見出し画像

「原発にドローンの脅威」と題したNHK「クローズアップ現代」2025年11月18日夜の放送番組に登場した鈴木達治郞

 0 本記述は事情があって再公表の手順を踏んで,本日2026年6月27日,改・補訂作業をくわえ,ここに掲載している。


 今日,あらためて話題に取りあげるのは,日本の原子力工学者である鈴木達治郞(すずき たつじろう;1951年生まれ)である。鈴木は,前・長崎大学核兵器廃絶研究センター教授を務め,元内閣府原子力委員会委員長代理(常勤)も担当した。2025年1月,パグウォッシュ会議の執行委員会委員長に選任された。同年3月に長崎大学を勇退し,4月からはNPO法人のピースデポの代表を務めている。

 この記述を公表する本日まで,本ブログは,関連のあったつぎの記述4点を2026年6月23・24・25・26日に公開していた。いずれも長文の記述となていたので,これらを先に読んでもらいたいといったら,ずいぶん過大な申し出になりそうなので,

 ともかく「原発・原子力エネルギー」問題は,現在のこの国における電力問題にかかわって非常に重要な課題を,いうなれば,国家安全保障の問題にまで直接するという重大な関連性があった点のみ,ひとまず断わっておくことにしたい。

 本記述全体の本論部分は次項から始まることになるが,その前に,東電福島第1原発事故(2011年3月11日)に関連させて,以下のような「現在になってもまだまだ濃厚・重大に残存しつづける」「その事故直後に広域に拡散された放射性物質の有害性」が,実はいまもなお持続中だという事実を説明しておきたい。

 a)「福島第1原発事故15年目の真実 2026年1月の放射能測定結果」(いわき放射能市民測定室 たらちね)『阿修羅』2026年3月11日 10:17:57,
https://www.asyura2.com/22/genpatu54/msg/442.html

 この「3・11」発生後,『阿修羅』という「すべての虚構を暴き,真実に到達しようとしている」と公言する「掲示板」のサイトが,「福島第1原発事故15年目の真実」だとして,つまり,2011年に発生した東日本大震災,これに惹起された巨大津波の襲来によって,21世紀に残る原発の過酷事故が起きてしまった--その4基が爆発し,うち3基が原子炉の溶融を起こした--東電福島第1原発の「後遺症的な現実被害」が,いまだに福島県の被災地には持続して残存する事実を取りあげていた。

 その事実の内容は「認定NPO法人 いわき放射能市民測定室 たらちね」
https://tarachineiwaki.org/ が「2026年1月の放射能測定結果 99件」https://tarachineiwaki.org/wpcms/wp-content/uploads/sokutei_kekka_202601.pdf として公表してきている,というものであった。当該の「データベース検索結果一覧」は,上記の org/ に「3・11」以後に計測してきた関連の統計が公表されている。

 以上の前提事項を断わったところで,『阿修羅』2026 年3月11日の本文は,下掲する統計表を添えて,以下のように解説していた。

一般的にいわれる原発の後始末は使用済み核燃料の問題を中心に語るとなれば
10万年先まで人類・人間に負担(ツケ回し)をすることに触れないわけにはいかない

この負担の話はその捨て場を地中深くに設営したうえで未来にまで保管していく方法ともなる

原発事故によって地上にばらまかれた放射性物質の有害性は
核物質の半減期が各種各様に長期でもあるいう特性のために

そのための最終処分場と称する施設をこの地球「表面」に残すほかなく
いまのところ世界で唯一実用化されているフィンランドの関連施設が
「オンカロ」である

つぎのウィキペディア記事を参照されたい
https://ja.wikipedia.org/wiki/オルキルオト原子力発電所

〔本文・記述に戻る→〕 「福島第1原発事故から15年経ちました。「もうすっかり事故のことを忘れてしまった人も多いでしょうが,福島近辺では相変わらず高いレベルの汚染が残っています」「計算上でも,半減期30年のセシウム137やストロンチウム90は3割しか減衰しません」

