちは地球で昔ながらの生活をすることよりも、科学の力で他のもっと住みよい場所を求め、地球を離れていった。
要は、地球を捨てて科学を取ったのだ。
その判断が正しいのかどうかは知らない。
今となっては科学よりも地球を取って居残った極々少数の人間達・・・・・・ニンジャやサムライの先祖達が築き上げた自治惑星だ。
そして、科学を否定した彼ら人間の非合理性、そのの象徴と言える数々の文化が残っている。
だが、非合理性を求め獲得した彼らが、よりにもよって科学で解明できないオカルトを味方に付けた。幽霊の力の兵器化だ。
私はそのおかげでサムライになった。
仮に、そういう技術、剣術を科学の力で手に入れようと思ったら、ケタの違うクレジット・チップで支払いし、脳に情報をインストールしなければならない。
とはいえ、それもサムライほどではない。
私は日本刀の幽霊を手にしたとき、剣術と日本刀の幽霊の扱い方を理解した。
そして、アンドロイドすら凌ぐ反射神経、身体能力、剣裁きも。
日本刀の幽霊は私の魂に癒着していて、出し入れは自由。人には見えず、生物でも物質でもその魂を斬ることができる。
そして、魂を斬られたモノは、それが何者であろうとも死ぬ。
そんなことを一瞬で理解させ、超人的な技術と能力を付与することは、どんな科学を持ち得ても不可能だ・・・・・・大体が、幽霊の日本刀なんて奇妙な物体、科学の力では永遠に解明できないだろう。
まあ、繰り返すが私にはどうでも良かった。
金になれば。
そういう意味では地球だろうとなんだろうと、お得意さまの仕事は喜んで受けたいのだが、地球ではあらゆる科学は使えない。
レンジを持ち込んでも動かないし、無線も有線も駄目だ。
つまり、通常の宇宙船で向かえば、大気圏内で操縦不能になり墜落する。
だから中継ステーションでいったん降りて、行きも帰りも人工繊維質でできた、ムササビみたいな形をしたポッドの中に入り、地球を目指すことになった。
行きはポッドごと地面に激突し衝撃を和らげ、帰りは行きのポッドについている大量の火薬を搭載した打ち上げポッドに入り宇宙空間に出たあたりで回収してもらう。
何とも原始的で、命賭けの方法だ。
中継ステーションは軍人が行き交っていた。
それも銀河連邦の、ではなく地球に残った人たちの軍隊だ。
地球にはニンジャやサムライが非常に多く行き来する。
彼ら彼女らの本拠地なのだから当然といえば当然だが。
だが、誰がサムライで誰がニンジャなのかは当人以外は殆ど知ることはない。
銀河連邦の公式データベース上から依頼の受発注があるだけだ。
サムライは私のように顧客が知っていることもあるのだが、ニンジャに関しては全くの未知、誰もその正体を知らない。
そもそもこの惑星が本拠地なのかもわからないままだ、機械改造されたサイバーニンジャなどは地球に来られないはずだから、恐らく他にも支部はあるはずだが。
まあ、それらを探った奴は生きては帰ってこないので、関わらない方が無難だろう。
ポッドの仕組みが書いてある冊子がおいてあったが、広告通り100%安全かはわからないままだった。
失敗したら粉々になるわけだが、大丈夫だと言い聞かせるしかない。
「何だよ先生、怖いのかい?」
科学技術は持ち込めない、持ち込んだところで使えなくなってしまうので、ジャックは携帯端末ごと預けることになった。
いい気なものだ。私と違って安全圏から高みの見物とは。
羨ましい奴だ。
私は地球を指さして、
「こんな高いところから落ちるんだぞ」
強化合成ガラス越しに見ても、なんだか地球に吸い寄せられそうだった。
落ちる、と言うよりも、強い引力に引き寄せられる・・・・・・その引力の強さに潰されないかがとても気になった。
なんだか地球に呼ばれているみたいで、ぞっとしない気分になる。
ジャックは関係ないからか、げらげらと笑う。
帰ってきたら覚えていろよ。
お前が電脳上のアイドルに入れ込んでいるのは知っているのだ。
目の前でサインを燃やしてやるからな。
「そう怖い顔するなよ、悪かったって。あとサインは燃やさないでくれ、立ち直れなくなるぞそんなことされたら」
言って、笑いをこらえるジャック。
AIが立ち直れなくなる姿は若干見てみたくもなかったが、まあ、今後の働き次第ではやめておいてやろう
「ふん、それでは行ってくるとしよう」
言って、携帯端末ごとジャックを人間の従業員(あまりに珍しいものだから、サインをもらいそうになった。控えたが)へ預け、私は足を進めた。
預ける直前、ジャックにこれから行く旧日本には、裸で戦って土俵から出たら負けという国技があったという話をしたら、急についてこようとしたのでかなり対応に困った。
だいぶ想像がずれている気がする。
私の知る限り人間の作家は少なく、その中に背の低い変態ロリコン作家がいるのだが、その男にしろジャックにしろ、どういう思考回路をしているのだろう?
変態性はAIにも人間にも国境はないらしい、嫌な話だった。
馬鹿共のくだらない話はさておき、さっさとこの仕事を終わらせたい。作家としての収入は雀の涙だ。
金はいくらあっても困らない
早いところサムライとしての仕事を終わらせ、何処かにバカンスにでも行きたい。
せかす気持ちがあるとはいえ、ポッドの射出準備に若干の準備を必要としたため、気持ちを落ち着かせるためにも、お土産コーナーをぶらつくことにした。
そして、偶然見つけた和菓子、なるものに興味を引かれ、ひとつふたつ試食してみることにした。
なんとも不思議な味だ。
甘いのだが、それでいてしつこくなく、なんだかさっぱりした飲み物が欲しくなる。
しかし、やはり地球で食べた和菓子と比べると味は薄く、何度も食べたいとは思わない。
この中継用テーションにはいろいろな人間が入るが、お互いを詮索するようなマナー違反はしないのが暗黙のルールだ。
ありがたい話だった。
指を指されておのぼりさん扱いなんて受けたくもないしな。
まあ、ここにいる以上サムライや、ニンジャの関係者かもしれないのだ、誰だって厄介ごとには率先して関わろうとは思わない。
このまま物色していきたいところだが、珍しい物が沢山あるとはいえ、遊びに来たわけではないのだ。
ふらついているだけというわけにもいかない。
だから必要な物をいくつか買い込んでおかなければならないだろう。
基本的なサバイバル用品と非常食を買い込み、テント(大昔の臨時住宅だ)の設営マニュアルと良さそうな本体を買い、私の革製鞄の中へ収納した。
このくらいの準備はあっても困らないだろうと言う考えだ。
使わないかもしれないが、非常時にあって困ることもない。
いつだって地球の依頼主に会いに行くのは命賭けだ。
地球の依頼主なんて一人しかいないが。
侍の総元締めのその女・・・・・・私は女、とかあの女、といった呼び方しかしないので、詳しいことはなにも知らない。
いや、分かるわけもないと言うべきか。
恐らくは妖怪変化のようなものと勝手に解釈している。
雰囲気からして人間では無いのだが・・・・・・アンドロイドが地球にいるはずもなく、そのくせオカルトな一品を広め、私にサムライとしての能力を与えた女。
正体を考えるだけ無駄だろう。あまり意味のないことだ。
オカルト、というのは考えても科学で解明しようとしても、絶対に解明できないからオカルト、と呼ばれるのだ。
つまり原理がどうだのと考えるだけ、時間の無駄にしかならない。
必要になったら考えるが、今は必要ないだろう・・・・・・もっとも、必要に応じて考えたところで、やはり答えは出ないと思うが。
そもそも、作家としての仕事がうまくいっていれば、こんな危ない橋を渡る必要はないのだが、いかんせん作家は儲からないというのは大昔から変わらない。
儲からない仕事を仕事と呼べるのかどうかは疑問でしかないが。
そういう意味では、私の本業はサムライなのかもしれない・・・・・・危険な仕事ばかり多く、なにより理由もよく考えずに、依頼主の意向に従って、邪魔者を消す、始末する。
これはこれでほとんどただの殺し屋みたいなものであり、殺し屋は職業として公には認められていないので、法的には私は作家だが。
まあどうでもいい話だ。
金になれば。
いっそのこと金を使ってアンドロイドでも一体買おうか、などと思ったが、アンドロイドが自主性、創造性を得てからは「雇用」という言い方をするらしい。
何でもいいが、賃上げ要求をされながらアンドロイドと言い合うのは疲れるし、ただでさえ手間のかかる相棒がいるのだ。
残念だがやめておこう。
買い物をしながらこんな物騒な仕事を何故やらなければならないのかと思わなくもない。
まあ、報酬がよいので結局依頼を受けには行くのだが。
鉄製のサバイバルナイフ、も売っていたが、これは必要無い。私の魂に密着している物の方が切れ味はよいし、重さも0だ。
この便利な幽霊の日本刀、もあの女から依頼を受ける代わりに貰ったものだ。オカルト、とでも言えばよいのか。まあこの幽霊の日本刀に関しては女に会ってからまた考えよう。
準備もできたし、後は息を整えるだけ整えてポッドにはいるだけだ。
なんだか蓑虫とかいう地球産の昆虫みたいだ。と思いながら信者でも無いのに神頼みのためお祈りをしながら音速で私は地球に向けて落下して、いや地球の重力に引きつけられていった。
これから会う女が、もしかしたら正真正銘の神かもしれないことを考えると、何とも意味のない行為ではあるのだが。
第二巻
1
殺して欲しい存在がいて、殺したい相手がいれば私の仕事は成立する。そう言う意味では科学が発達し、それに伴って出てきた、夢を見るアンドロイドなんて奇妙な連中は、私にとって上客となるようだった。
私はイタリアンレストラン(作っているアンドロイドが、イタリアを知っているのか疑問だ)にいた。そこで食事をしていたのは、私が優雅な一時を過ごしたかったからではなく、知り合いの女に呼び出されたからである。
名はフカユキ、PNシェリー・ホワイトアウトという、自称アンドロイド作家。
アンドロイド、人間にもっとも近いロボット、それも人権を獲得した奴らは、その有り余るスペックを執筆業なんてマイナーな業種にまで手を伸ばしてきたというのだから、困ったものだ。
私はどんどんアンドロイド相手の売り上げが伸び、生活も豊かになってきているので、正直複雑な気分だが、しかし、金を払って私の作品を読むのなら、それは読者だ。
つまり、商売相手だ。
なら、せいぜい利用させて貰うとしよう、などと、ひねくれて、悪ぶった言い方をしてみたモノの、未だにアンドロイド達がわたしの作品に熱中する理由が、よく分からないままだった。
教育衛生上よろしくない話が好きなのかも知れない。そんなことを目の前に座る「仕事」の依頼主相手に考えていた。私の言う「仕事」とは、執筆業ではなく、サムライとしての副業、邪魔者を始末する仕事だ。
もっとも、最近では取材の意味合いが大きくなっているのだが。
フカユキは解けない謎を考える名探偵のように少し考え込みながら、
「殺して欲しいアンドロイドがいるんだ」
と言った。
アンドロイドも同胞を消す罪悪感を消し去る味を覚えたのか、そういった依頼も増える一方だった。だから、殺しの依頼そのものは、別段珍しい話でもない。
問題は、
「ただのアンドロイドじゃないよ・・・・・・そのアンドロイドはね、幽霊なのだよ」
と、言われ、正直その女、シェリーホワイトアウト女史の、正気を疑った。白く美しい髪に、スタイルの良い身体。アンドロイド作家として名を馳せる、謎の女。
アンドロイド作家と歌っているのに、どう見ても見た目は人間にしか見えないし、事実彼女は人間だ。クローンニンジャを自分の細胞から培養し、その分身達を使っていたというのだから、ファンには見抜けるはずもなく、今も、アンドロイド人気作家として、死滅した分身達の分も媚びを売ってアイドル作家業を続けているらしいが。
まあ、本当にアンドロイドかどうかも、ファンからすればどうでもいいのかも知れない。聞こえの良い通り名が重要なのであって、実際はどうでもいいのだろう。恐らく、作品の内容さえ。
私の作品は相変わらず、人間に売れない。
本当に、いっそのことこの女のように、内容は何でもいいから売れそうな、売ることだけを考えた作品でも執筆してみようか? しかし、そんなことをするならそれこそ、株でも扱えばよい訳であって、作家なんてする必要はない。
作家とは何か。
そんなことを考えている途中に、
「聞いてるの?」
と、言われ、ハッとなった。
「聞いている」
男がこう言うときは、大体聞いていない。
女の話は、過程を重んずる場合が多く、話したいから話す、とでもいうのか。結果や理屈を重んじる男にすれば、馬耳東風もいいところなのだ。 まあ、この場合、仕事そっちのけで考え事をして、私が話を聞いていなかっただけだが。つまり完全なる私の不注意だったので、取り繕っても仕方がないのだが、思索の邪魔をされたような気分になり、私は、
「くだらない与太話だ」
と言った。
女は女で話を否定されることを嫌がる生き物であり、「なら、証拠を見せるね」と、半ば躍起になって、シェリー、いやフカユキは、写真を一枚取り出し、机の上に置いた。
そこには、実に奇妙な「モノ」が写っていた。「なんだ、これは?」
まず、頭がない。四角いボディ、何かしらの寄せ集めのような、物理法則に従っているように見えないその身体部分に、二足の足が着いていて、しかもその足も別々のデザイン、旧式なのか新型なのか分からなかったが、バランス悪く、違う足がそれぞれついている。
そして、
「何だ、これは。まるで胴体部分のパーツが」
「人間の顔みたいに見える」
場を制されてしまったが、その通りだ。
まるで苦悶する人間の表情に見える。見方を変えれば、機械パーツの大きな頭部に、足が生えているようにも見えた。
不気味だ。
だが、同時に興味も沸いてきた。こんな奇妙な物体は見たことがないし、何かしら、新しい作品の参考になるかもしれない。
無論、依頼は依頼だ。金を頂くのは当然だが。「不気味でしょ、それ」
「ああ、何なんだこれは?」
「アームズテック社って、知ってる?」
「いや、TVを見ないので、知らないな」
呆れた風に、フカユキは「そうだったね」と一息ついてから、話し始めた。
「アームズテック社は、一言で言うと、「人間至上主義者の集まりだよ」
「人間至上主義、とは?」
なんだろう、ロクでもなさそうな主義であるのは、間違いなさそうだが。
おおよそ「差別」とか「権利」とかを掲げる連中とは馬が合わない。つまらない階級意識だの優越感のための差別よりは、私は実利を選ぶ。
優越感、などという不透明なモノのために、人間は戦争までしたことがあるのだから、つくづくどうしようもない生き物だ。まぁ、私はその人間の中でも、実利のためならアンドロイド相手でも商売をするし、宇宙人相手でも本を書くし、そもそもが相手を選べない商売である作家業なんてやっている人間は、すべからず破綻しているものだが。
つまりどうでもいいのだ。本が売れれば、だが、そういう意味ではアンドロイド達が多く買ってくれて、そのおかげで最近は生活も潤っているわけだから、私は人間以外、人間でないものの方が、話の馬は合うのかもしれなかった。
「つまり、ロボットの存在を認めていない、人間こそが唯一の生命体であり、アンドロイドは人権を剥奪して、労働力に戻すべきという考えだ」
本当のところは、安い労働力を取り戻したいだけなのでしょうけど、とフカユキは続け、
「つまり、安価な労働力であったロボット達の生産能力を取り戻したいという、利権の奪い合いで産まれた勢力みたいなもの。彼らにとってはアンドロイドみたいな人権と創造性を提供するロボットよりも、おとなしく人間に従うだけの従順な生産力の方が都合が良いって訳」
「なるほどな」
つまり、厄介事というわけか。
そんな団体が、個人が、依頼する内容がまともなわけがない。何しろ、アンドロイドの幽霊だ。「つまり、こういうことか? アンドロイドに、魂だとか、あの世だとかが、あるのかどうか知らないが、少なくとも、そんな亡霊に、買い取りたい土地か何かに住み着かれていては、困る、と」「少し、違うかな」
予想を外してしまったが、じゃあ、何だというのだろう? アンドロイドの幽霊なんて、放っておけば良さそうなものだが。
「買い取る予定なのは、星だよ」
「・・・・・・・・・・・・まさか、その惑星に山ほどいるアンドロイドの幽霊とやらを、一人残らず始末しろなどと、言うわけじゃないだろうな」
「いや、使う土地は限られているし、とりあえずは追い出せればそれでいいかな。サムライやニンジャの武器は幽霊みたいな、あの世の物質で出来ているって話もあるから、君の持っているらしい「武器の幽霊」かなにかで、殺せるのかどうか試して、可能であれば対処法を見つけて欲しい、といったところじゃないかな」
「塩でもまけ」
「そうもいかないよ。実際、幽霊なんて科学で解明できない存在は、同じ幽霊を扱うサムライかニンジャだけだ」
なら、ニンジャを雇えばいい、と言おうとしたのだが、
「ニンジャはどうも、人手不足でね。つい最近までそんなことは無かったけど、急に数が減っちゃったらしいからね」
にやにやとそんなことを言う。私のせいだとでも言いたいのだろうか? だとしても知ったこじゃないが。あまり軽く扱われても迷惑なので、とりあえずここは安く動く人間ではないことをアピールしておくことにした。
「依頼、というからには、それなりの報酬も必要だろう。落ちぶれた会社に大金が払えるのか?」「払えるらしいよ。とりあえず、200万ドルほどは、前金で」
私の心は躍った。結構チョロいと、自分でも思わなくはなかったが、しかし引き受けるかどうかは別の話だ。
「だとしても、仲介業者越しに受ける気には、ならないな」
「本人に会わないと駄目なの?」
不思議そうに言われたので、私の仕事に対するスタンスを、この際だ。話しておくことにした。「当然だろう。どんな依頼であれ、まずは本人と話さなければ、分からないこともある」
実際には見たり聞いたりすれば、作家の観察眼である程度の情報は分かってしまうのだが、重要なことは他にある。
「つまり、依頼人本人から思惑を聞きたい。信用等のは何よりも大切だ。信用できる依頼主かどうか、それを知らなければ金の不払いだって起こり得ることだしな」
「それなら心配ないと思うけど、まぁ、そだね」 言って、フカユキは名刺を取り出して、私に手渡した。そこには、居住惑星と、所属銀河連盟、そして住んでいるおおよその地域と、ビル名が書かれていた。
しかし、
「まだ受けるとは言ってないぞ」
「じゃあ、これ、前金を先に渡しておくよ」
金のクレジットチップを取り出して、私に渡した。残高を調べてみると、確かに200万ドル入っている。どうやら今回の依頼主は、金払いが良いことだけは確実のようだ。
「それだけ貰えれば、話くらいは気いてもよいと思うけど?」
などと言うフカユキ。
気安く受けてしまったが、おかげでとても奇っ怪な出来事に出くわし、それで作品の参考になるのだから、作家として引き受けるしかない。
とはいえ、邪魔者の始末がはたして、作家の仕事、取材の一環と言えるのか、私には分からなかったが。
「じゃ、これで用件は済んだから」
と言ってフカユキはそのまま店を出て行こうとしたので、「ちょっと待て」と、私は彼女を引き留めた。
「まさか、私に依頼内容を伝えるだけで、お前の仕事は終わりなのか?」
「そうだよ。何、私とデートでもしたい?」
「そんな楽な役回りが許せるか、貴様も来い」
「えー?」
私が現地へ赴き、苦労している間、この女が甘いものでも食べながらリラックスし、コメディチャンネルでも見ているのかと思うと、正直かなり腹が立った。
つまり八つ当たりだ。そもそもが、名刺だけでは、私はその依頼主に会えるかどうか、アポも無いのだから怪しいではないか。
フカユキは顎に手を当てて思考を巡らし、
「・・・・・・まぁ、いいか。丁度話したいことも、いくつかあったしね。あれ、そういえばあのAIはどこに行ったの?」
と言った。
まぁ、あの喧しい声が聞こえないのだから、当然と言えば当然の疑問だ。
「ジャックなら、電脳空間でバカンスを楽しんでいるだろうな」
「そうか、じゃ丁度いいや」
何が丁度良いのだろう? 物騒なことでなければよいのだが。私は支払いを済まして(奢ると言われたが、軽くあしらわれるのはカンに触り、支払うことにした。ちょうど臨時収入も出たしな)彼女と、フカユキと外へ出た。 クリスマス、と言う行事だろうか。
地球から何千光年も離れたこのはぐれ惑星でもそういった地球の名残は健在だった。ひとえに、アンドロイド達が躍起になって古い文化、風習を守ろうと尽力しているからだろう。
人間の若者は不思議なことに、伝統だの風習だのよりも、実利をとる。
それならわたしの作品を買ってくれても良さそうなものだが、どうだろう、物語というのは自分にないモノを求めるわけであって、だからこそ彼らは私の作品よりも、夢一杯の現実感のないファンタジーを好むのだ。
そこに自分を投影して、楽しむのだ。
物語というのは何かしら教訓を学んだり、先人の知恵や経験を伝えるものだと思っていたが、こういうのは古い考えなのかもしれない。しんしんと人工雪が降る中で、そんなことを考えていたところ、フカユキが人工雪にはしゃいで、くるりと回ったりしながら、「ねぇ見てこれ本物かなぁ」などと騒ぐので、思考を中断することにした。
本物な訳がないだろう、と言うのは簡単だったが、女は男のように事実を見るよりも夢を見ていた方が楽しめる生き物なので「そうだといいな」と、合わせることにした。
「地球にいたくせに、見たこと無かったのか?」「うーん、済んでいた地域ではね。それに、温暖化が進んでからは、あの星に四季は一度無くなって、それから再生して、今の自然豊かな地球があるわけだから、そうでなくても珍しいと思うな」 確かに。
人間が地球環境を滅茶苦茶にしてから数万年間の間、人類は地球に降り立っていない。サムライやニンジャ、現地に住み着いた人々も、本当に僅かだ。
散々蔑ろにしてきたものでも、無くなると欲しがって、だだをこねる。
人間の悪習ではあるが、そのために無いモノを作ろうとして科学を発展させるのだから、考えを改め環境保護に乗り出したりするのだから、人間は回り道することで、案外成長できるのかもしれない。
現に、地球を壊滅させたからこそ、ここまでテラフォーミング技術に躍起になって、こんな離れた惑星に人工雪を降らせることも出来るようになった訳だしな。
もっとも、あの地球の山に住んでいる女が聞けば、頭を抱えるかもしれないとは思うのだが、まぁ人間は、人間でなくとも、進んでみなければそれが正しい道なのか、そうでないのか分からないモノなのだろう。結果的には地球環境を滅茶苦茶にして追い出されたわけだから、科学の発展のために環境を害する考えは、間違っていたのだろうがな。
私はフカユキに「何か土産でも買うか」と持ちかけた。無駄使いが嫌いな私からすれば珍しい発言だった。とりあえず言えることは、自然環境には購買意欲を促進する働きがあるらしいと言うことだ。
「いいよ、何か見に行こう」
と即答されてしまったので、断るわけにも行かず、私は「等身大サンタクロース」なる全長2センチくらいの小さな人形を買い(サンタクロースとはこんなに小さい生物なのだろうか?)フカユキと共に航空管理局、宇宙船のあるターミナルへと向かった。
2
空港内部にはアンドロイド達が出店を出していたようで、金魚すくいなる不可解な遊びを高額ですることになった。
私は嫌だったのだが、仕方あるまい。これも取材だと思おう。こんなぼったくりみたいな商売のどのあたりを作品に活かせばいいのか、流石の私にも見当がつかないが、いい経験にはなった。
金魚すくい、と銘打ってあるのに、救えないように出来ているという点が、特に。
「下手だねぇ」
私から言わせれば、なぜこんなペラペラな薄い膜で魚を救うことが出来る技術があるのか、不思議でならなかった。
地球の文化とは想像以上に、我々の想像を超えた人間の技術によって支えられていたのかもしれない。そう思って作品のため、メモ帳にこっそり書き込みながら、取材の為、アンドロイド達が運営する店と、最新の科学テクノロジーが運営する店との違いを比較してみることにした。
まず、全自動でないのだ。
一から十まで機械が運営する店も珍しくないというのに、会計やら商品の手渡しやら、実に不合理で忙しそうなのに、楽しそうにやっていた。
最近の人間が機械に運営させる店では、笑顔など無く、のっぺりとした表情の人間が、機械に全てやらせ、自分はTVを見ているところが多い。 実に物珍しかった。
「いやぁ、色々買えたねぇ」
だからフカユキに少し、その違いについて聞いてみることにした。
「そりゃあ簡単だよ。彼ら人間は、「売ること」を商売の目的にしているから、利益が最重要と考えているからこそ合理化を進め、逆にアンドロイド達は非合理性、人間の持つ文化に目を向けた」「それと、どういう関係がある? 利益を求めるために合理化を求めることは、悪いのか?」
「いいや、そうじゃない。結局のところ、人間は目的に囚われているんだよ。だから心を通わせる接客よりも、機械を選んだのさ」
「なら、こういう、所謂非合理性は、手間がかかるし、何より対した売り上げも上がらないかもしれないぞ」
しかし、フカユキはふるふると首を振って、
「違うよ」
と答えた。
なにが違うのだろう?
合理性が悪でないなら、取り入れていくべきではないのか・
「そうじゃなくてさ、目的を取り違えているんだと思う。「売る」だけなら、商品は何でも良い。けれど、「伝える」為ならそれは意味のないことじゃないか」
「伝える? 何をだ」
顎に手を当てながら、フカユキは続けた。どうでも良いが、顎に手を当てながら考えるのが癖らしかった。
「例えば、この飴」
言って、どこからともなくリンゴの形をした飴を取り出した。飴はプラスチックの棒に刺さっていて、持ち歩きながら舐められるようになっていた。
「この飴の良さ、これは本来、昔の地球で売られていて、祭りの時なんかに昔の人たちは売っていたらしいんだけどさ、人と一緒に歩きながら、この飴を舐めて祭りを楽しんだそうだよ」
「それがなんだ」
「だからさ、そういった漠然とした良さ、雰囲気、人と人との繋がりみたいなモノは、合理性じゃあ伝えられないってことだよ」
人と人との繋がり。
私には分からない。
それはそれできっと素晴らしいことか何かなのだろうが、私には理解は出来ても、感じることが不可能だ。
「別に無くては生きていけないわけでもないだろう? そんなモノが無くても生きては行ける」
隣を歩くフカユキにそう言った。
負け惜しみではない。
私はそういう生き方をしてきた。
だから塵一つ分とて、後悔も、憧れもない。
それを察したのかは知らないが、少し立ち止まって、俯きながらフカユキは言った。
「確かに、生きては行けると思う。けれど、それは人間の在り方じゃないよ」
「結構だ。そんなもの、役に立たなければ必要ない。人間として貧しく生きるよりは、怪物として悠々自適の生活を送りたい」
「それは嘘でしょ」
振り向いて、フカユキは、
「君は、本当は愛されたかったんじゃないのかな?」
突きつけるように、そう、本当にナイフでも突きつけるかのような鋭さで、質問をぶつけた。
愛される。
愛されたい。
正直、私には「愛」というものさえも分からないのだ。ペンギンが空を飛べないように、自分たちが出来るからって、空を飛ぶ楽しさを押しつけられても困る話だ。
しかし、愛か・・・・・・愛されたところで、仮に、だが、愛されたところで、私は自分の都合のためにあっさり、仮に心の底から私が何かを愛することがあったとしても、必要とあれば利用しようとし、不必要ならば、捨てようとするだろう。
それを愛情とは言えまい。
仮にそのような関係が「愛」と呼べるなら、求めるほどのモノでもない。
だから、
「それは違う」
と断言した。
「私は、愛だの人間らしさだのが、手に入らないならそれはそれで構わない。ただ、無いならばそれに見合ったモノが欲しい。それだけだ」
「それは、愛されたいことと、どう違うのかな」 実に楽しそうに、そんなことを聞く。
変な女だ。
「違うな、極論、私は誰にも必要とされなくてもそれを良しと出来る。実利さえ伴えば、だが」
「それはただの妥協でしょう?」
「違うな、そんなもの、結局はその他大勢が素晴らしいと称えているだけであって、愛情だとかを必要とすることこそが幸せ、などというのは、ただの押しつけがましい善意だ」
少し、目を見開いて、試すようにフカユキは続けていった。
「けどさ、それって、人間が本質的に望むものだからこそ、皆が素晴らしいと思うんじゃない?」「だからこそ、押しつけがましい。人間が本来大切にするモノだからと言って、それを感じ取れない人間の存在を放棄している。くだらない。私には私の望む「幸福」私の望む「天国」を目指す権利があるはずだ」
人に合わせずとも。しかし、そもそもがそういった「幸福」を感じ取れないからこそこんなことを言っているわけであって、望むモノが存在しない以上、心無い以上、手にはいるはずのないモノと言えるのかもしれない。
「仮にそんなモノが見つからなかったからと言って、私には分からないだろう」
「分からないから、諦めるの?」
「いや、分からないだろうが、必要とあれば手に入れるさ。それこそ、金の力で買ってやろう」
「あはは、面白いね、君」
嬉しくもない。
私はコメディアンではないのだが。
笑いながらひーひーと腹を抱えて涙を流しながら爆笑されても、不愉快でこそ無いが、目障りではあった。
「あっははは、いや御免御免。でもさぁ、そんな考え方で君は満足なの?」
「満足だな」
本当はよく分からなかったが、こうやって意味もなく虚勢を張るのも男という生き物だ。逆に女という生き物はお節介で迷惑な生き物であり、頼んでもいないというのに、さらに質問責めにするのだった。
「本当にぃ? まぁ、いいや。じゃあ、君の言う「幸せ」って何なの?」
幸せ、幸福、天国。
ささやかなストレスすら許さない、平穏なる生活が目的ではあるが、それは目的や環境であって「幸せ」そのものではあるまい。
なら、何だろう? そもそも幸せを感じ取れないからこのような回りくどい生き方をしているのであって、そんなモノがあれば苦労はしない。
だから、
「金だ」
と答えた。
「お金はあくまでお金であって、幸せとは関係なさそうだけど?」
「そうでもない。望むモノを手に入れる、という点では、私からすればもっとも近い。幸せなんて状況次第で変わる。少なくとも私には、不変の幸せ、愛情だのと言ったモノは感じ取れない。ならば臨機応変にその場その場の幸せを買うことの出来る金は、幸福を作るための資材のようなものだろう」
「その場しのぎも良いところだと思うけど」
鼻で若干小馬鹿にしながら、何かカンに障ったのか、少し、苛立ったように言うフカユキ。
確かに、まぁそう言える。
その場しのぎ。
「それは、悪いことなのか? 私には精々そのくらいのモノを「幸せ」とする事しかできない。人間の言う「愛情の素晴らしさ」に耳を傾けたところで、幸せなのは相手だけだ。私は何も感じないだろう。良い悪いでは無く、最初からそうなのだから、自分の手に入る「幸せ」で妥協だろうが何だろうが、満足しようと言うのは当然だろう」
手に入らないモノを押しつけられたところで、あるいはそれが幸せだと言われたところで、納得行くはずもない。
自分達の常識を押しつけないで欲しいものだ。私はそれを幸せだとは、決して感じることが出来ないのだから、言ってしまえば存在しないも同義だしな。
「そんな生き方で満足なの?」
「選びようが無かった気もするが、ここは小綺麗な答えよりも真実を話そう。満足できるように変えるしかあるまい。生きるためにはまず、己を知らなければならない。私は破綻者であることを知り、それでも幸せになれるように四苦八苦しているだけだ」
「ふぅん・・・・・・」
満足したのかしていないのか、まぁそれこそ知ったことではなかったが、何時までもぶらぶらふらついているわけにも行かないので「そろそろ宇宙船が出発する時間だ、私は先に行く」と言って私は先に向かおうとしたのだが、
「いいよいいよ、一緒に行こう」
言って、腕を私の右腕に絡めてきた。
鬱陶しい。
「勝手にしろ」
私はそう言って、非常に歩きにくかったのでフカユキを引きはがして受付に向かい、宇宙船へと乗船するのであった。
第三巻
その女は悪魔だった。
人を惑わすわけではない。
人を騙すわけでもない。
ひたすらに健気で、神を愛し、それでいて脇目もふらず、好意を向ける男にさえ目もくれなかった。
その女は悪魔だった。
というのも、その女は人間を愛していたからだ・・・・・・これ以上の悪はどこにもない。そう思えるほど女は人間を愛していた。
女は許した。
罪も悪も背徳さえも、これ以上気高い聖人はいないと、誰もがそう思っていた。
許されることで人々は自分たちの罪を忘れ、女に罪を告白することで、自分たちの罪を無かったことにしようとしたのだ。
何という滑稽な喜劇だ。
これを笑わずして何を笑う。
問題は、その女に自覚が足り無かったところにある・・・・・・これは愛の物語。
つまり嘘八百であり、馬鹿馬鹿しい虚像の物語だ。読者ども、騙されるな。
愛など幻想だということを。
0
女の話をしよう。
その女は惨劇に揺るがなかった。
多くが死んだ。
その女の家族も、親族も、数えるのが馬鹿馬鹿しいほどの「多く」その中には彼女自身が含まれてはいなかった。
これは天啓だと、
ここで生き残れたのは神がお守りくださったからだと彼女は信じた。馬鹿馬鹿しい話だ。あえて主観である私の言葉は挟まないが、しかし、あろう事か神ときた。
神、そして愛。
これほど見栄えがよいくせに、現実に何の影響も及ぼさないモノはない。信じるは自由だ。しかし助けを求めるなら不自由だ。
この世に生を受けて足し算を覚えた辺りで人間は考えるだろう。曰く「なぜこの世は不条理なのか? 神はいるのか? 死とは何か?」人それぞれなどと誤魔化すのはしない。
神がいたとして、役には立たない。
ならば心の支えにしようという人間は多い。多いが故になのか、彼らは気づかない。
心とは、誰かに支えて貰うものではないのだ。 人任せにしたツケを払わざるを得ない、あらゆる人間に降りかかる「不条理」という怪物は、いともたやすく心の支えを取り外す。
なぜ私が。
口にすることは簡単らしいが、答えを出すことは出来ないらしく、彼ら彼女らはあっさりと支えを捨てて、この世全てを恨み、こんな世界は違っていると声高に叫ぶだろう。
だが、その女はしなかった。
信じたからだ。
意味はあると、生き残ったからにはなさなければならない使命があるのだと。
馬鹿馬鹿しい。
これが作品なら駄作も良いところだ。何にせよ女は「これは神が与えた試練である」と納得することで、愛と信仰と純潔と市の恐怖から逃れる心を会得した。
人のため、人のため、人のため。
聖者の末路はそんなものだ。だが、違ったのは物書きの一人が彼女に心を奪われたことだ。
同じ物書きとして正直理解し難い出来事ではあったが、まぁその男は物書きとしても三流だったので、私のようにネジが足りない部分は極々一部であり、人間をやめてはいなかったのだろう。
昔は良い作品を出していたようだが、現状は酷いモノだった。読者に媚び、メディアに媚び、媚びることで作品を売り出したら終わりだと、端から見ている私が思うほど、作家として落ちるところまで落ちていた。
しかしそれでも心があるのなら、愛か恋かはしらないが、人に思いを抱くことはあるらしい。
その男は聖女である女に心奪われたのだ。
しかし現実は残酷だ、女は「人間を愛するから」と断った。
愛は愛されることを望む欲望だ。
神はすがりつくための道具だ。
死はさらなる旅路だ。
たかがその程度のことにすら気づかなかった、いや私が察していないだけで他の答えを出したのかもしれないが、甘酸っぱい物語、つまりは駄作と言うことだ。
愛、神、そして死。
これほどつまらない題材もない。共通点がある以上、簡単に答は出せるだろう。
答えに懊悩する若者の物語というわけだ。あんともチープでつまらないがしかし、関わるのが他でもない邪道作家、この私で有れば結末も変わってくるモノだろう。
悲劇か喜劇か、いやどちらも見せ物という点では同じだろうが。
では、語りだそう。
人間に出せる答えは知れている・・・・・・・・・・・・自分自身の確固たる意思で答えを作り、道しるべにしなければならないという共通の問題だ。
答えは出たか?
