「A社の仕事、ほんとに儲かってる?」OEM工場で顧客別に利益が見えない理由
こんな疑問、抱えていませんか?
「A社さんの仕事、受注は多いけど…ほんとに儲かってるの?」
「B社さんは注文少ないけど、手離れいいんだよね」
「C社さん、要求が細かくて正直しんどい…でも断れない」
OEM工場(※他社ブランドの製品を受託製造する工場)で働いていると、こんな感覚、ありませんか?
「なんとなく」A社の仕事は大変で、B社は楽。
でも、実際にどれくらい利益が出ているか、数字で答えられますか?
今回は、OEM工場が抱える「顧客別の利益が見えない」問題と、その解決策についてお話しします。
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ERPシリーズについて
この記事は、中小企業向けERPシリーズの第6回です。
📚 これまでの記事
👉 第1回:受発注ERP — お金の流れを見える化する
👉 第3回:在庫管理・倉庫管理 — 在庫が合わない原因と対策
👉 第4回:取引先登録 — 請求書どこに送る?問題を解決
📍 第6回:OEM工場のERP — 今回はここ
今回から、OEM製造業に特化した話に入っていきます!
OEMビジネス、実は拡大中
市場規模は年々成長している
OEM・受託製造の市場は、実は年々拡大しています。
化粧品OEM市場だけでも、2023年度は前年比4.2%増の約3,456億円。2025年には4,000億円に達すると予測されています。
菓子OEM市場も2023年度は前年比12.0%増の約2,685億円に成長。
電子機器のEMS(受託製造サービス)に至っては、グローバルで2024年に約6,098億ドル、2032年には1兆ドル超えの予測です。
なぜOEMが増えているのか
背景には、こんな変化があります。

💡 D2C(Direct to Consumer) とは、メーカーが小売店を通さず、自社ECサイト等で直接消費者に販売するビジネスモデルのこと。
つまり、「ブランドを作りたい企業」と「製造力を活かしたい工場」のマッチングが加速しているんです。
なぜOEM工場は「顧客別の利益」が見えないのか?
理由①:同じ製品でも顧客ごとに仕様が違う
OEM工場では、同じ製品カテゴリでも顧客ごとに仕様が異なります。
【例:スキンケアクリーム】
A社向け:
├── 容器:50mlジャー
├── ラベル:A社ブランドデザイン
└── 配合:標準配合
B社向け:
├── 容器:30mlチューブ
├── ラベル:B社ブランドデザイン
└── 配合:低刺激配合
C社向け:
├── 容器:100mlポンプボトル
├── ラベル:C社ブランドデザイン
└── 配合:高保湿配合容器が違えばコストが違う。配合が違えば原材料費が違う。
でも、これをExcelでバラバラに管理していると、「結局、A社の1個あたり原価っていくら?」が見えなくなるんです。
理由②:顧客支給品の管理が複雑
OEM生産では、顧客から資材を支給されるケースがあります。
ラベル
化粧箱
ボトルやキャップ
特殊な原材料
これらは「顧客の資産」なので、勝手に使ったり、他の顧客の製品に混入させたりしてはいけません。
でも、現場で「誰のラベルか」「残り何枚あるか」を正確に把握するのは大変です。
理由③:仕様変更が頻繁に発生する
「A社さんのラベル、先月デザイン変わったよね?」
「え、うちまだ古いデータ使ってる…」
OEM製品は、顧客の都合で仕様変更が頻繁に発生します。
ラベルデザインの変更
配合比率の調整
パッケージサイズの変更
成分表示の更新(法規制対応)
これらを版数管理できていないと、古い仕様で作ってしまう事故が起きます。
理由④:複数顧客のスケジュールが同時進行
「A社さんの納期、来週金曜なんですけど…」
「え、B社さんも来週金曜なんですけど…」
OEM工場は、複数の顧客の製造を同時並行で行っています。
1つのラインで複数顧客の製品を切り替えながら製造する場合、スケジュール調整と段取り替えの管理が複雑になります。
この「パズル」を毎日解いているのが、OEM工場の生産管理担当者です。
OEM工場が抱える「7つの悩み」
① 顧客ごとの収益性が見えない
「A社さんの仕事って、儲かってるの?」
この質問に、即答できますか?