 「さすがに食品の汚染は少なくなっていますが,土壌汚染が数百ベクレル/kgと凄まじく,すぐに避難を要するレベルです」「戦慄するのは,掃除機のゴミから1300ベクレル/kgも検出されていることです」

 「こんな環境下では大量に吸気被ばくしてしまい,がんなどの疾患にかかる可能性大です」「福島第1原発事故はなにひとつ終わっていません」

 b) 横浜の保育園で2人の子が白血病発症の続報 汚染土が園内に埋め立てられていた 線量は6年前の5割増」『阿修羅』2019年2月27日,https://www.asyura2.com/19/genpatu51/msg/129.html
 
 「横浜市在住の6歳の双子(男子と女子)のお父さんからの情報です」

 「男のお子さんが3歳で白血病になり回復中ですが,なんと同じクラスの女の子も白血病になったそうです。園児が10万人近くいなければ絶対に起こりえない頻度〔確率〕です。まちがいなく放射能汚染による被ばく〔被曝〕が原因でしょう」

 「横浜市といえば市内の小中学校から1万Bq / kgを超える汚染が何ヶ所もみつかっており,除染で出た汚染土を学校敷地内に埋め立てたり長期間保管するなど,非常識な対応が激しく批判されました」

 「汚染牛肉を給食で小学生に食べさせたのも横浜市です。1万Bq / kgといえばチェルノブイリの強制避難区域に匹敵する汚染です。子どもは50Bq / kg以上の土壌汚染で危険といわれていますが,実にその200倍以上です」

 「そんなところで毎日走り回っていれば,健康でいられるほうが不思議です。これは氷山の一角で,複数名の白血病が出ている幼稚園や学校がすでに相当数あると思われます」

 「いよいよ始まったのです」(引用終わり)

 この b) の話題に関しては,このリンク先住所からたどれるが,さらに関連するあれこれの話(横浜市内の汚染騒ぎ)が読める。

 c) さて,以上の a) と b) の話題を受けた話となる。

 元京都大学原子炉実験所助教・小出 裕章は,『兵庫保険医新聞』2026年1月5日(2122号)に掲載されたインタビュー記事「〈ピックアップニュース 新春特別インタビュー〉チェルノブイリ原発事故から40年,東日本大震災・福島第一原発事故から15年 危険な『日本の核政策』私たちは何ができるか」のなかで,つぎのように答えていた。

以下はとくに,★ いまも続く「原子力緊急事態宣言」★という見出しの振られた段落から,小出裕章のつぎの発言を取り出し,紹介する。

 司会者  福島第1原発事故から3月で15年になりますが,2011年3月11日に出された「原子力緊急事態宣言」はいまも解除されていません。この「原子力緊急事態宣言」についてお話しください。

 小出裕章  当日,福島第1原子力発電所は,地震によって外部の送電塔が倒壊してしまったため,外部から電力をえられなくなりました。そのうえ,1号機から4号機の非常用発電機が津波の浸水によって動かなくなりました。地震発生と同時に原子炉じたいの運転は止まっており,発電所はすべての電源を奪われる状態になりました。

 原子炉は運転を停止してもすでに溜まっていた死の灰じたいが発熱を続けるため,いついかなる時も冷却しなければいけません。しかし冷却するためには水を回さなければいけません。水を回すためにはポンプが動かなければいけません。ポンプを動かすためには,電気が必要です。

 その電気がすべて断たれてしまいました。そうなれば,原子炉が熔けてしまいますし,大量の放射能が放出されることを防ぐことができません。そのため,政府は当日の夜になり「原子力緊急事態宣言」を発令しました。そして予想どおり,翌日には1号機の原子炉建屋が爆発しましたし,運転中だった1,2,3号機の原子炉がつぎつぎと熔け,大量の放射能が環境にまき散らされてしまいました。

 その放射能が東北地方,関東地方の広大な大地に降り注ぎ,日本の法令に従うなら,「放射線管理区域」に指定し,一般の人の立ち入りを禁じなければいけないほど汚染しました。しかし,日本の政府は「原子力緊急事態」を理由に法令を反故にし,事故から15年経とうとするいまも人びとに被曝を強制し続けています