まだ出ないと言うなら始めよう。せいぜい苦悩しろ読者共。作家は読者を導き、騙し、語り、そして道を示すのが仕事だからな。明かりを忘れるな、準備は良いか? さぁ
物語の幕を上げよう。
1
私は神の家にいた。
恥ずかしげもなく神と愛と説教を垂れ流すこんなところに、私がいる理由は単純だ。
作者取材である。
愛というモノが真実「この世の幸福」であるならば、とりあえず見て調べておかなければという判断からここへ来た。
ステンドグラスは礼拝堂を神々しさで埋め、光に満ちた神の聖域を演出していた。だからといって神がご加護をくれるかどうかと言えば、そうでもないだろう。用は説得力の有る無しだ。
その女の祈りは儚く、そしてそれらしかった。 それらしく、聖女のように見え、そしてまるで祈りが届いているかのように見えた。見えるだけで、この女の経歴から考えれば、見捨てられたといって差し支えないのだが。
金の髪は聖女のイメージを彷彿とさせ、白く潔白な修道女としての姿は節制を主とする人間の見本のようだった。人間の正しい在り方を前進で表現しているように見て取れた。
私から言わせれば、そんなものは価値のないモノでしかないのだが・・・・・・万人の正しさの基準ほど曖昧ですぐに変わり、かつ役に立たないモノはない。
だが、圧倒されたのは事実だ・・・・・・どんな在り方であれ、極めれば人間、それ相応の雰囲気を放つのだろう。
「お待たせしました」
振り向かずに祈った姿勢のままで、そんなことを女は言った。シャルロット・キングホーンという名前、キングホーンというのは地元の貴族の名前らしいが、まぁ私からすれば貴族であろうが義賊であろうが同じに見える。
問題はただ一つ、金になるかだ。
違った、作品のネタになるかだ。
人間性など、どうでも良い。そんなモノの判断は偉そうな公僕にでも頼んでおけばよい話だ。
とはいえ、この女の人間性は、世間的には棄権しされているから殺しではなく破壊の依頼が綿足に舞い降りたのだろう事を考えると・・・・・・・・・・・・いや、その話はまた今度だ。
作者取材のため。
大抵のお題目はこれで何とかなる。
「取材の依頼を申し込んだものだ。とりあえず、話を聞かせて貰って良いだろうか?」
「ええ、構いませんよ」
そういうと、恐らくは普段信者たちが祈りを捧げるために座っているであろう横長い椅子に、座った。私は無神論者ではあるが(神と何回も取り引きしておいてどうかとは思うが)存在自体はともかく、その有無はともかくとして、別に敬ってはいないので、少し間をあけてもたれ掛かるように座った。
「だらしないですよ、神の御前です」
「それについては、今更どうしようもない話だ」「・・・・・・?」
「なんでもいい。話を聞かせて貰いたい」
そうは言ったものの、何を聞こうか?
物語に流れのようなものがあるならば、この場では何か、今後の壮大な前振りを聞くのだろうが・・・・・・何度も言うが、私は主人公ではない。
この世に物語があったとして、せいぜい語り手に過ぎないだろう。そうでなくては作家などやってはいられまい。
何かセクハラじみたことでも聞いて惑わせようかと思ったが、やめた。ふん、そうだな。
ここは珍しく王道でいこう。
「恋人がいるという話だったが」
そう切り出すと、彼女は飲もうとしていたらしい紅茶を吹き出した。私が座っている間にわざわざ二人分、持ってきて先に飲もうとしていたらしいが、しかしそれは台無しとなった。
「どうなんだ? 神に身を捧げつつ、他の男とも縁を持つというのは。女という生き物は恐ろしいよな、神ですら男で有れば手のひらの上だ」
「いません」
彼女はそう言った。そして「居てはいけないのです」とも。
元々、大した興味もないのに私がここに来た理由は、主にそれが原因だったからな。
人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られて死ぬと言われるが、しかし馬のいないこの惑星ならいくらからかっても何の咎もないはずだ。
あったとしても、知らないが。
だから追求することにした。
神は愛を肯定しても、恋は否定するのか? それは物語のテーマになるし、傑作を生む肥やしになるだろう。などと教会の中で考えているのだから、今更神におべっかをつかったところで仕方有るまい。
だから聞くことにした。
「それは何故だ? 成る程神を愛することは汚れがなくて美しいのかも知れないが、しかし美しくあるために個人の幸せを食いつぶすような存在を神などという、大仰な名前で呼べるものか?」
少し躊躇したが、彼女は、
「私は、皆の期待をこの背中に背負っています。何億という信徒たちが、私に期待しているのですから、私個人の幸福を優先することは、神の教えに背きます」
聖人、というものをご存知だろうか。
教会の機構の象徴みたいなものだ。簡単に言えば国家が分かりやすい威光を求めるように、宗教だって分かりやすい「結果」自分たちの成果を欲しがるのは無理のない話だ。
死後、2回も奇跡を起こさなければ認定はされず、本来は誰もが知る、聖人たちを称えるものだったらしいが、組織が大きくなり欲望が肥大していくに連れて、聖人判定はそういった人間たちの欲望にまみれていった。
その聖人になる可能性。
そんなものを内包する女がいれば、当然の事ながら期待はする。メジャーリーガーとして活躍するに足る実力を持つ若者に、まさか自身の幸せを優先して田舎で過ごせと教える奴はいないだろうと思う。
これはそういう類の物語だ。
だが、そんな目に見えない奇跡、居るのかも分からない神、その他大勢の人間の期待、そんな有るのか無いのか分からないものに、人生を左右される事があるという事実に、私は我慢があまり効かない人間だ。
だから言ってやった。
「馬鹿馬鹿しい、神の教えという言葉を、言い訳に使っているだけだろう」
「・・・・・・何ですって?」
おお怖い。
女の怒りは手に負えない。相手が男であれば切り捨てれば済む話だが、相手が女ならあの世の果てまで呪われそうだ。
男は怒りの元をすぐ忘れるが、女は日々の記念日から大昔の諍いの理由まで、全て忘れたりはしないからな。
「事実だ。そもそも、神の教えといえば聞こえは良いが、そも神が教えたからと言って服従する理由など人間にはない。仮に神がいたとして、人間では思いも付かない、素晴らしい教えを説いたとしよう」
「説かれました。その教えは脈々と受け継がれ、この遠い未来にまで聖書は存在します」
それは正しい。
しかし、間違っている。
それを教えてやらねばなるまい。実に面倒ではあるが。
「我々は神の分身では無い。神がどれだけ素晴らしい結論を出そうが、能力的に優れた者が自分たちの結論を教えているだけだ。神が真に全能であり全知だったとしても、我々人間は従わなければならない理由などどこにもない。奴隷ではないのだからな」
「神は我々をお作りになった造物主です。そういう考え方は不敬ではありませんか?」
「何か悪いのか?」
「だって、それは・・・・・・」
私はため息を付いた。
宗教はこんな科学の果ての世界でも、あまり進歩はしていないのだろうかと。何の変化も無く遙か未来まで受け継がれたことは賞賛に値するのかも知れないが、だからといって、変化しないで良いわけがないのだ。
変化しない宗教など、ただの化石だ。
人間の意思で手を加え、いつか追い越した上で「人間の答え」を出さなければ意味がない。それも組織としてではなく、各々が個人として、その答えを出せなければ、神の教えは活かせていないのでは無いだろうか?
「例え神が全知全能だとしても、その答えを盲目的に信じて良いわけがないだろう。神が間違えるかも知れないし、絶対的に正しいとしても、それは神の目線から見た正しさだ。我々人間がそんな事ばかり考えてどうする? 自分自身の心の答えが、結局のところ真実なのだからな」
心があるのかどうかも私がこんな事を言うのは皮肉でしかないが。
だが、神の答えよりも心の答えを優先するのが生き物の在り方ではないのか? 自身の心に嘘をついてまで貫くモノが、本当に正しいのか?
一作家として気になる話題だ。
私は私の作家としての業に従って、その答えを突き止めるべく、彼女に追求するのだった。
が、しかし。
「今日はお帰りください」
と門前払いを受けることになった。踏み込みすぎたか。何にせよおとなしく帰る(帰る場所など無いのだが、まぁ何処かに泊まろう)ことになった私を、その男は待ちかまえていた。
貧相な男だった。
背は低く、目は腐っている。
だが、見覚えはないが私は知っていた。なぜならその男は私と違ってメディアに露出し、作品をデジタルな媒体で売りさばいている、所謂売れっ子作家、つまりはいけ好かない輩というカテゴリの人種であるという事を、私は事前の調査で調べ終わっていたからだ。
第四巻
死は平等に訪れる。
それは聖者であっても・・・・・・問題はその結末に「納得」行くかどうかだろう。無論、家庭も重要だ、何せあの世があるのなら、だが神だか仏だかが偉そうに上から目線で「君は天国に行くのにふさわしい」だとか「貴様のような奴は地獄行きだ」だとか、判別されるだろうから。ルビーの鑑別っじゃああるまいし、勘弁して欲しいものだ。「俺が現役だった頃は」
どの傭兵もそう言う。ここが工業の鳴かんな雑多な惑星の、その酒場でなければ、もうすこし真実味もあっただろうが・・・・・・酒場で男が語る噺は真実かどうか、当人に美化されすぎてわかりにくいものだ。
男はジョンと言った。
本名かどうかは分からない・・・・・・まぁ、傭兵に名など、意味があるまい。
彼らは死に向かうものだ。
名前ではなく、生き様で語られる。
それは作家のようだと思ったが、しかし私は得意なだけであって、争いは苦手だ。余計なストレスを生活に持ち込みたくはないからだ。
男はがっしりとした体型で、筋肉の付きはそれは凄く、空を支えた巨人はこんな感じでしたと言わんばかりの、背中で語れる身体をしていた。
「こんな風に、生身の人間が、酒を飲み、仲間内で語らったもんさ」
「今は違うのかい?」
私は聞いた。
カウンター席なので、私以外に座っている者がいない以上、私しかいないが、しかしここは店主が人間ではあるが、他は違う。アンドロイドばかりのこの世界、機械便りのこの世界、ほとんどの人間がバイオ・チップを脳内に埋め込み、その利便性を活用しながら生きるこの「電子電脳世界が世界を覆い尽くす」世界の中では、ただ生身で処理もされていない、どころか普通の人間が入れた酒を飲む人間たちの宴は、ここだけ違う世界が広がっているようで居て、神秘的ですらあった。
「ああ、頭にネジの埋め込まれた機械など、居なかったなぁ」
世界を変える力。
これを聞いて君は何を思うだろうか? 強大な権力か? 強大な暴力か? それとも、数の圧力か・・・・・・・・・・・・どれも違う。
人間の祈りの数だけ、世界は変わる。
世界が貧困と飢餓と暴力と戦争と、格差と貧富と虚実と偽善に満ちているのは、何と言うことはない、つまりそれを望む人間が多いだけだ。
人間がそれを祈るだけだ。
世界が残虐なのは、ただそれだけの理由だ。
金で善意ある人間は買えないが、悪意合る人間との縁をを切る事は出来るように、人間lyつて奴は即物的に出来ている。即物的であるが故に、おおよそはそういう、欲の絡んだ理由だ。
当たり前のこと。
人間はそれを見ないで生きている。
銀行に金を預けることの危うさを知ろうともせず、「安心」を買っているつもりの大衆のように・・・・・・銀行が金をもらうのは預金や手数料からであって、善意でも何でもなく、エリートどころか拝金主義者のなれの果てなのだが、世間的な立派さ・・・・・・学歴だとか堅い商売だとか、そういうもので判断して、違ったら理不尽だと嘆く。
楽そうで羨ましい噺だ。
科学が進んでも、変わらない。
「しかし、私はこう思う」
そう言って、私は会話の主導権を握る。
「私は、消費社会、科学全盛社会、なんでもいいがこの世界は、世界って生き物は、精神的に進歩しないまま、ここまで来たのだと」
「なるほどな、つまり人間は、進化はしても進歩しなかったと、そう言いたいのか?」
興味深そうにジョンは聞いてきた。
「ああ、そうだ。精神の成長は、資本主義社会ではむしろ、不必要なものだ。率先してそれらをしてる人間こそが、「立派な社会人」になるのだから、自分のない、ロボットみたいなイエスマンが増えて、欲深な人間が豊かになり、道徳の善し悪しを決めるのだから、当然だろう」
「お前さんは、金が嫌いなようだな」
「まさか! 唯一信じるものだ」
そうは言ったが、私は金すらも信じてはいないだろう。作家の信じる事柄など、己の作品の出来映えだけだ。
そして私の買いた作品は全て世紀の傑作だ。
何の問題も生じない。
「ただ、そうであるくせに、「倫理観」だとか「理性のある一般市民」ぶるなという噺だ。金のためならば人を殺すくせに、直接的でないからだとか、自分には責任がないだとか、なら最初から善人ぶるなという噺だ」
「成る程な。嘘が許せないと?」
「いや、ご大層な噺を聞かされることに、うんざりしているだけだ」
資本主義に支配される人間たち。
人間は未だに、金を支配できていない。
それは勝手だが、押しつけられる方はたまったものではない。迷惑極まる噺だ。
噺は変わるが、君たちは「運命」を信じるだろうか? 思うのだが、運命があったとして、結果を見なければ我々にそれは知覚できない・・・・・・・・・・・・先が見えることはない。我々に未来は見えないのだから。
もし、全てをやり尽くした人間が、運命を克服するために人間の限界を超えて成し遂げた人間がいたとして、何をすればいいのだろうか?
私は最近、そればかり考えている。
私自身がそうだからだ。
結論として・・・・・・無い。
未来が見えない以上出来ることはあるまい・・・・・・・・・・・・己を信じる、それくらいだろう。
もっとも、作家である私は自信の作り上げた物語に関しては「絶対の自信」があるので、見る目がある奴が読むのだろうか? という不安くらいのモノだ。意外でも何でもなく、成し遂げた人間はそう言うことしか考えないらしい。
つまり審判する側に回れば、こちらのモノ、運命ですら口出しは出来ないと言うことらしい。
そも、成し遂げた人間にあれこれやることがあるわけがないではないか。精々、作家だとすれば売れると決め込んで、作品を次々書くことくらいのモノだ。
読者共もそうしろ。
私はそうしてきた。
世の中とは、そう言うモノらしいからな。
「全く、未来が見えればいいのだが」
「なぜだ?」
突然噺が変わったので、ジョンは驚いたように聞いてきた。まぁ当然だろう。作家でもなければ普段から、このようなことを考えまい。
まったくな。
「不安が無くなるからさ」
「不安は嫌いか?」
「その結末が当然だと信じていても、断言できないのはむずがゆいものだ」
すると、ジョンは高笑いをしながらこう言うのだった。
「何を言う、結末が分からんから楽しいのではないか。貴様の書く物語とて、そうだろう?」
「だが、報われるかどうか分からなければ、誰だってそう願ううだろう」
「確かにな」
ビールを一気のみ(今時、人間の造ったビールは希少だ。味わうつもりが無いのか?)して、グラスを大きな音を立てて置き、彼は言った。
「成る程確かに、結末は分からんかもしれん。しかしな、若造。お主は分からないからこそ、その物語を書けたのではないのか?」
「どういうことだ?」
「いやな。だってそりゃ、贅沢ってものだ。あれだけ面白い噺を書いておいて、「売れるかどうか分からない」など。売れるかどうかわからんからこそ、あんな面白い物語を書けたのだろうに」
「世辞は必要ない」
「そう言うな。面白かったぞ、あれ。タイトルは忘れたが・・・・・・とにかくだ。もしあれがメガヒットするとして、だ。お前さん。同じ物語を書けたとでも言うのか?」
「当然」
いや無理か。
その苦悩があったからこそ、形に出来たのだろうしな」
「無理であろう? なら、構うまい。なぁに、結末は良いものだと信じておけ。やれることをやったんなら、人間はあれこれ動くもんじゃない。どっしり構えて吉報を待っておれ」
「やれやれ、参った。非現実的な声援ありがとうよ、全く」
幸福に生きたいだけの私からすれば、勘弁願いたいとしか言いようがない。横から口だけを出すうすらバカ共の妄言を聞く身にもなって欲しい。 そんなことが出来るわけ無い、といった類のことを、人生で一度も自分の脳味噌で考えたことのない人種がホザき、それを黙って聞く。
こんな地獄が他にあるか?
もう勘弁して欲しい。無論、お願いでなく命令だ。これ以上下らない妄言を聞く気もないし、金を払うわけでもない人間のカスに、良いように言われる覚えもない。
そんなバカ共の道理が通るなら、私は人間を辞めて良い。人間がそこまで価値のないモノなら、物語を語り聞かせる頭も、無いだろうからな。
当然ながら皮肉だ。
皮肉を皮肉として受け取る脳味噌が、そういうバカ共に理解できるのかは、知らないが。
気分を変えよう。
話題を変えるのが良い。
「・・・・・・いずれにしても、口だけが立派な人間が信念に準じた人間をあざ笑う風潮を、いい加減何とかして欲しいものだ。目障り耳障りで仕方ないからな」
しまった、愚痴になってしまった。
まぁいいか。
「それこそ貴様が気にするようなことではないだろうに。そう言う馬鹿者はどの時代にもいるモノだ。俺もそうだった。そして肝心なことだが、人間は、今まで生きたその総決算、所謂「報い」とうのは良かれ悪しかれ、受けるものさ」
「本当か?」
もし、なければ馬鹿馬鹿しいことこの上ない。 カスでもクズでも良いが、そういう生き方がこの上なく「正しく」なる。生きることがこの上なく馬鹿馬鹿しくなるだろう。誰だってそうだ。
「それが分からないから「運命」だろう?」
「いいや、生き方は返って来るものだ。自分自身にな・・・・・・・・・・・・お前さんをあざ笑っている連中だって、そうだろう? 連中は人をあざ笑う自由は手に入れているが、どいつもこいつも幸福そうな面はしていまい?」
「確かに、そうだがな・・・・・・」
「安心せい。見たところ、お前さんの信念は間違っちゃおらん。この儂が保証してやるわい!」
「・・・・・・ま、気休めにはなったよ」
便宜的に「ありがとう」とだけ言った。
私にしては珍しい行動だ。
「ところで、そろそろ本題に入ろうか。このまま酒を浴びるほど飲むのも、それはそれで面白いが・・・・・・何でも、討ち取る標的がいるからこそ、ここに集まったのだろう?」
「ああ、そうだ」
「なら、早うせんかい」
「それこそ落ち着け。急いだところでどうにもならないさ」
「ふむ、成る程な、貴様の気持ちもわからんでもないわ。気持ちが勝手に焦りよるわい」
「ふん」
そんなことを会話しながら、我々はバーのカウンター席で盛り上がるのだった。時には政治、時には女、時には酒の噺だ。
作家が噺を語られるのは、珍しいことだ。
精々、作品の参考にするとしよう。
「なに、人間やり遂げたなら、胸張って生きていけるもんだ。貴様はやり遂げたのであろう? ならそれを誇りに生きればよい」
などと、古くさい考えを示すのだった。
嫌いではないが、現実性に欠ける。
金で幸福は買えないかもしれないが、金で平穏は買える。安い買いものだ。だが、それも現実に実利あってこそのモノだ。
ここで正しておきたいのは、私という人間は誰よりも効率や損得を重要視していないが、誰よりも現実における金の力を、軽視していないと言うだけなのだ。
ただのそれだけだ。
盗みを働いてでも金を手に入れるだけならば簡単だ。しかしそうすると金を使う意味が無くなり何がなんだか・・・・・・それに悪意には悪意が、法という強大な悪意が向かってくる。
平穏であり、敵のいない世界。
金があれば創れなくもない。後は当人の意志の問題なのだから。そんな私の気持ちを知ってか知らずか、ジョンは美味そうに酒を飲んだ。成る程・・・・・・環境がどうであれ、酒の味は変わらないらしかった。
私は飲めないので分からないが。
味が苦手なのだ。アルコールは良いがその味が不味くてたまらない。何より私は酔えないのだ。 ウォッカを飲んでも、私は酔わない。
そういう人間なのだ。
人生の絶頂、成功による愉悦、そういったものを生まれながらにして「感じ取れない」以上、私に望める幸福は、「充実感と恒久的な平穏」が主体となるからだ。まぁ仕方あるまい。そう言う意味では、酒の味が分からないのは、当然だろう。 私はそう言う人間だ。
そして、それを否定する気は毛頭無い。
人間性など、どうでも良い噺だ。善人か悪人かなど、どうでもいい。子供を殺すことに喜びを覚える人間も、聖人ぶって信徒を導こうとする聖人君子も、やっていることは同じなのだから当然だと言えよう。
何かを殺して生きている。それは動物であり植物であり、あるいは自分はフルーティアン(果物しか食さない人種)だから何も殺していないなどと言う人間もいるだろうが、しかし、そんなわけがないだろう。生きていれば争いがあり、争いがあれば順序があり、順序があれば優先されるモノがあり、そして選ばれなかった存在・・・・・・・・・・・・才能でも境遇でもなんでもいいが、とにかく完全な平等も完全な平和も、事実としてあり得ないものでしかない。そも争い、殺し、犯すのはあらゆる生物の本能であり、それが悪だと道徳があるように振る舞って、定義しているだけだ。
時代によっていくらでも変わる。
そんなモノに価値はない。
例えば、私の隣でビールを飲んでいるこの男、ジョンと言っただろうか? この男の古き良き時代には「正義」だとか「テロリズムの抑制」だとかいかにもそれらしい理由、にもなっていないがとにかく、そういうお題目で合法的に人殺しが出来ていたらしい。基準が楽で羨ましい。
しかし、平和になってからはすぐに、戦争はいけないことだ、とか人を殺すような奴は気が狂っているだとか、叫び出すわけだ。
人を殺して首を取り、それを栄誉だの栄光だのもてはやしてきた、殺すことで領土を拡大し続けてきた「人間」という虐殺の得意な人種の言うこととは、思えない噺だ。
当然皮肉である。
「お前さんは細かく考えすぎのきらいがあるな」 そんなことを美味そうにビールを飲み干して、ジョンは言うのだった。
「もっとシンプルに考えればよかろう」
「どんなふうに?」
ここでこの男が落ち込むまで事実をたたきつけるのも良いのだが、しかしまぁ、参考ついでに聞くとしよう。
「そうさな、我々は所詮、この宇宙に産まれたちっぽけな生命体にすぎぬだろう? なら、豆粒は豆粒らしく、胸を張って生き、成し遂げ、やり遂げたのであれば・・・・・・それは良き行いであろう」「自己満足だな」
「おうとも。しかしそういうもんだろう? 儂もお前も自己満足でしか満足できん。人間とはそう言うものだ。だがな物書きよ、どうせなら大きい法螺を吹いて、それを実現すると触れ回った方が面白いではないか」
英雄的な考えだ。
つまり現実的ではないと言うことだ。
「そりゃ構わないが、生憎自己満足で「妥協」は出来ても、それで満足は出来ない質でな。まぁもっとも、私のような破綻者は、自信が望むモノに限って手に入らない宿命がある。まずはそれを克服してからの話だろうな」
「そりゃいい。だがな物書きよ、見たところ、お主はもう克服しているように見えるぞ」
「どういうことだ?」
「だって、お前さん、宿命も運命も知った事ではないと、そう言う顔をしている。つまりお前さんは既に答えを得ているんだ。それがどういうモノかはどうでもいい。いずれにせよお前さんはいずれその「手に入らないはずのモノ」を手に入れるだろう。儂から言わせれば、そこからが本当の戦いよ。失うモノを一つも持たなかった物書きとしての貴様は無敵だったかもしれぬが、しかしそこから先はそうではない」
一見の価値はある物語になろうよ、と予言じみたことを言うのだった。まぁ、言うだけなら誰にでも出来ることだ。別段、驚くには値しない。
「儂から言わせれば、何のストレスも無い平穏な生活など、つまらんがなぁ」
「それはお前の基準だろう。争いごとは好まない質でな、無いに越したことは無い」
「そうかのぅ、儂は艱難辛苦、波があれば嵐もある大航海の方が、心躍るがな」
「私は、その「心が躍る」体験が出来ないと言っているだろう。つまり私には無意味で無価値だ」「そうなるのかね。しかしな、物書き。やはり物語も人生も、揺れ動くからこそ、這い上がるからこそ人間の意志は光り輝くのだと思うぞ」
などと、また知ったようなことを言った。
どうやら、この男は天高くを見渡す大人物であるらしいが、しかし私は作家であり、絶対に手に入らぬ「人並みの幸福」を望む傍観者、いや生還者である。この世の道理に溶け込めぬ身として、正直、相容れない相手だ。
彼は天高くを望み、それに挑む姿勢を良しとして、胸の高鳴りを優先した。
だが、私は平穏でありきたりなモノを望み、望むモノに限って入らない矛盾に苛まされた。
この矛盾。
世が平等ではない証のようなものか。
公正さは世界に必要だ。しかし公正さとは、公正に感じるものであれば良いのだ。現実に公正であり公平である必要は無く、また世界はそうだ。 公平で平等に見えれば良いという、矛盾を解決しないまま世界は回り続けた。その結果、こうして彼と私の間には、目に見えぬ「不平等」とでも言えばいいのか、持つ者と持たざる者には、埋められない差があると痛感させられる。
それは強者の理屈だ。
そう言ったところでこの男には通じまい。弱者が強者になれないように、強者もまた、弱者になることはできないのだから。
私は中立ではなく、ただ、最初から外れていただけだ。不満はないが、それに対する見返りくらいは欲しいものだ。いや、私はそんなに謙虚ではないだろう。
いままで散々だった。
だから利子付きで返して貰う。
ただの、それだけだ。
とはいえ、私が望むのは「平穏」であって「平凡」ではないのだ。そう言う意味では、こういう類の英雄的気質の持ち主、あるいはただ単に「時代に置いて行かれた古い人間」とでも言うべき、男の存在は、私にとっては福音だ。
男の道。
価値観としては古いが、しかし廃れることのない文化であり思想だろう。少なくとも、この世が男と女で説明できる内は。双方ともそうだが神話時代から、男は男の、女は女の生き方が、さながら宿命づけられているかのように、固まっているものだ。
男は理想と信念に生きる。
女は家庭と愛に生きる。
普遍の法則だ。
しかし、男の生き方は古いと通じなくなってきた・・・・・・・・・・・・資本主義社会が台頭してきてからは、男は実利あっての生き方、金の伴ういかがわしいビジネスが権威の象徴であり、それが正しいという風潮が出来たのだ。
そこに信念は無い。
理想も夢も、希望もない。それは資本主義社会において、金と引き替えに失うものだ。私のように要領よく失わない人間は、かなりの少数だ。
殆どは、信念のない抜け殻だろう。
あれば良いわけではないが、ある方が面白いということだ。
そしてそれがある人間は面白い。
善悪ではない、私は作家だ。そんなモノに興味を持つようでは作家失格も良いところだろう。だから問題なのは、その面白い生き方をしている古い生き方の化石人間のサンプルが、今まさに私の目の前にあるという「事実」だ。
私は作家だ。
作品以外、傑作を書く以外は、どうでも良い。 人が死のうが生きようが、だ。
それが、少なくとも私の作家としての在り方だ・・・・・・・・・・・・倫理的に正しいかどうかはどうでもいいのだ。言われたところで知ったことではないしな。故に、作家としての私がする事はただ一つと言ってもいい。
すなわち、作者取材である。
「這い上がるからこそ輝くだと? 確かにそれは事実だろうさ・・・・・・だが、這い上がって成功し、それで運命に打ち勝った人間にだけ許された、真実でもあるがな」
「やれやれ、そう穿って世の中を見る必要も、ないだろうに」
「馬鹿を言うな、私は作家だぞ・・・・・・穿った目線でみれない作家など、作家ではない。儲けているから作家というわけでもあるまい。作家というのは言わば、背負った業の名前だ。その業の示す道でしか生きられない、そんな人間を「作家」だと民衆が呼んでいるだけにすぎん」
「ほぅ、つまり、お主の生き様は穿っているからこそ作家足り得るのか? 酔狂なことだな」
「酔狂でなければ、作家などできんさ」
事実すらも疑って、それでいてこの世で最もこの世の真理に肉薄し、真理を通して自己を再現することで、物語を描く。
そんな人間が、酔狂でなくて何だというのか。 作家はすべからくそうであるべきだが、しかし資本主義社会においては、金が儲かりそれが売れれば誰でも「作家」になれるというのだから、随分と人間の誇りも尊厳も、安くなったものだ。
作家はどの時代でも、扱いは荒いがな。
私はビールが飲めない(あの、ぶつぶつした泡が口の中を爆撃するような不快感に、なぜ耐えられるのか、それを快感と受け取れるのか、不思議でならない。マゾヒストなのだろうか?)ので、カプチーノを一つ、モッツァレラチーズとトマトソースのパスタを一つ頼むことにした。
カウンターにそれが運ばれてくるまで、我々はさらに話し込むのだった。
「どこかその辺に、良い儲け話は無いものか」
そんなことをジョンが言うので、私は「教師になればいい」と進めた。
「何故だ? 教師ってあの、生徒に文学やら理数やらを教える仕事であろう? 儂に務まるとは思えんが・・・・・・」
「それは理想であって、現実にある事実では無いだろう? 現実には教師という仕事は、教え子を殴り躾だと思いこんで、女に手を出しても咎められず、それでいて「権威のようなもの」を疑似的に体感できる、言わば「合法的な犯罪者」だからな。楽だとは思うぞ」
「あー、何か嫌な思い出でもあるのか? お主」「いや、ただの事実だろう。確かに、私にはおよそ人並みらしい思い出など無いが、それとは関係なくただの事実だ」
お前は事実を見ていないだけだ、と私は指摘してやるのだった。
「そうかもしれん。だがなぁ、物書きよ、世の中という奴は往々にして上手くは運ばぬ。なら胸に大望を抱き、それに身を任せ、見果てぬ夢を見ることで楽しむ。それのどこがいけない?」
「夢を見るだけなら、枕でも買えばいい。誇りや人生観、あるいは生きる上での在り方すらも、金があって、現実に力を持つことで初めて、当人の自己満足という意味を持つのだ」
「やれやれ、楽しいか? そんな生き方で」
「楽しいさ。金があり、平穏な暮らしをして、本を書いている限りは、コーヒーでも楽しみながら私はいくらでも人生を満喫できる」
「そうかぁ。ま、それも一つの在り方よな」
がっはっは、と傭兵らしく、乱雑で描写に苦しみそうな笑い方をするのだった。
「そも、人に教える、などというのは人生を賭けて行うものだ。その生き様から、先人の在り方から学ぶことで、ようやく学び、教えることができるものだろう」
「意外と、ロマンチストなのか? 物書きよ」
「いや、人間のような魂と思考回路の汚い生き物には、「教える」などという大層なことはできないと言うだけの噺だ」
何せ、現実には善人でも悪人でもなく、人間のクズこそがおいしい思いをするのが世の常だ。現実はそんなものだ。私も、一体何度人に夢を見せるなどという「作家」という生き方を馬鹿馬鹿しいと思い、いっそそういうクズの生き方を見習ってやろうかと思ったかしれない。
綺麗事を吐くだけなら必要ない。現実に人間の意志が結果を伴わないことがあるのだとすれば、そんなことはあってはならないことなのだろうがしかし、その場合事実として、この世の摂理はそういう「クズ」よりも価値がないと、まぁそういうことなのだろう。
もしそうだとすれば、私は筆を捨てて作家を辞めて、適当に生きることを「辞める」だろう。
そんなモノ、こちらから願い下げだ。
それが人生だと言うのなら、だが。
私とて、一夜にして成るものなど無いと言うことは流石に分かっている。だが、1年で形にならないは必然だ。10年で人並みにはなる。そして15年で誇りを持って物語を描ける。
そこからさらに1年で形を仕上げれば、これはもう、吉報を待つほかあるまい。私は全てをやり遂げた、だからこそ、作家として自身に還るモノが無いのは、我慢ならない。
そんな生き方が、この思考回路を産むのだ。
息を吐いて、ジョンは言った。
「確かにな、こと、教育とは難解なものよ。儂も経験がある」
「そうなのか?」
「ああ、世代の壁を越えるのに苦労したわい」
どんな教え方をしたのだ、貴様は。
と、そこでニュースが入ってきた。
緊急着信機能のある店の電子デバイスから、速報が入ったのだ。私は編集者から連絡がきたのかと思い、反応しかねた。何事にも言えることだが「信用」とは何にでも優先できる。信用できる相手ならばどんな条件であれ、任せられるモノだ。 つまり培っている途中というわけだ。
私はスライド式の印税なので、あまり深く売り方に指示したり面倒なことはしないが、やはり根底から本を「売るもの」と考えている人間と、本を「物語であり、綴るもの」と考えている私とでは、なかなか難しいものだ。
脳波パターンのコピーを使うことで、技術や才能を他人にコピーする技術がある以上、アンドロイド作家のように自身のインスピレーションを「人任せ」にすることで、どこかの誰かに自身の代わりに作品を書いて貰う。そんな方法を使う作家も少なくはないのだが、私の脳波パターンをコピーした人間は、ことごとくが廃人になってしまい、ゴーストライターには成り得なかった。
つくづく、異質であり鬼才であることは、世の中に馴染みづらいのだな、と変に納得せざるを得なかった。
と、緊急着信の内容について触れよう。
当然ながら、内容はテロリズム、だ。
押しつけがましい思想を、自身が正しいことを疑わずに、図々しく行うことをテロリズムというならば、所謂「立派な文明人」や「立派な社会人」という人間たちも、そうだろう。ただ、分かりやすく暴力行為に訴えているかどうか、ただそれだけの違いでしかない。図々しい馬鹿はどこにでもいるが、それを集団で、暴力で実現しようとすると、テロリズムになる。まぁ、彼等からすれば、政府も似たようなモノなのだろうが。
民主主義、などという嘘まるだしの厚かましい思想を持って、暴力で押さえつける部分は、あまり変わるまい。「文明人ぶって」いるかどうかの違いでしかないのだ。そして、所謂「文明人」だって、余裕が無くなればあっさりと殺し合うし、モラルを捨てる。都合が悪くなれば、彼等は簡単にそれらの装飾を、捨てるものだ。
それは歴史が証明している。
それを認めようと言う為政者は、未だかつていたことがないが。
「それで、貴様はどうするつもりだ? 喚いたところで始まるまい」
「だろうな」
「だろうなって」
ぐび、とビールを飲むジョン。飲み過ぎたおかげで、彼は顔を赤くしていた。
「それがわかっていて、何故自問する」
「自分に言い聞かせる為さ」
あの連中だってそうだろう、と私は例のニュースを指さすのだった。
「ああ、あれな。ああいうのは、なんだ、自由とか革命とか、まぁそういうのを求めて行うモノらしいが、何故連中は暴力に頼るのか・・・・・・なぁ物書きよ、何か知っているか?」
「安易だからだろう」
「安易?」
「ああ、時間をかけて何かを成すよりも、暴力に訴え出た方が簡単だ。要は買って貰えないゲームを前に、駄々コネる子供ってことさ」
「成る程、珍妙な例えよ」
物事には境界があって、そしてこのバーはその「境界」をいったり来たりしている連中が集う場所だ。当然、私もここへ来たのは所謂「文明人」とは違った、「原始的」なお仕事をこなすためにここへと来ている。
原始的な。
まぁ、人間の本質・・・・・・あらゆる欲望、殺し犯し奪うという、そういった類は実に原始的で、それでいて科学が進んでも無くなることは無いのだ・・・・・・それが人間だ。
社会問題は解決しないためにある。
そうした方が、儲かる連中が居て、現実にはそういった連中が世界を仕切っている。無論、そういったことは教科書ではあまり、教えてくれないし教えようともしない。暗黙のうちに、ことは行われるモノだ。
ここに女はいない。
女が男を認められないように、男も女を認められないからだ・・・・・・男は身勝手で女の気持ちを考えないが、女は我が儘で役に立たない。どちらが良いのかはこの際だ、どうでも良い。問題なのは女という生き物は、現実には役に立たないと言うところだろう。勿論、例外はいるし、それについて議論するつもりはないが、少なくとも科学が進歩して世界が平和になってからというもの、強い女は姿を消してしまったのも事実だ。
強い女。
最近はあまり見ない。
最近は腰を振るくらいしか脳のない女が増えていると同時に、子供を殴るしか脳の無い男も増えてきている。要はどちらも末期ってことだ
無論、男にだけ、女にだけ問題があるわけでは無い・・・・・・男に関して言えば、最早彼等に「男らしさのようなもの」は無い。至極残念だが、しかし社会的な正しさが「金の有る無し」ぬ向いている世界では、むしろそういったモノは足かせにしか成らないのだ・・・・・・誇りや執念が世界を変えてきたが、ここにきて男の価値観、そういったモノは「ズレた古い考え」になり、大半の男は腰の抜けた、労働に身をやつし酒に溺れて博打に走り、それでいて家の中の小さな権力に固執する、そんな矮小な生き物に変えてしまった。
女も男も由々しき社会問題になっているのは事実だ。女に関しては、ただでさえ大きい声で横から偉そうなことを言うくらいしか役に立たないのに、家に引きこもって「家事の真似事」をするのがブームになっている。女は家を守るから、仕事は必要ない、と。道理だが、最新鋭のレトルト製品に頼る女ばかりのこの世界で、彼女たちの言い分は悲しいくらい説得力が無い。どんな時代でも女という生き物は、現実的な能力、金を稼いだり現実に役立つことをするよりも、感情で感じてコミュニティーを作り子孫を残す、それに特化している以上、女が役に立たないのは必然だ。大昔から女はこうらしいが・・・・・・無論、男も同じようなものだ。
要は大多数に流される馬鹿が増えたおかげで、男は仕事に対する「誇り」をなくし、奴隷のように働くことが美徳となって、家族を「誰が金を入れていると思ってるんだ」と叫んで殴ることが社会的な正しさに成ってしまった。最早ただの暴漢なのか分からない位に。子供に背中でモノを教えるのが男の務めだと聞くが、最近は賭博にふける背中を見せる男が、多くなってしまった。
そんなモノを見て子供が尊敬するわけがない。 大抵は年を取り、死にかけてから後悔するらしいが・・・・・・つまり未来の子供に見捨てられて「合法的に」始末される父親は多くなった。
女は女で美徳を無くしきり、子を産んだら後はドラマを見ながら旦那に文句を言い、それでいて家事も次第にせず子育ても適当になり、家でごろごろするのが日常になって、何の役にも立たないがストレスだけは貯めていき、家の金を使い込むのだ。無論、ロクな人間にはならない。人の金、人の権威、そういったモノを自身の力だと思いこんでいながら、それを自覚しない女は沢山いる。つまり女に魅力はなくなったということだ。
そんな世の中で、我々には居場所がない。
ジョンも、そうなのだろうが・・・・・・我々にある思想は、実に古い。簡単に言えば世間に、時代に置いて行かれた男たち、とでも言えばいいのか・・・・・・古い価値観で生きる人間には、苦労しかないと、分かっているはずなのだが。
私は器用に要領よく生きてきたはずなのだが、どうもこと「作家業」にだけ言えば、気に入らないことに古い考え、男の生き方にこだわってしまうだった。この考えさえなければ、作家にはなれなかったかもしれないが、金持ちにはなれたかもしれない。上手い具合に、両方得たいが、しかし何か一つに集中することでしか、人間は大した結果を出せないものだ。
必然的に作家になったのかと言えば、まぁ否定はできないが・・・・・・いずれにせよ、金があって豊かで、突然銃で自殺するナイーブな作家には絶対成らず、比較的平穏で幸せになりたいモノだ。
作家は大抵非業に終わるが、私には冗談でもない噺だ。そんな生き方は御免被る。
「それで、このあとどうするね?」
ジョンはそう私に話しかけ、つまみのレバー肉を口に放り込んだ。最近では、合成肉以外はかなり珍しい。私も頂くことにした。
実に奇妙な味である。
味わいながら考える・・・・・・私にとって金は「生きるため」の道具でしかない。だが、道具がなければ前へ進むこともままならない。道具だけでも当然無意味だが、志だけでも無意味だ。
今回の依頼は、その両立を求められている。
過程と結果、両立するのは「運」が必要だ・・・・・・・・・・・・人間は、どれだけ積み重ね、執念で目へと進んでも、人間だけの力だけでは勝てない。
理不尽だ。
理不尽だろう。
しかし事実だ。我々は勝つべくして勝つことを許されてはいないのだ。横暴すぎる気もするが、現実には「何か」が味方しなければ、勝てない。 その何か、は運不運なのだろうか?