顧客ごとに単価も違えば、仕様も違う。
同じラインで複数顧客の製品を作っていると、どこで利益が出ていて、どこで赤字なのかが見えなくなりがちです。
「なんとなく忙しいけど、なんとなく利益が残らない」
これ、OEM工場の「あるある」です。
② 顧客支給品の管理が煩雑
顧客から支給されるラベルや容器。
これらは「顧客の資産」なので、在庫を別管理しなければなりません。
でも、現場で「誰の」「何が」「何個ある」を正確に把握するのは、想像以上に大変です。
③ 仕様変更・版数管理が追いつかない
ラベルデザインの変更、配合比率の調整、パッケージサイズの変更…
OEM製品は仕様変更が頻繁。
版数を管理できていないと、「古い仕様で作ってしまった」という事故が起きます。
④ 複数顧客のスケジュール調整が大変
複数の顧客の製造を同時並行で進めるOEM工場。
特定の顧客を優先しすぎると、他の顧客の納期に遅れる。
かといって均等に処理すると、どちらも間に合わない。
⑤ キャンペーンで値札・ラベルが急に変わる
「A社さん、来月セールやるから値札シール変えて」
「え、もう通常価格で3,000個作っちゃったんですけど…」
顧客がキャンペーンを実施すると、価格表示や販促ラベルが変わることがあります。
これが事前通知なしに来ることも珍しくありません。
⑥ 販売形態が変わると出荷形態も変わる
「B社さん、今度から2個セット売りにするって」
「え、じゃあ箱もシュリンクも全部やり直し?」
顧客の販売戦略が変わると、出荷時の荷姿が変わります。
1個売り → 2個セット売り
単品 → ギフトボックス入り
バラ出荷 → アソートセット
同じ製品でも、セット組みの仕方によってBoMが変わり、作業工程も増えます。
⑦ 受注単位と納品先が違う
大手量販店を顧客に持つOEM工場では、こんな複雑さがあります。
【受注と納品のズレ】
受注データ:
├── 渋谷店:50個
├── 新宿店:80個
├── 池袋店:30個
└── 合計:160個
納品先:
└── C社 関東配送センター(1か所)
└── 160個を一括納品
└── ただし、店舗別の仕分けラベル必要
請求先:
└── C社 本部経理(また別)受注は店舗単位、納品は配送センター1か所、請求は本部一括。
すべてバラバラ…という事態になります。
ERPで「顧客別の利益」を見える化する
顧客別マスタ管理
OEM対応ERPでは、顧客ごとに製品マスタを持てるようになっています。
【顧客別製品マスタの例】
製品コード:SKC-001
製品名:スキンケアクリーム
├── A社向け仕様
│ ├── ラベル:A社ブランドラベル v3.2
│ ├── 容器:A社指定ジャー(50ml)
│ ├── 配合:標準配合A
│ └── 販売単価:450円/個
│
├── B社向け仕様
│ ├── ラベル:B社ブランドラベル v1.5
│ ├── 容器:B社指定チューブ(30ml)
│ ├── 配合:低刺激配合B
│ └── 販売単価:380円/個
│
└── C社向け仕様
├── ラベル:C社ブランドラベル v2.0
├── 容器:C社指定ポンプボトル(100ml)
├── 配合:高保湿配合C
└── 販売単価:650円/個受注時に顧客を選べば、自動で仕様が決まります。
顧客別BoMと原価管理
さらに、顧客ごとにBoM(部品構成)と原価を管理できます。
【A社向け スキンケアクリーム 1個あたりの原価】
■ 材料費
├── 基剤(クリームベース):120円
├── 有効成分:80円
├── 香料:15円
├── 防腐剤:5円
├── 容器(A社指定ジャー):50円
└── ラベル(A社ブランド):10円
─────────────────
材料費 計:280円
■ 労務費
└── 充填・ラベル貼り(3分):25円
■ 経費
└── 製造間接費配賦:20円
─────────────────
製造原価 計:325円
販売単価:450円
粗利:125円(粗利率 27.8%)これをB社、C社ごとにも計算すれば、「どの顧客が儲かっているか」が見える化します。
顧客支給品の在庫管理
顧客から支給された資材を「預かり在庫」として別管理できます。
【顧客支給品 在庫状況】
A社支給品:
├── A社ブランドラベル:残2,500枚
├── A社指定ジャー:残1,200個
└── ⚠️ ラベル在庫が4週間分を切りました
B社支給品:
├── B社ブランドラベル:残800枚
└── 🚨 2週間分を切っています → B社に発注依頼が必要これにより、「顧客支給品が足りなくて製造できない」という事態を防げます。
版数管理・変更履歴
仕様変更があった場合に、いつ・誰が・何を変更したかを記録できます。
【A社 スキンケアクリーム 変更履歴】
v3.2(2024/10/01 適用)