 もし,一つの国家が「緊急事態」を宣言したのであれば,それをつねに国民にしらせるはずと思います。しかし,いまや日本というこの国は,「原子力緊急事態宣言」をむしろ積極的に隠してしまい,国策放送とでもいうべきNHKを含めマスコミすべてがそれを報道しなくなっています。

 そのため,多くの日本人はいま現在,日本というこの国が「原子力緊急事態宣言」下にあることを忘れさせられてしまっています。そして,それをいいことに,この国は原子力をさらに進めるといいだしました。

 でも,汚染の主成分であるセシウム 137は半減期が30年で〔現在は事故後15年経過〕,100年経っても10分の1にしか減ってくれません。そのため,100年後も福島県の一部には,放射線管理区域の基準を超える汚染地帯が残り,もともとの法令を守ることができません。

 この国では100年後も原子力緊急事態宣言が解除できないまま続いているでしょう。福島原発事故とはそれほどひどい事故だったことを忘れないでいたいと私は思います。


 1「NHK【クローズアップ現代】 原発にドローンの脅威!? 見えてきた “空の死角” 玄海原発の謎の光と監視できない侵入リスクの現実 2025年11月18日〔放送〕」『気になるNHK』2025年11月17日,https://nhk.shigeyuki.net/?p=13718


 このNHKの特集番組は「原発の “空の死角” が突きつける課題とは? 急増するドローン脅威と安全対策のいま-玄海原発で何が起きたのか:夜空に現れた “光の正体が不明のまま” という問題」を取りあげ,解説する内容であった。

 この番組の内容は,つぎの目次を編成して構成されていた。

  韓国・古里原発で続く“不審ドローン” の連続発生
  ドローンの進化が “これほど厄介” になっている理由

  原発が狙われやすい理由:情報収集から妨害まで用途が多岐にわたる
  日本の現行法とその限界:法律はあるが “空の防衛” は追いついていない

  有効な対策はどこにある? 世界が進める “多層防御” という考え方
  原発の安全をどう守るのか:いま必要とされる視点

  ま と め

 2022年2月24日に「プーチンのロシア」が始めた「ウクライナにしかけた侵略戦争」,それも「特別軍事作戦」と名づけたウラジミールの当初のいいぐさだと,「3日もあれば,2014年のときウクライナからクリミヤ半島を侵略して簡単にもぎ取り奪ったように,それもこんどは,ウクライナ全土を制圧してロシアのものにする」というもくろみは,まったく通用しなかた。

 開戦最初からウクライナ軍の必死・果敢な作戦・抵抗に対峙させられ,これまでの4年と4ヵ月もの長期戦にもちこまれたあげく,現状はとみれば,ロシア軍は,ゼレンスキー大統領が指揮するウクライナ軍側の「21世紀的な戦争技術革新」の構築・展開による抗戦に押し返されはじめた。最近では部隊の戦意も兵士の士気も低いロシア軍側は,あらゆる側面において劣勢の傾向が顕著になってきた。

 この宇露戦争に関してはいうまでもなく,ウクライナ側にはアメリカやNATO諸国からの軍事的・経済的な援助・支援が莫大な金額・数量で送られていたし,ロシア側もイランや北朝鮮からドローンや砲弾・ミサイルなどの兵器の買付・調達をもって,すでにすっかり枯渇気味となった自国の兵站の補充に利用してきていた。

 ある意味,いまのところは小規模な両国間における戦争事態ではあっても,観方を変えていえば,第3次大戦的に本格的な戦争状態が宇露戦争の形態をとって,それもかなり特殊な方途:現実を形成しながら,いまもなお継戦中である。

