3-10-③ 別れ③
*注意*
本作は『ジョジョの奇妙な冒険』および『クレイジー・Dの悪霊的失恋』をもとにした非公式の二次創作です。
原作および出版社とは一切関係ありません。
おもいっきりネタバレしています!!!
朝の光の中、1羽の鸚鵡が、杜王町の空をゆっくりと飛んでいる。
毛先に銀が少し入った真っ白な羽毛に、黒い嘴の鸚鵡だ。
その鸚鵡の背後に、町の人には見えないヴィジョンが浮かび上がった。
目の部分から伸びたパイプがキャップ型の口につながり、映画のフィルムが巻かれたリールが何重にも折り重なり、羽のように広がった鳥型のヴィジョン──鸚鵡のスタンド・記憶を操るイシス女神だ。
イシス女神は本体の後を追うように、ゆっくりと町の上の空を飛び始めた。
すると、町中の人々の頭から、見えない映画のフィルムがスッと空に伸びていって、次々とイシス女神のリールに巻かれていった。
杜王町の人々の記憶だった。
この2日の間に起こった奇妙な出来事、カウボーイ姿や本を抱えた外国人、スタンド同士の戦いにアクリドルの水晶をめぐる吸血鬼との争いが、皆の記憶から抜き取られていく。
良平からも、仗助からも。
涼子はじっとサルジュが記憶を巻き取っていく様子を見あげていた。
仗助は近い将来、父親のジョセフに初めて会う。
トト神の予言が告げた。絶対100%だ。
SPW財団に鸚鵡の秘密を知られたくはない。依頼者の意向もあるし、研究材料の懸念も否定できないからだ。サルジュには元の静かな生活に戻って欲しかった。
仗助にも、スタンドや吸血鬼や過去の因縁や色々なもの知識のない、まっさらな状態で父親に初めて対面して欲しかった。
仗助が忘れても、皆が覚えていなくても、涼子は忘れない。
忘れられるはずがない。
この2日の奇妙な冒険を。
街中を旋回して記憶を抜き取り終わったサルジュが、降りてきて涼子の肩にとまった。
「お疲れ様」
涼子が頭を羽を撫でると、鸚鵡はキュルキュルと手に頭を擦り付けて甘えた。
仗助を良平のところへ届けにいったホル・ホースとボインゴが戻ってきた。
それを見た典明が口を開いた。
「僕も、僕のあるべきところに還るよ」
典明の体は朝の明るい光にほとんど透けてしまっている。
その時が、きたのだ。
典明はホル・ホースに右手を差し出した。
「世話になった」
彼のスタンド・ハイエロファントグリーンが典明の体に重なるように現れている。
ホル・ホースは片眉を上げると、右手でスタンド越しに握手を交わした。
「……なんつーか……まあ……元気でな……」
典明は次にボインゴにも手を差し出した。
「君も」
ボインゴは口を開きかけた。でも結局、うん、とうなづいて手を握った。
「涼子ちゃん」
典明は涼子を振り返った。
涼子の目から涙が溢れる。
泣いてしまっては典明お兄ちゃんが心配する。
もう大丈夫だから、って笑顔で別れないと、と思うのに、止まらなかった。
典明は涼子に近づき、そっと涼子を抱きしめた。
スタンド越しの抱擁。
それはなぜか暖かかった。
典明が涼子の耳元に囁いた。
「幸せに」
花京院典明はゆっくりと浮かび上がった。
赤い髪と緑の制服は全体を黄色に変え、煙のようになって空へ空へと浮かんでいって。
消えていった。
涼子は涙をこぼしながら目を見開いて、最後まで目に焼き付けるように見送った。
さようなら、典明お兄ちゃん
さようなら、私の初恋