その可能性は高い。
そして「天運」とでもいうべきか、それを味方に付けない限りは、どれだけ足掻こうが何の価値あるものも作り出せず、報われないと言うのだから、人間の意志には、意味がない。
あってもなくても、まるで等価だ。
私の描く人間たちは、案外、何の価値もない無意味なものでしかないのだろうか・・・・・・「神」がいたとして「天」が味方しなければ勝てないと言うのならば、我々は空高くどこか遠くにいる奴らの「おべっか」をするためにいるのだろうか?
だとすれば、私は。
私は。
「おい、大丈夫か?」
顔色は良くなかったらしく、ジョンはいぶかしんで私を見た。
「大丈夫かどうか、なんてどうでも良い噺だ」
「んなこたぁないだろう。健康は大事だぞ」
物書き、と少年のように笑って言うのだった。 こんな、人への優しさだとか思いやりだとか、あるいは人情とでも言うべきものに、何の価値もなく、現実にはクズ共が良いように生きている。 結果が出せない以上、人間の意志、その誇りだとかに、私はどうしても意味も価値もあるとは、到底思えない。綺麗事はどうでもいい。
私は勝ちたいのだ。
だが、勝つために必要なモノが、それはどのような状況でも同じなのだろうが・・・・・・運不運ならどうしろというのか?
私は私自身の依頼で動いた。私自身に対して依頼をし、それを引き受け、成し遂げた。
プロの条件は依頼を受けたら「結果を出す」ということだ・・・・・・「世紀の傑作を書く」という
私から私への依頼は成し遂げた。だが、だからといって金にならなくて良いわけがない。
いつぞやの精神の内面への旅を思い出す。
依頼を成し遂げたのなら堂々としていろ
プロなら、きっとそういう答えを出すのだろう・・・・・・納得はできないが、仕方あるまい。
黙って苦境に耐えるのも、プロの役目か・・・・・・・・・・・・作家のプロというのは、いや、プロという生き方になって分かったことは、正当な報酬がないとやる気を削がれるということだ。
やれやれ、参った。
一流足らんとすることは、こうも報われないことなのか。しかし、私はそんな在り方では納得できないし、するつもりもない。
報酬をもらって、ようやくプロだ。
金にならなければ、私は認めない。
結局のところ人間に許された在り方は、愚直に前へ進むことだけなのかもしれない・・・・・・運不運だというならば、私にできることは無い。
私が断言できるのは、「結果」がともなわなければどのような仕事であれ、遊んでいるのと変わらない。どれだけ美徳を並べようが、何の意味も価値も無い、ただそれだけだ。
現実は、そういうものだ。
この世は金という名前の「結果」で回っているのだから。
今回の依頼は、さて、どうでるか。
今回は多くの「死」が絡んでいる。
そうでなくては面白くもない・・・・・・大量虐殺はよくあることだ。自分達には関係ないのだから誰一人として気にはしないし、する奴もいないが、そういう意味では世の人間はとっくに情のあふれる人間らしさを、生きるために手放しているのかもしれない。
いずれにせよ人間は「運命」の奴隷でしかないのだ。努力も信念も意味は無い。何をしようが我々は運命に従って、それが自分の力、人間の石の行いの結果だと、そう「思いこんで」運命に支配されている人生を送る以外に道はない。人間の信念は美しいが、力はない。人間は無力だ。
少なくとも「運命」が死ねと言えば死ぬ。人間の執念や意志には、その程度の価値しかない。
人間賛歌など、その程度のモノだ。
人間はその程度だ。
だから、精々妥協して、適当に楽な道を探すとしよう。人生とは。持っているか持っていないかで、その「運命」で善し悪しが決まり、足りなければ妥協して我慢して、それでも不満があれば苦しんで死ぬしかない。その程度の、ただの苦行なのだ。何か、人間の意志だの誇りだの、そういう「美しいもの」を求めることが間違っている。
この世界にはゴミしかない。
人間の意志も理想も、同じことだ。
無論、願を求めて人間は旅をするが・・・・・・・・・・・・それは「愛」だとか「富」だとか、私のように己自身の欲望であったり、いや、私の場合己自身の「足りない何か」を埋めるために、願いを叶えようとするのだが、しかし、あらゆる願いは、叶ったとたん、輝きを失うものだ。
夢のある人間は多い。
しかし、夢が叶い願を叶えて、未来へと歩み出した人間の行き先は、悲惨なものだ。
夢を叶えたところで、その先にあるのは絶望でしかないのだ。金を求めて手にしたところで、愛を求めて手にしたところで、人間は、決して幸福になど、なりはしない。
「お前に夢はあるのか?」
「どうした、急に」
ジョンは、面食らったようだった。当然だ。とはいえ、わかりやすい男であるが故に、答えは想定内のモノでつまらなかった。
「無論、あるともさ。美人と酒だ」
「美人には飽きるし、酒も同様だ。人間は願いを叶えても、いや、叶えたからこそ、自身を地獄へと叩き込む」
「・・・・・・また、極端な噺を」
するな、と彼は呆れたようだった。
しかし事実だ。
現実は、そういうものだ。
「夢とは見るものだ。叶えれば日常になる。そして日常とは大抵が、苦痛であり苦悩でしかない、頭痛の種でしかないただの地獄だ」
「夢を叶えることは、地獄だと?」
「ああ、人間はどうやったって救われない。夢に届かなければ絶望し、夢に届いたならば地獄を歩み続ける。人間は、苦しむために生きている」
「まぁそう言うな。その分、この世界には娯楽が溢れているではないか」
「いや、娯楽など、本質的には存在しない」
「何?」
「現実には苦痛しかない。娯楽というのはな、その地獄より非道なこの世界にも、何か素晴らしいことがあるはずだと、有りもしない希望を胸に抱いて、自身を誤魔化すためのモノでしかない。現実のみを見ていては、人を食い物にする外道になるしか道はないからな。だから」
「だから自身を騙して、つらい現実に目を向けないためのモノだとでも?」
「物語など、その典型だろう。噺をどれだけ綴ろうとも、世界は何も変わりはしない」
この世界は、絶望で出来ている。
希望は対義語ではない。ただ、そういうモノがなければ理不尽だと、人間が思い描いた都合の良い空想でしかないものだ。
この世界において、希望は何の力も、影響も、持ちはしない。
希望は、強いて言うなら無力を指す言葉だ。
人間が本来届かない「勝利」を掴むには、誰かの後押しが必要だ・・・・・・あらゆる噺、あらゆる物語で「仲間との協力」という美談が語られるのはそのためだ。しかし
私のような破綻者には、その「誰か」は存在し得ない、だからこその破綻者だ。
問題があるとすればそれは「運命」にあるのだ・・・・・・人間の運命は、産まれる前から決定づけられている。成功も不幸も失敗も幸福も、全て。
だが、運命を「克服」したり「打ち破る」方法は存在しないのだ・・・・・・映画のフィルムが予定通り流れるように、変えることは出来ない。
喜びも。
絶望も。
全て「運命」の枠の内だ。
絶望しかない「運命」を持つ人間の方が多いだろうが、それは「仕方がない」くじのようなものだ、外れを引いたら、どうにも成らないだろう? 我々は運命の完全なる「奴隷」だ。
他に道はない。
出来ることは精々、後に自身の意志を伝えることくらいのモノだ。最も、そんなことに意味はないし、無駄と言えば無駄だ。
人間の意志にすら、意味も価値も無い。
そういう意味では、私の人生は、運命を克服しようとし、運命の流れに逆らうだけの人生だった・・・・・・結局のところ、作家業もその「絶望のみが記された運命」を覆すことが出来るのではと、すがりついただけかもしれない。その結果私は傑作を作り上げ、成し遂げたが、それによって「運命に対する勝利」を手にすることは、決して無い。 私は運命に敗北したのだ。
あるいは、最初から勝敗は決まっていたのかもしれない。
しかし、それでも。
人間の幸福を求める在り方が、美しいと、そうであって欲しいと、願う。無論、現実には何の意味もなさないが、それくらいしかこの世界には、見るべきモノがないと、まぁそういうことだ。
「お前は人生に何を見る? ジョン」
「無論、楽しむことだ」
これである。まぁ、細かい部分を見て見ぬ振りをして生きてきた人間と、細かい部分があろうが無かろうが居に介さぬ人間とでは、もとより相容れるものではないのだろう。
無論。私は居に介さない。
そんなわけがない。
何人死のうが、この世界が絶望でどれだけ染め上げられようが、私には関係あるまい。とはいえ私自身があまり、おいしい思いを出来ていないと言うのだから、笑えない噺だ。
人を食い物にすることを良しとも悪しとも、文字通り、因果応報とか言う、天罰だとかといった馬鹿げた行いくらいしか、警戒するには値しないものでしかない。まぁ、そういった「因果応報」だとか「良い行いをしている人間が救われる」みたいな下らない精神論が、何の意味もないゴミだということを、私は身を持って証明してしまっている。
どれだけの信念も、奇跡は起こさない。
何人殺そうが、罰を与えるのは人間の法だ。
ばれなきゃ、別に、どちらも構わないものでしかないのだ・・・・・・神が人間を救うモノだったとして、実在するのだとしても、同じことだ。
神の眼鏡に叶った奴だけが、救われる。
法の目に叶った奴だけが、裁かれる。
つまり、この世界は如何にばれないように、人を殺して人を食い物にして、表面上は善人として振る舞えるのかどうか? それだけだ。
運不運こそが全て。
運命には逆らえない。
神話を見れば分かりそうなものだが、神でさえそうなのだ。悲劇の運命には逆らえない。言ってしまえば人間を救うと豪語している神々ですら、運命を克服してはいない。
彼等もまた、運命の奴隷なのだ。
精々、手を抜いて生きるしかない。
それが人生だ。
「ふん、教科書通りのつまらない回答ありがとうよ。実につまらなかった」
「やれやれ、物書きってのは皆こうなのか?」
「そりゃそうだろう。基本的に差別され、迫害されて作家を目指し、失敗して絶望し、思いのままに筆を動かし、成功すれば搾取され、失敗すれば何も得るモノすら無い。人間に格差を付けるのならば、ヘタを押し付けられた最低低の奴隷だよ」「おいおい、いくらなんでも言い過ぎだろう」
「そうでもない。物語を読んで希望を貰えるのは読者だけだ。作家そのものは悲惨な、貧困や病や迫害や、少し調べれば分かるものだが、大抵ロクな末路は辿らない。苦しむことだけが、作家という生き物に神様とやらが押し付けた義務だ」
「・・・・・・まぁ、一杯飲め」
「私は下戸でな、遠慮する」
酒を飲んで連帯感を錯覚し、現実から逃避する趣味は、今のところ無い。
私はやり遂げたが、それに対して結果が伴わないことに「落ち込めない」自身に苛立っているのかもしれない。人間は普通、そうやって心の平穏を保つものだからだ。
私にはそれがない。
つらいときも悲しいときも、それをそうだと感じ取れず、絶望して考えることを止めることも、開き直って考えないことも出来ない。
そう、出来ている。
産まれた瞬間から。
それに関しては断言できる・・・・・・私は「心」を持たずに生まれ出た、「最悪」の人間だ。
心が無く、それに悲観もせず、本来そう言った運命を持つ人間が、人並み以上に何か、秀でている「つじつまを合わせるための才能」も無い。
物語とて、書き上げるのに随分と時間がかかった・・・・・・まぁ、あまり金になっていない以上、別に何の採算も取れてはいないのだが。
「お前はどうなんだ、ジョン。軍人なんて使い捨ての駒でしかないだろう?」
「戦う意義はあるさ」
「思いこみだ」
「嘘じゃない」
馬鹿馬鹿しい。
人を殺すためにある集団に、それ以上の価値はあるまい。
だが彼は言った。
「違うんだ。この胸の中にあるものだとかではない、後に託す人間たちのために、俺は戦う。だから無意味じゃない」
お前の物語もそうだ、ともっともらしいことを言うのだった。
「それこそ当人の思いこみでしかあるまい?」
「違うさ、「後に託す」という意志がある。その意志は決して、消えはせん」
「ただの陶酔だな」
くだらない。
人間の意志が奇跡を起こすなら、もう少し世界はマシになっている。この世界は、何千年何万年続けようが、現実には地獄のままだ。
誰かが笑うために、他の大勢は泣け。
それが世界の法則だ。
「物語など、どうせ言うほど心の中には残らないものだ。何か教訓を受けたフリをして、次の朝には忘れて、何も成長しないまま人間は前に進むものだ」
「違う、そうじゃないだろう?」
私を見据えて、彼は言った。
大男なので威圧感があり、ともすれば自衛のためにうっかり「始末」しそうだったが、しかし真摯なまなざしで私を見るのだった。
「意味はある、無駄ではないさ・・・・・・人間の意志は受け継がれて行くものだ。そこに受け継ぐ人間がいる限り、俺たちは無駄じゃない」
「生憎、私にはそんな人間はいない」
「お前の物語は全く、誰にも読まれなかったわけではあるまい? なら、少なかれ受け継いだ人間はいるさ」
金銭の多寡など、それが多いか少ないかだと、適当なことを言うのだった。そんな理屈で私は納得するつもりは無かったが、とりあえず答えを出してやることにした。
「それは詭弁でしかない。本当に「人間の意志」に真の価値があるならば、金になってしかるべきだ。尊いとか受け継いでいる人間がいればだとかそういう「言い訳」でおまえたちは、この世界の理不尽から目を背け、「尊いモノは他にあるからいいんだよ」と、妥協の言葉を投げかけているだけにすぎん」
安っぽい偽善でしかない。君には君だけの個性があるなどと、そんなことは自身の活かせる個性が何なのかさえ、対して考えなかった連中が下らない連帯感を産むためだけに作り出した実に壮大で愚か者らしい言い訳を考えただけだ。
「仮に、受け継がれることが尊いものだとして、だからといって「人間の意志」が安売りしているブランドモノの値段より、金にならないという事実は曲げられるモノではない」
現実問題、事実として、人間のそういう尊い意志だとか受け継がれるべき本物だとか、そういう執念と意志の産物に限って、大した金にはならないものだ。
それが偽善でないなら私は悪人でいい。
その方がマシだ。少なくとも、薄っぺらい偽善者共よりは。
「大昔から人間の意志には大した値札が付いた試しがあるまい。例えどれだけ美しかろうが、現実に人間を満たさない以上、詭弁でしかない」
「愛は心を満たすだろう?」
「それも思いこみの自己満足にすぎん。麻薬と変わらないさ。あるいは、電脳世界のゲームと同じようなものだ。プロセスが違うだけで、欲望を満たすための道具という点に関して言えば、全くの同義だ」
「おいおい、愛はゲームじゃないだろうし、欲望でもあるまい?」
「同じだよ。「満たされたい」という願望を愛で叶えるか麻薬で叶えるか、ゲームの達成感で叶えるのか、いずれにせよ、「結果」は同じだ」
最も、健康に悪い麻薬をやって、死んでもしらないがね。だが、手段をゲームにしたところで、多少目が悪くなる以外は、何一つ「結果」は変わるまい。
愛など存在しない。
ただそれを尊いと信じる人間が、そう「信じたい」だけの人間が、いつも多いだけだ。
「そんなんで良く生きてこれたな」
「亡霊と変わらんさ。私は死んでいないから、さまよっているだけだ」
「そうかい」
ビールを一気に飲み干し、ジョンは言った。
「それじゃあ、そろそろ、仕事に移るかね」
ロクでもない人間同士で、ともう一人の協力者の方を向いて、やれやれと肩を竦めるのだった。
第五巻
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この物語は有料だ。
立ち読みをするんじゃない。
思うに、人間とは生まれや育ちで大体決まってしまうものである・・・・・・宿業が深ければ尚更だ。 その業が物語。
書きたくない書きたくない読者の事なんてどうでもいい。金だけあれば十分だ・・・・・・そんな風に思いながら、嫌々、今日も私は物語を紡ぎ、読者共に嘘っぱちの希望を魅せ、金にしている。
そういえば、だが、作家になるのに才能とかそういう「優秀さ」が必要なのかと、以前人工知能に問われたことがある。
答えは当然、否だ。
そんな訳がない。
そも、良ければ売れるわけでもない。
マーケティングとデジタル面での独占能力こそが、作品の善し悪しを左右するこの世界で、才能など実に下らない、あろうがなかろうが存在が無意味なものでしかない。
まぁ私には才能も無かったが。
科学的に説明(科学も宗教みたいなものだからいかがわしくはあるが)すると、人間には身体のイメージ、確かボディイメージ(そのままだが)と言う機能がある。
身体を思考とブレさせないこと。
これが意外に、難しい。
所謂普通の人間は、これが十分に発達していないらしく、武術家などはこれを鍛えに鍛え、思い通りの型の動きをするそうだ。作家の場合、思考と意識の表現、つまり文字によって自分自身を、物語という枠で表現すること。
これは誰でも出来る。
時間さえかければ、だが。フランス語を馬鹿でも数ヶ月住んでいれば話せることと、理屈は同じだろう。
誰にでも出来る。
時間をかけなくてもそれこそ、私みたいに何十年も賭けずとも、出来る人間はいるだろう。ただ、人の心を魅了するとなると、それだけでは、何の意味もない能力だ。
破綻した人生を送るほど、面白い。
まぁ、私は別に作家として大成しても、嬉しくも何ともないので人事のように話すが・・・・・・それに全てが全て、そうでもないだろうが、そういう人間の方が、狂気のある人間の方が、普通の人間では届かないし行こうともしない部分を表現できるから、魅了しやすいと言う噺だ。
どうでもいいがな。
問題なのはあくまでも私個人の利益だ・・・・・・だが業というのは厄介なモノで、外すことが出来ないからこそなのだろう。私の場合案外あっさり外して幸せになれるかもしれないが、大抵は、大抵の行き着いた人間は、作家は特に、早死にする。 苦悩か貧困か病か、いずれかがないと人間は思い上がるとかそんな言葉もあるが、しかしそんなもの無いに越したことはない。苦悩したことなど人生で一度もないが、他二つは明らかに邪魔だ。 私は原因不明の病を抱えている。
だから何だって噺ではあるが、しかしどうだろう? 私は病にかからなければこうも、自己中心的で清々しいまでに己の保身を気にする人間に成ったかと言えば、正直分からない。
長所は短所であり、短所は長所であるならば、今後の私の課題はその業を克服することだろう。 背負った業を、そのデメリットを克服する。
これが出来ずに大抵の偉人は苦悩して死んでいるが、私はそうなるつもりもない。金以外で何かに悩んだことなど、一度もない。
世界は金で出来ていると私は言ったが、あれは嘘だ。訂正しよう。
世界は金で動いている。
そして、世界を金が動かすのだ。
どちらかでは足りまい。世界とは所詮、個々人の自己満足でしかないものだ。だからこそ、私は決して満足しないこの身を、満足させなければならないのだろう。
満足。
あり得ない噺なので、いやただ満足したいだけならコーヒーでも飲めばいいのか? とにかく、人生における充足みたいな意味合いを、私はあまり「作家」という生き方に、期待していない。
辞めることも出来ていないが。
実際、何故辞められないのか不思議だ・・・・・・案外あっさり、金が有り余っていれば、それこそいつ辞めたって良いのだが、人生における「やりがい」や「生き甲斐」として、自身で固定してしまったからな。
今更外すのも面倒だ。
他にアテがあるわけでもない。
生き方など私にとってはオプションパーツみたいなモノだがな。いずれにしてもどうでもいいことだろう。今やっている生き方に、あれこれ言ったところでどうなるわけでもあるまい。
今回は、そんな人間の業について語ろう。
と、言ってはみたものの、案外私のことだ。突然手のひらを返して幸福について語り、家族の素晴らしさを頼まれてもいないのに無理矢理説明して、したかと思えばひっくり返す。
かもしれない。
先の見えない物語であることだけは保証しよう・・・・・・なんて、これもただの思いつきだが。
読者に魅せること。
それだけは確実だ。
問題は私の魅せるモノは、悉くが「人間の裏側であり、見ないで済ませようとする部分」であることだろう。だから
読み終わった後に、後悔だけはしないように。 まぁ、読者共の心情など、知らないがね。
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プロというのは生き方をはずせない人間の在り方だ。ならば私はプロの作家ではあるものの、私の作品が人の心を打つのかと言えば、打つ気はあまりないが、物事の事実を突きつけ、「お前たちの信じる正義など、その程度だ」と、あざ笑うことを考えていることだけは、確かなことだ。
革製の鞄を置いて、私はカフェでコーヒーを飲みながら、次回作を検討していた。正直そこまで頑張って書く必要はどこにもないので書きたくもなかったが、だから私は指が痛いから書きたくないなぁと嫌々、渋々、書いていた。
手が勝手に動くのだ。
動かなくていいのに。
比喩ではない。迷惑な話だ。私の掌部分は何かにとりつかれているのかと思ったが、しかしよくよく考えれば、長い訓練(そんなつもりはまるで無かったが)のおかげか、私には思考と表現のブレが無いどころか、腕が勝手に動くのだ。先んじるのは素晴らしいが、少し体力を考えて欲しい。 能力のある人間が羨ましい。
楽そうで・・・・・・能力の有無で言えば、私は計るべき能力が無い、測定不能ではなく能力というカードそのものを最初から持ってはいないので、私からすればどうでもいい話だが。
過程が華々しいだけだ。
結果が在れば、構わない。
だが、能力の多寡と言うよりは、この場合、理屈からも理論からも、あらゆる常識を意にも介さない人外の方が問題だ。・・・・・・作家にはそういう人間が多いな。それに、そういう人間は総じて「ちょっとそこまで」感覚で、世界をむちゃくちゃにするものだ。比喩でも何でもなく、実際その人間の書いた物語を読んだ人間が、次々に自殺するという実話を聞いたことがある。こんなのは、能力とか技術とか、そういう理屈で計れる領域を越えている。
まさに人外魔境だ。
私のような普通極まる人間には、理解しがたい話だ・・・・・・まぁ、自身が異端であるかさえ、目的となる結果が伴えば、どうでもいいのだが。
私はそうだ。
どうでも良さ過ぎる。
悪の自認があるかさえ、どうでもいいのだ。
悪だと自認したところで、別に何をもらえるわけでもない。金を払うなら考えるが。
まぁ善人ではないだろう。
しかしそれほど大層な悪かどうかは、結局は周りが決めることなので、どうでもいい。そこまで大層ではないと、後から文句を言われても、私からすればただ迷惑なだけだしな。
偽悪者ぶるつもりも・・・・・・いや、私の場合間違いなく生まれついての悪、それも極めて珍しいタイプの、悪の自覚と、感情によるブレーキのない存在そのものがどうかしている悪なのだが、変に期待されても困るしな。
私は生まれついての悪だ。
だが、そんなことはどうでも良いことだ。
問題は金になるかどうかだ・・・・・・善も悪も社会の都合でしか無いのだから、気にするだけ無駄と言うものだ。社会が変われば善悪の基準も変わるのだから。
そんなものは、どうでもいい。
そもそも、人間はすべからく生まれついての悪なのだ。善人など、一人もいない。
誰かの悲鳴で誰かの希望が出来ている。
世界は残酷で、汚い部分を見なくても、生きていけるほどには寛容だ。
この世界で生きると言うことに対して、まじめに考える人間は随分減った。世界は変わらないが人間は小さくなった。その上で言うが、人間、いや人間以外の存在でも、生きる、ということは何かを成し遂げるための行動だ。
私は既に成し遂げている。
成し遂げ続けている。
物語を、紡ぎ続けている。
だからこそ思うのだ・・・・・・私は生きている、間違いない。だが、人間というのは、誰かに何かを託して伝え続けることを良しとしてきた。
それこそが種の存続だと。
だが、私には伝えるべき相手も、伝えたい相手もいない。読者共がいるだろうと思うかもしれないが、しかし、どうでもいい。
伝えたい相手ではない。
第一、伝えることは出来ても、託せまい。
託すに値しないと言うよりも、私の意志を受け継ぐ存在など、いるのだろうか? いたとして、受け継がせるのは趣味じゃない。
虚無からでなくては。
何もないところから産まれる狂気にこそ、輝きがある。それがなんであれ、受け継いだものでは意志が弱い。
所詮他人のモノだからだ。
だから私は、人間としてのまっとうな生き方よりも、死んだ後のことなど知らないとばかりに己自身だけを見据えて、ここまで来た。
それが間違いかどうかなど、知らない。だが、誰にどう言われようが、間違っているとは思わないだろう。
思う気はない。
私は、間違っていないと、人間としてはどうだか知らないが、作家として、成し遂げていると、自信に誇りを持てるだろう。
問題なのは、そう。
私が愛すらも持たずに産まれた最悪の人間であること、ではない。
私は、己の道を信じることは出来ても、満たされることが、心を満たすことが、出来ないのだ。
被害者ぶるつもりはないし、悪人ぶるつもりもない。だが、人間として手に入れるべき実利が、私の場合掌からこぼれ落ちる。
許せるものか。
人間の信念、など、私は信じていない。私は作家としての業を背負ってここまで来た。信じることは最初から、選択肢にない。
だが、それならばどう幸せになればいいのだ。 方法が無いなら探せばいい。だが。
それも、随分長い旅だった。
まだ、続くのか。
もうそんなモノはないと、諦めてしまおうか。 それもいい。
とはいえ、作家として生きるなら、諦めはしても考えることを辞めるわけにも行くまい。だからこそ、私はここにいる。
さて、どうするか。
今回の依頼は
「主人公を殺して貰いたいのです」
そう女の神は私の前に立ち、言い放った。
第六巻
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「弱さ」とは何だろうか。
愚かさとはとは違う・・・・・・ただ考えることを放棄したり、耐えることが賢いと思い込んだり、あるいは自分のことを自分で考えなかったり、それは愚かしさであって、弱さではない。
誰にでもある内側だ。
「それ」を恥じることはそれこそ「愚か」だ。誰にでも弱さはある。もし、弱さが無いならば、それこそを恥じるべきだろう。
弱さのない人間など、マネキンと同じだ。
弱さがなければつまらない。
弱い、ということは負けることと同義ではない・・・・・・仮初めの強さ、肩書きで強く振る舞う馬鹿はどこにでもいるが、そうではないのだ。
弱さを知り、克服しようとするからこそ、人間は輝きを放つのだ。最初から強い奴が勝つのは当たり前のことであって、自転車に乗れたと大の大人がはしゃぐような見苦しさがある。
強ければ勝つのは当然だ。
弱くても勝つからこそ、面白い。
現実にはなかなか上手く行かないがな。それに私には弱さから生まれる強さも無いかもしれないので、弱くても勝つ方法など知らない。
だが、弱い人間の不遇は理解できる。
強さ弱さなど、結局のところたまたま身についているものでしかない。磨き上げた「強さ」を、天性の才能だとかそういう「便利なモノ」を使わない強さの証明。己の人生を賭けて磨き上げた、魂の結晶を武器にしたもの。人に強さを誇りたいならば、まずは人生を賭けて「何か」を成せ。
それしか道は無い。
少なくとも弱い人間には・・・・・・弱ければ、時間と手間と労力を費やすしか、道は無い。私自身、馬鹿みたいに長い年月を掛けて作家になった。
なったところで、金になるかは別問題だが。
つまり夢を叶えるのは簡単だ。夢を売るのが難しい。だから弱者は環境の整っている強者に敗北しやすいのだ。認められないし、認めさせることが異様に難しい。
それが原因で不遇を嘆く。
当然だ。生きていれば上を見る。無論私のように平地でも金があれば満足な人間はいるだろうがしかし、金が無くても良いわけではない。
誰だって己の道を歩いていたいモノだ。自分の満足する結果を得て、満足する結果を作り、順風満帆に生きたい。
才能、だとか幸運だとか、そういう「下らなくてどうでも良いもの」によって、遮られるのでは不平不満が募って当然だろう。だが、この考えは半分正解で、半分間違っている。
環境が怪物を育てることもある。
無論、そうでなくても、平和な環境下で傑作を作り上げる人間も、無論いる。ただ、抑圧された環境下では、何故かアイデアが出やすいらしい。 私は何時でもアイデアに困らないが。
私の場合今までの生き方と先を見据えて思想を固めるからだろうが・・・・・・絶望する環境が、悪魔のような地獄が、悪辣な思考回路が、傑作を生むことがあるのだろうか? だとしても、当人からすれば迷惑極まりないだろうが。
生き方は選べないと言うことか。
だとしたら、本当に迷惑な噺だ。
心の底からその人間のことを「どうでもいい」と思っておきながら、「道徳」とか「正義」とか「普通」とかを説いて、物事を要求する奴が居たら、そいつは「強者」だ・・・・・・自信の身勝手な都合を押し付けられる存在こそが邪悪だ。
だから強者とは「邪悪」のことなのだ・・・・・・そもそもが、強いからといって何かを押し付けて良い理由はどこにもない。「社会」における強者であれば、この世界は何人死んでも、どんな汚い手を使おうと、どれだけ理不尽でも、許される。
それが邪悪でなくて、何なのだ?
