173話 山百合 Mountain Lily: The Legendary Swordsman 【六代御前編】波打際スケッチ Sketches of the Shoreline ~AIと創る青春物語~
常春は、ほら貝を吹いた。
が、狼の動きの方が早かった。

六代御前に向けて走り出している。
刀を抜いた清成が立ちふさがる。
振りぬいた刀をすり抜けた狼が、六代御前にとびかかろうとする。
六代御前も刀を取って構えている。

狼は駆け抜けると六代御前の背中側に立つ。
常春は走りながら、
「まずいな・・」
その時、影のように狼に切りかかったものがいる。

小柄にもかかわらず長刀を振り切った。
飛びのいた狼が走り去っていく。
「ふう・・」
何事もなかったように刀を鞘に戻すと、そのまま立ち去ろうとした。
「危ないところを、忝い」
何も言わずに顔を上げた剣士は、少しだけ顎を引いて見せると背を向けた。
六代御前は思った。
女、か・・・
「せめてお名前を・・・」

「名乗るほどのものではない」
緑色の短い髪を風になびかせると、森の樹々の影に見えなくなった。
山伏の常春は言った。
「まさか本当にいるとはな・・・・」
六代御前が聞いた。
「あの方は・・」

「あれがヤマユリだ」
伝説の剣士と言われている。
が、その姿を見たものはいなかった。

常春は、ほら貝を吹いた。
ヤマユリへのお礼のつもりらしい。

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