「その商品登録、あとで全部やり直します」ERP導入で一番多い失敗の話
はじめに
「この商品、赤のMサイズって在庫あったっけ?」
「仕入れ値、いくらだったっけ?前回と違ったような…」
「あのお客さんへの販売価格、特別価格だったっけ?」
こんな会話、日常茶飯事になっていませんか?
Excelの商品リストを見ても、どれが最新かわからない。
価格もバラバラに記録されていて、結局、誰かに聞かないと正確な情報がわからない。
これ、中小企業あるあるですよね。
前回の記事では、「受発注ERP」で会社のお金の流れを見える化する話をしました。
👉 前回の記事:「Excel管理、もう限界かも…」受発注ERPで会社のお金の流れが"見える化"する話
今回は、その土台となる「商品登録」について、できるだけシンプルにお話しします。
実は、ERPを導入しても最初の商品登録で失敗すると、あとから全部やり直しになることも…。
だからこそ、最初に押さえておきたいポイントをお伝えしますね。
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そもそも「SKU」って何? — 商品管理の最小単位
SKUとは
ERPで商品を登録するとき、必ず出てくるのが「SKU(エスケーユー)」という言葉です。
SKUは「Stock Keeping Unit(ストック・キーピング・ユニット)」の略で、日本語では「在庫管理上の最小単位」と訳されます。
簡単に言うと、「これ以上分けられない、同じ商品の単位」のことです。
具体例で見てみましょう
たとえば、Tシャツを販売しているとします。

つまり、「定番Tシャツ」というアイテムが1つでも、色×サイズで6通りあれば「6SKU」になるわけです。
【SKUの数え方】
1アイテム × 2色(赤・青)× 3サイズ(S/M/L)= 6SKU
アパレルや雑貨を扱う企業では、
10,000〜100,000SKUを管理していることも珍しくありません。なぜSKU管理が大切なのか?
「Tシャツの在庫あります」では困る理由
「Tシャツの在庫あります」と言われても、お客様が欲しいのは「赤のMサイズ」かもしれません。
SKU単位で管理していないと…
欠品に気づかない:「Tシャツはあるのに、赤のMだけ品切れ」という状況が見えない
過剰在庫が発生:売れない色・サイズばかり在庫が積み上がる
発注ミスが起きる:「赤を発注したつもりが青だった」という事故
データ分析の「元データ」になる
SKU単位でデータを蓄積すると、こんな分析ができるようになります。
どの色・サイズが売れ筋か
季節ごとの販売傾向
粗利率の高い商品はどれか
死に筋商品(売れない商品)はどれか
「勘と経験」ではなく、データに基づいた仕入れ・販売戦略が立てられるようになるんです。
SKUを特定するための項目 — 何を登録すればいい?
基本的な商品情報
ERPに商品を登録するとき、最低限必要な項目はこちらです。

SKUコードの付け方のコツ
SKUコードは「見ただけで何の商品かわかる」ように設計するのがポイントです。
【おすすめのSKUコード命名パターン】
パターン1:商品コード-色-サイズ
例)TS001-RED-M(Tシャツ001番・赤・Mサイズ)
パターン2:カテゴリ-ブランド-型番-バリエーション
例)TOP-ABC-V01-RM(トップス・ABCブランド・V01型・赤M)
パターン3:年-シーズン-品番-色-サイズ
例)25SS-001-BL-L(2025春夏・001番・青・Lサイズ)注意点:
スペースや特殊記号(/ \ ' ")は使わない
後から変更すると大変なので、最初にルールを決める
倉庫の棚の並び順と合わせると、ピッキング作業が楽になる
「仕入価格」は1つじゃない — 原価管理の複雑さ
仕入価格が変わる要因
同じ商品でも、仕入価格(仕入原価)は一定ではありません。

ERPでの仕入価格管理
ERPでは、こうした複雑な仕入価格を管理するために、「条件マスタ」という仕組みを使います。
【仕入価格の管理例】
商品:定番Tシャツ(赤・M)
├── 仕入先A社:標準単価 1,000円
│ └── 100枚以上発注時:950円
├── 仕入先B社:標準単価 980円
│ └── 納期2週間以上:930円
└── 移動平均原価:987円(直近3ヶ月の平均)ポイント:
仕入先ごとに単価を設定できる
数量に応じた段階価格(ボリュームディスカウント)も設定可能
移動平均法や先入先出法など、原価計算方法も選べる
「販売価格」も1つじゃない — 価格設定の実務
販売価格の種類
販売価格も、実は何種類もあります。