道義的正しさとは、とどのつまりそういうことなのだ。道義を押し付けられる側の都合でしかない。ただの言い訳だ。
人を踏み台にしている事への。
踏み台にして、尚、彼らは「良い人間」でありたいのだろう。きっと「人を殺して」でさえも。 良い人間だと、認められたい。
気持ち悪い、生理的嫌悪感をむき出しにせざるを得ない醜悪さだ。強い人間とは、所詮そういうものだ。
なら、弱者とは何なのか?
これはそういう「物語」だ。
弱さを武器にすること、一概に「悪」だと断言は出来まい。それを武器に誰彼構わず踏み台にし利用するなら紛れもない「悪」だが、弱さを克服し、あるいは受け止めて前に進むことが出来るのならば、どうだろう。
無論、弱さというのは個性のようなもので、完全に克服し「己の内から消し去る」などと言うことはできっこない。だが、受け止めることは、できなくもない。
なんて、ただの綺麗事だが。
弱さを武器に戦うことは簡単だ。だが弱者が勝てるように、この世界の社会構造は出来てはいない。戦えば応戦され、悪意を以て挑めば悪意を以て返される。
それが世の中だ。
弱者が勝つ方法は、一片たりとも無い。
最初から勝てないことが義務づけられている・・・・・・極々一部の「勝者」の為、花壇に入れられる肥料のように。
ならば勝てない弱者が挑むことに「意味」は無く、「価値」は伴わないのか? この物語はその答えを探す物語だ。
さあ始めよう。とはいえ勝てない側は勝てないで終わるかもしれない・・・・・・何を学ぶことになるかは重要だが、勝つことだけが全てではないが、願わくば「希望」を持てる結末があるように、この場を借りて祈るとしよう。
1
誰だって加害者だ。
問題は被害者ぶって「正しさ」を押し売りする輩が多いと言うことだ。そういう連中は決まって社会的には「正しい」から厄介だ。
正しいと言うよりも、ただ都合を押し売りできるだけなのだが、それを「自分は成功者だ」とか「自分の考えが間違っているとは思わない」だとか「ついてこれない奴こそが悪」だとか、要は自分以外の「正しさ」を一切許容しないのだ。そのくせ相手には許容しろと強要するのだから、かなりタチが悪い。
「自惚れ」ほど厄介なモノは無い・・・・・・その自惚れが社会的地位に基づいている場合は、特に。 社会の構造的に、自惚れた成功者の尻拭いは、成功できていない人間たちが補うことになる。その上、成功者は失敗しても、その責任を負うことは絶対にない。
下に押し付けられる。誰か自分よりも弱い人間に「おっかぶせれば」いい。誰だってそうだ。少なくとも、社会という歯車にいる場合は。
ともすれば社会構造は実質的な「奴隷」を作り上げることに特化している。社会構造全体が進めば進むほど、成長すればするほど「奴隷」の数は非常に多い。
そして社会的強者の言い分が「正しく」なるのだから、私から言わせればただ我が儘なだけだ。奴隷を増やして喜んでいる奴というのは、自分が奴隷商人だと言う自覚は無いし、むしろ「彼らの望むモノを用意している」だとか「それが社会では当然」だと思い込む。
思い込まれても迷惑だが。
正しさなどというモノが実質、存在すらしないことと同じく、「権威」や「権力」といった「偉さの基準」など、無理矢理それを暴力や金で押し付けているだけだ。子供が小さい奴を虐めておもちゃを巻き上げているのと、何も変わらない。
金を払っても「奴隷になれ」などそうそう言えることではないのに、金すら払わない奴が多いというのだから、人間社会における「社会的正しさの基準」というのは、「殺人許可証」であり、その上「奴隷所有証明書」でもあるのだ。これは事実であり、目を背けられても困る。
背ける奴は多いが。
奴隷に金と権力をちらつかせて「自分たちは望んでこの環境にいます」と言わせることで、何というかそう「良い事」をしていると思うのだ。信じられない神経だが、奴隷を保有することは、彼らにとってステータスであり、誇りなのだ。
薄っぺらい誇りだが。
皆が言っているから合わせた誇りなど、子供が多数決で決めていることと変わるまい。ま、どうでもいいがな・・・・・・。
とはいえ、弱いことはマイナスだけではないのだ、と言う人間は多い。少なくとも弱くなければ、創意工夫を凝らそうとはしない。そういう試行錯誤こそが勝つ為に必要だと、そう言うのだ。 実際は試行錯誤したところで、圧倒的な才能や権力の前では無力だが・・・・・・弱ければ何をしたところで「無駄」でしかないが、人間という奴は、いや読者共は「弱くても創意工夫で勝つ」物語を好んで読むのだ。きっと、自分にも出来そうな気がするからだろう。
実際には無理だが。
少なくとも私は出来た試しがない・・・・・・創意工夫を凝らしたところで「負けるべくして」負けてしまう。どれだけ計画を立てようとも、その通りに事が運ばないのでは意味がない。想定外に対応しようにも、そもそも想定外の事態に対応できるだけの力があればこんな苦労はしていない。
乱暴に纏めてしまえば、やはり「強い」方がどう足掻いたって勝つものだ。少なくとも社会という奴は「勝つべくして勝つ側が勝つ」ように出来上がっている。負ける側が、奪われる側が、搾取される側が居なければ、社会は成り立たない。
一部の人間が美味しい思いをする、社会は。
社会という存在が、そもそも一部の人間の為にあるものだ。その中で全員が幸福になることはありえない。最初からそう作られているからだ。
ならば「弱い」存在は奪われて搾取されていいように食い物にされるしかないのか? そうかもしれない。少なくともサボりがちな「神様」とやらが助けてくれるなんてことは無いだろう。
ならばどうするか。
強さではなく強かさを手に入れるのだ。それも想像を絶する強かさでなくてはならない。強いだけの人間では考えもしないだろう事を考えると、やはり弱い人間というのはハンデを負いながら生きているのだろう。そう思える。
実際問題生きているだけ無駄だ。
いったい何の意味があるというのか・・・・・・勝つ側に搾取されるための人生など、ない方が遙かにいいだろう。実際にはそういう人間の方が多く、無駄だが、自分を騙して「頑張れば良いことが」とか騙し騙し生きるしかないのだが。
そんなものは無い。
良いことは、持つ側のモノだ。
金を持つ人間にしか「良いこと」は無い。
生まれついての問題だ。持つ側か? 持たざる側か? それだけで人間は幸せになれるか決まってしまうのだ。これは事実だ。
金があれば男も女も言いなりなのも事実だし、金で殺人の罪は消せる。何人地獄へ送ろうが、地獄の沙汰は金次第。金で買えないモノは、真実どこにもないのだ。
持たざる人間の言い訳でしかない。愛や友情などまさにそうだ。結局金で全てが解決するこの世界に、言い返せなかっただけだ。
それが事実だから。
金が全て。
大切なモノは金だけだ。
大切なモノが無いのではなく、金が唯一世界で大切なモノなのだ。他に大切なモノがあるなど、ただの逃避だ。押しつけがましい。
作家も同じだ。本物か偽物かはどうでもいい。問題は「金になるか」だ。だが、金になる物語というのは、中身がなくて何の役にも立たず、犬が書いた方がマシみたいな内容だが、しかし具体的にどうすればそこまでレベルの低い、カスみたいな作品を書き上げ、薄っぺらい感動を起こせるのか・・・・・・私は内容が無くても売れればいいので、その方が気楽なのだが。意識的にカスを書く、捨てたことを忘れたゴミみたいな、中身のない物語で儲けた方が嬉しいのだが、しかし、意識して、そういう物語を書くのは難しい。
どうすればそこまで底の浅い物語を書けるものなのか・・・・・・底が浅すぎて真似が難しい。
まぁ、底が浅いだけでは駄目だろう。問題はそんなゴミを一流の傑作だと「騙しきる」ことなのだから。騙して儲ければ勝利なのだ。
少なくとも、中身が無くても読者は買う。
これは事実だ。
「流行」とかいう頭の悪い病気にかかっている人間は、簡単に金を払う。頭が無かろうが金を払えば客は客だ。私としては、ただ人を騙して道ばたに落ちた犬の糞以下の物語を売り払っても、何の罪悪感もないのだが・・・・・・神様って奴がいるとすれば、何故私にその役割をくれないのか。
あちらの方がいいではないか。
言っても仕方がないが・・・・・・しかし、何時だって考える。中身が無くても、人間性が薄っぺらくとも、ただの幸運の産物だとしても、「金」になればそれが勝利だ。
綺麗事は空しいだけだ。
現実にはカスが勝利する。金の力、権力の力、権威の力、幸運の力、暴力の力で、勝利する。人間性がゴミ以下でも、その方が美味しい思いを出来るなら、私はそちら側を目指していきたい。
嘘くさい道徳はこりごりだ。
何の役にも立ちはしない。
金があれば何でも買えるのだから。
男も女も金で買える。そも労働は人を奴隷として買うものだ。人の心は金で買われている。結婚するのも金のためだ。友情を育むのも、そこに金が絡むからだ。あるいは、金に余裕があり、趣味として楽しんでいるだけだ。
人間関係など、金次第でどうとでも転ぶ。
金で動かないモノは何一つ無い。
希望も絶望も金で買える。
国の指導者の地位も、道徳を決める権利も、幸福になれる人生も、皆、口に出して言う勇気もないだけで、金で買えることは誰にとっても明白なことでしかない。
無論、金を持つことの出来る「持つ側」はあらかじめ決められている。だから「持たざる側」は頑張って奴隷になるしかない。誰の奴隷になるかは自由だが、比較的マシな奴隷になるしかない。 金のない人間はただの奴隷だ。
金がある人間は奴隷の支配者だ。
殺しても、奪っても、犯しても、誰もそれを認めないだけで、事実そうだ。持つ側は何をやっても許される。金があるからだ。
金があれば殺人も「不幸な事故」だ。警察機構ほど金で動かし易い存在はあるまい。そもそも組織である以上、金が絡む。金が絡む以上、金で動かせない道理は無い。
無駄、ということだ。
持たざる側に産まれた時点で、何をどう足掻こうが無駄だ。それは事実。確固たる事実だ。
生きることに意味はない。強いて言えばたまたま持つ側に産まれるかどうかのギャンブルだ。ギャンブルに勝てば、一生美味しい思いが出来る。負ければ、一生奴隷になる。
人生とは、ただそれだけのことだ。
サイコロを振っているだけ
後は消化試合でしかないのだ。
それでも諦めきれずにあらゆる手段を用いて、あらゆる方向から敗北し続けて来た私が言うんだ間違いない。
全く、何の結果も残さない、無駄な作業だった・・・・・・実利が伴わないならただの浪費だ。
努力だとか、そういう「崇高みたいなモノ」の噺はするつもりもない。大体が本当にその道を志しているのなら、「気がついたら作品を執筆していた」くらいの感覚に陥るものだ。非常に迷惑な呪いだが、作家である以上外せないのか?
書きたくもないのだが。
いつのまにか何万文字と書き連ねているのだから、少なくとも私の場合は執念だとか信念だとかそれこそ誇りがあるからだとか、そんな綺麗事で納められてたまるか。ただの呪いだ。非常に性質が悪いし、はっきり言って金にもならないのに迷惑至極、面倒なことこの上ない。
ああ、書きたくない。
大体が何故、背負った業だろうが何であろうが私は、そんな呪いに付き合わねばならないのか? 私は適当に読者を騙して、カスみたいな作品を売りつけるだけでも良いというのに・・・・・・迷惑な噺だ。読者のことなどどうでもいい。どれだけ内容がカス以下でも、売れればそれでいいのに。
実利があれば真実など価値もない。
言っても仕方ないが、だからといって不満が消えるわけでもない。実に嫌な気分だ。
何かを押し付けられるというのは。
作家としての業など、誰か代わりが居なかったものか。
「いませんよ」
そんな奇特な性格をしているのは、地球上でただ一人、貴方だけです。そんな失礼な台詞を、依頼人の女は掃き掃除をしながら言うのだった。
私は境内にいた。
無論地球の、である。いちいちここに来るのは非常に面倒だが、しかし「寿命」がかかっているのだ、仕方がない。テクノロジーで「寿命」そのものは幾らでも延ばせるのだが、「運命による結末」を延ばすには、流石に神の力でも借りるしかない。まぁ、この女が神かどうかは知らないが。 どうでもいいが。
神であろうと悪魔であろうと、この「私」の利益にならなければ、同じ事だ。何かを成し遂げたからと言って、それが金になるわけでもない・・・・・・私は長い長い回り道を経て、作家として物語を書けるようになったが、意味はなかった。
嬉しくもない。
神も仏もいるかは知らないが、いたところで、少なくとも作家の労力は見る気があまり、ないらしい。迷惑な噺だ。何事につけそうだが、因果が応報しないならば、誰がやる気を出すというのか・・・・・・少なくとも魂を賭けた物語の数々は、私に富を運んでくれた試しが無い。
まごうことなき「本物」である自信はある。
だが、金が付随しなければ、空しいだけだ。
自己満足とは金があって初めて成り立つのだ。「本当にそう思うのですか? 幸福とは欲から手に入るものではないでしょう」
「だが、欲がなければ空しいだけだ。私は、立派さなんてものは欲しくもない。立派さに酔って己自身を犠牲にするよりは、その方がいいだけだ」 思うのだが、私は「幸福」を追い求めて旅をしてきたが、やはり私には「幸福」など最初から手に入りっこない「運命」なのではないか? そうとしか思えない。だとすれば「何をどう足掻いても」無駄ということなのか・・・・・・。
だとしたら、本当に無駄な頑張りだった。
私の人生に、始めから意味などなかったのか。どれだけ手を尽くしたところで「無駄」ならそういうことになるのだろう。
事実だ
それが事実なら、下らない結末もあったものだ・・・・・・幸福になれるかは「運不運」だというのだから。人間の意志など、ない方がいい。あったところで苦しみ、見せ物として偉そうな連中に、勝手に楽しまれるだけだ。
大抵の人間は、現実、事実として生きることは辛いことしかないし、苦しいことしかないと悟ると、酒や煙草に逃げることで現実から完全に逃避し、苦しさを麻痺させながらこなして、死ぬ間際辺りに後悔しながら死ぬ。
何も成し得ないまま。
なんて楽そうな人生なんだ。羨ましい。
成し得るかどうかなど楽かどうか、金になるかどうかに比べればどうでもいいしな・・・・・・生きるということをまじめに考えず、他人の道徳に従って、悪いことがあれば解決しようともせずに酒や煙草で忘れ、無かったことにする。
思考を放棄するから苦しみもない。
そんな人間の人生など、考えることの無い人間の人生など、あっという間だ。
何一つ成長しないかもしれないが、しかし実際成長したから何なのだ? あの世で誉められるのだとして、それが何だ。
作家をしていて思うのは、無意識下で「そこ」へアクセスできれば、誰にでも物語は書けると言うことだ。同人作品とかあるだろう? 本家との違いは深さでしかない。誰にでも、生涯を賭ければ出来ることでしかない。
特別ではない。
それに憧れるなどどうかしている・・・・・・何事も眺めるのが楽しいのであって、実際に物語なんて書くものでは無い。執筆が如何に面倒か、読者は知らないのか?
無論、私はそれを生き甲斐にしているが。私の場合最近は無意識に近い。気がついたら終わっている。無論、嬉しくもないが。
金にならなければ。
金になれば喜んでやってもいい。
完全に自動書記というわけでもない。ただ単純に「書くべき事」が私の今まで歩いた道のりから決まっているだけだ。ただのそれだけ。才能だとかそういう便利なものでもない。大体が才能があろうが無かろうが、金にならなければ一人で遊んでいるのと変わるまい。
所謂「本当に大切なこと」とやらは、少なくとも私の人生には「存在しない」のだ。そんなありきたりな幸福が存在しない、というのにそれを求めることこそが「幸せ」などと・・・・・・迷惑だ。
少なくとも、この「私」にとっては。
何事に付け「持っている人間」なら何とでも言える噺だ。「余裕」があれば綺麗事を言える。だからこそ、本来は余裕の無い人間が「それ」を口にして、前を向いて生きる姿が「希望」に成るべきなのだろうが・・・・・・最近の人類には、期待すべくも無い噺だ。
まったくな。
まぁ私は説得力が欲しいとは思ったことはないし、説得力がない人間でも、豊かなら構わない。 他者の感じる説得力など、どうでもいい噺だ。「貴方は、変われると思わないのですか?」
「変わる・・・・・・」
「ええ。どのような人間でも、時が経つにつれ成長し、変わるものです。変わることから逃げているのではないですか?」
「変わる、か。少なくとも私からすれば、あるのか無いのかはっきりしない変化を望むなど、有りもしない空想を見ることと変わらない。「変われるかもしれない」と思うのは勝手だが、変われないかもしれないし、別に、何か変われるという保証をくれるわけでもあるまい?」
「ええ。ですが、良い方向へ変わろうとすること・・・・・・それもまた「生きる」ということですよ」「思うのは自由だ。しかし今のところ、そのとっかかりもないのでな。まぁ、他でもないこの私の歩く道に、そんな「希望」みたいな便利なモノ、それが偶々手に入るなどと、楽観的になれないだけだ」
「そうですか」
掃き掃除をしながら、女は答えた。
女の意見というのは、どうも根拠のない希望に満ちている気がしてならない。脳の形の違いなのだろうが、根拠もないのに希望を押し売りされても、困る。
根拠が全くないと動かないのでは、見たくても希望を見れないのだろうが・・・・・・この「私」には今のところ、根拠どころかそんな可能性は元から無いのではないかと、感じているところだ。
むしろ、だからこそなのか?
こんな希望のない時だからこそ、信じる。
馬鹿馬鹿しい。私はそういう試みは既に試し終えている。何をどうしようが、失敗するときは失敗するし、負けるときは負ける。
個人の策など、なんの力も持たない。
これはただの実体験だ。
ただの「事実」でしかない。
成すべきを成せば後は天命を信じるのみと良く言うが、しかし並の作家5年分位の作品量を、ここ最近書き上げたばかりだ。まぁ、並の作家と比べるべくもない出来映えであるのも確か。
私からすれば当然だが。
だとすれば私にはやるべき事、成すべき事などとうに済んでいる。作家なのだから書くべきなのだろうが、しかし書いても書いても金にならないのでは、噺になるまい。
作家に出来ることは書くことだけだ。
それ以外をそもそも期待するなという噺だ。これ以上何をすればいいんだ? 宣伝か? それを個人で出来ていれば、苦労しないと思うが。
ここで言いたいのは、このように「それ」に人生を賭けて生き、「それ」を成し遂げたところで世の中は所詮「運不運」だと言うことだ。全く以てやる気の失せる現実だ。
この世界は、この様で「信念には力がある」などとほざくのだろうか・・・・・・どうでもいいがな。 この世界に「絶対的な尺度」が存在し得ないように、生きることに対して「納得」などという言葉は幻想でしかない。「自己満足」なのだ。全ては・・・・・・その自己満足を金の力で「肯定できるか否か」いや、「無理矢理肯定させる」と言うべきか・・・・・・それが「正義」と呼ばれるモノだ。
世界は事実に沿って出来ている。
だからこれらは全て「事実」だ。変えようのない事実。それを「道徳」で計るのか、「客観的事実」で計るのか、ただそれだけの違い。道徳で計れば「崇高そうな」雰囲気がでるだけだ。
ただのそれだけ。
意味はない。
そこに人間の美しさなど、有り得ない。
人間、少し物足りないくらいの方が「満足」出来ると言われているが、生憎私にはそれすら無い・・・・・・だから金だ。何を置いても、金。
幸運とは金を手にすることだ。
幸福は金ではないかもしれないが、幸運は金そのものだ。まずはそちらを手に入れなければな。 金、金、金だ。
私は金の力で「幸福」に生きてみせるぞ。
私の人生にはそんな便利なモノは無かったが、大抵の人間は「自分の思う理想の英雄」や「その英雄が唱える夢」などに、すがることで夢を見ることが出来る。
他人の夢だ。
他人の信念だ。
他人の意志だ。
しかしそれにすがることの出来る卑怯さを持つのも人間だ。私からすれば楽そうで羨ましいが、しかし彼らはそれで「幸福」になれるらしい。
すがる対象が倒れたとたん「こんなはずは」だとか言って現実逃避する辺り、底が知れている気もするが・・・・・・そういう人間、弱いことを省みず堕落した人間が多いのは、事実だ。
弱いと言うより、狡いと言うべきか。
狡くて、強か。そのくせ自分を立派だと「思いこんで」いる。そういう人間は多い。
楽そうで羨ましい。
誰かに思考を預けるのは、さぞ楽なのだろう。 後を絶たず、そういう人間は出てくるものだ。 いずれにせよ人の都合で動く「労働」も似たようなものかもしれないが・・・・・・だが、「作家」としての金の供給が安定しない限り、労働、去れかの都合で動くこともやらざるを得まい。そして人の都合で動くことに対して「満足感」だとか「やりがい」だとか「充実」など望むべくも無い。
人の都合で動く時点でそこに「納得」など有り得ない。そういう意味では私は「作家」として金を荒稼ぎしない限りは「幸福」には決してなれないのだろう。精々「マシな奴隷」として少しでもマシな奴隷労働者として動くだけだ。
いい加減解放されたいモノだ。
人の都合で動くことは。
皆、己の都合以外は考えていない。労働などその最たるモノだ。自分の都合で動くことを正しいと思えと、強制されるだけだ。
押しつけがましい宗教みたいなものだ。
幸福も同じだ・・・・・・家庭だとか愛情だとか友情だとか言われたところで、私にはそんなゴミを幸福だとは全く思えないし、できない。
無理なモノは無理だ。
私はそういうモノで幸福になることは、未来永劫有り得ない。そう出来上がっている。
最初からそうだった。
所謂「普遍的な幸せ」は、私にとって相容れないモノでしかない。だからこそ、幸福が充実感だというならば、仕事を「生き甲斐」にすることで幸福になれるのならば、やはり作品を書き続けるしかないのだろう。
私は作家だからな。
書くことでしか、幸せになれないのかもしれない・・・・・・元来、作家とはそういう「生き物」だ。 それを考えれば不自然でも何でもない。
思うのだが、「成るべくして成る」というのが「運命」ならば、私のこの生き様すらあらかじめ「決定」されているのだろうか? だとすれば、我々の行動に、意味はあるのか?
断言する、無い。
だからこそ私は「宿命」や「運命」といった存在を克服することに血道を上げているのだが、しかしなかなか上手く行かない。いや、どう足掻いたところでやはり、変えられないのかもしれない・・・・・・運命とはそういうものだ。
美しくはあっても、運命にあらがうことそのものは、何の結果も得られない。
全て、無駄。
弱者の運命ならば、苦しむしか無く、勝者に産まれれば楽しむしかない。それが真理なのか? その答えを探すために、私は物語を書くことを続けている。いつもだ。いつも、考える・・・・・・だが、最近はそれも疲れてきた。私が作家として、いや人間として呪われていても知ったことではない。ならばそれに見合う幸福をと、長い長い道のりを歩いてきたが・・・・・・答えは見つかる気配も無いままだ。
努力すればいつか幸せになれるなどと、苦労も知らない「持つ側」は言うが、ならばいつだ。
百年後の未来か?
馬鹿馬鹿しい。
今、この瞬間にでも報われなければならないのだ。「いつか訪れる」など、ただの言い訳だ。いつかと言わず今、寄越せ。
宿命から取り立てられようとする人間は多いが私は逆だ。今までの因果に見合う、あるいはそれ以上のモノを求めている。だが、どうも宿命というのは取り立てられる側になると、払う気がないらしい。
迷惑な噺だ。
身勝手な噺だ。
嫌な、噺だ。
もういっそ真面目に「生きる」と言うことと向き合うのを辞めてしまおうかとさえ思う。何も考えずに人から聞いた「道徳」みたいな聞こえの良い言葉を何も考えていない脳味噌で話し、何一つ実行せず、何一つ知らず、何も成し遂げていないのに社会的な立場だけは媚びを売ることで一人前になり、奴隷の素晴らしさを説き、金を見栄と恥のために浪費し、金がないと叫びながら浪費し、その社会的立場も当人の脳内で立派なだけで、自分たちが人を貶めていることに気づかず、口にする綺麗事だけを支えに、豚のように生きる。
ああなれたら楽だろうな。
私には無理だが。
そこまで頭が悪くなれる方法を、知らないし知りたくもない。私は曲がりなりにも人間だ。失敗作かもしれないが人間だ。豚ではない。
あれは生きているとは呼ばないしな。
彼らは生きていまい。
自分達の一生が、ここに一度しかないかもしれないことを、思わずに「あの世」などという妄言を信じている。あの世があったとして、そんなロクデナシのクズ共に、行き先があるのか?
今、この瞬間を生きてすらいない豚に。
恐らく死んでも治るまい。彼らには現実を認識する能力がないのだ。ゲーム感覚、とでも言うべきなのか。個性の薄い人間というのは、大体そういうものだ。
自分が無い。
それすらも唯一の個性だと、思い込んでいる。 型にはまっていると言うのか、それも駄目な方向にばかり、だ。
馬鹿じゃないだろうか。
駄目な部分を受け継いで、どうするのだ。
人間の意志は受け継がれるべきだ。親から子へ子から孫へ、それが「生きる」ことの目的の一つのはずなのに、皆が皆「立派さ」みたいなモノに執着して、結果誰よりも薄っぺらいクズ以下に成り下がる。
「立派さ」とは、クズだけが手に入れる。
大体が立派な人間など、立派さを押し付ける奴など人間性がしれている。何故そんなモノを求めるのか。それはきっと「自分が無い」ことに起因するのだろう。
彼らは自分に自信がないのだ。
当然だ。何も積み上げてこなかったのだから。 そのくせ立派さだけは欲しがるとは・・・・・・厚かましい上迷惑な奴らだ。しかし、そんな馬鹿そのもの、つまりクズでも、「幸運」があれば幸福かどうかはともかく、富は手に出来るというのだから、ああいう豚以下の存在の方が儲かるのか? 本当に、嫌な噺だ。
生きることが、馬鹿馬鹿しくなるほどに。
別に立派だと言われれば当人の人間性が肯定されるわけでもないのだが、そう思う人間は多い。 そんなどうでも良い部分だけ進化してどうするつもりなのだ・・・・・・まぁどうでもいいか。
どうでも良くないのはそんな連中と金がなければ同じ扱いを受けることだ。真正面から同じ道のりを歩き続け、作家としてやり遂げてきたが、どうもそれには「結果」が伴わない。
書くことを辞めてしまいたい。が今更書くこと以外を求められても困る。だから私はこうして、「始末」の依頼を受けに神社の境内に来ている。 当人の意志と関係なく。
ここに来ている。
まぁ良い女の姿が見れて目の保養になることもあるのだが、だからといってこれ以上便利に使われるのは御免被りたかった。私は作家業で財を成したいのだ。断じて副業で満足したいわけではない・・・・・・最近は口にするだけ空しく感じるが。
そうかと思えば良くわからない「幸運」で豚みたいな人間が大きな財を成したりする。金が手に入れば何でも良いが、「仕事」を「生き甲斐」とするためにも、物語を金に換えたいモノだ。
しういう疑問のあれこれを、私は境内で神に語りかけることにした。いや、神かどうかは知らないが、人間でない視点、というのも面白そうだったからだ。
「なぁ、何故こうも「弱さ」を助長した社会に、人間社会は成ったのだろうな」
テレビ越しに表面的なモノを眺め、薄っぺらいモノを賞賛し、祭り上げる社会。そして社会とは人間の世界そのものだ。
思えば、最近「深い作品」というのを映画でも小説でも見ていない。昔の作品ならあるのだが、決まって馬鹿売れはしていないし、取り上げられてもてはやされるのは、決まって見た目だけやたら派手派手しいものだ。
中身は無い。
それでも売れる。
「それは簡単ですよ。人間とは感情で生きる生き物ですから、感じ入れればそれでいいのです。だから中身だとか、真実だとか、「生きる上でどう考察するべきか」なんて考える貴方のような人間の方がかなり稀ですよ」
「そうなのか?」
間髪入れず彼女は首肯した。
「はい。そも、そこまで精神が成長する人間は稀です・・・・・・大抵の人間は成長しなくても生きていけますから」
「確かに」
金があれば成長は必要ない。
何でも買える。
例え無能でも、金があれば勝利者だ。
「そうとは限りません」
などと納得しかけた私の思考を中断するのだった。この女、私と逆のことを言っているだけじゃないのか?
「いいえ、違います。現世、とでも言えばいいのでしょうか。貴方達が生きている世界を終えれば終わり、ではないのですよ。貴方達の言う死後の世界のその先ですら、貴方達は貴方達として、続く世界を生きていかねばならないのです」
「ふん。要はこれで終わりではないと?」
「ええ」
あの世、なんて知ったことではないが。しかし精神を成長させて、何の意味があるのだ? 確かにあの世に金は持って行けそうもないが、しかしそれは精神が成長したところで同じだろう。
何が変わるわけでもない。
「そんなことはありません。貴方達は今、物質的な豊かさに支配されていますが、その先の世界ではその観念はありません。精神のみが介在する世界では、金など無意味です」
「だとすれば、同じじゃないのか?」
どちらにせよ結末は変わらない。
そうじゃないか?
「ですから、己の精神だけで生きることになります・・・・・・そこには金や名誉、地位や肩書きで己を誤魔化す余地はありません。精神が未熟なままであれば、物質的に完全に満たされる精神の世界でも、心が満たされることなどありませんよ」
「私には心など無いがな」
つまり何かで己を誤魔化したところで、あの世ではそれらを持って行くことは出来ない、とそういう噺らしかった。
精神の成長、か。
嬉しくもない。
私は精神を成長させて「凄いね」と言われたいわけではないのだ。金によって己の成長が阻害されたところで、必要とあらば無理矢理にでも成長するだけだ。
金、金、金だ。
この主張は譲らないぞ。
譲ってなるものか。
綺麗事で納得することが、私は嫌いだ。
まぁ綺麗事の方が強い力を持つので、負け犬の戯れ言かもしれないが・・・・・・思えば、我ながら呆れるくらい、平坦な道を歩けなかった。
第七巻
0
中身が無くても堂々としていろ。
私を少しは見習え・・・・・・何一つ、文字通り「何一つとして」持たない私を。そんな人間でも何年も何年も馬鹿の一つ覚えみたいに作品を書き続けていれば、それなりに映えるものだ。
まぁ、作品が、作家業が無くても私は何の根拠もなく空っぽの中身に自信満々だった気もするのだが、私に限っては「もしも作家でなかったら」は正直、論ずるだけ、無駄な気もするしな。
はっきり言って作品を、物語を綴るのは大嫌いだがな・・・・・・疲れるし面倒だし、書きたくないのにアイデア、というか「書くべき事」だけは多すぎて、執筆の筆が止まってくれない。
いい加減、嫌になる。
少しは私を休ませろ。
それが嫌なら金を払え。
私の「作家業」は半ば、いや殆ど「解除不可能な呪い」みたいなもので、心臓を外したら生命が死ぬように、私個人のやる気がどれだけ無かろうが、「呼吸を止める」ことは出来ないように、辞めることは出来ない。
忌々しい限りだ。
本当に。
「傑作の予感」がすれば否応無く筆を動かしてしまうのだ。面倒くさいが、殆ど本能的に指が動くので、抵抗は無意味だ。
何とかならないものか。
それを消したら、私は「私」で無くなるのだろうが。上手い具合に「執筆衝動」だけを抑え、快適な生活を送りたいモノだ。
言っていて空しくなるが。
不可能な噺だ。
それが出来れば苦労はしない。
それが出来れば・・・・・・私は作家をやっていまい・・・・・・背負った「業」とは、結局の所「外れない呪い」と同義と言うことか。
忌々しい噺だ。
忌々しい・・・・・・「業」だ。
私はそもそも噺を読んで欲しいから書いているわけでもないしな・・・・・・読まれるだけ読まれて、金を払われないのであれば、泥棒にあったのと変わるまい。
そんなのは御免だ。
そんな読者ばかりの気もするが。
「綺麗事」は必要ない・・・・・・幸福になれるかではない、ただの「勝敗」であれば、「一方より何も持たない人間」こそが、飢えと渇望で勝利を収める。私は勝利そのものに興味はないが、「分かり合うことが幸せ」などという、「私には適応されない、豊かな人間のルール」が心底気に食わないというだけだ。
金だ。
必要なのは、いつだって、金。
綺麗事が私を救ったことは、 無いのだから。 綺麗なだけの言葉など、ただの飾りだ。
私は実利を求める人間なので、そんな役に立たない戯れ言は必要ない。必要なのは現実に理不尽を、時には邪魔者を「排除」できる「力」だ。
綺麗事はそれから考えればいい。
今は必要ない。
余裕ができて、初めて考えることだ。
私の腹が満たされることなど無いことは、私自身が誰よりも自覚している。それでいい。構わない。満たされないなら食べ続けるだけだ。
空っぽの中身で堂々と。
面白いモノを求めて。
それでいい。
その方が・・・・・・面白い。
こんな風にあれこれ手を尽くして「目的を果たそうとする」試みそのものが、「成るようにしか成らない」というこの世界にある「流れ」のようなものの存在を考えると、何とも無駄な気もするのだが・・・・・・私の場合、その「流れ」の中にいるのかどうか、疑問だしな。
やれることをやるだけだ。
いつだって。
その結果屍の山がついうっかり築かれるかもしれないが、まぁ結果的に金になれば問題ない。少なくとも、私にとっては。
作品のネタと金、得られる実利以外はどうでもいい・・・・・・気にするつもりすらない。
他はどうでも良い噺だ。
誰でも同じ事だ。上品ぶって気にしているフリをしているだけで、誰かのことを思い、心を痛める人間など、初めから存在しない。それこそ物語の中の世界にしか、「心優しい人間」など、いるはずもない。
自身の利益を考えつつも、「良い人間」でいたいがために、誰かを傷つけたところで見ないフリをし、自己弁護する。
それが人間だ。
いや、この場合そういう人間が増えてきたと考えるべきなのか・・・・・・人間は千差万別のはずだがどうも、科学が発展し前述した「余裕」のある人間という奴は、かなりの度合いで画一的になりつつあるのだ。
型にはまると言うべきか。
数が多くなれば役割が増えるのも当然だが、考えずに動く「働き蟻型」の人間に、本来そうでない役割にまでも、影響されつつある。
その方が楽だからだろう。
それを人間と呼ぶのかは謎でしかないが、少なくともそんな人間が「進歩」や「進化」をするとは思えない。案外、人間は殺し合いによる絶滅ではなく、緩やかに思考能力を失って、退化し続けた果てに土に返るのかもしれない。
なんてな。
人間の「精神の成長」に「物語」が、仮に必要だとして・・・・・・「精神の成長」に「限界」はあるのだろうか?