 そのなかで,冒頭に紹介したNHKの解説番組をネット上で紹介した,「NHK【クローズアップ現代】 原発にドローンの脅威!? 見えてきた “空の死角” 玄海原発の謎の光と監視できない侵入リスクの現実 2025年11月18日」『気になるNHK』2025年11月17日,https://nhk.shigeyuki.net/?p=13718 というネット記事が,けっこうな字数を費やしてこのNHKの解説番組を紹介していた。

 その解説の全文を引用して紹介すると長くなるので,このさい前段にリンクを貼ってあるので,そちらのリンク先住所に飛んでしばらく読んでもらうもよし,ということにしておく。だが,この記述ではとりわけ,問題の中心に「原発の “空の死角” が突きつける課題とは? 急増するドローン脅威と安全対策のいま」という話題が登場した点を,いま一度確認しておき,次項から,本ブログなりの議論・検討・考察をしてみたい。

 2 この「NHK【クローズアップ現代】


 原発にドローンの脅威!? 見えてきた “空の死角” 玄海原発の謎の光と監視できない侵入リスクの現実 2025年11月18日」と,標題をかかげたネット記事が『気になるNHK』2025年11月17日に紹介されていたが,このNHKの番組のなかに登場し,解説を担当した専門家が鈴木達治郞であった。

 鈴木達治郞の人物紹介を,ここではあらためて,長崎大学のホームページを参考にして,つぎのように概説しておく。主要項目のみ参照するが,すでに終了した経歴もあるが,冒頭でひとまず簡単に触れてあったので,あえてこのまま紹介しておく。ということで,2025年度時点における内容となる。

 鈴木達治郎(すずき・たつじろう)は1951年生まれ,1975年東京大学工学部原子力工学科卒,1978年マサチューセッツ工科大学プログラム修士修了,工学博士(東京大学)。専門は原子力政策,核軍縮・不拡散政策,科学技術と社会論。

 2010年1月より2014年3月まで内閣府原子力委員会委員長代理を務めた。2014年より長崎大学核兵器廃絶研究センター教授。2015年よりセンター長。核兵器と戦争の根絶をめざす科学者集団パグウォッシュ会議評議員として活動を続けている。

 鈴木の「研究分野」は原子力政策・科学技術政策・核不拡散・軍縮政策であるといことなので,研究テーマに「原子力平和利用と核不拡散,核セキュリティ,核物質管理,科学技術と社会」などをかかげている。

 とくにここ数年のテーマはつぎの3点である。

  ① 北東アジア非核兵器地帯における検証問題
  ② 核燃料サイクルの多国間管理
  ③ プルトニウム在庫量削減

 また,科学技術が社会にもたらす影響評価も大きなテーマとして研究してきているが,「科学技術と安全保障の関係にかかわる課題」として,軍民両用技術のガバナンス,サイバーセキュリティと核施設など,学際的なアプローチで研究をおこなってきている。今後は,AIやロボットの軍事利用防止などについても研究をおこなう,という説明もくわえられていた。

鈴木達治郞・紹介


 以上のごときに説明された鈴木達治郞は,原子力核工学「畑・出身」である学究としての出自を有していたが,旧来,雑多な住民が存在していた「原子力村」に本籍を置く「原発推進体制絶対派」というよりは,基本的には “若干だけなのだが” ,鈴木が世間に向けて発信してきた「原発観」に関していえば,それでもヨリまともに「核兵器:原爆」と「核発電:原発」にかかわる見解を披瀝してきた。

 鈴木達治郞の研究テーマは「原子力平和利用と核不拡散,核セキュリティ,核物質管理,科学技術と社会」などと説明されていた関係で,原発の過酷(重大かつ深刻な)事故--とりわけチェルノブイリ原発事故(1986年4月)や東電福島第1原発事故(2011年3月)のような原発事故の大事件--に関しては,鈴木なりに深刻かつ真摯にとりあげて議論する姿勢を,一貫して保持してきた。

 鈴木達治郞はその点に鑑みれば,単純に原発推進派の発想しか抱かない(抱けない)原子力核工学者たちのの立場や思想に比較すると,若干だけとはいえ,確かに「観るべきというか聞くべき」まっとうな立場を維持していた人物である。

