53話 水晶 The Crystal of True Power 【波打際編】波打際スケッチ Sketches of the Shoreline ~AIと創る青春物語~
杏子は、仕事を終えて古い雑居ビルを出た。
今日は珍しく忙しかった。
ほとんど途切れることなく客が訪れ、気づけば夕方になっていた。

杏子は水晶占いが一番得意だ。
タロット、姓名判断、人相もできるが、それらは努力して身につけたもの。
本来の力は
――“人に見えないものが見える”という一点に尽きる。
子どものころの話を、母はよくこういっていた。
「外で一人で遊んでばかりいた」と。

けれど本当は、一人ではなかった。
その“友達”が実在しないということを、当時の杏子は知らなかった。
周囲からは、少し変わった子だと思われていた。
だがその不思議な力(と人は言う)は、今も変わらず彼女の中にある。
自分の力が誰かの役に立っているのであれば、それでいい。
今日はたくさんの人を助けられた気がして、心が軽かった。
「お寿司でも食べたいわね…」
杏子は周囲の看板を見渡した。
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