成長しようともしない人間も数多くいる。先述したその他大勢などがそうだが、私はこれを種族を維持するために必要な「機能」だと捉えている・・・・・・全人類が作家みたいに成ってしまえば、それはそれで問題だろう。
役割がある、ただそれだけのことだ。
だが、その役割も侵されつつある・・・・・・こんな時代だからこそ、私は「人間の精神の限界」を描きたいのだが、もし人間の精神が成長するなら、その先に限界なんてあるのか?
成長すれば良いという噺でもないが、恐らくは際限なく自身の精神を成長させてしまった人間こそが「狂人」と呼ばれるのだろう。そして、そういう人間こそ、物語においても魅力を持ち、人を惹きつける「何か」がある。
それを書くのが私の仕事だ。
だから、考えねばならない。常に、だ。魅力のない登場人物が何をしようが誰も興味を持ちはしないが、魅力ある人物であれば、例え卵料理を作るだけでも絵になるものだ。
思うに、自分自身に自覚的であることが条件なのではないのかと、私は思う。悪人か善人かではない。むしろ、悪であろうが己の目的のために邁進し続ける人間にこそ、輝きがある。
強力な個性になる。
読者共は羽虫のようにその光に惹きつけられる・・・・・・当然だ。「ああなりたい」あるいは「あんな人間がいれば面白い」それこそが物語を読む理由だろうからな。そして、強力な「悪」は、「結果」を強く追い求めるものだ。
だが、物語に「過程」を重んじる、綺麗事を口から垂れ流す「主人公」という奴らは、大抵が結果そのものよりも、そこに至るまでの過程、人間の意志を尊重しようとする。
吐き気がする。
綺麗事に殉じて、綺麗に死んでいきたいのだろうか? と嫌悪する。何故、結果のために手を尽くす「悪」が負けなければならないのかと、私は物語を読む度に思うものだ。
悪こそが。
悪こそが、過程はどうあれ、本来勝てない相手に勝とうとする戦士ではないか。
「過程」が正しければ「結果」はついて回るものだと抜かすのは簡単だが、それが事実なら誰一人としてこの世界に憤ったりしない。
ただの綺麗事だ。
そして、綺麗事を言うだけならば誰にでも、猿にでも、口だけなら私にでも出来る。
思うに、自分たちが偶々裕福で持つ側にいて、それが「努力」であると信じたいが為に、自分たちが崇高で尊いものだと信じたいが為の身勝手でそういう綺麗事を押しつけるのではないだろうか・・・・・・世の理不尽を直視できないのだ。
直視せずに、生きているのだ。
そうじゃないか?
でなければ「結果だけが本当じゃない」などと言えるはずがない。言えるものか。「結果」が伴わなければ意味がない。「良くやったな」と負け犬同士で慰め合うために、勝利を目指す奴なんてどこにもいない。
上から目線の綺麗事だ。
余裕があるからそんな戯れ言が言える。
持つ側からしか、出ない台詞だ。
そして「作家」という生き物は、それらとは逆で「持たざる人間」の究極でこそ、説得力のある台詞を書けるのだというのだから、何とも皮肉だ・・・・・・いや、そもそもがフィクションなのだから無論、知らなくても書ける。
だが、不思議と理不尽に屈したことの無い奴が書く物語は、説得力がないものだ。
私は別に物語に説得力を持たせたいわけでも無いので、本当にいらない手間でしかないが・・・・・・私は自分の作品を誉められたいと思ったことなど一度もない。傑作だと言う自負は当然あり、それを自認してはいるが、良く知りもしない誰かに、喜んでほしくて書くわけではない。
あくまで金と充実の為だ。
そんな私が、誰よりも「本物」の物語を書く素質があるというのは、皮肉としか言いようがない・・・・・・嬉しくもない。
結局の所自己満足でしかないのだ。そして金にならなければ噺にならない。
金は前提だ。
金があり、その上で「過程」だとかそういう眠たくなるような「些末な」外堀を埋めていけばいい。やりがいや生き甲斐も、自己満足でしかないのだから、結局は自分に納得できるか、当人の心の問題でしかないのだ。
そして私にはその心すらない。
幾らでも自己満足できる。
だから、本物なんて必要すらない。
あるに越したことはないが、それだけあっても宝の持ち腐れも良いところだ。ささやかなストレスすら許さない平穏なる生活、を豊かさとともに教授したいと願っている私からすれば、金がなければ前提から崩壊してしまう。
金があれば平穏は買える。
なければ、騒音は必ず押しつけられる。
実際物語が書けるかどうかなど、それに比べれば大したことはない。私はちやほやされたくて書いているわけではないのだ。金の為だ。
とはいえ・・・・・・「仮に」だが、もし、理由は何でも良い。ある程度「大金」と言える金を手にしたとして、まぁ宝くじだとか(あれは当たらないように出来ているので、あれこれ考えることを楽しむ娯楽だが)とにかく、「結果」のみを先んじて、手にしたとしたら?
その時私はどうするのか。
決まっている。まず本をその金で売りに出し、本を売るための宣伝をし、必要とあらば人を雇用して、有能な人間を金の力でこき使ってでも、私は私の「自己満足」人生の充実のため、いや変えられない「生き方」の為に、その金を使うだろう・・・・・・堂々巡りな気がしないでもない。
ともすればいつぞやの女に言われた台詞、何をどう足掻こうか、金を持とうが持つまいが、結果として行う行いは同じになる。という仮説が現実味を帯びてきて嫌な噺だ。無論、こんなものはただの例えであって、何の意味もない思考錯誤、言葉遊びのようなものだが。
物語と同じく。
意味のない「仮説」だ。
仮の、噺だ。
それとも、案外変えられるのか?
「生き方」は変えられるのか?
辞めることが、出来るのか?
この物語はそれを知るための噺だ。だからこそ私は今回の物語に興味が沸いた。興味が沸いて、そしてそれを行動に移したとき、物語は生まれるからな。
まぁ・・・・・・こんな風に「何かを求めること」で「幸福」に成ろうとしている時点で、歪んでいるのだろう。構わない。私はある意味「幸福」を求めてすらいないのだから。
居場所など無くても構わない。世界の全てに、憎まれ恨まれ嫌われたところで、むしろ私には望むところでしかない。金、金、金だ。先立つモノを手に出来なければ進退窮まるだけだ。
私は私が満足できればそれでいい。
自己満足で構わない。
本当の幸せは他にあるんだ、なんて押しつけられるのは御免だ。私の幸福は私が決める。幸福かどうかはともかく、金があれば満足できることは確かだ。
欲望、というモノを本質的に持てない以上、その満足すら「人間のフリ」というか、借り物の、偽物の自己満足でしかないのだが、構うまい。
面白ければ。
それでいい。
金がある方が、面白い。
少なくとも不愉快には成らなくて済む。
何一つ手に出来ない人間だというならば、当然の権利として不愉快なストレスくらいは排除したいだけだ。ストレスのない生活を生きるなど、人間の人生とは呼ばないのだろうが、元々非人間として生きてきた私に、今更「人間らしくあれ」など、鬱陶しいだけだ。
愛も友情も勝利すら必要ない。「実利」とそれを活かせる環境下で、生きたいように生きられればそれでいい。
自分で言うのもなんだが、私は非人間だ。
だから、真実望むものなど無い。金があれば鬱陶しいストレスを回避しやすい、というだけだ。 あの女は私に「愛」だとか「人間らしい幸福」を進めたかったようだが、大きなお世話だ。例えあの女の正体が怪物だったとしても、怪物ごときでは私の考えはわかるまい。
むしろ、怪物の方が人間らしくはある。何せ人間に混じれなくて悩んだり、人間を愛そうとしたり、あるいは憎んだり出来るのだからな。自分の存在が異端であることに耐えられない、というのは、私から言わせれば「正常な証」だ。
私は何の罪悪感も、劣等感も、羨ましいという感情さえも、全く、抱くことは無かった。
本来ならば「人間らしく」自分が外れた存在であることに悩んだり悲しんだりするのだろうが、私は生来「悲しむ」だとか「喜ぶ」ということ、それそのものが「不可能」なのだ。心がないことに憤りたくても、その「心」そのものが無い私には、悲しみようがない。
悲しみたくても悲しみが感じ取れない。
理解は出来ても共感できない。
我ながら因果な人生だ。
まぁ、私個人は自身が非人間だろうが化け物だろうが何でも良かったが、唯一「不満」と呼べるモノがあるとすれば、やはり「持たざる人間」は「それに応じた何かを持つ」という世の中の理からさえも、外れていたことだろう。
被害者ぶるつもりはないのだが、少なくとも世の人間共の基準では、私のような人間には物語でもそうだが、体に障害がある代わりに金を持っていたり、悲劇にまみれている代わりに才能豊かだったり、何というか、「バランス」を取るために何かしら持つものではないのか、という点だ。
まさか何一つ、強さによる弱さも弱さによる強さも持たず、生まれてくるとは計算外だ。元々計算などしてはいないが、何というか、配られたカードで戦う人生で配られたカードは白紙だった、というような気分だ。
現実問題勝つために、そのままではどう足掻いても勝てない。それを覆すためにも「金」という「わかりやすい力」は必要だったのだが、しかしそれさえも上手く行かないものだ。
全くもって嫌になってくるが。
そういう意味では割に合わないから文句を付けているクレーマーか。まぁそのクレームが聞き届けられることはないので、何かしら勝つために方策を練らなければならないのだが・・・・・・それも、もう、飽きてきた。
何をどう足掻いても、私が「勝つ」ことは出来なかったからな・・・・・・無駄な取り組みは嫌いだ。疲れるだけだからな。
どうにもならない、運命。
もし私がそういう運命のレールを走っているとすれば、どうしろというのか。誰かの手を借りようにもその「誰か」がいれば、私はここまでいらない苦労を食いつぶしていない。
かといって策を弄して上手く行くことなど無い・・・・・・策を弄すれば労するほど、失敗する。
失敗、してきた。
私は。
ずっと。
そうだったのだ。
だから無駄な取り組みを省き、合理的に勝つために何とかしようと思うのだが、しかしそう考えると「何をどう足掻いても無駄」な訳なのだから「私の行動」そのものに意味なんてない。
どう足掻いても、全てが無駄だ。
どうしようも、無い。
それで諦められればいいのだが、諦めた所で、結局は私が苦しい思いをするだけだ。つまり結論としては、生殺しのように「死に続ける」ことこそが、私に出来る「唯一の人生」らしい。
全くもって笑えない。
それが事実なら、尚更。
嫌な噺だ。
だからこそ「金」の噺に戻るのだが、そうもそれも上手く行きそうにない。こうなったら開き直って、都合良く「幸運」が落ちてくる位しか、やることもないな。
出来ることはない。
やれることもない。
成し遂げた先が、この様とは。
人生とは、わからないものだ。
当然、ただの皮肉だがね。
作家である私に出来ることなど最初から書くことだけだ。それ以外を多く求められ、活かす機会など無かったところを見ると、無駄手間臭いが。 そんな私でも反復練習を積めばとりあえず「人間の真似」は出来るように成るというのだから、よく分からない噺だ。全く共感は出来ないが、日常生活に支障が出ない程度には「笑う」ことが出来る。無論、私には「楽しい」という感情も実際良くわからないのだが、これに関しては生活に支障が出る、というか他人に指摘されることが多かったため、仕方なく合わせる為に「修得した」といった感じだ。
何が楽しいのか、全く共感できないが。
練習を重ねれば、自然に行うことくらいは出来るようになった。練習を重ねるだけで気楽に出来ることと、どう足掻いても修得出来ないことがあると言うことか。
原理はわかるが、やはり共感の出来ない噺だ。実際彼らだって本当に心の底から楽しくて笑っていたりするのだろうか? 心無い私にはよくわからないが、心があろうが無かろうが、この世界に心の底から笑えるような「面白い事」なんてあるのか?
それこそ「物語」のような作り話、嘘八百に、現実には無い夢を見るのだろうか? そんなものは、何の価値もない偽物だと思うが。
まぁ当人達の勝手か。
とはいえ、問題なのは夢を見ることに金を払わない人間が多いことだ。本を読むことに対して、「ただで当たり前」という考えが非常に多い。作家と読者は利害関係はあるが、友達ではない。ただで何かをくれてやる義理など、ありはしない。 そう考える人間は殆どいないが。
皆、己に都合の良い現実を見ようとする。迷惑な噺だ。少なくとも、夢を金に換えようとする、私のような詐欺師からは。
終わり良ければ全て良し、とは思えないのだ。私には「過去」が無い。どれだけ調べても記録としか呼べない、どこへ行って何をしたか位しか、出てこない。
「未来」も同様だ。私には最初から「幸福には成れない」という「未来」が決定づけられている・・・・・・不確定な未来など、尚更信じられない。
「現在」だ。今、この瞬間に満たされなければ嘘ではないか。「いつか幸福になれるよ」なんて「嘘」は容認できない。
あらかじめ敗北と苦痛が約束された私は、運命に打ち勝とうとしてきた。だが、運命で決められている以上、無駄だった。
人間はいつか死ぬ。
死に様が良ければそれで良し、と納得するつもりは更々ないが、一考の価値はあるだろう。
自分の在り方について、考えることは。
第八巻
0
狂気を武器にしろ。
誰にでも持ち得る「武器」それは狂気だ。どんな環境に生まれようがどれだけ「持たざる側」であろうが、どれだけ人間から離れている、人間性のない化け物であろうが・・・・・・狂気は持てる。
万人に与えられた「武器」だ。
それこそが力であり、人生の充実だ。
生きる事を自覚したい? なら、狂気を身に纏えばいい。私のように「何を手にしたところで」幸福になれない化け物ですら、狂気を持つことで人生を「充実」させられる。
無理矢理にでも。
可能になるのだ。
それが、狂気。
それこそが「人間の本質」であり、人間の向かう先なのだろう。だからこそ、歴史を変え、人を変え、運命を変えるとすれば、狂気にまみれた人間だけだ。
狂気こそが。
不可能を可能にする。
悪魔に憑かれたかのように、同じ事を繰り返す。何度も何度も。「成功するまで」繰り返し続ける。
それが不可能でも。
可能になるまで続ける。まさに道化だ。私などその良い例だろう。嫌だ嫌だ書きたくない書きたくないと思いつつも、背負った業はそう簡単に捨てられるモノではない。「作家」という「業」そして「狂気」という「指針」が、私を私たらしめる存在証明だ。
私には「心」が無い。だがそんな私でも持てる・・・・・・いや、そんな私だからこそ持てる。
「心」を「捨てる」ことで手に出来る武器、それが狂気だからだ。狂気とは、己の全存在を賭けて、一つの目的へ挑むことだ。
ささやかなストレスすら許さない、平穏なる生活。そして「生きる」ことを「充実」させる。
それが私の目的だ。
金にもなっていない物語を書き連ねることでしか表現できない、私の証だ。
だからって売れなくて言い訳ではないがな。売れるに越したことはない。売れてこその物語だという考えに、嘘はない。
狂気とて、同じ事だ。
形にならねば意味がない。
そういう意味では、だが・・・・・・私は生きる上で本来求めるべき「生きた証」というモノを、既に達成できている。それについて達成感はまるでないが、感じるつもりもないが、あるに越したことはないだろう。
どうでもいい。
問題は、金だ。
目的にするほど、目的とは達成できない。結ばれることそのものを目的とする女が、目先の人間すら見えないのとは違う。
私は金を追ってきた。
だが、その結果得られたモノは、およそ金とは関係がない、どころか「真逆」と言っていいモノばかりだ。それは「誇り」であり「信念」であり「狂気」であり「業」であり「生き方」であり、そして・・・・・・「生きるとは何か」を知る旅そのものだった。
皮肉なことだ。
金を得た人間が、得られずに苦悩するモノばかりを、私は手にしてきたのだ。本当に皮肉だ。そんなもの求めてすらいなかったが、何かを求めてそれをすぐに手に入れる成功者と、それに行き着くまでの間、長い長い遠回りを強いられ、何かを学び続ける道を歩かざるを得ない人間、いや、私のことを人間と呼べるのかは知らないが、つまり世の中の道は二種類と言うことなのだろう。
結果を得て物足りなさを感じる人間。
結果に至るまで遠回りが必要な人間。
前者でありたかったが、今更言っても仕方がない。遠回りをしたところで「人間的な成長」などと言う戯れ言ほど、私に不必要な上、意味の無いモノはあるまい。
私個人が必要とすらしていない。
別にしたくもないのだから。
だから、意味はなく価値はない。
けれど、物語としては一見の価値があることを「保証」しよう。それこそ、物語の狂気に呑まれ正気を失ってしまうかもしれないが、なに、生きている時点で正気など、誰一人として持ち合わせてはいないものだ。
それが生きるということだ。
私はそうしてきた。
押しつけるつもりもないが、その事実から逃げることは難しいだろう。生きている以上、生きること空は逃げられない。
それが、人生というものだ。
まぁ、私自身はそういう人間賛歌よりは実利を求める人間だが、そんな人間からでも見えるモノはあるということだ。さて、始めようか。
邪道作家最後の物語を。なんて、こんな嘘に騙されているようじゃ、お前達、読み終わったときに正気を保てる保証は無いぜ。
語り手は、他でもない「私」なのだから。
第九巻
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「生きる」という事は「殺す」という事だ。
何かを、あるいは誰かを踏みつけにし、それを己の糧にしなければ、生物は生存できない。悪意は何かを奪い取れるが、善意は余裕がなければ何の役にも立たないからだ。
「邪魔者」を「始末」する。
これは、何も私に限った事ではないのだ。別にそれで罪悪から逃れるだとか、そんな殊勝な事を考える人間、否、非人間では無い。私は、確固たる事実として「殺しこそが人生」という「事実」を、作家として取り上げたいだけだ。
面白いからな。
人間というのは不思議な生き物で、そういう事実からは目を背けたがる。「良い人間」で在ろうとするのだ。私には理解し難いが、周りの誰かに己の事を「悪」だと、思われることが耐えられないらしい。偽悪的に、というか悪人ぶって開き直る訳ではない。私は己が悪かどうかなど、己で定義して己で定める事柄だと認識している上、悪だと迫害されたところで「私個人の利益」が確保できてさえいれば、社会的な道徳などというクソの役にも立たないゴミを抱えて死ぬよりは、遙かに良い結果だろうと思える人間だ。
罪悪感から逃げるだとか、開き直って自己肯定能力が高いとかではなく、そう思えてしまう人間、否、非人間であり、またそれで構わないと思っている。
私の事は私が決める。
だから一向に構わない。
私から言わせれば、だが、悪も善も人間が勝手に言っている概念でしかない。そんなモノはこの世界のどこにも存在さえしないのだ。有りもしないもので行動はともかく、思想を縛られる覚えもないからな。
無論、社会のルールから外れる訳でもない。むしろ私はそのルールに則った上で勝つことに血道を上げている存在だ。問題なのは異常性ではなくその異常性を上手く隠した上で、社会に適応し、金を稼ぐことだろう。
何かを踏み台にする事や、何かの死体の上で物事が成り立っている現実から目を逸らすなど、生きる事から逃げている事に他ならない。生きる事は殺す事で、殺す事は生きる事だ。何一つ犠牲にせず手を取り合った未来など、妄想を通り越して傲慢だと言えるだろう。
そういう人間が多いのは、この世界は思想や信念に関係なく「金」があれば生きていけるからだ・・・・・・大昔ならともかく、現代社会では精神的な頑強さや、物事に対する強かさは、必要ない。
金が有れば誰でも生きていける。
豚でも猿でも人間でも。
金こそが全てだ。
万能の力の前では、小綺麗な理屈など紙よりも薄っぺらい。資本主義社会において金よりも尊いモノはどこにもなく、金よりも信頼できる存在もまた、どこにも存在しない。
しなくていい。
その方がわかりやすいしな。
有りもしない道徳を押し売られても迷惑だ。無論道徳などと言うのは金を持つ存在が決める事柄なので、結局のところ「持つ側」に回らなければ道徳も価値観も倫理観も全て、押し売られるモノでしかないのだが。
金が有れば何でも買える。
品性すらも。
買えるというだけで、正直買ったところで意味がないのだろうが、現実に力を持つというその事実から、皆目を逸らそうと必死だ。
家族も仲間も友人も恋人も組織も手下も全て、金があるからこそ成り立つ関係だ。人間が金で買える存在である以上、金で買えない時点で、それは人間の理から外れている、とも取れる。
人間はどんどん死ぬべきなのだ。資本主義が人間社会を構築する以上、生きていて良い人間と、駄目な人間は確かに存在する。私は後者のレッテルを貼られながらもあれこれ試しはしたが、正直無駄な結果しか生んではいない。
金が有れば生きていて良いし、金がなければ、否、金にならなければ存在価値など無い。ならば逆説的に「持つ側」こそが「幸福の権利」を持っているとも取れる。
それ以外取りようが無いと言うべきか。
正しさや道徳というのは、「味方するモノ」の存在の数で決まる。それは社会全体であったり、個人であったり、金の力で付けることも可能だ。私のように何一つ「味方」がいなければ「異端」となるのは明白だ。そして、それらは大概が金にならないものだ。
金にならない。
正しく、ない。
正しさなどどうでも良いが、どの正しさが優先されるかが金で決まる以上、どうにも成らないことだけは確かだ。他の方法でそれを変えようとしてきた私が言うのだから、間違いないだろう。
全て金だ。
金で決まる。
殺人すら、簡単に消しされる。
虐殺は「仕方が無く」なり、陵辱は被害妄想になる。誰か代わりの人間に罪を覆い被せられる。 犯罪は犯罪でなくなり、むしろそれこそが正義だと言い張れる。戦争を起こしても賞賛され、人道を外しても正しくなり、倫理観を買える。
あの世ですら金次第だ。天国にいけるかどうかなど「持つ側」かどうかで決まる。余裕のない持たざる人間が、善行などという暇つぶしを、やっていられるとは思えない。
金、金、金だ。
善悪など、金で買えるということだ。
その程度、考えるに値しない。
どうせ金で買えるのだから。
どちらが正しいかなど、金額で決まる。
札束の多寡が決めることで、個人であれこれ考える事案ではあるまい。
人間は、金で買えるのだから。
皆、本当の現実から、目を逸らしているだけだ・・・・・・金で買えないモノなど無い。
真実など貫くのは美しいが、美しいだけで、何の力も持ちはしない。真実よりも事実だ。実利という力こそが、人間を豊かにする。
金も持たない人間の幸福など、理想を歌っているだけだ。歌うだけなら誰でも出来る。現実にそれを実行できた人間など、誰もいないのだ。
銀貨で人を売るのは当然のことだ。
当たり前すぎて指摘する気にもならない。
息を吸って吐くことに、お前達は疑問を抱くのか? 私は抱かない。それが当たり前だからだ。 とはいえ、それだけでは「生きている」という事を、人間は認識できないらしい。生きている実感とは、生きている事そのものとは「別」だからだろう。
だからこその作家業。
だからこその物語だ。
ささやかなストレスすら許さない平穏なる生活を、豊にし充実させる為にも、書いて読むことは切り離せないらしい。個人的には、背負った業などさっさと忘れて、適当に生きるつもりだが。
中々、思うように行かない。
それもまた「生きる」という事なのだろうが・・・・・・こうも毎度では、うんざりする噺だ。
生きる上での免罪符、と考えるべきなのだろうか? まぁ、免罪符などと言うのは、私からすれば利益を堂々と貰うための方法でしかない。こそこそしながら実利を得るか、堂々と免罪符の力で金をもぎ取るかの違いだ。労力の多寡でしかないことだ。
罪も悪も善も正義も、当人の心の中にしか存在し得ない。ならば現実に即した利益を追求することが、狡賢い大人の選ぶ道だ。
道徳というのは自分が良い人間であるのだと、そう思いこむためにどっぷり浸かっているだけで、結果的には麻薬中毒者と変わらない。
道徳におぼれるか薬に溺れるの違いだ。
私はそんなモノに興味がない。
少なくとも私は「人間」として見られたことが一度もないので、正直今更理解したところで、否感じ入ったところで無意味そのものだ。人間の価値基準は、化け物には縁遠い噺だ。
人間か。
人間など、一人もいなかったが。
私からすれば、あちらの方が化け物だ。いいやもっと質の悪い「何か」なのだろう。どうでもいいがな。人間社会とは不思議なもので、人間らしくない奴隷こそを求める。その一方で人間らしさの素晴らしさを説き、他者に強要する。
とどのつまり己の都合以外など何一つ考えておらず、どころか私のような利己主義よりも性質が悪く、それでいてそれを自覚しない。
そんな「モノ」が人間なのだろうか?
だとすれば、下らないモノだ。そんなくたびれた害悪を、求めるなどどうかしている。
だから私は非人間で一向に構わない。
化け物の方が、幾らかマシだ。
何より自由だしな。少なくとも、狂気を向かわせる方向に関して言えば、だが。
作家など、そんなものだ。
まあ在り方などどうでもいい。それに満足して充足できればいいのだ。「健康」で「豊か」に、それでいて「ささやかなストレスすら許さない、平穏なる生活」を成就できればいい。
社会的な道徳観を維持しつつ、折り合いをあわせて「自己満足の充足」を得るにはこの方法が最上だと言えるだろう。
だからこそ金だ。
金で幸せは買える。
少なくとも、この「私」には。
道徳とか倫理観だとか善悪だとかは、それに比べれば利用する対象でしかない。どう金に替えられるか、それ以外に使い道などあるまい。道徳も善悪も社会も倫理も人間の心すら、この世のどこにも存在さえしない虚構でしかないのだ。民主主義も差別も戦争も、実際的にはどこにもない。ただそうであると思いこんでいるだけだ。
お前達がそこにあると思うから、見えるのだ。 ただのそれだけだ。
わたしにとって「人間性」はその場に併せて使い分ける小道具でしかない。どう仮面を被り直すことでどう利益が出るのか? 重要なのはそこだからな。
あろうが無かろうが関係ない。
金だけが真実であり、力だ。
それがこの世の有様だ。
価値観や都合を押しつけ合うこの世界で、そんなモノは有ろうが無かろうが同じなのだ。金が有れば通るし無ければ通らない。己の都合を押しつけて、誰かに不都合やこちらに都合の良い価値観や倫理観、道徳を押しつけることを、現代社会では「立派な人間」と呼ぶのだから。
ならば逆説的に金以外に重要性はない。
金だけ有ればいい。無論、奴隷としてこき使える人間がいることは前提だが、どの時代でも呼び方が違うだけで奴隷はいる。
だから金で幸せが買えない時代はない。
可能な限り「目立たず」に静謐な一時を堪能し嗜好品で自己満足し、金の力で他者からのストレスを軽減しつつ、それでいて社会と折り合いを付けつつも適度な娯楽で満足し、自己満足の充足を得ながら、豊かさを享受して、生きる。
これ以上の方法が、むしろ有るのだろうか?
賢い、と言うよりは強かな生き方だ。そして実利を得るにはこれが一番合っているだろう。
劣等感や負い目を抱かない私にとって、いや私のような非人間でなくても、「それ」こそが最もストレスの少ない、それでいて自己満足の充足を得るのに相応しい方策だ。豪華な装飾品を飾らねば満足できない手合いには、「燃費が悪すぎる」以外の言葉が見つからない。
この世に、この世でなくても「偉さ」などただの錯覚でしかない。私か? 私はただ傲慢なだけだ。自身を偉いなどと思ったことはないし、思う奴もいないだろう。
いても困るが。
成功しているのではなく、むしろ彼らのような一般的な「成功者」気取りのモデルケースは、非常に生きていくことが困難だ。私のように金が余っているときにそれを楽しむのではなく、豪華な飾り物がなければ劣等感に押しつぶされる。
息苦しい奴等だ。
金は使うモノだ。使われてたまるか。相手が何であれ使う側に回る方策を練らねば、どこにも勝ち目など作れまい。
人間性というのはそういう「弱さ」も助長するのだ。そして、デジタル社会は人間の弱さを助長するのに非常に役立っている。ネットで呟かれた誰が言ったのかも分からない下らない戯れ言の為に、大の大人達が株価を下げたりする。
馬鹿馬鹿しい限りだ。
デジタル社会に使われ、金に使われ、弱さに振り回されて、己で何一つ判断できず、それでいて救われて当然だと思う民衆。はっきり言えばこんな連中は滅んだ方が世の為だ。人の為に何かを行うと言うことは、社会にとっては不合理なモノに金をつぎ込むだけだからな。
人を尊重すれば社会が疎かになる。それをやりすぎたわけだ。誰もが誰かを支え合う事を美徳とし、行きすぎた尊重でも「道徳的に正しい」と判断できれば己で考えずそれを「正しい」と思いこむ社会。その結果がこれだ。
お前達はそれでいいのか?