 しかしながら,鈴木達治郞は,広義においては原子力村に原籍を有する学究としての限界・制約もまた確実に包しており,この側面・要素から必然的に発散させるほかなかった,本ブログ筆者流にいうところの「原発≦原爆」という観点を,ただ「原発<原爆」としてしか観がちになるほかない「本源的な学識上の自己規制」を秘めていた。

 それゆえ,鈴木達治郞のその説くところの論旨においては常時,その「原発批判の不徹底」と「議論展開の寸止め話法」にまつわる物足りなさを隠すことはなかった。

 3 鈴木達治郞『核兵器と原発-日本が抱える「核」のジレンマ-』講談社新書,2017年


 鈴木達治郞が啓蒙書として公刊した『核兵器と原発-日本が抱える「核」のジレンマ-』講談社新書,2017年は,以上のように捕捉・解釈してよかった,鈴木自身の「ヤーヌス的な人間の立場としての存在方式」を,真正直に語る〈好著〉であった。

 鈴木達治郞はこう述べていた。

 原子力というエネルギーは「典型的な『ジキルとハイド』技術」であり,人類にとって巨大なエネルギー源でもあり,また人類を滅ぼすリスクもかかえていると。そのように正直に語る鈴木達治郞の立場であるが,

 例によって「二酸化炭素を発電時に排出しない原発」だから「脱酸素社会をめざす世界にとって,重要な選択肢であることに間違いはない」とか,「地球にとって,『温暖化』という進行な『病』に必要な『薬』の一つであるといっていい」とか(同書,〔おわりに〕211頁参照)などと,

 臆面もなく,すなわち,学理的な事由もないままこのように断言しえた立場は,やはり鈴木達治郞も,原子力村に本籍をもつ原子力核工学者の「単なる1人」に過ぎなかった事実を,再確認させた。

 ただし,鈴木達治郞の発言は,そうした原子力エネルギー関連の学問分野や実際の原発問題にかかわる工学者の立場を,自分なりに真剣に考えてきた立場そのものはよく物語ってくれており,この点については好感がもてる。

 しかしながら「例によって」また,「原発が脱炭素社会をめざす世界」に「重要な選択肢であることは間違いない」とか,「原発は発電時に二酸化炭素を排出しない」とかなどと,おおよそ自然科学的な理解としても社会科学的な素養としても「完全に誤謬であった御説」を,ほかの原子力各工学者たちとまったく同一,瓜二つに唱えた点は解せない。これではほかにいい主張や提言をしたにせよ,興ざめどころか落胆させる。帳消し。

 2011年「3・11」の東日本大震災・東電福島第1原発事故の発生までは,日陰の存在であることを強いられていた原子力核工学科系出身の「原発廃絶派」の1人,前段ですでにその言説を紹介した小出裕章は,原発は「発電所というよりは,むしろ海あたため装置」だと説明していた。

この海温上昇の問題を総論的に分かりやすく解説してくれた本を
ブログ筆者はまだしらない

 地球温暖化の原因だとされてきた二酸化炭素の問題ばかりを,鈴木達治郞までが声高に,それも公式にオウム返しに語った態度は,結局,原子力エネルギーの危険性を唱えている識者としては,それだからヤーヌス(二面顔)のそのどちらか分らないような発言にしかなりえない,と批判されるのである。

 4「原発は海あたため装置」である


 1953年12月8日(この日付に注意したい)のことであった,アメリカ合衆国のドワイト・D・アイゼンハワー大統領が「平和のための原子力(Atoms for Peace)」というセリフを,ニューヨークの国際連合総会でおこなった演説で披露した。

 しかし,そもそもというか,もともとは「戦争のための核(原子力)利用」であったにもかかわらず,「核の平和利用」という「核利用の仕方・方法」もあると唱えたうえで,その根本に控えていた本質的な問題をボカすための主張をしたアイゼンハワーの意図は,もとより科学者の立場から提示されたものではなかったし,基本的な方途としてもともと問題ありであった。