ERPでの販売価格管理
ERPでは、これらの価格を優先順位をつけて管理します。
【販売価格の優先順位(例)】
受注入力時に自動で価格が決定される順番:
1. 顧客別特別価格 → あればこれを適用
2. キャンペーン価格 → 期間内ならこれを適用
3. 数量割引価格 → 条件を満たせばこれを適用
4. 自社標準価格 → 上記がなければこれを適用
例)顧客A社から50枚の注文
→ 顧客別特別価格 1,400円が自動適用商品マスタ設定の全体像
登録すべき項目一覧
商品マスタに登録する項目を整理すると、こんな感じになります。
┌─────────────────────────────────────────────────────┐
│ 商品マスタの構成 │
├─────────────────────────────────────────────────────┤
│ 【基本情報】 │
│ ・SKUコード / 商品名 / カテゴリ │
│ ・色・サイズなどのバリエーション │
│ ・JANコード / 単位 / 重量・サイズ │
├─────────────────────────────────────────────────────┤
│ 【仕入情報】 │
│ ・仕入先(複数登録可) │
│ ・仕入単価(仕入先別・数量別) │
│ ・リードタイム(発注から納品までの日数) │
│ ・最小発注単位 │
├─────────────────────────────────────────────────────┤
│ 【販売情報】 │
│ ・標準販売価格 │
│ ・顧客別価格 / 数量別価格 │
│ ・キャンペーン価格(期間設定) │
├─────────────────────────────────────────────────────┤
│ 【在庫情報】 │
│ ・安全在庫数 / 発注点 │
│ ・保管場所(ロケーション) │
│ ・有効期限管理の有無 │
└─────────────────────────────────────────────────────┘業務に合わせた設定が必要
上記の項目すべてが必要なわけではありません。
自社の業務に合わせて、必要な項目を選んで設定することが大切です。

商品マスタが「原価分析」の元データになる
なぜ最初の設定が大事なのか
商品マスタに登録したデータは、あとからすべての分析の「元データ」になります。
【商品マスタから生まれる分析データ】
商品マスタ(SKU単位)
↓
受注データ × 商品マスタ → 売上分析(何が売れているか)
仕入データ × 商品マスタ → 原価分析(いくらで仕入れたか)
在庫データ × 商品マスタ → 在庫分析(どれだけ持っているか)
↓
粗利分析、ABC分析、需要予測、キャッシュフロー分析…最初に商品マスタをいい加減に設定すると、後から分析しようとしても「データがない」「データが間違っている」ということに…。
これ、実際によくある話なんです。
だからこそ「導入支援会社」に頼るのがおすすめ
自社だけでやると起きがちな問題
ERPの商品マスタ設定を自社だけで進めると、こんな問題が起きがちです。
項目の意味がわからない:「この設定、何に使うの?」が解決しない
業務フローとの不整合:設定したけど、実際の業務と合わない
後から「こうすればよかった」:運用開始後に設計ミスに気づく
データ移行で事故:既存データをERPに移すときにミスが多発
導入支援会社(ERPコンサルタント)の役割
信頼できる導入支援会社は、こんなサポートをしてくれます。

導入支援を頼むべき企業の特徴
社内にIT担当者がいない、または少ない
商品点数(SKU数)が1,000以上ある
複数の仕入先・顧客ごとに価格が異なる
既存のExcelや古いシステムからデータを移行したい
「ERP導入は初めて」という状態
導入支援会社は「ERP導入のプロ」です。
自社だけで試行錯誤するより、最初からプロに頼んだほうが、結果的に時間もコストも節約できることが多いです。
まとめ:商品登録は「ERPの土台」
ERPの商品登録(商品マスタ設定)は、すべての業務データの土台です。
今日のポイント:
SKU単位で管理する:色・サイズ・バリエーションごとに分けて登録
仕入価格は複数ある:仕入先・数量・時期で変わることを想定
販売価格も複数ある:顧客別・数量別・キャンペーン価格を設計
最初の設定が分析の元データに:後から直すのは大変
導入支援会社を活用する:プロに頼んで確実に進める
おわりに
「商品コードなんて適当でいいでしょ」と思っていた方、いかがでしたか?
実は、ERPを入れて効果が出るかどうかは、最初の商品マスタ設定で8割決まると言っても過言ではありません。
逆に言えば、ここをしっかり押さえておけば、ERPは強力な経営の武器になります。
次回は、在庫管理について解説する予定です。
お楽しみに!
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📌 参考文献・出典
ロジ・ジャーナル「SKU(stock keeping unit)とは?管理の仕方や設定方法を解説」
https://www.plc.co.jp/blog/sku/日建リース「SKUとは?アイテムごとの単位と在庫管理システムへの導入メリット」
https://www.nrg.co.jp/nikkenlease/n-column/skuスマートマット「SKUの意味や重要性とは?最適な管理方法と注意点」
https://www.smartmat.io/column/streamlining/8078アラジンオフィス「SKUとは?意味や数え方、在庫管理時のメリット」
https://aladdin-office.com/zaiko/column57/マネーフォワード「ERPコンサルタントとは?役割や活用するメリット」
https://biz.moneyforward.com/erp/basic/1063/