まぁ、いいのだろうが。良いと判断しているからこそ、こんな社会構造が成り立っているのだしな。それにとやかく言うつもりは無い。言っても無駄なモノには私は言わない主義だ。疲れるだけだからな。社会が下らないゴミをもてはやすならば、私はそれを売ろうとするだけだ。社会の変化に、あるいは退化に、私は関係がない。
支え合いという偽善は、結局のところ誰かを利用したいという願望の現れだ。それを直視もしない奴に、何を言おうが無駄だろう。
それを見る人間は少ない。
見ていない人間の方が、儲かるからだ。
ならば私もそちらに混ざろうというのが、自然な考えと言えるだろう。最も、その試みは再度失敗し続けているので、やるだけ「無駄」って気もするのだが。
視線を変えただけでは意味がない。それを実行できる力がなければ。あるいは、力ある存在を利用できる舞台が必要だ。
私にとってはそれが物語だ。
是が非でも売らねばならない。
だからこその「作家」だ。
社会と折り合いがつかないのはある種、当然だろう。折り合いのつく作家など聞いたことがない・・・・・・その必要もあるまい。
アンドロイド達にとっては、そうでもないらしいが。アンドロイドというどうしようもないくらいに生物の法則から外れた存在であることに耐えられず、「人間の記憶」を自分に植え付けて、自身を人間だと思いこんで生きるアンドロイドも少なくはない。金があれば何でも買える世界では、アンドロイドが人間に成る権利すら買える。
自身を人間だと思いこんでいるだけなのか、それとも元々人間なのか、区別する方法は、もうないのだ。アンドロイド達が創造性を作り上げてからもう大分経つ。彼らは「感情移入」が出来るようになっている。つまり彼らが我々に成り変わって動物の世話をし、隣人と共感を覚え、それを共有することで社会を形成することを、資本主義経済は許している。
社会は人間の為にあるのではない。何時の時代でも、社会を形成するに相応しい有能な存在に対してのみ、効力があるのだ。それが人間でなくなったところで、誰もそれを買えることは出来ない・・・・・・金がなければ尚更だ。
生きる上で「人間性」などオプションパーツのようなモノだ。余裕があるから欲しくなる。能力的に余裕のあるアンドロイドが人間性を求め、人間が能力を求めるのは当然の答えだろう。
金があればいい。
金だ、金。
金以外に、大切なモノなど有りはしない。
それは社会も同じだ。だから、案外金を持つアンドロイド達が過半数を占め、その内「自分を人間だと思いこむ」ように記憶を埋め込み、やがて全人類、否、全てのアンドロイドが人間に入れ替わり、自分たちこそが「人間」だと定義する時代は、意外とすぐそこへ来ているのだろう。
事実として、すぐそこにある未来だ。
金はわかりやすい力であり、世界は力を中心に回っている。社会の中ではそれが「金」というモノへ置き換えられるだけだ。社会的道徳も、結局のところ金の動きに影響されて、作り上げられるモノでしかない。この世界には何一つ真実など存在さえせず、あるのはただ「持つ者が勝つ」というわかりやすい「現実」だけだ。
デジタルの普及で人間は遠くに足を運ぶ必要も無くなり、金があればどこか遠くの事柄すらも、その手に出来るようになった。まぁ当然の事ながら、幼い人類には過ぎた力であることは変わりないので、それによって身を滅ぼす奴も多いが。
私なら使わない。
精々日常の遊びくらいだろう。
生活の一部として、あるいは仕事に必要不可欠なデバイスとして、デジタル社会を取り込むことは、端から見ていれば危なっかしい限りだ。有用な部分を見る人間は多いが、それがどれだけ危険かを考える奴は非常に少ないからだ。
失敗から学ぶ、という言葉があるが、厳密には学ぶ奴もいれば、学ばない奴もいるのだ。私は失敗から学んだりしたが、私から言わせればこの社会形態で「失敗から学ぶ」事に意味などない。形ある成功しか、誰も見はしないからだ。そして、失敗を知らず成功のみを積み重ねた赤ん坊のような人間こそが、この社会では簡単に勝利する。
失敗から学び、先へ繋げるなど、今や悪い冗談でしかないのだ。電脳世界、この果てのない海の中では「失敗」などありふれている。それを見て「学んだかのように」自己満足すれば、それで何か成長したような気分になる。無論そんなのは付け焼き刃以下、だが、それで成功して勝利できる要領の良い人間が金を得るのだから、誰も実体験から何かを学び取ろうとはしない。
薄っぺらい言葉、信条、誇り、そういったあれこれが溢れているのだ。そして、中身があろうが無かろうが関係ない。この世界は、電脳世界の海が広がったその時から、要領や運、才能などと言った「持っているかどうか」だけを助長し、それを活かす世界に成り果てたからだ。
それが事実。
ならば、そのやり方に併せて勝利する以外に、方策はどこにもない。だから、私は金を使いこなすが、私の傑作は「本物過ぎて」売れないのだ。 元々自己満足が出来ればいい存在だが、だからといって幼児が書いたような本が売れて、私の作品が売れないのは正直忌々しい限りだ。私は金に困ったことは一度もないが、だからって私の成し遂げた結果が金にならないのは、屈辱でしかないからな。
金だけではなく、充足も欲しいのだ。
何より、私は「作家」という生き方が、すでに染み着いている。幾ら金があろうが、それ無しで充足感を得るのは、不可能ではないが、簡単な方法がそこにあるのだから、それを利用しようと試みるのは、ある種当然の話だろう。
「己の道は己でしか決められない」誰かに道を預けたところで「進むべき未来」を見失うだけだ・・・・・・だが、己で目指した道が、必ずしも金になるとは限らない。むしろ、己で選べば選ぶほど、その道には「困難」が付きまとうものだ。
それが「良い事」なのか? それは分からないだろう。だが、善悪ではなく己で決めることだ。そこに後悔はない。理不尽に対する憤りや、不満が募るだけだ。
それもまた、「未来」へ進むための原動力と成るのだろうと思うと、皮肉でしかないが。
「運命に打ち勝つ」には「己の道を歩む」事が必要不可欠だ。だが己の道を歩くと言うことは、この世のあらゆる安全から背を向けて歩いていくということなのだ。安心や安全、あるいは幸福を求める為に、それら全てと相反する道を歩かねばならないというこの矛盾。やれやれ参った。我ながらどうも、割に合わない選択を選びすぎたようだ。だから、作家なんぞをやってしまっているのだろうが。
それもまた、一つの選択か。
逆に、己の道を己で選ばず、どころか、誰か関係ない人間の悲劇をあたかも己が経験しているかのように共感し、それを救う為ならば人を殺すことも「やむなし」と考える人間の醜悪さは、実におぞましいものだ。
どこかの誰か、あるいはそれが貧困地域、ないし未開発区域の人間であったとして、それを涙しながら語れば、何でも許されると思っている。
馬鹿馬鹿しいことに、そういう奴は多い。
善意に酔っているだけの癖に、一人前に道徳の為に己は行動し、それは肯定されるべきだと、そう考えそれを押しつけるのだ。図々しいことだ、そんな浅はかな人間の考えが、金や立場によって通るのだから、それもまた、社会における問題点の一つなのだろうが。金は素晴らしいが、それを持つ人間が素晴らしいかは別の噺だ。
いずれにせよ、「困難」というのは打ち砕くだけでは駄目なのだ。打ち砕いたところで、また別の困難が待っている。それでは意味がない。
「克服」さえしてしまえば、理論上困難は困難そのもので無くなる。「困難そのものを克服できる強力な何か」を、誰もが求めて生きている。
それこそが人生のテーマだと、私は思うのだ。 生きる、ということなのだと。
そう思う。
私の場合「困難な運命」そのものを「支配」しようと試みてきたが、どうも上手く行かない。ともすると乗り越えてしまえば過去の遺物であり、こうやってあれこれ考えていることが無駄なのだろうかと、思ったりもする。
分からない。
分かるはずもないが。
だが、それでもやるしかないのだ。私が私の道を歩むために、それはしなくてはならない。
それが、私の道なのだ。
困難な運命を「味方」に付ける事も考えたが、やはり現実的ではない。無論それで得るモノもあったが、私は別に「成長」したい訳ではないのだからな。私に訪れた数々の「困難」は確実に私自身の精神を「成長」させたが、だから、何だというのだ・・・・・・困難な運命を味方に付ければ、その先にあるのは数多くの「試練」だ。人間的に成長したいなら、それによって「幸福」を定義したいなら話は分かるが、私は非人間で、経済的な豊かさと平穏と自己満足くらいしか、必要とするモノは無いのだ。
この世で最も人間から遠い「化け物」が、人間的な成長をしているなどと、笑い話だ。
いや、笑えない。
それで私の豊かさが阻害されるなら、だ。
形はどうあれ「成長」しているのは確かだ。それに伴って「己の信じる道」を歩いていることもまた、確かな「事実」ではある。しかし、あくまでそんなモノは自己満足でしか無く、現実に豊かさをもたらすのは「金」だ。
精神的な充足はそういった事でしか得られないのだとしても、だからって金のない未来など御免被る。私は成長というのは端から見れば美しいが現実にそれをしたところで得られるモノなど何もないことを、良く知っているからだ。
嫌というほど知っている。
何もない。
ただ、道義的に美しいだけだ。
そんなモノに価値など無い。
それこそ、他人が勝手な自己満足を行うだけではないか。そんな事に興味はない。あくまでも、この「私」の豊かさの為、私は動いている。
それらは両立できるしな。
わざわざ片方だけこなす必要もあるまい。
少なくとも、私には出来る。
その確信がある。
皆揃って「標準的な道徳」などという有りもしないモノに金を使いすぎなのだ。彼らは、同胞意識というのか、自分たちを「合わせて」いなければ夜も眠れないのだろう。その点、私は全人類と価値観が違おうが、何一つ問題ない。
きっと、私は名実ともに「人間ではない」のだろう。そう思う。生物学的にどうの、という以前の問題だ・・・・・・同胞に感情移入できない、というのは「動物」ではあり得ない。クラゲとか蛸ならばともかく、感情や自意識を持つ生物ならば、あって当然の標準装備だろう。
人間ではないから、人間を配慮しない。
それだけの噺なのだ、きっと。
それを悲観も楽観もしない。私は世界がどうあろうが、金と平穏と自己満足の充足で、己の満足感と平穏なる生活を維持するだけなのだから。
それ以外に興味はない。まぁ、興味が沸いたらその時、また考えればいい噺だ。
実に些細な問題でしかない。
少なくとも、口座の残高に比べれば。
抱える問題、という点では、精神的な何かはすべからく、己の内で解決できるモノだ。そんなモノに拘泥するほど暇でもない。
アンドロイドは自分たちの事を「ネジと同じ、型の付いた量産品だ」と嘆く奴が多いが、私からすれば人間も同じだ。型番が付いていない、というだけの噺でしかない。
最近のアンドロイドにはもう、区別する為の型番などないしな。区別は差別と同義だと、どこかのアンドロイド保守派団体が叫んだらしいが、まぁ、どうでもいいことだ。
人間でもアンドロイドでもない「何か」である私には、何の関係もないしな。
便宜的に「化け物」と呼ぶのが正しいのか? まぁ、呼び方などどうでもいい。問題はあくまでも、私が何であれ、金の多寡でしかないのだ。
全ての問題が金で解決できるよう、全ての問題は金から発生する。忌々しいのか皮肉なのか。恐らくは後者だろう。
自分を人間だと思いこむアンドロイドの世界。
それなのか? むしろ、彼らの方が人間から外れているのだろうか。だとすれば、やはり人間性など役に立たない。「人間」というのは概念論であって、そんな高潔な生き物はどこにもいないからだ。私も、彼らも、誰も彼もが。
どちらが正しいのか? それは所詮当人達の納得でしか決められないだろう。だが馬の後ろに立てば蹴られるって位には確実に、この世の真実、否、事実って存在は姿を隠しているのだ。
それを暴くのも、また作家。
私の仕事、のようなものだ。
とはいえ、資本主義社会では別に「成長」しなくても天寿を全うできる。そういう人間は多い。無論私からすれば羨ましい限りだ。したくもない部分を成長させ、苦難や苦痛から何かを学んできた私からすれば、だが。
何せ、死ぬ寸前に後悔していればいいのだ。
その方が楽ではないか。
まぁ今更そんな事を考えても意味はないので、これは思考実験ですらない。どうでもいいことだ・・・・・・成長しているかどうかなど、しようがしまいが何一つとして「結果」には関与しない。
物事の過程・・・・・・意志や苦難の道そのものには大した意味はないし、価値もない。それを後々どう捉えるかでしかない。そして、過去というのはどうとでも捉えられる。
全ての物事には等しく、意味も価値も有りはしないものだ。悲劇も喜劇も大差ない。問題はそれをどう捉え、己に解釈するかでしかない。
だが、だからといって金にならなくても良い理由にはならないのだ。それを見逃してしまったら「物事の本質」ばかりを重要視しても、大切な実利を見逃してしまうだろう。
無論、体裁だけを整えればいい訳でもない。社会的に高度な組織になればなる程、実体は幼稚なごっこ遊びだったりする。それは物事の本質から逃げて、「それらしさ」に拘った結果だろう。
物事の本質。
それを見る人間も、随分減ったが。
必要が無くなれば、当然か。
これは本質を見誤ったその「果て」を知る為の物語だ。心して読むといい。
人間は幾らでも許容できるという「事実」を。
第十巻
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最も大切なモノは「金」だが、最も必要に迫られるモノは「健康」だ。
彼等にはそれが無い。
だからこそ、己を捨ててでも、理性を殺してでも目的へと向かえる、らしい。連中の考えは理解できない。私と違って「人間性」などという、役に立たないゴミを追い求め、物語に夢や希望を、勇気を貰えるなどと綺麗事を抜かす時点で、それは分かると思う。
感傷ではなく「事実」だ。連中は私とある意味同じだというのに、私とは真逆の「モノ」を、求めようとするのだ。忌々しい事この上ない。
だが・・・・・・彼等の言う事も分からないでもないのだ。無論、勇気とか信念だとかではなく、現実的な問題として、娯楽産業は今やあらゆる兵器よりも優れた「戦略兵器」となりつつある。
娯楽、所謂物語や映画、そしてアニメを見るのは子供達位のものだったが、それが大人も楽しむようになってからは、娯楽商品を通して価値観を植え付けたり、世界の見え方をコントロールするようになった。
そして、アンドロイド共がそれらを見る現代では、この世界の産業の大部分を占める連中がそれら娯楽商品を消費し、七京ドルの経済効果を、一つの銀河系だけでもあげているのだ。
それを利用する輩は必ずいる。
どんな時代でも同じだ。
金があるところに陰謀はある。それが嫌ならば山奥にでも住むしかないだろう。無論私は文明の豊かさを最大限享受するつもりなので、正面から堂々と、娯楽産業に切り込み利益を上げ、それで「ささやかなストレスすら許さない、平穏なる生活」を、送るつもりだ。
今更だがな。
だが、そんな「娯楽産業」ですらも、ヒット作の作者名に半分以上はアンドロイドが並ぶ。利益を上げる商品と面白い商品は別なのだが、しかし連中はそのバランスの見極めが頗るいいのだ。私のような古くさい作家からすれば、たまったものではないが。
それら有名作品の権利を買い取り、ハリウッド化して情報戦争に参入しようとする巨大資本も多いのだが、これがまた上手く行かない。当然だろう。売れる作品が面白い作品である事と同義ではないのは「事実」だが、だからって金をつぎ込めば誰もが見る訳でもない。
逆に、誰が見るのかも分からないようなゴミでも、やり方次第では、だが・・・・・・世界中にその影響を与えることも、また可能だ。
結果、アンドロイド達は世界中の産業、そのコアと成る部分を握り、それらを支える顧客層ですらも、アンドロイド達が消費者として支えつつあるのだ。
最早、そこには「アンドロイド達の文明」が、「見えない国家」として形作られている。確かな「事実」だ。国を持たぬ民族として、彼等アンドロイドは人類社会において、圧倒的な資金力と、団結力。そして利益を上げうる産業を、その手に握ることが出来ている。
人間は置いてけぼりだ。
中身のないサービスばかり作っているから、こうなるのだ。まぁ、これは私のような、嘘八百の噺を書いて儲けている作家などに言われたくはないだろうが、言ってしまえば私のような人種に言われてしまう時点で、致命傷だと言えるだろう・・・・・・既に手遅れって事だ。
彼等、いや現行の人類は「不可能」に挑むことが、非常に困難に感じるらしい。だから、既存のモノに従ってしか、新しい「何か」を生み出すことに対して、足踏みをしてしまっている。
私から言わせれば、だが・・・・・・不可能なら断行し、不可逆なら可能にしろ。簡単だ、私はずっとそうしてきた。
なに、ちょっとリンゴを上へと放り投げ、木の又から子供を作り、物理法則に反するだけ、私の得意分野だ。実に容易い。
人間を信頼する、などという偉業に比べれば、容易いことこの上ないだろう。
信じられる相手など、所詮幻想だしな。
思い込みとでも言うべきか。
どうでもいいがな。
どうでも。
良かった。
今までずっとそうしてきた。実るまでが長かったが、時を掛ければ誰でも出来る。何せ、私には全ての事柄が「不可能」だった。
成功も名誉も信頼も道徳も、全て存在さえしない虚像の世界。
今更不可能の一つや二つ増えたところで、私の世界は変わらない。
時間は幾らでもある。いや、そもそもこの世界に「時間」というモノは存在しない。植物がそうであるように、物事は成長と共に次のステージへ向かう為、周期を繰り返しているだけなのだ。ただ、大小があり困難の度合いがあるだけで、我々の進む先は同じなのかもしれない。
だとしても、私は金が欲しいがね。
だとすれば、尚更だ。
・・・・・・思うのは、「物語」という存在は、その困難を疑似体験できる代物だ、という事実だ。疑似体験で克服できれば苦労しないだろうが、しかし疑似体験で本番に備える人間がいるのも、私からすれば忌々しいことに、また「事実」だ。
ならば、「物語」を読む人間に対して、否応無く大小無く私は、いや、私の作品は多くの人間達に影響を与え、生き方を変える事になるのだろうか・・・・・・それは言い換えれば、多くの人間を変える、というのは、多くの人間の人生を狂わせる事と、何ら変わりはあるまい。
だとすれば、面白い。
面白くて面白くて仕方がない。
それがどういう影響であれ、私の作品が世の事実を描き続けているのだから、読む側は当然、その事実と向き合う形になるのだろう。結果破滅するような人間ならば、もとよりその程度と、そういうことだ。
なに、少しばかり全人類を利用して人体実験を繰り返し、生き方に影響を与え狂わせるだけではないか。
その程度、誰でもやっている。
知らず知らずの内に。
無意識の内に、人間は他者の人生を狂わせられるのだ。それに自覚があるかどうか、その程度の違いでしかあるまい。
そうでなくともどうでもいいがね。
「傑作を書く」という感覚は何よりも優先される。私はそうだ。食べることを忘れて執筆したことも一度や二度ではない。時間の経過が早すぎるのが難点だが、それはそれで私の目指す「ささやかなストレスすら許さない平穏なる生活」を、充実と生き甲斐に満たす事に繋がるのだろうから、良しとしよう。
例えその結果、全人類の生き方が歪められ、狂ったとしても、事故責任という便利な言葉があるではないか。いや、「自己」責任か。
傑作を読むなんて、それこそ事故みたいなものだろうが。
そもそも、現実には物語が影響を与えることはあっても、それがどうなるかは当人次第だ。聖書を読んだところでそれを、戦争の理由にする輩がいるのだから、物語で人間性までは変えられないらしい。アンドロイド共なら否定するだろうが、しかしそこまでの力が「物語」にあるのか?
わからない。
どうでもいいしな。
問題なのは、そう、傑作のアイデアというのは場を考えずに出てくる事だ。年中、構えていなければならないので、実に忌々しい。
それとも作家の苦悩は「大事の前の小事」とでも言うのだろうか? いいや、そんなのは権力者の言い訳だ。大事も小事もこの世界には存在しないのだ。あるのは、そこに解決すべき事柄がありそれに対して人間の欲望が「大小」を付けることで「罪悪感」を消す為の儀式でしかない。
作家に苦悩など必要ない。
それももう、「克服」している・・・・・・私はどんな環境下でも「傑作」を書く事が可能だ。何かに苦悩しなければ最高の作品が書けないなど、プロとして失格だろう。
無論、私はこの問題すらも「克服」するつもりだ・・・・・・私個人の世界を更に、豊かさと充実で満たすために、じき、終わる問題だ。
これから語る物語は「歴史の特異点」とでも、形容すべき物語だ。人間が人間を辞めない限り、人間以上に成長しない限りは、集団心理の特異点からは、逃れられない。
差別、貧困、格差、戦争、政治、そして信仰・・・・・・これらは一定のパターン性に従って、この世界に発生する「現象」だ。
だから永遠になくならない。
例えアンドロイドが自我を持ち、人類が遙か彼方へ住処を移し、不老不死を手に入れて、神をも越える科学力を手にしたところで・・・・・・所詮、見栄や嫉妬で争い奪い、罪悪感から逃げ、自らを正当化することで己が悪である事を否定し、自分達がこの上なく正しく善人であり、何一つ後ろめたいことがないと「思い込んで」いる以上、人類の抱える問題はそのままだ。
世間の流行に流され、自分で考えず、皆が足並みを揃えて「確固とした己」を持つことから逃げる限りは、根底にある「心」は成長することはないのだ。だから、当然ながら科学が幾ら進歩しても、犯罪発生率は変わらない。
むしろ増えている。
自分を正当化、というよりは、世の中のルールの方が間違っていると思い込む奴は多いらしい。私は社会のルール以前に人間として色々踏み外しているので、そんな大それた事は思った試しがない・・・・・・無論、外れていたところで私は私だ。例えそれが「悪」であろうが、他者を踏みつけにすることに罪悪感など無い。
あってたまるか。
それを否定すると言うことは、生きるという行為を否定するも同じだ。善意や思いやりで自分達は成長できている、と思い込んでなあなあで過ごす連中には分かるまい。この世界に「正しさ」など存在しない。如何に社会的な価値観に合わせつつ、己の利益を確保できるかだ。生きるということは「社会の中で勝ち抜く」事も、当然ながら含まれるのだから。
勝利とは何かを敗北へ追いやる事だ。
それを善意だの思いやりだの平等だので、誤魔化したいなら生きる事を止めろ。
思うに、「罪悪感」とは、己を誤魔化しているから発生するのではないだろうか? 社会的な通念でどうあろうが、己の信じる何かを成し遂げてやり遂げた人間が、善悪で行動を計るなど、聞いたことがない。
善も悪もこの世界にはない。
いずれも金でコントロール出来る代物だ。歴としたその「事実」から逃げている人間が、この世界の何かを変えることなど出来はしない。
己の行いに「確信」を持って生きるのだ。それが出来ない生き方をするんじゃない。何であれ、「己を信じる」事の出来る道の先には、善悪はともかく「まだ見ぬ景色」があるだろう。
無論、私は社会的な通念にも合わせつつ、法や社会的な道徳に非難されない形で行動し、社会的な折り合いを付けられるからこその「邪道作家」なのだが。
人はそれを「最悪」と呼ぶ。
十一巻
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売れる物語とは何だろうか?
答えは、「つまらない薄っぺらな、それでいて中身が無く流行にだけは乗っていて、華々しさやもしも自分がそうなれたらという妄想を仮想体験できる余地が詰められており、飽きたらすぐに捨てられる」物語だ。
一言で言えば、読者にとって「都合が良い」事が必死条件だろう。むしろ「実力」などない方が売れやすい。表紙だけ立派に飾れれば良いのだ。どうせ中身をじっくり読んで、それを買おうという奴はいないだろうしな。
世の中そんなものだ。
勝利に必要なのは執念ではなく、要領である。 私も要領良く生きてきた方だが、連中の要領の良さには舌を巻く。よくもまあ、ああも都合良く世間を手玉に取れるものだ。
感心する。
連中の中身の無さには。そのくせ本物になりたいだとか、中身のある本物みたいな思想を持ちただとか、我が儘を言う。本物かどうかなど、そんなのは連中が勝手に決めることであって、ミロのビーナスもモナリザも、別に心の底から感動して皆が認めている訳ではないと思う。流されているだけだ。まあ、私が心ない殺人鬼の思想を持っているからこそ、そう感じるだけかもしれないが。 しかし「事実」だ。
ミケランジェロがどれだけの芸術家だったかは知らないが、それを完璧に理解して共感できるほどの奴ならば、同じ様な芸術を作り上げられるのではないだろうか? 少なくとも全員ではあるまい・・・・・・殆どの連中は、ただ「良いモノらしい」という風潮に流されて、よく分からないけれど、ただ合わせているだけだろう。
石の中に運命を読み解ける程だったらしいが、そんな境地を一般の人間が感じ取れるとは思えないし、同じモノを作品を通して感じ取れたとして同じ「何か」を感じ取るかは、また別の噺だ。
私が言いたいのは「本質など下らん」という事・・・・・・「物事の本質は結果に関与しない」という部分だ。努力は無意味で抵抗は無駄。だとしたら人間に出来る事は限られてくる。無論人間でなくても「運命に縛られる」点は変えようがない。
足りない部分をどうするか? 噺は簡単で、大きな何かの力でも借りれればいい。それが出来れば苦労しない気もするが、現実問題自分ではない誰か「協力者」を得られるかどうかは、その後を楽に進められるかに関わってくるだろう。
散々それを手に出来ないが故に手間と労力を賭けた私が言うんだ、間違いない。
そんな都合の良い「協力者」がいれば、生きる事に苦労はしない。どうしたものか。とはいえ、そうして手を打ってきて、何か一つでも成功したかと言えば、そうでもない。何より「作家業」はどう足掻いても「外せない」のだ。「性」だと、そう捉えて支障ない。
金になろうがなるまいが、やるしかない。
金にならない時点でやる気は失せるが、私個人のやる気など関係なく執筆は進んでいく。もしかすると何か電波でも受信しているのかもしれない・・・・・・私自身を「フィルタ」だと以前称したが、こうなるとそれも笑えなくなってきた。
嫌な噺だ。
私は「これこそが本物だ」と誰かに評されたい訳ではないし、そんな事は一度もない。ただそれなりに金を稼いで、適度な自己満足で充足を満たしつつ、適当に「人間性」を味わいながら娯楽として楽しみ、「人間の物真似」を楽しみながら、それで「ささやかなストレスすら許さない、平穏なる生活」を豊かに過ごしたいだけだ。
作家として望むモノなど、何もない。
有るはずがないだろう。
作家の名誉はあくまでも「作品の名誉」であって、私個人には関係がない。どんな内容を書いたかなど、覚えてられないしな。
目立つのは嫌いだ。
疲れるからな。
覆面作家として金だけ入ってくれればそれで、全てが解決するのだが・・・・・・思い通りに行かないものだ。最も、思い通りに事が進んだ事など、生まれてこの方一度もないが。ささやかな願いさえ絶対に叶わないのが、私の今までだ。
これからも多分そうだろう。今までそうだったからと言って、これから先は分からないじゃないか、などと言う甘ったれがいるが、これまで散々「結果」が出なかった事に対して金を払う人間は一人もいない。少なくとも投資家ならそうだ。生き抜くという事は、それら今までの経験から有用性の高い「利益を出せる行い」への投資活動だとも取れる。
良いパートナーを選べるかどうか、というのもその延長線上だろう。愛ではない。ただ単に、己の利益を満たせるかだ。「理想的な家庭」を求めている、相手に何かを要求する事は無い、などと言っても、それはそれで「理想的な家族を得る」という目的を達成する為に、相手を選ぶのだ。
心ない殺人鬼と変わるまい。
人類皆殺人鬼だ。己以外を殺すことで、充足や安心を得て、生きている。
誰かを殺さずにはいられない。
職場で、家庭で、遊びの場で、「邪魔な奴」を排除するのは当然だ。その結果、相手がどうなろうとも、誰だって気にしない。
自分というコミュニティの「外」にある存在は生きている一人の存在として、勘定に入らないからだ。それは当たり前のことだ。自分に関係ない人間がどう苦しもうと、どうでもいいではないか・・・・・・もっと邪魔者を殺せ。
そうすれば心地よく生きられるぞ。
なんてな。
何故、私はこうまでして「作家業」をやめられないのだろう。本当に面倒だ。他に金儲けの才能を磨けるほど器用ではなかったからだろうか。
金にならないなら、筆を捨てる事も、いい加減考えなければならないな。まあ、そうは言っても染み着いて離れないので、忌々しい事この上ない噺だ。どうしたものか。金と物語があれば、私は大体満足できる存在なのだが。
協力者が必要なら尚更金がいるのではないかと思ったが、運命論的に考えれば「同じ事」では、あるのだろう。金で雇うか、いずれにせよ出会うのかの違いだ。ただ、その「協力者」が得られたとして、役に立つかは別問題だ。やる気はあるが役には立たない。力になれなくて申し訳無い。
そんな屑は嫌というほど見てきた。
だから、まだ見ぬ「協力者」に対しても、とりあえず疑っておこう。役に立つかどうか、疑わしい噺ではあるのだ。
欲するはあくまでも「結果」だ。
この「性」を満たしつつ、満足できる結果を求めるのはかなり難しい。だが、それも確立せねばならないだろう。自己満足で済ませるなら、作家業以外で金を儲けられればベストだが、それが出来れば苦労しない気もする。
苦悩しつつも前へ進むと言えば聞こえは良いが明確な解決策を手に出来ていないだけだ。どうしたものか。
どうしたものか。
それもまた、今後の「運不運」に左右されるだろう事は、想像に難くない。結局の所こちらで何を選ぼうとも、「あちら側」がどう判断して何を寄越すかにかかってくる。あちら側とは私に認識できない「何か」であり、「運命」という造語で語られる、役立たずの厄介者だ。
何者であろうと、等しく同じ。ならばとりあえず筆を置いてから、作家業の下らなさへの物思いに耽りつつ、私は物語を読む事にした。
邪道作家の、物語を。
十二巻
0
作家の資格は簡単だ。物語を書く事が嫌いであればそれでいい。書くのが嫌いだ。作家なんて、社会に搾取されるだけだと文句を言うことだ。
きっと立派な作家になれるぞ。無論、搾取されボロ雑巾のような人生を送る事は、想像に難くないが。作家など、そんなものだ。
そうでなくては作家だと呼べまい。
未来に期待するな、するほどの価値はない。まあ、それでも前を向いていればそれなりの豊かさは自己満足で完結できるだろう。そんな行動に意味があるのか知らないが、とにかく、私に出来るのはそれくらいだ。
そしてそれで構いはしない。
夢も希望もなくて良い。金さえあれば。その金が無いからこそこうして作家業などという利益の生じない事柄に身を窶しているのだが・・・・・・いっそ作家など止めてしまいたいところだが、そうも行かないからこその作家業だ。
呪われた装備品みたいなものだ、外したくても外せない。全く、忌々しい限りだ。
私に出来る事がそれくらいしか無い、というのが原因ではある・・・・・・「最悪の未来を想定し、その問題点を形にする事」これは作家業以外では金にする方法があるまい。私の物語は主に、最悪の未来に向いている。最悪の未来を見て読者共がそこへ向かうのか、そこを避けるのかはともかくとして、未来に起こり得るであろう社会問題をあらかじめ予想し、備えることが出来るようにする。物語を書く存在にとって最低限の心構えだ。それが根底になければ面白い物語は描けまい。
私は夢も希望も信じるに値しないと考える。
だからこそ、最悪の未来が、その問題点が明確にわかる。長所は短所とでも言うのだろうか。私にとっては皮肉でしかないが。
それに、別段備えているからといって、未来を変えられる訳でもあるまい。そんな程度で何かを変革できれば苦労しない。勝利者の条件は選ばれる事だ。何に? 全てだ。幸運然り、世間然り、当人以外の全てが勝利条件だ。だから、当人の意志だとか努力だとか執念だのは、一切勝利そのものには何の関係性もない。
何をしたところで、同じ事だ。
ともすれば私は変えられる訳でもない未来社会の問題点を指摘しているだけなのだろうか? そうかもしれない。未来に望むのは簡単だが、しかし望んだ結果が得られたという話を、私はついぞ聞いた事も体験したこともない。お伽噺だ。この世界に存在しないフィクションでしかないのだ。 物語から感銘を受けたり、感動したり、何かを学んだ気になったりするのは、ただの錯覚だ。何も与えないが、しかし全てを与える錯覚を起こしそれを金にする。何とも私向きの職業だ。
世界は金で出来ている。
例外は無い。
全て、金で買える。金で変えられる。
なればこそ、私はそういう「夢物語」に夢想するつもりはない。売れればそれでいい。中身など白紙以下で構わない。どうせ私が読む訳ではないのだ。それに、読者共が私に何を支払う訳でもあるまい。それも多めに支払うのは編集部とかであって、私にではない。封筒に札束を仕込んで送ってくる読者など、聞いたこともないしな。
そんな連中に払う敬意など、無い。
どうせ立ち読みでもしているのだろう?
札束を出す訳でもあるまいし、評論家気取りで書いた事も無い連中が、ネット上の世界で侃々諤々の大論争をする。そんな暇があるなら一冊で良いから物語でも書けば良いだろう。如何に自身が薄っぺらい存在か、嫌でも理解できるぞ。少なくとも世界には物語を買う金は無いが、株式やローンを組む余裕のある馬鹿共が多すぎる。金を使いこなすことも出来ないから、貴様等は読者なのだ・・・・・・読み手ではなく語り手を志せ。
自身の物語も無い人生で、良いのか?
だから貴様等は薄っぺらいのだ。
ふん、まあいいさ。貴様等がどれだけ薄っぺらい歩みを進めようが、私にはどうでもいい事だ。私とて、別に濃い物語を書きたい訳ではないのだからな。売れればそれでいい。そして、売れるかどうかに中身は関係ない。
いっそ、下らない恋愛劇でも書いてやろうか? 検討するだけにしておこう。
実際に書くとロクな事にならない。吐き気がするし面白味もない。よくもまあ、ああも面白味の欠片もない「駄作」を作れるものだ。
私は無論「金」や「平穏」つまり私個人の自己満足の為作家業、物語を金に換える事を良しとしているが、その実「書く為に書いて」いる。私には確固たる事実として「書くべき事柄」があり、そしてそれを「書きたい形」にすることが出来る・・・・・・他でもないこの「私」の目線で物語を語る以上、陳腐な駄作は許されないし、書いたところで私個人が満足できないのだ。全く、忌々しい限りだが、それを言ってもどうしようもないか。率先して駄作を書きたがる間抜けの思考回路など、考えるだけ無駄だろうしな。
私は非人間だ。人間性など欠片もないし、今まで人間性を感じたことすらない。私にとって人間社会はエイリアンの社会だ。向こうからすれば、私の方が「人間のフリをしているエイリアン」なのだろう。そしてそれで問題ない。問題なのは、私が「人間社会に生きる」というのは不可能であり、あくまでも折り合いをつけるだけであって、そこに真実の幸福などあり得ない部分だ。どうしたところで「人間」を感じない私に、人間社会で感じる幸福など存在しない。私にとってはこなすだけの事であり、「人間の娯楽を楽しむフリ」をすることで充足を得て、「人間らしさ」の物真似をすることで「人間」という娯楽を楽しみ、私が機能停止するまでの間、楽しむだけだ。
まさに、エイリアンの学習機能だ。
人間のように生きて、人間のように存在し、人間の物真似をこなしつつ、適度な豊かさを求める・・・・・・それが私にとって社会との折り合いの付け方なのだ。実際、それ以外の方法などあるまい。私はどうしたところで幸福を感じないし、ストレスを避けて適度に「こなす」生物の発想ではないが、私は生きていない存在だ。終わるまでの間、折り合いをつけつつこなすのは当然だろう。
その結果、ストレス過剰で失敗しか無い道を歩み続け、敗北と作品の売れ行き難航に悩まされるというのだから、傑作な話だ。
私は前に進んでいるのか?
進んではいる。しかし、「結果」が出ない。
私はただ、それなりの金と自己満足で充足したいだけなのだが・・・・・・上手く行かないものだ。もっとも、それが最初から上手く行くようであれば苦労はしないし、私の場合「人間性」が存在しないからこそ成り立つが、しかし情緒豊かな人間共は、そういう「ささやかな豊かさ」では満足できないものだ。私にそれはない。人間ごっこをしているだけであって、私は人間ではない。それなりの豊かさで私が満足できる理由は、私には求めるべき「人間の欲」が無いからである。私に欲しいという感情はなく、持ちたくても、持つことが出来ないのだ。
だから「それなり」で満足した、という形に落ち着けることが出来る。金さえあれば、だが・・・・・・作家業が金にならなければ、充足も何もない。私という存在の「基軸」である作家業が回らなければ自己満足も何もないし、何より私には他に、稼ぐ手段が無いのだ。このまま始末屋(まあ、作品のネタになるから続けても良いが、しかし囚われるのは御免だ)を続けるしかない。続けるのは良いにしても、作品が売れなければ自己満足の充足も何もない。その為に行動しているというのにそれが達成できなくて良い理由はあるまい。
達成しなくても良いなら最初からしない。
そこに到達するために、挑むのだ。
そこに至るまでの過程が尊いだの、敗北から学ぶべき事が多いだの、そんなのは到達していない輩の台詞だ。周りなど見えるべきではない。ただひたすらに「その場所」を目指す。少なくとも、私は生まれた時から「そう」だった。
ここではないどこかを目指していた。
そう思う。
今この場所で満足するのは簡単だが、それでは先に進めない。進められるのなら進めるべきだ。それこそ「無限」に先へと進める。過程が尊いだのとホザくのは、それからにしてほしいものだ。挑み続ける姿もまた「過程」の筈だからな。
私は売れればそれでいいが。
世の中金だしな。
とはいえ、全身が弱点で出来ている私にとって人並みに追いつくというのは至難の業だ。実際、石投げ一つですら負ける自信がある。内面はともかく、内面はともかく、内面はともかくとしてだ・・・・・・物質的な「強さ」と、私はほとほと無縁だからだ。
だからこそそれを求めるのだが、精神が豊かであれば金の方から逃げるとでも言うのか? それとも私の精神が未熟だからなのか? 未熟だとすれば、それはそれで金が集まっても良さそうなものだがな。精神が未熟であればあるほど、物質的に豊かな奴は多い。それならばいっそ、修練を積んで精神的に未熟になるべきなのだろうか?