 アイゼンハワーは要するに,本来は「原爆 ≠ 原発」の発想がなかった段階から,これを「原爆=原発」にするために「原子力の平和利用」を唱えた。とはいっても,もとはといえば「原子力の戦争利用」が,そもそも出立点の本義(本来の目的)に設定されていたのだから,その後における原発の普及状態に照らせば,しだいに「原爆≧原発」だというふうに,概念関係上においてしごく当たりまえの解釈もなされるに至った。

 だが,鈴木達治郞の理解は,その「原爆≧原発」という関係性をめぐってだが,もしも実際に原発が事故をおこしたさいは「原爆=原発」になることを,十二分に承知する発言をしていた。これは当たりまえにごく簡単な理解ではあるが……。

 一方,日本原水爆被害者団体協議会は,原爆の被害者である立場から「原爆そのもの:核兵器の廃絶」を,自分たちの平和運動がもっぱら意識する対象としてであったが,一貫させる主張としてかかげてきた。

 しかし,「原爆≧原発」のうちの原発そのものが大事故を発生させたさいには,これがただちに「原爆=原発」になるほかない当然の事実,いいかえれば,結局においてその実質が「核災害の事故発生」になるほかない,という「事実の問題側面:同士」にかかわる「核事故として共通する要素面」は,日本被団協の人たちの思いとは完全に別個にまた,本当に起こりうる核災害事態の発生を指示する。

 したがって,被団協の人たちが自分たちの立場のことを,核廃絶運動から「原発は除外しています」といったふうに語ってきた「世にも不思議な立場」は,「原爆≧原発」どころか「原爆=原発」という事態まで否定している。

 原発の大事故発生時には,原爆に近似した災害に見舞われるという事態,つまり,実際にはいままですでに,チェルノブイリ原発事故や東電福島第1原発事故をもって大規模の「核災害を発生させてきた原発の歴史」を,真正面から正視しないで無視した態度をいまだに保持している被団協の「原発(原子力エネルギー)」観は,まさにトンデモない「原子力エネルギー」問題に対する「理解の立場」だった,というしだいになる。

 鈴木達治郞の場合も基本,被団協の人びとの観念形態に類似した姿勢が,それも逆さま的にであったが,観取できなくはない。ただし,鈴木は,ほかの多くの原子力村住民がいままで,かたくなにそうであった「原子力エネルギー」に関する「原発価値観・脳」とは,一部分は位相を異ならせた立場を採っていた。それでも,著書の名称に表わされているとおり,『核兵器と原発』は「日本の抱える『核』のジレンマ」だと形容した点は,出版元が工夫した本の売り文句だったとはいえ,そのジレンマの根源を明示していた。

 そこまで明確に「原子力エネルギー」というものの本来的な科学技術的な矛盾,いいかえれば,それを人類・人間がエネルギー源のひとつに利用することによって,いままですでに発生させ,体験し,苦労を舐めさせられてきた「電力発電用の原発使用史」に対する鈴木達治郞の議論じたいは,評価されるべき側面を有してはいるものの(長崎大学工学部の教員であるという立場がそうさせている要素だったのかもしれないと推察するが),

 結局,原子力村の出自をもつ鈴木がなんらかに必然的であったらしい,議論する視野やその内容,そしてなによりもその問題意識において自然に発露させてみたところの,工学研究者としての「限界や制約」そのものもまた明白に露出されていた。

 前後するこの付近の段落部分は以前,NHKの解説番組,「NHK【クローズアップ現代】 原発にドローンの脅威!? 見えてきた “空の死角” 玄海原発の謎の光と監視できない侵入リスクの現実 2025年11月18日」という放送がなされたのを契機に,議論をしていたものであった。

 要するに,昨年,日本の首相になったばかりの(2025年10月21日就任)の高市早苗が愚かにも,「台湾有事」時代を日本の「存立危機事態」の問題に直結させて煽動するがごとき国会答弁をしたがために,要らぬ「日中間の政治的緊張」を発生させた拙政の余波が大きくなっていた時期,日本の原発施設(九州電力玄海原子力発電所)の上空をドローンが飛びまわっていたという不穏な事実を,NHKの解説番組「クルーズアップ現代」が取りあげたのをきっかけに,最初はこの記述をおこなったことになる。

