医学の知識ゼロで医学情報の嘘を見抜く最強メソッド!【028】確かなエビデンスによって覆った「医学の常識」
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医学の常識は時代とともに変わる
薬理学の一分野に、「薬力学(やくりきがく)」というのがあります。「ファーマコダイナミクス」という方が一般的かもしれません。
ファーマコダイナミクスの目的は、薬が私たちの体の中の何に、どのように作用した結果として、病気の治療効果や症状の改善効果をもたらすのか、その仕組み(メカニズム)を解明することです。
かつては、その薬がどうして効くのか、メカニズムが不明でも、とにかく治験(ちけん)(医薬品の承認申請を目的として行われる臨床試験)で良い成績を示せば、医薬品として承認されました。
ですが現代では、いくら高い効果が認められても、なぜ効果があるのか、その仕組みがサッパリ分らないというのでは、新薬として承認されることは難しいでしょう(致死的な病気で、他に有効な治療法がないなど、特別な事情がある場合を除いて)。
メカニズムが不明であれば、予測不能な重篤な副作用が現れないとも限りません。
どうしてなのか解らないけれど、「とにかく効く」というのではなく、効く理由に「納得ができる安心感」はとても重要です。
不測のリスクを排除・低減するためにも、可能な限り「どうして効くのか」の証明を行う。
これが近年の医薬品開発においては、重要視されるようになりました。
昔(数十年前まで)は、医師や基礎医学の研究者ですら、確たる根拠なく間違った治療法や予防法を妄信し、それが日本全国、いや世界中で盲目的に支持されて、今考えると、とんでもなく危険な事が医療として行われていたことがありました。
その典型的な例として、食物アレルギーの予防と治療が挙げられるでしょう。
とても危険な昔の食物アレルギー予防策
かつての医学の常識が、近年の医学研究によって大きく覆された実例についてお話します。
子どもは食物アレルギーになりやすいものです。
ずっと以前、前世紀のころは、その原因も理由も不明でした。
食物アレルギーになる子どもはアトピー性皮膚炎にも罹患(りかん)していることが多く、要するに「アレルギー体質」なのだと考えられました。
色々なものにアレルギーになりやすい体質なのだから、できるだけ危険な食材は与えない方がいい。
それが子どもの食物アレルギー予防の基本的な考え方でした。
これは、少数の専門家の意見などではなく、医学界全体の共通認識でした。
なぜ、このような間違った考えが妄信されていたのかというと、当時の免疫に関する理解が非常に浅かったということがあるでしょう。
わが国の子どもに多い食物アレルギーといえば、まず卵です。
また、命に関わる危険性の高さからいうと、蕎麦(そば)が挙げられます。
昔は、特に親自身がアレルギー体質である場合に、子どももアレルギーになりやすいのではないかと心配して、リスクの高い食材(卵や蕎麦)を徹底的に避けて与えないということが行われました。
医師も、子どもの親にそのように指導しました。
なぜなら、学会が食物アレルギーの予防法だとして医師たちに推奨していたからです。
小さい頃に食物アレルギーになっても、たいていは大きくなると自然に治ってしまいます。
それは、小さい頃(2、3歳の頃)は免疫が未熟で、異物ではない食物に対しても反応してしまうのだが、5、6歳の頃になると免疫もできあがって、正しく食物には反応しなくなるのだと考えられていたからです。
しかし、この考えには医学的な根拠がなく、なんとなく、そう考えれば、大きくなってから多くの子どもの食物アレルギーが治ることの説明がつきそうだと考えたにすぎません。
その、単なる思い込みに過ぎなかったものを、多くの医師や専門家ですらも支持していました。
いえ、それ以前に学会が、その考えを推奨していたのです。
そのようなわけで、大きくなって小学校に上がる頃になってから、それまで避けてきた食材を、「もう、そろそろ免疫もできあがった頃だから、与えても大丈夫だろう」と食べさせ始めるのです。
ところが、これは全く逆の、大変危険な行為であることが、現在では多くの医学的根拠に基づいて明らかになっています。
次回、どのようにして医学の常識が変わっていったのか、学会の臨床診療ガイドラインの変遷を追って見ていきます。
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