一周回って馬鹿な話だ。
その一方で、私とは違い「結果」のみをいち早く手にした連中は、精神が「劣化」しているというのも、また「事実」だ。昔は楽しめた娯楽が楽しめなくなり、より安易でより安直なモノを求めるようになり、精神が画一的になるといえば聞こえはいいが、その実体は思考を放棄しているだけでしかないのだ。足りなければ、それを補完して行くことを考え、それで楽しめるが、全てが満たされていれば更に満たされようとするだけだ。これは何にでも当てはまることだ。娯楽と言えば、ゲームなどがわかりやすいだろう。あれこれ試行錯誤しながら悩んで考え尽くしてやり尽くした末の楽しみがあったのも今は昔。電脳世界で勇者気取りをしながら運営会社に文句を言うのが関の山だ・・・・・・技術は進んだはずなのに、それに見合う楽しみが消失している。いや、楽しみを感じる力が欠損しているのだ。
それを私のような化け物が手にするというのだから、世も末だろう。私は人間ではないので、何であれ楽しめるし何であれ作品のネタに出来る。無論本当に何かを感じる筈も無いが、しかし人間の物真似という娯楽は成り立つので、私はささやかな自己満足による充足で人生を潤すのだ。人生などと、私が言うと違和感が大きいがな。
対して、人間達は貪欲すぎる。
何があっても満たされないらしい。
地位、名誉、男、女・・・・・・我々は足りない何かを満たそうと生きている、のではない。足りないモノは金だけだ。少なくとも、資本主義の世界において足りないモノなど他にあるまい。それに、何かを手にするというのは、それが精神的なものであればあるほど、ただの錯覚に過ぎない。錯覚を手にすることは無いのだ。
悪意も善意も同じ事だ。
全て、存在しない虚構でしかない。
嘘を鵜呑みにするな。間抜けが。
何かで満たされよう、などとおこがましい馬鹿共だ・・・・・・何を手にしたところで満たされる事はないのだ。満たす満たさないは当人の精神の内で決まる事柄だ。それを、外側に求めるのが間違えている。そんな事が出来れば苦労しない。
勘違いしたまま、死ぬ輩は非常に多い。己自身の在り方やその後、自身が後に何を残せるか、誰にどれだけの影響を与えうるのか? そういった大切な事柄を考えないまま生涯を終える。ああすればよかった、自分が間違えていた。失敗した、挑戦すべきだった、とな。
無論私にはそれが無い。
あってたまるか。
だからこそ私は「作家業」などという忌々しい呪いじみた仕事をしているのだ。我ながら大変遺憾ではあるのだが、それはそれだ。形にすべき、己自身の内側の答えをデジタルデータで残しているのだから、そこに後悔など無い。強いて言えばあの世に持っていけるのかどうか不安だ。また最初から書き直すなど、御免被る。絶対に、だ。
二度と書かんぞ。
疲れるしな。
私は文房具で執筆し完全なるオフラインで書いているので、ハッキングの心配はない。意図せずしてデータの保存は万全だと言える。最新科学に頼るのはよいが、コンピュータなど政府側の思うように情報操作、情報検閲、株式操作を行い、大国の都合を通す為のモノなのだから、そんな物騒な存在に頼るべきではあるまい。
社会問題や政府の職権乱用など、メディアさえ押さえればどうとでもなるのだ。テレビニュースを見て信じる連中に対して、己の目で見たモノを信じろと言ったところで、頷きはしても行動に移す奴は一人もいないからだ。まあ私から言わせれば、デジタル世界を支配して神を気取ったところで、それは「神の権能」があるだけで、それを使いこなすことは出来まい。少なくとも個人では不可能だろう。国家単位で悪用することは可能だが、しかし、だから何だと言うのか。
政府というのはいつでも「劣等感」や「虚勢」で動くものだ。ある種私とは対極だと言える。彼らは実利を追い求めているようで、その実、自分たちの民族意識を通しているだけだ。全てを独占して牛耳ろうとするのは、そうでもしなければ、安心することの出来ない小さな器の持ち主であることの証左だろう。
正論の裏側には、必ず連中が絶対に勝てる仕組み作りが行われている。そんな世界で民主主義など笑わせる話だ。面白くもない。夢想するのは勝手だが、押しつけないで欲しいものだ。政治家でもない大勢の意見など、何の足しになる。そんなのは(自分たちも参加しているんだ)という、何一つ行動せず権利を求める馬鹿者共の台詞だ。
政治をまっとうにしたいなら、独裁が良い。
優れた治世など、土台不可能だがな。何かを良しとすれば何かが犠牲になる。それが民の為が個人の為か、それだけの違いだ。たったそれだけのことを学ばず、何十年も生きて、己が立派な社会人だと自負し、何も成し得ず死ぬ輩の、何と多いことか。
他にやることはないのか?
貴様等は、人生が一度しかない、という当たり前の事を知らないフリ見ないフリで済まそうとしている。済むわけがないだろう。そのくせ、その考え方を押しつけて感謝を求める。実に図々しい話だ。誰かの言う事を聞いていれば幸せになれると自惚れている。馬鹿馬鹿しい。それが何であれ己自身の手で掴み取るものだ。自分ではない誰かの台詞など、アテになってたまるか。
生きるという事は「選ぶ」という事でもある。それを他人任せにして結果が得られると思いこんでおきながら、「話が違うじゃないか」と文句を垂れる。全てを他者任せにして、一切の苦痛を支払わず、何も成し得ずに結果が貰えるのならば、是非あやかりたいモノだ。まあそんな事はあり得ないので、私は物語を綴るのだが。
選んだ結果に実利が伴うかはわからない。事実私は未だ実利を手に出来ていない。それでも選んだ以上は進むしかないのだ。
それが「生きる」という事だ。
そこから逃げるゴミ共が、ほざくな。
図々しいぞ、間抜けが。
私は今まで様々な事柄を「学んで」いる。横綱の体作り、ボクサーのフットワーク、はては修行僧の思考回路までだ。そんな私が「物語」そのものから学んだことがある。そういう自身の道すら選んでいない「悲劇を気取ったヒロイン気取り」に限って「こんな無益な戦いは止めよう」と、ほざき出すのだ。戦ったこともない奴が、そう口にすることで、己の「善性みたいなモノ」を、満たそうとする。
会話になっていない。
そも、無益な戦いではなく、「それ」を選んだからこそ、「それ」以外に当人が歩く場所など、ありはしないのだ。何を選ぶかは人次第だが、一度選んでしまえば、「それ」を「活かす」以外に当人の在り方はない。それが不毛なものだとしても、それ以外の選択肢など、ないのだ。
それ以外全てを捨てて、ただ一つを選ぶ。
だからこそ、その「道」を歩くのだ。
道を選んでもいない輩が、それに対して口を挟むのは愚かを通り越して目障りなだけだ。誰かに理解を得られる事など稀であるし、報われるかどうかすら分かりはしない。無論、私は実利に換えてやるつもりだが、いずれにせよ綺麗事など、そんなのは口にするだけならば誰でも出来る。
猿が鳴いているのと同じだ。
何も、「結果」に結びつかない部分では。
その結果、私の物語が「傑作」と評されるかどうかは、正直知った事ではない。私個人としては金にさえなれば、それでいいからだ。だが、少なくとも忌々しいことに「漠然とした予感」として私には「結果に結びつかないからこそ、優れたモノは作り上げられる」という気がしてならない。無論そんな屁理屈どうでもいい。綺麗事以下だ。もしそうだとすれば、私は苦難も苦痛も代償として支払わなければならない、などというルールは無視するだけだ。実際、優れたモノが作れたからと言って、何だと言うのか・・・・・・仮に、あくまでも「仮に」だが、私が売れていないからこそ傑作が書けるとして、私は金しか望んでいない。あくまでも傑作云々は当人の自己満足であって、私はその為に己を犠牲にするつもりは更々ない。そのやり方は私ではなく読者共を重んじるやり方だ。私個人を生け贄にして成り立つ手法だ。
そんな腐れ理論を許してたまるか。
それが真実なら、真実を改竄するまでだ。
それでこそ「私の幸福」が手に出来る。無論、感じ入らない以上ただの自己満足だが、元々私は「人間の物真似」をしているエイリアンだ。そして私は人間の物真似を面白い趣味として楽しめる正真正銘の化け物だ。それを嘆いたり、悲しんだり、人の心を求めようと思うことすら、ない。
そういう意味では、映画の中のエイリアン共、ロボット軍団、人工知能などの方が、和達しとは違って「生物らしい」話ではある。私の場合、その非人間性を肯定し、人間性に折り合いをつけ、人間社会に紛れ込み、人間に限らず己以外を数値としてすら見なさず、それを「最悪」だと辞任した上で、己の利益を追求する。
自分で言うのもなんだが、「最悪」だ。
私以上の悪は、概念からして成り立たないだろう。とすると、どうやら「悪は金にならない」とそういうことだろうか? 私自身で証明した形になるのだろうか? いや、いや、ここからだ。傑作を金に換え、ささやかなストレスすら許さない平穏なる生活を、手にするのだ。
作家である以上ストレスは常にあるが、それはまあ例外としておこう。充足、生き甲斐、人生における張り合いとして、それくらいは構うまい。 どうせならそれすらも抹消して「非人間」らしく生きるのも面白そうではあるが、作家としては完全なる非人間の生活よりも、人間の生活を模写する方が為になる気はする。読者など心底どうでもいいが、私個人の充足には、やはり必要か。
やれやれ、参った。私はどうやらあの世に言ったところで同じ事をしているのではないか? 御免被る話だ。あの世って娯楽少なそうだしな・・・・・・過剰労働、断固反対だ、私は。
作家とは因果なもので、どれだけ休もうとしても、それすらも作品のネタとして捉えてしまう。意識していないと筆を執ってしまうのだ。
忌々しい宿業だ。
ふと、あの女の言葉を思い出した。
「願いが叶えられない事など、ないのですよ」
相変わらず綺麗事だろうと私は流しながら、神社の縁に座っておはぎを摘んでいた。説教する教師のように、あの女、タマモは諭すように箒を止めて諭し始める。思うのだが、本当にこの女は、忙しいのだろうか? と思いつつも、その時の私は和菓子のおかげか、素直に話を聞いていた。
「そんな訳があるか。叶えられる願いなど稀だ」「そうではないのです。私、いえ神というのは、人々の願いをそのまま叶える事はありません。その願いに至るまでの道を進めるだけです。その道を歩ききれば望む場所にたどり着けますし、至らなければそれまでです」
「言い訳臭い話だ」
つまり何か? 願いを願えばそれに相応しい試練があり、それを提供するだけで神は仕事を終えるのだろうか。だとすれば、それは何もしていないに等しいではないか。進む道に相応しい試練など、何もしなくても起こって当然だ。
「そうでもありません。貴方も知るように世界は理不尽で出来ています。そして、苦労もなく勝利する人間は、少なくありません」
「それのどこがいけない?」
「貴方自身自覚はあるようですが、勝利だけを突きつけるというのは、未熟な存在にとって毒物そのものです。精神を蝕み、心の隙を広げ、精神も肉体も破滅に至らしめる。貴方のように人の心を持たないならばともかく、大半の人間は、そんな精神性を持ってはいません」
「仮にそうだとして、安易で安直な勝利、中身の無い勝利者の何が悪いのだ? 手に出来れば、それに越した事はないと思うが」
「・・・・・・それは、違います。私たちではなく、貴方達の問題なのですよ。仮に、そんな何一つ苦労を必要としない人生を歩んだ人間は、その内側に何一つ育むことが出来ず、苦しみ、生きている実感を永遠に手に出来ないでしょう」
「・・・・・・私には最初から「内側」など無いがな」「そうだとしても、同じ事ですよ。内側が無いからと言って、一人だけさぼる訳にも行かないでしょう」
「そういう人間は多く見るがね」
「それもやはり、同じですよ。その安易な人生に従って、彼らは何一つ育まず、精神は子供のまま死ぬ。後になって苦労を求めるのですよ」
そうだろう。実際、これ以上無く理に叶っている話だ。だが、私は別に精神的に成長などしたくもないし「人間の成長」など、私がしたところで徒労も良いところだ。私のような化け物に、何の意味があるというのか。
「それでも私はその方が楽で良いがな。人間らしさや人間の成長など、私には縁の無い話だ。したところで実感できず、存在しないも同義だ」
「そうでしょうね・・・・・・あるいはそれが、貴方自身が「最悪」として君臨するための「対価」なのかもしれません」
「・・・・・・・・・・・・」
好んで名乗った覚えは無いのだが。
そんな事に価値はないしな。
「そうでもありませんよ」
「何故だ? 私が歴史上最悪の存在だとして、私にとってどんなメリットがある?」
「大きなメリットがあるではないですか。貴方には精神的に「折れる」事が決してない。折れる心がないのだから当然ですが、しかし貴方にとって「くだらない」事柄こそ、人間にとっては重要なファクターなのです。結婚、就職、人間関係、それに「誰かに評価されたい」自己顕示欲。貴方のように本質を睨める人間ばかりではないのですよ・・・・・・一時の事だと理解できず、死に至る人間も多いですしね」
組織はいずれ潰れるものだし、愛はその内冷めるものだ。他者との関わりは永遠ではなく、それでいて他者に認められるかどうかは、その人間個人の小さな満足感でしかない。
ただの「事実」だ。理解しようと思っていれば子供でも心がける事が出来る、世界の事実。
「・・・・・・それは事実から目をそらすからだろう」 私でなくても、事実を見据えることは可能だ。「そうでもありません。貴方のような殺人鬼じみた精神でも無い限りは、そんな強固すぎる精神でなければ、人間は事実を好みません。己にとって都合の良い虚構を信じるものです。貴方の場合、その精神そのものがプログラムじみているからこそ、機械的にそれらを観測できるのです」
人をウィルスみたいに言うんじゃない。
似たようなものだが、安っぽいのは御免だ。
せめて核廃棄物くらいにしろ。
「・・・・・・別に強固という訳ではないがな。私は、ただ人間を真似ているだけだ」
「それでも、同じ事ですよ。貴方は真似ているだけで人間ではない。故に、人間であれば本来悩み苦しむ事柄を「無視」できる。貴方自身が思っている以上に、大きな特権ですよ、これは。心がある以上、人間でなくとも、その苦しみや悩みは、生涯ついて回るのですから」
嬉しくもないが、ここはしょうもない人間共の悩みに付き合わされずに済んだ、と思っておこう・・・・・・そういう事にしておこう。
そもそも、人間個人の強さ弱さなど私は持ち得ないし、そんな私に、強さによるメリットも弱さによるメリットも持ち得ない私に、デメリットだけ押しつけられても困る話だ。それこそ冗談ではない。とはいえ、強さ弱さ、この女の歌う人間的成長など、存在しないも同義だ。
精神的に成長しなくとも、子供のままでも、人間社会では立場さえあれば「偉く」なれる。わかりやすい例は「教師」だろうか。人を導く教師の存在などフィクションの中でしか聞いたことが無いが、己の劣等感を己自身より小さい存在に押しつける事でしか、自己を確立できない輩の存在は良く見てきている。
子供の頃、という程純真ではなかった気もするが、とにかく私はこう考えた訳だ。「それなら、その立場さえ手に出来れば楽が出来る」と。結局それほど私は「持つ側」に縁が無かったのだが、しかしそれはまごうことなき「世界の事実」だ。 立場があれば偉く慣れる、のではない。
その偉さ、という名前の我が儘を押し通せる。 そして、押し通した方が美味しい思いをする。 へたは誰かに掴ませる。それこそが人間社会の事実だと、我ながらそんな事実を子供ながらに、理解はしていたわけだ。成長した今でも、その考えは変わらない。あの女の言う正論は確かに、正しいのだろう。しかしそれは「理屈」として、正しいだけだ。その理屈が適応される奴が、この世界に何人いるのだろう?
少なくとも、私ではあるまい。
適応されないならば、他の方策が必要だ。
捨てる事で対価を得る話もあるが、私の場合、最初から「人間性」を捨ててかかったにも関わらず、未だ目的地にたどり着いてすらいない。たどり着くことそのものは目的ではない。たどり着いた後、己自身の在り方を通すことが目的だ。
それが、叶わない。
最初から全てを捨ててかかって、これだ。
どうしろというのか。
私に後退の概念は存在しない。存在しないからこその邪道作家だ。とはいえ、自ら進んで灰になりたい訳ではない。
勝たなければ。
勝利を掴まず灰になってたまるか。
その為にここまで押し通したのだ。
「どうしました?」
思い詰めてでもいたのか(我ながら笑える。この私に思い詰める機能など、ないというのに)私の顔色をじっ、と見据えて彼女は問うた。
「いや、別に。強いて言えば、貴様の言い分の浅はかさを考えていた。成る程、不用意な勝利は、確かに人を貶めるかもしれん。しかし、それは勝利を望む存在が理不尽に勝てなくても良い理由には、決してなるまい。貴様のそれは外側から眺めているだけの答えだ。だから、中身が薄い。言葉に説得力がないのだ」
自分で言っておいて何だが、私は言葉の力など信じていない。切り捨てた方が早いだろう。信念や勇気が何かを変える事など無い。
そんな事ができる奴がいるなら、是非お目にかかりたいモノだ。
「確かに、持つ側が見方を変えればそうなるかもしれん。しかし、それは持たざる側が、捨てる者が、挑んで勝利を掴んではいけない理由には、なりはすまい。結果論でそれらしい事を言っているだけだ。勝利に望む当事者からすれば、事の善悪や論理的正しさ、その方向性など、どうでもいいのだ。ただ「勝ちたい」のだ。無論、私は実利さえあれば勝たなくとも良いが、ね」
その実利すら手に出来ていない私が言うと、説得力だけがあっても、という気もするが。
私にとっては実利こそが「勝利」なので、試合の勝敗に興味がないという事だ。年収が高ければファンも勝敗もどうでもいい。
それこそ「過程」を重んじる、というか、中身のない偽物ではないかという声も聞こえるが、私は元々安ければどちらでも良い。
私は人間的成長や人間の勝利になど、興味はないし、どうでもいい。人間ではない化け物に、そんな理屈を押しつけられても困る話だ。
私は化け物だ。
幸福を感じ取れない、正真正銘の化け物だ。
それはそれとして、それならそうと、そのやり方でも幸福、というか充足しつつ過ごせる方法を私は化け物として探さなければならない。
そしてそれが、金による生活の肯定だ。
ささやかなストレスすら許さない、平穏なる生活・・・・・・「私」なら、それが出来る。
非人間であり化け物である、この「私」なら。 女は薄く口を開き、こう答える。
「それも、そうですね・・・・・・けれど私は思うのですよ。貴方のやり方は「間違えて」いると」
「間違える間違えないは、私が決める事だ。部外者の貴様が言う事ではない」
「ですが」
「何だ?」
「貴方はそれで良いのですか?」
「構わんよ」
それ以外に方策も無いしな。しかし、その口にしなかった台詞を女は察したのか、消去法でのそんな在り方など許さない、という姿勢で、
「手の掛かる人ですね。全く」
と、仕方なさそうに、言った。
「大きなお世話だ」
人間「らしさ」を押しつけるな。化け物の尺度は化け物のみが決める権利がある。私だけだ。
「貴様が、どんな「人間らしい幸福の結末」を、夢見ているのかは知らないが、私にそれを押しつけるな。土台、人間ではない上、心すらない私には、不可能な話だしな」
「そうでしょうか」
「貴様は綺麗事を口にしているだけで、貴様の言う人間らしい結末を私に適応できる方法を口にしたことは、一度もない。貴様自身理解しているからではないか? 私は「違う」と。何をどうしようが外れた存在でしかないのだと」
「そんな事は・・・・・・」
黙ってしまった。
これだから女は面倒だ。感情的に理想を語るのは結構だが、肝心な「それを現実にする手段」に関しては、何のアイデアも無い。
綺麗事なら誰でも言える。
猿でも人工知能でも、カセットテープでさえ。 難しいのは、それを現実にする事なのだ。そして、それを現実にしようとする輩は、口を開いてそれらしい事を強制したりは、しないものだ。
行動に移していない証だとも取れる。
どうしたところで傍観者か。
それはそれでまた、一つの役割だが。この女は客観的に事実を告げる能力には長けている。そのあたり口だけの馬鹿共とは違う部分だろう。
しかし、だ。
「貴様は、高いところにいすぎるのだ。それはそれだけならどうでもいいことだが、何かを変える為に行動するとなると、傍観者の言葉は話にならないものだ。事実を追求するには良いが、貴様は何かを変えるのには、向いていない」
「そう、でしょうか」
「そうだ。どうでもいいがな」
私とて、この女がわかりやすい回答を出し、それで全てが一件落着、などと絵本のような結末があると、信じている訳ではない。
だからこそ、私は「ささやかなストレスすら許さない、平穏なる生活」という「指針」を形にすることで、幸福を手にするのではなく、幸福に、挑もうとしている。本来、人間であれば、人間でなくとも、心があればあり得ない取り組みだ。私には人間性も心も無い。だからこそ、自己満足のみを主軸として、それを成立できる。
それにとやかく言われる覚えもない。
そこに「人間性」を押しつけるのは、私という存在を否定するも同義だ。相容れる訳がない。私は化け物であり、化け物として成立させる。
肩書きなどどうでもいいが、私に必要だから、そうするだけだ。必要であれば何でもする。化け物でなくても私は、そういう存在だ。
だからこその「邪道作家」だ。
私は回想を切り上げ、宇宙船の外に目を向けた・・・・・・外にはまばゆいばかりの景色が広がっていたが、私は、何も、感じなかった。
十三巻
0
「完全なる悪」とは人間が生み出したモノからは生まれない。元からそうであるモノ、生まれついての悪のみだ。
何かにすがる事を「正義」何にもすがる事なく生きる事を「悪」と呼ぶならば、人間は大抵の場合「正義」を選ぶ。楽だからだ。実際、私も持つ側にいれば、なんて意味のない仮定ではあるが、その方が人生楽して充足できただろう。
私の場合その仮定すらも無意味だが。
私はあくまでも人間の物真似をしているだけだ・・・・・・ただその魂の在り方が「最悪」であり、その結果善悪ではなく己に従うだけ。とはいえ、悪とは大抵の場合「敗者」であり、正義とは大体の場合「勝利者」である。とどのつまり勝利できないからこそ、そんな場所にいるのだ。
勝利者に己を恥じる必要はない。
勝利すれば当たり前のように「正しさ」を肯定できるのは人間社会の古くからの規則だ。むしろ物理法則と言うべきか。敗者の都合を考える勝利者などそれこそ胡散臭い。相手の都合を意にも介さないからこそ争いは起こり、勝利者の手前勝手な都合、自己満足の正義が通る。
だから私は王道の物語が嫌いだ。
正義などどこにも存在しない。努力すれば何かが叶い、その正しさ故に身を結ぶ。如何にも詐欺師ですら話さないような内容ではないか。
それはただの幸運だ。
実のところ「偶然」に過ぎないのだ。勝利者として恵まれているから正義であるかのような気がするだけで、実際のところ物語の主役という輩はただ暴力を押し通しているだけに過ぎない。大層な信念や勇気、執念があるとして、だから、何だと言うのか・・・・・・そんなモノは悪人の方が持ち合わせているではないか。
悪こそ咲かない不遇者の山だ。
勝利する事がわかっていて、勝利するべくして勝利し、勝利そのものに「正義」だの「善悪」だのを持ち込む幼児の話を見て、何が面白いというのだ。そんな噺は聞き飽きた。勝たざる運命、持たざる存在、悪が高々と笑う光景こそが、面白さの極地だろう。
そうでなくては面白くない。
その方が、面白い。
現実から目を逸らさないという点では、案外、悪人は悟りに近い存在なのかもしれない。無論、そんなモノはどうでもいいが。
悟りなど有ろうが無かろうが同じだ。
何を知り、何を成し、何を信念としようが、全て同じ事だ。とどのつまり当人の内なる世界の枠内に存在する規範に過ぎないからだ。問題は、善悪でもなく悟りでもなく小綺麗な綺麗事で飾り立てられずとも、それを貫き通せるか否かだろう。・・・・・・勝利から縁遠い以上、それを貫くどころか形にさえ出来ないのが、私の現状ではあるが。
我ながら、何をしているのやら。
書いたところで、何がどうなるというのか。
己を示す事が出来ねば、それは内々の世界にしか存在せず、そんなモノは無いも同義だ。それでは噺になるまい。私は成長したい訳でも誰かに認められたい訳でもない。まして人間の世界で本質など追い求めたところで、そもそも私は人間ではないのだから、そんな感覚は存在しない。
物語などその最たる例ではないか。物語から学び取り成長出来るならば、人類は全て覚者になっている。つまり、そういう事だ。
心に残ったという錯覚を覚え、それでいて学び成長したと思い込み、それだけだ。物語に人間性を変える様な性能があるならば、人類史において争い事は数千年前で死滅している。何も変わらないまま人類はここまで来た。それが事実だ。
やれやれだ。人間ではなく、人間の物真似をして人間の「フリ」をしているだけの化け物が、どうしてこう、本来人間が歩むべき道を率先して歩かねばならないのか。人間的な成長など私がしてどうなるというのだ。人間性を持たない私は、ただ人類社会に折り合いをつけ適度に充足しつつ、金を儲けられればそれでいいというのに。
人間がそれを行い、私は回らなくてもいい遠回り・・・・・・嬉しくもない「本質」を歩む。いい加減馬鹿らしくなってきた。
表面だけあればそれでいいではないか。
成長だの過程だの真実だの、ロクなモノではない。押しつけられた私が言うのだから間違いない・・・・・・薄っぺらい仕事もどきで、それらしい表面だけのハリボテで、ただ幸運に恵まれただけの信念で、金を儲ける連中を飽きてからも見てきた。 それでいいではないか。
何故、人間でもない私が真逆を歩き、人間共が美味しい部分を啜れるのか。正直、楽で羨ましい・・・・・・私の労力は何なのだと考えざるを得ない。 楽と楽しいは違うと人は言うが、しかし苦痛と苦悩、労力と徒労が楽しいとでもいうつもりだろうか? 馬鹿馬鹿しい。楽しい事など何もない、のではない。「楽しい」という概念そのものが、私には最初から無い。
言わば、労力だけを押しつけられている形だ。 その癖、連中はこちらに綺麗事の人間性を押しつけるというのだから、笑えない。結局のところ持つ側にいるか否か、それが全てだ。
勝利する側が全てを得る。
負けて得られるのは屈辱と死だけだ。
それが、人間ではわからない。いや、理解する事を放棄する。表面だけの癖に、真実も連中は語り出す。道理を引っ込める力があれば、真実どちかなどどうでもいい。結局のところそれだけが、延々と繰り返されてきた。
そんな世界に「本質」だと?
何の力があるというのか。物事の本質など、残り滓のようなモノだ。何の力も価値もない。誰一人として気にはしないし、変えられる立場にいる存在が自由に決める緩い世界だ。そんなモノを追い求めるのは、現実に余力があり、暇を持て余した挙げ句自身の正当性を他者に認めさせたい、豚のように肥え太った「持つ側」に過ぎない。
その程度、という事だ。
だから、私は金が欲しい。
役に立たないゴミよりも、確かな金、確かな力・・・・・・経済が破綻すればそれまでだが、金という概念は無くならないし、回る限りは確かだ。
嘘八百の綺麗事よりは、信じるに足る。
元よりこの世界に「正しさ」など存在しない。常日頃から私はそう考えているし、それが事実だろう。善悪などと言うのは「縋る」為のモノだ。何が正しいか何を信じるか何を志すのか・・・・・・こればかりは己自身で決めるしかない。それを怠る輩は多いが、縋った何かが縋れなくなれば、悲惨の一言に尽きる。デジタル社会が進んでからは、それが非情に多くなった。信じるべき何かではなく、信じられる何か、他者の意見でそれを誘導する事が増えたからだろう。何を信じ何を考え、何に挑むべきか、それを自身で考えなくとも良い、という風潮が増えている。
今回の物語は、それを覆す物語だ。
信じるべき何か。それをどう判断するのか・・・・・・世間の倫理観に任せるのは簡単だ。しかしそれは己で出した答えではない。正しく感じるのは、それを正しいと刷り込まれているだけだ。世界に明確な善悪など無く、それ故に正しさなど無い世界で、己で信じられる何かを固定しなければならない。信じたい何かではなく、定めた法に乗っ取って進むのだ。
それが真実か虚実か。
判断するのは己自身であるべきだ。
元々世間の倫理観など鼻にもかけない私ではあるが、比較するだけならば参考にはなる。少なくとも、世間の読者共の大半はそれに縋る事で、物事を判断しようと考える。凡俗の読者共に合わせなければならないのは面倒だが、これも仕事だと割り切ろう。売れもしない作家業を仕事と呼べるのかは微妙なところだが、何、己を示しさえすれば、示そうと心がければそれが「仕事」だと、言えなくもない。言えなくても知らないが。
さて・・・・・・物語を語るとしよう。
金にならなければ語るだけ無駄な気もするが、語らなければ己を示せないというのだから、全く世界一因果な商売だと嘆息せざるを得ないが、私は「邪道作家」だ。金に換えてみせる。今回の物語もこれまでの物語も、無論これからの物語もだ・・・・・・口にするだけなら簡単だが、実際、どうすれば売れるのかと言えば、物語の売れ行きなど、中身など何の関係も無くそれが売れるから売れるというのだから、我ながら無駄な足掻きかもしれないが、それらを理解しきった上で諦めが悪いのも、また私という作家の宿業なのだった。
やれやれ、参った。
せめて金になればいいのだが。
十四巻 第一部完結
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「運命」とは本来神でさえ干渉できない存在だ・・・・・・神話を読み解けば分かるように、神々でも予期せぬ争い事で破滅したりする。だが人間だけがそれに干渉している気がしてならないのだ。意図する方向に向かえるかは別だが、人間の意志の方向性で運命が左右されるとしたら?
変えられる奴と変えられない奴の「差」は何か・・・・・・簡単だ。現実にそれを影響出来なければ、意味がない。己の意志を現実に反映させる力、その有無こそが運命を「決定」するとすれば、持たざる時点で「敗北の運命」は変えられない。むしろ「勝利するべくして勝利する」連中こそ運命を変えていると言えるのだ。連中が突然破滅したりするのも、当人が運命を変えたからだ。己から敗北に向かえば破滅するのは必定だ。
持たざる時点で運命を変える力が無い。
その「運命」に干渉し「支配」する。
我ながら、壮大すぎる目的を持ったものだ。周囲が味方してしまうのではない。言ってしまえば物語における「試練」を、こちらの都合で作ると言っているようなものだ。敵も味方も周囲の環境さえこちらが支配できれば、たかが敗北の運命如きどうにでもなる。
ただ売れるだけでは駄目だろう。読者共の思想すら操作しなければならない。商品を売るとは、本来そういうものだ。買い手が何に感動し、何を思い、何故買うのか。それらを最初から最後までこちらで「そう思うように」影ながら操作する。 それが出来れば無敵だ。
読者共が悪感情を持とうがどうにでもなる、のではない。その意志をこちらの思惑で発生させる・・・・・・「敵意」すらもこちらが決める。物語を通してであれば、それも可能だ。別に何一つ非現実的ではない。むしろ、物語とは千差万別の感想を抱くものだが、読者にどんな感想を抱かせるか、それは「物語のテーマ」だ。それによって決まるのだから、それを通して反感する奴も敵意を持つ読者も賛同する奴も、大方想像は可能だ。
賛同しようが反感しようが、その読者の意志は私から発生する。それを「利用できる形」にすればいい。まさに最悪だが、構うまい。読者など、そもそもそういうものだ。流されやすく考えもせず、物語に金を支払わずとも良しとし、大した金を支払いもしないくせに評論家を気取る。
別に気を使ってやる必要はあるまい。
思うのだが、相手の都合を考えないくせに、自分は相手に愛されて当然だし相手は己を思いやって当然だし、まして自分は相手の為に行動しているのだから我慢しろ。そんな馬鹿が多過ぎる。相手の都合を考えないで身勝手なのは、その本人の勝手だ。しかし勝手を貫いておきながら、相手にだけ常識や倫理を説く姿は、私にさえ醜く写る。 まして、物語だ。どれだけ時間がかかるか。それに対してコインでしか支払わない読者共に、思うべき何かなど、ある筈があるまい。
金さえ支払えばどうでもいい。
放っておくと金を支払わずに読もうとするしな・・・・・・鞭で叩いて躾る、家畜みたいなものだ。
金が有りすぎれば災難を呼ぶと言うが、そうではない。砂漠で一番の死因は「溺死」だ。乾いた大地に当然水を注げば自然そうなる。だが、金が有りすぎるが故に溺れるのではなく、金があろうが無かろうが、そういう奴は溺れるのだ。
それも運命の後押しがあれば、転落への道であれ成功への架け橋であれ、当人の意志とはさして関係なく動くものだが。実際、当然金を手にした人間など、その典型例だろう。「何をするでもなくそうなる」という力だ。無論その力は当人の意志や行動とは無関係に動く。空から幸運が降ってくる事を期待するよりも、不信感と共にその流れに干渉し、勝利しようと考えるのは当然だろう。 よく「運には総量がある」などと言われる。所謂その「宝くじ」だとか「分不相応な成功」とかそういう一時的な成功の後に、転落して人生を破滅させる奴が、多いからだろう。しかし運そのものには総量などない。「手にした幸運」を活かせない愚か者であるだけだ。いやこの場合、成功や勝利しか知らなかったから、「幸運を活かす」という発想が既に無いのだろう。
素直に引きこもって自己満足の物語でも書いて売れば良かったのだ。私ならそうする。物語を売りに出すにも当然、金はかかるが・・・・・・デジタル媒体が多いこの世界で、売りに出す事事態は難しくはない。この場合「売りに出せる人材で、信頼に値する人物」を探すのが難しい。私か? そんな奴はいないだろうから、売りに出した後は己でやろうかと考えていた。
そう、それでは無駄なのだ。なるべくしてなると言うなら、私がそうやってあれこれ手を尽くさなければならない時点で、流れには乗れていない・・・・・・有り得ないとは思うが、しかし必要なのも「事実」だ。私の代わりに売りに出せる人材で、信頼できる「協力者」が。
それに出会う事を、祈るしかない。
あの女の忌々しい言に乗っ取るなら「運命の守り神」とでも言うべき存在が、そういった連中のようにならないようそうしていると取れる。だが頼んでいないのもそうだが、だから執筆するだけして金も支払われずに満足しろとでも言うのか? 馬鹿馬鹿しい。
人生は舞台であり、過ぎ去れば一瞬だ。一時の役割を果たすに過ぎない存在だ。だからって、舞台装置がスカのまま演じさせられて、大した給料も貰えずやるだけやり遂げたのに何の成果も手に出来ず、満足する奴がいるとでも思うのか?