 ところで,鈴木達治『核兵器と原発-日本が抱える「核」のジレンマ-』講談社,2017年は,つぎのような装訂「表紙カバー」になっていたが,この画面に描かれている強調点は,「北朝鮮『核の脅威』にどう対峙すべきか?」という売り文句に置かれていた。けれども,この本が発売された2017年当時のそのまた以前から,ドローンでなくとも,通常爆弾500キログラムを搭載するミサイル1発に突っこまれただけで,原発は「即:核兵器」化することは,自明であった。

講談社新書 2017年

 ドローンが安価な(コスパがとてもよろしい)兵器である点は,宇露戦争によって証明され,かつその技術開発が現在もなお着実に進展させられている。そう表現してよい事態をこの戦争が実現させてきた。

 そうした情勢なかで一気に,その実戦的な有用性,つまり武器・兵器として非常に効率の高い性能を,すなわち「小が大を兼ねるがごときドローン兵器」が有するその性能諸元」特徴が,いってみればこの宇露戦争の進行中において,あれこれと実戦的に証明されてきている。

 以前であれば,日本のように沿岸にのみ配置されている原発に対して,もしも有事となった場合において,この原発群が戦争状態に突入したさい,破壊工作の攻撃対象にならない保証はない。

 現に,宇露戦争では両国に多数基ある原発が意図的と否とを問わず,さすがに直接原子炉が直撃の標的にされてはいなかったものの,交戦中である両国間における実際の攻撃として起こされていた。

 ロシア軍が,ウクライナのザポリージャ原発--ウクライナ国内で稼働できる原子炉全15基のうち6基が集中する,しかもヨーロッパ最大規模の原子力発電所--を軍事戦術の対象・一環として,つまりこの原発に対して脅迫的に攻撃をしかけ,その結果,施設の一部分が破損させられるという,原発の施設にとっては非常に危険な事態が起こされていた。

 本記述としては最後に,つぎのごとき見解を紹介しておく。原子力村内からの意見表明であった。議論,すなわち,ドローン攻撃に対する防護対策はまだまだこれからの課題であるというから,事態は困難を抱えている。

この種の議論が日本の政治学や戦争学で本格的に討議されているのか?
漫然と放置していてよい論点ではあるまい
現状の自衛隊3軍がよく防御しうる問題ではありえないからである

 それに日本は,近いうちの発生が確実に予想される南海トラフ地震に対しても,原発施設関係は備えておかねばならない,という「重大な現実課題」も抱えている。

 たとえば,中部電力の浜岡原発は太平洋岸に面しているが,その防波壁は過去に海抜22メートルで完成させてあったところが,そもそもに想定される津波の高さが25.2メートルに引き上げられたため現在,海抜28メートルまでかさ上げする方針が示されているという。

この図解(模式図)はほぼ現状を現わす

浜岡原発はその後内部において不祥事を発生させたため
いつになったた再稼動できるか分からなくなっていた

 以上の話題は自然災害に備えての対策であるが,それにしてもやっかいである。この中部電力浜岡原発は,海側のこの防潮壁にさらにかさ上げ工事をほどこさねばならず,そのために必要とされる28メートルの高さといったら通常のビルだと8~9階くらいにまでなる。

 極論するが,ほかの発電方式であれば水没事故の発生だけで済むかもしれないところが,原発だとそこからが核爆発の誘発可能性,つまり核災害の発生が待ちかまえているのだから,これほどにまで「やっかいなこと」,このうえない。

【参考記事】 -鈴木達治郞が『日本経済新聞』に寄稿した解説記事-

鈴木達治郞の立場は正直いって「ヌエ」(双顔:ヤーヌス)の要素が拭えなかった


【参考文献】


いいなと思ったら応援しよう!