├── 変更内容:ラベルデザイン変更
├── 承認者:A社 田中様
└── 旧版在庫:v3.1ラベル 残500枚
v3.1(2024/07/15 適用)
├── 変更内容:容器キャップ色変更(白→シルバー)
└── ステータス:在庫消化中
v3.0(2024/04/01 適用)
├── 変更内容:配合変更(香料グレードアップ)
└── ステータス:製造終了これにより、「どの版で作ったか」「いつ切り替えたか」が追跡可能になります。
OEM対応ERPの主要機能
OEM製造業がERPを選ぶ際に、チェックすべき機能をまとめました。

💡 トレーサビリティとは、「どの原材料を使って、いつ、どのロットで製造し、どこに納品したか」を追跡可能にすること。
品質問題発生時に必須の機能です。
OEM工場のERP導入、3つのポイント
① まず「顧客別の粗利率」を把握する
「なんとなく忙しい」から脱却するために、まずは顧客別の粗利率を把握しましょう。
【顧客別 粗利率の例】
A社:粗利率 27.8% → 優良顧客
B社:粗利率 15.2% → 条件見直し検討
C社:粗利率 8.5% → 赤字リスクありこれがわかれば、
「B社との取引条件を見直す」
「C社の仕様を簡素化できないか提案する」
といった戦略的な判断ができます。
② 顧客支給品と版数管理を徹底する
OEM製造でのトラブルの多くは、
「間違った資材を使った」「古い仕様で作った」
から発生します。
ERPで顧客支給品の入出庫を管理し、版数を明確にすることで、こうしたミスを防げます。
「A社のラベルがB社の製品に…」なんて事故は、ブランドを預かるOEM工場にとって致命的です。
③ 導入はプロに相談する
OEM製造業のERP導入は、正直、普通の製造業よりも難易度が高いです。
顧客ごとの業務ルールが違う
既存のExcel管理との整合性を取る必要がある
現場スタッフへの教育コストがかかる
だからこそ、ERP導入コンサルタントに相談することをおすすめします。
中小企業基盤整備機構の調査(2024年)によると、DXに取り組む際の課題として「IT人材が足りない」が25.4%、「DX推進人材が足りない」が24.8%と上位を占めています。
人材不足の中で無理に自社だけで進めようとするより、専門家の力を借りた方が、結果的に早く・安く導入できることが多いです。
まとめ
今回のポイントを整理します。

おわりに
「A社さんの仕事、ほんとに儲かってる?」
この質問に、数字で答えられる状態。
それが、OEM工場がERPを導入する本当の目的です。
「A社さんは粗利率28%ですね」
「B社さんのラベル、残り500枚なので発注依頼お願いします」
「C社さんの仕様、v2.3で間違いないですね」こんな会話が、自然にできる現場。
「お客さんのブランドを作る」というのは、実はとても誇り高い仕事。
その仕事を、システムでしっかり支えていきませんか?
📢 ERPシリーズ、ここまでのまとめ
6回にわたってお届けしてきたERPシリーズ。
👉 第1回:受発注ERP — お金の流れを見える化する
👉 第3回:在庫管理・倉庫管理 — 在庫が合わない原因と対策
👉 第4回:取引先登録 — 請求書どこに送る?問題を解決
📍 第6回:OEM工場のERP — 今回はここ
「この部分をもっと詳しく知りたい!」
「うちの会社に当てはめるとどうなる?」
など、ご質問があれば、ぜひコメントでお知らせください。
今後も、中小企業のDX・ERP導入に役立つ情報をお届けしていきます!
ここまでお読みいただき、ありがとうございます!
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製造業DX・ERP導入に関する実践的な情報をお届けします。
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📌 参考文献・出典
週刊粧業「化粧品OEM業界動向・市場規模・売上規模について」(2024年2月) https://www.syogyo.jp/matome/2024/02/post_037722
矢野経済研究所「菓子受託製造(OEM)市場に関する調査を実施(2024年)」 https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/3622
Fortune Business Insights「電子製造サービス(EMS)市場規模」
中小企業基盤整備機構「中小企業のDX推進に関する調査(2024年)」 https://www.smrj.go.jp/research_case/questionnaire/
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