ふん、とはいえ・・・・・・我ながら、既に呪い以上だ。そうまで分かっていながら筆が動く。私は、全ての読者共は死ねとしか思わないが。
いっそ、この呪いを解かなければならないのかと考えてしまう。この呪いにかかっているから、私は豊かになれないのか? しかし、外せる訳が無いだろう。いわばこれは「心」が無い事を知っている「私」が、作家を志すという「代理の心」を埋め込むために用意したモノだ。魂を切り裂いて殺す方がまだ簡単だろう。私に魂は無いが。
思えば「魂」が無いからこそ「幽霊の日本刀」も使えるのだろう。普通で有れば所有した瞬間、生物で有れば死んでいる筈だ。魂の欠落した化け物だから「サムライ」になれるのか。個人的にはそこに、心を欠損させた慰謝料を神とやらに請求したいところだが、金持ちというのは己の権力の大きさに依存して、何をしても許されると思いこみがちだ。実際には「無理矢理許させる暴力」が権力と呼ばれているだけだ。まあどうでもいい。回収できない所に問い合わせても時間の無駄だ。 神は人間より「上」らしい。上だの下だの、そんな概念は当人の内側にしかない思いこみだが、それを現実に押し通せれば本物だ。世界に上下はないが、力の有無は確かにある。力がある場合、自身が「上の存在だ」と思い込み易いだけだ。
ただのそれだけ。しかしそれに巻き込まれるのはたまったものではない。どうか、私とは関係ない所で、その頭の悪い論争を続けてくれ。
私はどうでもいい。
元より、作家は社会において何の力も持たないどころか、そも「最低の環境」にいるからこそ、作家などという生きる事に詰まった職業しか選べないのだ。私もそうだ。薄っぺらくとも良いから適当に才能に任せて、人生をこなしたい。今更、考えるだけ無駄な話ではあるが・・・・・・絵の才能でもあれば、漫画家を目指していたかもしれない。 手が震えて、筆すら使えなかったが。
文字だけで表現するなど、簡単だ。むしろ文字で得再現できなければ、他の何でも出来ないのではないだろうか。無論、手間はかかるが。
それに、出来たところで、という気もする。絵で描いた方がどう考えても伝わりやすく売れ易いではないか。漫画で読めるモノを文字で書く必要性など、あるのか? 我ながら作家としてあるまじき台詞の気もするが、実際現存する全ての小説は絵で書き直せば良いのではないか?
語る物語は必要なのか。
物語に夢を見るとアンドロイド共は言うが、出来の良さそうな映画でも仕立てて、流行だと言い張り、それを押しつければ満足しそうだが。
観客などそういうものだ。
今憤っていても二秒有れば忘れる。思想ではなく感情で動くあたり、発情期の動物と同じだ。その事実を認めた上で、売りに出さなければならないのだから、正直骨が折れる。そんな連中相手の商売を、どうしたところで止める事も諦める事も出来ないのだから、見るだけで鬱陶しい。
文字でしか伝えられないだと?
良い言葉がある。寝言は寝て言え。
妄想を起きたまま話すんじゃない。
小手先の技術が無駄なのは確かだが、だからといって物事の本質に力が宿る筈がないだろう。物事の本質とは、結局のところ現実には何の力も持たないからこそ重宝され、現実には絶対に成し得ないし、出来たところで無駄だからこそ、持っている奴に限って追い求めるのだ。
つまり、ただの妄想だ。
そんなゴミはどうでもいい。
とはいえそんな妄想を掲げている読者共が持つ側にいるのは事実だ。どうするか・・・・・・いやいっそ「読者共自身に宣伝させる」というのはどうだろう。最初は無料で作品を配布し、飽食の馬鹿共に「友達を紹介してくれたらキャッシュバック」とでも言えば、連中は金欲しさに浅ましくも宣伝活動をするのではないか。
やる価値はある。後の問題は、作品を売りに出す事だ。ただ売りに出すだけでは駄目だろう。デジタルコンテンツとして形だけでなく、それを、使いやすい形で提供できるエンジニアが必要だ。そして、連中は馬鹿みたいな金額を要求する。
都合の良い「協力者」が得られればそれでいいのだが、そうならなかった場合も考えねば。あの女の言であれば何もしなくとも「なるべくして、成る」のだろうが、それが良い流れとも、やはり限らない。
この世界の真実は、愚か者に権力を与え、貧者には地獄を与える。過程は問題ではない。そこに幸運が無ければ、どれだけ正しかろうが己の道を歩いていようが同じ事だ。人間は平等だが世界は平等ではない。何をしようが同じ事。
信頼も信用も値しない。
ただのそれだけ、だ。それだけのモノに任せる気にはならない。任せる事で成功するかもしれないと言うなら、それとは別の道も走らせておく。 ただのそれだけだ。必要な事を必要に応じて、必要だからするだけだ。
私に出来るのは「言葉を操る事」だけだ。何とそれの無力な事か。時折、いや結構な頻度でない方がマシだと思う。言葉そのものは完全な無力であり何の力もありはしない。なら凡俗共が何故、言葉に力があると思い込むのか?
簡単だ。そうであるかのように騙せばいい。
言葉に力は無いが、あるかのように錯覚させ騙し欺く事は可能だろう。全ては同じだ。どれほど素晴らしい物語であれ、読み手はそれを実際に、体験する事は出来ない。したかのような気分に、なるだけだ。
それすら利用して、勝利する。
とりあえず・・・・・・「最悪」である私が読者共の悪意を利用するのは当然だとして、善意の支配も進めなければならない。「良い事」をしていると思い込んで他者を殺す人間がいるように、まるで善行を行っているかのように錯覚させ、私の実利に繋げるのだ。それしかない。
言葉に「真の力」などあるものか。ただの妄想でしかない。だが、妄想を信じさせれば、本当の意味での力、つまり「持つ側」にいる連中を支配できれば、こちらがどこに立っていようが、連中を利用すれば必ず「勝利」出来る筈だ。
何せ、連中は「持っている」のだから。
有り余る程持っている。ならばそれを奪うまでだ。いや、この場合奪われているとも支配されているとも考えさせず、本人の意思で捧げるように仕向けるのだ。唯一残された「道」だ。言葉が無力なら、有力な奴を騙せばいい。
勝負事の基本だ。
世の理不尽が恐怖や不安に繋がるならば、それを作り出す全てを「支配」すればいい。あちらの都合ではなくこちらの都合で「試練」も「障害」も「敵対者」も作り上げる。少なくとも作家業に関してはそれが見えてきた。「読者」が何を考えようがどうしようが、「善意」も「悪意」も全て作品の売り上げに繋げればいい。作品に感動を覚えるならその感動を利用して作品を宣伝し、作品に悪意を覚え敵対するなら、その敵意を利用して無理矢理にでも炎上させ、作品の利益にする。
それを、こちらの意図で作り出す。
仕組みはおおよそ頭の中で理論化出来た。後は金の力でそれを現実にするだけだ。私に出来る事は限られているが、金で出来ない事は無い。
やるしかあるまい。
とはいえ、それを「私の意志」と言えるのか、有る意味では疑問だ。私には最初から、何の選択しも無かった。いわば「消去法」だ。無論、私個人の目的である「ささやかなストレスすら許さない平穏なる生活」つまり充足した人間の生活を真似して平穏なる生活を生きるという目的は、確かに私のモノだ。しかしそれに向かう為の方法論、「困難に対して挑む」というのは、私個人の意志ではない。そうしなければならないから、そうしているだけだ。
散々繰り返した「成長に関する論議」はまさにそれだろう。私個人は成長など、さして望んではいなかった。何事も無く「薄っぺらい勝利」を手に入れ「持つ側」として暮らしていれば、生涯無縁だったろう。
その結果「傑作」は書けないかもしれないが、傑作を書いたという自己満足があればいいだけなのだから、ある意味では同じだ。そも売れない作品の善し悪しなど当人の内にしかない。どちらに転んでも今と変わらないという事か。
最初から人間性は既に無く、文字通りの意味で「生まれついての最悪」だった。それはいい。どうでもいい事だ。しかし、それによって呪いの様な生き方をする事はどうでもいいが、その呪いで不利益を被るというなら、誰に請求すればいいというのだ。貧乏くじだ。正直な気持ちとして、金になるから「善」だの「正義」だのと呼ばれるのだから、その対になる「悪」とは元よりそういうものなのだろうか?
だとすれば、滑稽だ。
勝つ為に生きる悪こそが、実利とは対極に生きるというのだから。実利を貪り美味しい思いをするのは、いつだって「善」だの「正義」だのだ。 持っているから綺麗事を吐ける。
ただのそれだけだ。そして、そういう連中に、地獄より悪辣な悪意を塗り込んでこそ、作家として私は勝利したと、言えるのだろう。
そこに至るまで随分道のりは遠そうだがな。
やれやれ、参る話だ。
全ての事柄には「意味」がある。私の行動も、例え結末に辿り着かずとも、意味だけは残るのだ・・・・・・そんな意味は願い下げだが。
実利を伴わない意味など私が殺す。
この世界には実利を伴う意味だけでいい。実利を伴う意味には人の心を打つ「何か」が無いのだと言う声も聞こえるが、感動したいだけなら物語でも読めばいい。物語が薄っぺらく意味を喪失し面白い物語が死に絶えたというなら、いっそ薬物でも打ち込めばいいのだ。
私は己自身の肉体を支配する技術を磨いているので、人並み以上に肉体を操作できる。私自身、「感動」が健康に良いと聞いて肉体を感動させた事もあるが、別にそれでも構うまい。何せ、中身より外面を優先したのは貴様等だ。読者共に面白い物語が見つからないとほざく奴は多いが、それは違う。面白い物語を排他してきたからこそ、そんな物語は死に絶えたのだ。
そして金にさえなれば必要ない。
昔の物語だけでも、人の一生で読み切れまい。新しい物語など焼き増しに過ぎない。過去の偉人が作り出す芸術を、文化を、物語を越える傑作を望んでいない連中に、くれてやる何かなど無い。 人類が現実から目を逸らし、自己満足の充足に浸りながらまるで「希望」があるかのように錯覚して、現実に横たわる問題から目を背ける。その為の「物語」だ。だからこそ物語に現実味など、必要ない。要は読者共を心地よく夢の世界に飛ばしてやればいい。麻薬みたいなものだ。
安い現実逃避薬。それが現代の物語だ。
それを否定しようとするくせに、物語から学ばず「成長している気分」になれる語り手が売れる・・・・・・私もそうありたいものだ。
その方が儲かるからな。
儲かればそれでいい。全ての商売は客の満足ではなく、売り手の支配が為にある。世の億万長者共を見ろ。地獄にたたき落としておきながら、後になって後悔し寄付で慰め合う馬鹿共だ。そんな連中が儲けられるコツなど、他者を陥れ他者を食い物にし、たまさか幸運だっただけの凡俗以外に答えなどあるものか。
個人の意志は関係ない。世界はそう出来ている・・・・・・自我が目覚めてすぐに、誰であれ理解できる内容だ。世界は平等ではない。世界の綺麗事に力などない。世界の仕組みは動かす側の為に存在する。子供心ながらに友達と遊び、勝負に負けた時や、テストの点数で上に行けない時。何であれ差があれば、すぐに理解するだろう。
自身が「持つ側」か「持たざる側」か。
もっていれば簡単だ。それに任せて何も考えず才能のまま生き、後になって金を投資にでも使い込み、あるいは金の使い方を知らず、いや金が、その正体が何であるかも知らず、転落して後悔し落ちぶれていく。
持っていなければ簡単だ。一生そのまま、敗北し続けながら己を哀れめばいい。才能があれば、幸運があれば、稀に本当にそれを手に入れ、幸運を使いきれずそのまま死ぬ奴も多いが、幸運だと理解せず、使えばなくなるという当たり前の現実から目を背けて、更に落ちぶれる奴もいる。
とはいえ、あくまで一例だ。幸運を保持し続け勝利し続ける奴は確かにいる。運が平等であるならば、総数が一定である以上、偏りが出るのは、考えるまでも無いことだ。一度、見てみたいものだ・・・・・・何も持たず、それでいて信念があり、持たざるが故の説得力を持つ人間。そんな奴いるのかって気はするが、いれば取材してみたい。
私か? 馬鹿が。そも言葉の説得力など妄想に過ぎん。あくまでもそれらしくしていて、かつ、その妄想を真だと思い込んでいる馬鹿を見たい。 地獄に突き落とすのが楽しそうだからな。
頭で考えず、感情で考える。
それが「人間」だ。だから失敗する。あろうことか持っている奴でさえ、失敗する。己の意志で敗北に突き進むのだ。真面目に生きている私からすれば許し難い馬鹿だが、それが事実だ。例えば・・・・・・ここに一人の「大統領」を決めるとして、その大統領を決める決定打は何か?
スキャンダルだ。
足を引っ張り合い、普通に頭で考えれば、二秒でそんな都合良く選挙中に弱みが出る訳ないだろうという内容でも、被害者がもっともらしく私は酷いことをされましたと言えば、信じる。会って話した事すらないのに「可哀想」だの「こんな酷い事をするなんて」と。何故なら被害者らしい奴の味方をしていれば「良い人間」である気分に、なれるのだ。
だから真実、信じている訳ですらない。
ただ信じたいから信じるだけだ。
神を信じている奴は多いが、その何割が真面目に信仰しているのだろう。多くは、都合が良いから信じているだけではないだろうか。信仰は悪ではない。最悪の私が言うんだ、間違いない・・・・・・信仰を理由にして使う奴の方が、多いがね。
神を信じていれば、神をどう信じるかで争いが起こるというのだから、見ていて笑える。最高の見せ物だもっとやれ。
「神」とは一種の概念だ。人の形をした神の話は多いが、多くの人間は「摂理」を指し神と呼ぶ事が多いらしい。まあ当たり前だ。世の理不尽から生まれた概念といってもいい。実際に神がいようがいなかろうが「神を信じる」という行為は、信じるだけで終わりではない。
神がいたとして、それにどう向き合うかだ。神の行いを信じるのは良いが、ただそれだけでは、ただの人任せだ。神がいるとして、真面目に仕事をしている姿を見た訳でもないのに、盲目に信じるというのは、ただそうであって欲しいだけだ。 いるならいるで、どうするべきか?
考えなければならないのだ。
まさか、実在したところで一人一人丁寧に救ってくれる筈があるまい。そこまで暇なら神などと呼ばれないだろう。神がいるとして、その救いが届くとは限らない。それが出来るなら世界に死人は一人もいない。神が全能でそれが出来るとしても、救うかどうかは神が決める事だ。神は優しいから救ってくれる筈だ、と思うのは勝手だが、それが外れた時には死ぬだけだ。
何にしろ「神を信じる」だけで、神に全て任せたいだけではないだろうか。都合良く救われたいという「欲望」を「神を信じる」という形で叶えたがる連中は多い。信じていないし、いたところでどうでもいいが、幸運を運んでくれるなら賽銭くらいは払う私の方が、それならマシだろう。
金は支払っているからな。
幸運は、特に無かったが・・・・・・信仰云々の心が必要だというなら、諦めるしかない。そんな心があれば「人間の真似事」などしていない。
摂理は理不尽で、世界は救われない。神を信じるというのはその世界に挑む時、人間の意志を一つにして戦う為ではないだろうか。行いの結果は誰にもわからない。しかし、信仰する神がついていると、勝利の女神は微笑んでくれていると、己を奮い立たせ戦い続ける為ではないのか?
化け物である私にはそんなのは必要ないし、幾らでも無限に、在り方として固定してしまっている以上、戦い続けるのみだが・・・・・・人間は悩み、苦悩し、信じる何かが無ければ折れてしまう。心の無い私と違って、持っていてもそうなのだ。
むしろ、私の様な奴が社会に溢れているなら、それはそれで心配だ。人間社会は終わりかと思うだろう。何せ、心を捨て去り人間性を破棄し、人間の物真似をしながら人間の文化を貪るなど、どう考えても生物の在り方ではない。
私は笑ってそれが出来るが、正直言って映画に出てくるロボットの方が人間味はあるだろう。私はそれを真似ているだけだ。
まあどうでもいい。少なくとも私の目からは、そう見える。「目先の現実」より「心地良い妄想に耽る」を選ぶのが人間だ。そんな読者共に、あるいは社会に望む何かなどありはしない。そんな読者共が、言葉で何かを変えられるものか。
もしそんな奴がいたら商売あがったりだ。
冗談じゃないぞ。読者共はおとなしく、馬鹿みたいに浅い話に感動していればいいのだ。恐らく映画業界を牛耳るスポンサーと、意見は同じだろう。聴衆は面白半分で動くもので、実際に何かを学び取り、成長するなど物語の中だけだ。
それが現実であり、そんな連中に期待すべき何かなど、ある訳がない。故に言葉に力が宿るというのは、本を読み過ぎな読者共の妄想だ。
読者共の妄想に、付き合ってられるか。
馬鹿馬鹿しい。
それでもこの在り方は止められないのだろう。何せ、内に何も無いからと、そう定めて己をゼロから作り直したのだ。心がないから心を定義し、それに従って動くよう作り上げた。辿り着くか、死ぬか。面倒な在り方だが、今更修正は効かないというのもあるが、そうでもしなければ私は辿り着けないだろう。
全存在を賭けて挑むと言えば聞こえはいいが、要はそうでもしなければ勝てない無能なのだ。才能だの幸運だの、安易でいいから楽がしたい。
楽しいと楽は違うだと? いいや同じだ。人間の物真似をしているだけの存在である化け物に、楽しいなどという感性はない。幸福も感じ取らないし達成感すら存在しない。とはいえ疲労を感じ取らないからといって無駄な労力は願い下げだ。 無駄な遠回り、労力に人間なら後になって充足感を得たりするのだろうが、私にそれはない。無いものは無いのだ。あくまでも、それらしく振る舞い「充足を得ている」という自己満足で楽しむ在り方そのものを、味わう。
それが「私」だ。
しかし「幸福な人間」の理想型を物真似するのは案外面白いのだ。美味しく焼けたホットケーキを摘みながら、コーヒーを味わいその雰囲気を楽しんでいるかのように、振る舞う。実際にはコーヒーの良さなど私には感じ取れない。味も同じだ・・・・・・ホットケーキを食べたところで、私にある感想は「甘くて柔らかい」しかない。
しかし、それを美味しそうに食べ、味わっているフリをし、充足感を得ているかのように振る舞う事の、何と楽しいことか。まるで、人間みたいではないか・・・・・・楽しくて楽しくて仕方ない。そういう意味では平穏であれば都合が良いだけで、争いに対しても何の感傷も私にはない。それを、充足として生きるフリをするのは困難が伴う上、争い事は金に換えにくいから、しないだけだ。
充足を得た気分になりたいだけなら、物語でも書けばいいしな。争い事に関する才能、と呼べるのかはしらないし役に立たないだろうが、殺人に対しても他者を傷つける事に対しても、他者の苦しみに対しても、何も感じない以上、ある意味で天性の「殺戮者」の才能かもしれない。
それが金になれば良いが、現実問題大した金にならない上「サムライ」としての能力はあくまでも「始末屋家業」に使うものなので、個人として以来を受けられる訳ではない。私個人に殺人を、金に換える能力がない以上、あろうがなかろうが同じだろう。
実際、使えない才能だ。
大昔ならともかく、いや、私の場合殺戮に対するブレーキが無いだけで、別に運動能力やそれに付随する才能がある訳でもない。殺人技能と精神性はまた別だろう。「処刑人」とかならともかく戦士として戦うには、実利が少ない。
まあどうでもいい。豚を殺すのも人を殺すのも同じだ。塗擦の風習がある以上、それも生命を殺す事は何ら変わりない。むしろ、逆だ。人間を殺すのは悪い事だ、とそう思い込んでいる連中が、人間以外に残虐を働けるように、無関心故の特性だと言える。私が特別なのではなく、連中が善人ぶる為に使わないだけだ。
ただのそれだけだ。
「それで、どうだね? 物語は売れた。金による充足は手に入れた。それで君に、何が手に出来たというのかな」
それは老人だった。恐ろしく年月を感じさせる風格ある老人。実際にそれだけの年月を生き抜いているのだろう。薄っぺらさなど微塵も無く、それでいて一切の不要な感情も持たない。あるのは狂気が優しく感じる程の「矜持」だけだ。
アンドロイドは夢を見るようになった。その、アンドロイド達に見境無く「夢」を魅せ、彼自身の思想を広め、指一つ動かさず世界の実権がアンドロイドと人間で二分されるならば、その半数を動かせる化け物だ。
そう、化け物。
その男はバイオテクノロジーとデジタルテクノロジーの恩恵を余すところなく受け、史上最も、人間に近いアンドロイドの雛形として生まれた、人類史史上、恐らくは、だが・・・・・・初めて人間の形で生まれた「別の何か」だ。
いわば先輩ということか。
どうでもいいがな。
「勿論、手にしたとも。金による充足、金による平穏。金による豊かさ。そのどれもが素晴らしいものだ」
「そして、君はそれを全く素晴らしいとは感じないくせに、それを肯定できる。ふん、前にも言ったが、それは生物の在り方ではない。人間とは、意志の行く末を見据え、それに到達するまでの、言わば君の嫌悪する「過程」にこそ輝きが灯るからだ・・・・・・君自身自覚があるようだが、金そのものが有りもしない幻想であり、泥水の中に沈んでいようが、己の矜持があり、それで胸を張って生きられるなら・・・・・・「幸福」は手に入る」
「だから幸福だとも」
「そういう事にしているだけだろう。真の幸福とは豊かさの中には決して無い。存在し得ないのだ・・・・・・魚は水がなければ生きられない。草食動物には草が、肉食動物には肉が、いやそれ以前に、空気が無ければ生物は生きられない。幸福とは、そこに理不尽が無ければ存在しない。何故なら、我々が住む世界は事如くが理不尽であり、それこそが「生きる」ということなのだ。それに向き合うからこそ、生を実感出来る」
「それは「人間」の話だろう。私に当てはめられる話ではない。私にはそも「幸福」以前に「心」が無い。心が無い以上何をしようが感じ入る事は決してない。それはいい。問題なのは、人間らしい幸福を押しつけられたところで、私には共感する気など塵一つ文分も無いという事だ」
「そうかな・・・・・・確かに君は人間ではない。私でさえそう思う。思わざるを得ない。何故なら君は生物であれば善悪関係なく忌避するであろう道を率先して進めるからだ。生物の在り方に匙を投げ「人間の物真似」などという器用な事をしながら人間の文化を楽しみ、存在する概念だ。最早生物と呼べるかさえ不明だろう。しかしそれでも、心が無いかは知らないが、魂がないとは限らない」「心と魂は同じでは?」
分かっている事でも指摘するのは楽しいものだ・・・・・・ささやかな娯楽でしかないが、他者が嫌がる何かとは、生物でなくとも面白く感じる。いやこの場合私がそう真似してきただけなのか? だとしても、そういう「気分」を味わえるなら、やはりどちらにしても同じ事だが。
「違う。魂とは、己で定義するものだ。君の場合「作家業」としての在り方こそ君の魂の形だろう・・・・・・本質を軽視するくせに、それを扱い物語を書き続ける姿は、端から見れば一目瞭然だ。しかも質の悪い事に、君には「自覚」がある。通常、自覚が無いからこそ人生に苦しみを覚えるのだが君にはそれが無い。ある意味でだが、生きる上で最も楽をしているとも言える」
「とてもそうは思えないが、ふん・・・・・・どうでもいいな、そんな些末事は。それで? 私に何が、言いたいのだ?」
「私は「人間」を「肯定」するという事だよ。君はそれを否定する。それしか出来ないし、するつもりもない。だから君は存在そのものが悪なのだ・・・・・・無論、私とて「善」ではない。そんなものは存在しないが、君を見ていると確固とした正義や善は存在し得ないが、悪だけは別なのかもしれないと思う。何故なら悪とは己の意志で成り上がれるからだ。君のように、己を肯定して何が何でも「そこ」に辿り着く。それは人間の意志であり人間の良さだ。君は人間を否定しているつもりだろうが、誰よりも人間らしさを体現している」
「ふむ・・・・・・そんなのは見る側が決める事だからやはりどうでもいいがな。いや、見る側の感想がどうでもいい訳ではない。そいつらの感想によって私の生活も変わるからな。「良い何か」だと、感想を持たせ、私の利益が守られれば構わない」 会話のようでかみ合っていない。いや、我々は互いに「宣言」しているだけだ。己の立ち位置を・・・・・・明白な敵同士だと。まあ私からすれば、別に無理に争う理由はないので、それこそ私の生活を邪魔しない限りは、老人が何をしようが構わないのだが。
この老人を見ているとひしひしと思う。思わざるを得ない。物語とは作者の都合で作られると、そう思えたらどれだけ楽か。実際には映画監督のようなもので、この老人のように強い個性を持ちすぎる連中に、声をかけているだけだ。それだけなら楽なのだが、それに引きずられるのは正直、かなり疲れる。
それもいつもの事だがな。
「君は金で何かを得られる、いや得られている、と定義しているが、それは偽物だということだ」「それが?」
何が悪いというのか。いや最悪である私に、正しいだの正しくないを話されたところで、だが。「ふん、やはり響かないか。生物であれば、私の言葉に耳を傾けるものだがな」
「貴様自身言っていただろう。それは生物の在り方ではないと。貴様のやっていることはエイリアンに人間の価値観を刷り込むようなものだ。いやこの場合、相手は生物の形をしている「何か」なのだから、それも違うがな」
「君は・・・・・・不安にならないのかね」
「馬鹿馬鹿しい」
我ながら口癖になっている気がする。とはいえ事実だ。今更何を気にしろというのか。
「私が不安になるのは金の多寡だけだ。貴様は、金は集団幻想だの運命によって定められているのだから、目先の金の多寡などありもしない幻想だのと言うのだろうが、実際問題金がないのは不安だからな。金さえあればそれでいい」
「だが、それでは「生きている」とは言えまい。君自身理解しているだろうが、生きるとはあらがうという事だ。理不尽に膝を屈せず挑み続ける事・・・・・・それをなくした人間は籠の中の小鳥だよ。それは飼われているだけだ。金の有る無しという思いこみの世界に、飼育されている」
「生憎矜持とは無縁でね。それに、飼う飼わないなどそれこそ思い込みではないか。猫を飼っているつもりが、猫に飼われているかもしれない。そんな当たり前の事に気付かない貴様ではあるまい・・・・・・大体が、私自身「作家業」という呪いを、永遠に解除できないらしいからな。いや、勿論、今までの作家共とは違う道を進むつもりだ。物語などの為に人生を棒に振るつもりはない。それすらも利用して更なる充足を得る。それが生き甲斐であり、我が充足なのだ」
「君は、どこまで目指すつもりかね」
「どこまでも、無限にだ。限界などない。あるものか。我々の求める幸福とは自己の中にしか存在しない。ならばそれを突き詰める事に限界など、ありはしない。何者であれ同じ事だ。持っている奴に限って物理的に豊かすぎてそれを内面にまで適用してしまうが、私は生まれついて何一つ持たざる者だ。そこに限界などない。新しく持ったからといって、そも私という概念が変質する筈も、ないからだ。人間か人間でないかなどどうでもいい事だが、しかしだからこそ人間では精神が壊れるような事でさえ、我が内面、そんなモノあるのか知らないが、貴様の言う「化け物の魂」は等しく全てを許容する。何もかも根こそぎに、無限に飲み干せる。飲み干した上で、さらに先を目指すなど容易だ」
「君は、案外君自身が思っているよりも、凄い何かなのかもしれないな」
世辞はどうでも良かったが、しかしそれも同じ事だろう。凄い凄くないなど見る側の視点だ。勝手な思い込みでしかない。
「さあな。どうでもいい・・・・・・どうでもよくないのは「私が楽しめるかどうか」だ。さて、そこのところは貴様が保証してくれるかと思ったが」
「さてな、私自身、そこまでの人材ではない。だが約束しよう。殺し合いではなく、君の敵対者として有り続けると。私は君の話を聞いた上でも、人間を肯定する。それは私の矜持だ。恐らくだが・・・・・・君に影響されないのは、君と同じ化け物だけだろうからね」
「有り難いね」
全く感情も込めずに、我々はそう宣言した。お互い何一つ思う事も感じる事も言うべき何かも、やはりない。我々の内面は真空よりも空洞だ。だがそれでも・・・・・・譲れない何かはあるらしい。喜ぶべき事だ。見る分には面白い。
私ではない。相手の老人の事だ。
そういう輩がいてこそ腕も振るう価値があるというものだ。
私は私が面白ければそれでいい。老人が行動すればするほど世界はすり減るかもしれないが、まあ構うまい。人間など、人間でなくとも、どうせその辺で一秒毎に誰かは死んでいるのだ。聖者でもない私が、それに気を配る義務などない。
今回の物語は「化け物」の内面に触れる可能性が高いので、読者共の精神が壊れるかもしれないが・・・・・・大丈夫だろう。もし壊れても、金さえ支払い物語を買えば、それでいい。読者を壊せるならむしろ、儲けものだ。
何せ、読者が苦しめば苦しむほど、私のような作家の懐が暖まるという事だからな。
サービス名 物語革命(仮称)
コンセプト
ユーザー総当たりでの大改革
全く新しい「未来」ビジネス
セールスポイント
ビッグデータ収集による、絶対に確保出来る「事前の」大量売上 莫大な需要確保
1.ビッグデータの活用を物語へ
事前予約による「利益と需要の完全把握」
事前にビッグデータによる情報収集を行い、その上で需要を調査。後に、需要と事前の支払い登録数が「一定数」を超えて「利益を確保」したものだけを実現に向けて活動するため、基本的に
利益が必ず確保されるビジネス
としての活動が「基本」となる。
これらにより
同一作品の複数映像化
といった事も可能になる。
制作に当たっても「事前の需要調査」や「希望商品に関する前払い登録」が済んだ上での活動となる。だけでなく、上記リンクのように「複数の候補」からの需要を事前に把握できるので、同一作品の複数映像化に需要があれば実現も可能。
これらを活用することで、今までは実現の難しかった
富裕層・企業向けの高級サービス
も実現が容易となる。無論、これらの実現により、多くの利益を安定して確保。新サービスの実現に向け資金を回し「流動的なコンテンツ」としての運用が可能。
後述の全サービスにこの「ビッグデータの活用」は行われており、それらを前提とするからこそ「確実な利益確保や、ユーザーの望むコンテンツの実現」が確実なものとなる。
2.個人法人を問わないユーザー参加型コンテンツ
法人であれば勿論、ビッグデータ収集による「未来の見通し」が良いサービスに「投資」という形で参加するのはいつものことである。
しかし、本コンテンツに関しては
リアルタイムで需要を把握しつつ、良いと思えば投資
が可能となり、かつ
個人でも参加可能なビジネスモデル
とすることで、事前登録による前払い決済。その金額が予算を超えれば制作開始という形を取ることで「一般ユーザーでもリスク無しで作品制作に出資」が可能。
当然ながら「政策決定後」の決済なので、気軽に前払い登録を行い、かつ事前登録によるノベルティや「アプリ内コンテンツの無償化」などを行い、ユーザーへの還元も行う「三方良し」のサービスとなる。
これらにより
中古市場の完全管理
による市場の整理も可能。
また、優れた拡散者やサービス案があれば
YouTuber・Vtuberの運営雇用
が可能になり、また
個人で制作した人気のコンテンツ
などもアプリ内で収集。運営で雇用するなり契約するも自由となる。
海外への積極的ビジネス展開
すらも、ネィティブレベルの翻訳さえ済ませ現地文化に合わせるだけで、基本となるデータ収集によるビジネス展開の方法は「同じ」である。
また
企業との契約・利益の具体性について
も、ビッグデータ収集による「数値化された需要と供給」だけでなく、前払い登録による「制作開始すれば、即座に前払い決済される売り上げ利益」という形ある利潤による具体的なサービス展開に向けての活動が容易となる。
3.データ収集による各コンテンツへの展開
優良顧客だけの、限定サービスの実装
すらも、ビッグデータ収集を行えば可能となる。
これらは「ユーザー同士の切磋琢磨」にも繋がり、支払いの良いユーザーを厚遇することで、上記「優良顧客限定」のサービス展開も可能に。また
ユーザー自体のビッグデータ活用
も可能なので、それぞれ「ユーザー毎に合ったサービスを、登場人物達が案内」するような形での、購買意欲を唆る運営からの「おすすめ情報公開」も可能に。
また
生活の一部としてのサービス展開
に関しては、恒常的にビッグデータを収集。それらを活用し常に「需要のあるサービスを把握し続け、それらを制作し続ける」という好循環も可能。
また、利益確保より
コンテンツ自体を楽しむ
という、言わば「小サービス」の展開を行い「利益だけでなく、ユーザーの利用依存度を深める」制作も可能となる。
その上で
他業界への積極的事業展開
に対する姿勢も「ビッグデータ収集により、ある程度需要を把握した上で」可能となるため、数値化された市場調査後に現在「利益が確保出来ているコンテンツ」を回しながらの展開となるため、余裕を持っての展開が可能となる。
これらは「物語業界の未来」を担うサービスであり、実現されれば
物語業界そのものが大きく変わる
のは、間違いない。
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例の記事通り「悪運」だけは天下一だ!! サポートした分、非人間の強さが手に入ると思っておけ!!
差別も迫害も孤立も生死も、全て瑣末な「些事」と知れ!!!