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第七章 一線を超えない決断

本シリーズは特定の企業を批判する目的で書いているものではありません。
むしろ、あの時代に社会へ出た多くの人が
どこかで感じたかもしれない違和感の記録です。
それが個人の問題だったのか、
それとも時代の問題だったのか。
その問いを、冷静に辿っていきます。

シリーズ一作目はこちら:第一章 「あの挨拶」の会社

いつものように営業を始め、
紆余曲折の末、
ついに契約の話に持ち込む。
そのとき、
客から質問が出た。
「干渉に弱いって、
パンフレットに書いてあるけど、
大丈夫かな?」
同行していた営業マンは、
迷いなく答えた。
絶対に大丈夫ですっ!
結果、
契約は成立した。


帰り道、
私はこの点について、
彼に質問した。
すると彼は、
何のためらいもなく、
こう言い切った。
「だって、
そんなこと言ってたら、
契約取れないじゃん」
その瞬間、
私は理解した。
数字を積み上げている営業マンたちは、
こうやって、
日々を乗り切っているのだ。


だが、
もし本当に、
ネットワーク接続ができなかったら、
どうなるのか。
以前、
関連会社に騙されたと話していた、
あの社長の言葉が、
頭をよぎった。
そして現実として、
自分自身も、
いずれそこに加担せざるを得なくなる。
そんな予感が、
もはや時間の問題のように思えた。


在籍8カ月。
短かったと言えば短かったが、
色々と考えさせられる経験だった。
もし、あの時、
マネージャーが私を
アポイントを取るだけの要員として割り切って使っていたら、
ひょっとすると昇進し、
この会社に、もう少し長く在籍していたかもしれない。
飛んでもない体質の会社であることは間違いない。
それでも実績はあり、法務もしっかりした会社だった。
少なくとも形式上は、
必要な告知事項は社員に徹底されていた。
それが現場では形骸化していたとしても、
それは会社の問題というより、
現場の現実の問題だった、とも言えなくはない。
ただ――
毎日のように14時間以上働き、
現場で追い詰められ続ければ、
「魔が差す」人間が出てきても
不思議ではない。
それもまた、現実だった。


それと、
私が在籍していた時期も
「悪かったのかも」しれない。
赴任したエリアは立ち上げ直後で、
数字が安定していなかった。
マネージャーが降格したことからも分かる通り、
私は「うまくいっている時期」を
一度も経験していない。
冷静に考えれば、
数字が上がっていない部署という
極端な例だけを見ていたから、
悪い面ばかりが
目についただけなのかもしれない。


そんなことも含めて、
履歴書に書く「実績」としては
決して誇れるものではない。
だが、
「経験」としては、
悪いものではなかったように思う。
当時の法律には抵触していなかったとはいえ、
こんな会社が一般企業として成立しているのは、
日本という社会の特殊性でもあるのではないか、と
今では考えることもある。
欧米で同じことをしていれば、
訴訟で会社が成り立たなくなるのではないか、
と想像する。


それでも、
「運悪く」とは書いたが、
最終的に、この会社を辞めてよかったと思っている。
正直者でありたいと願う自分を、
守ることができた。
そして何より――
体が限界だった。
その話は、
次のシリーズに続くことになる。


■ 次のシリーズへ

このあと私は、一度大きく体を崩したのち、地元でデータセンター業務をうたう別の会社へ入ることになる。

そこには、表からは見えない歪みと、まだ使える心臓部のような仕組みが同居していた。

最初の会社とはまた違う形で、組織の構造と人間の問題が見えてきた時期だったと思う。

興味を持っていただけた方がいれば、
次の「サーバの会社編」にも触れていただければ幸いです。


■ 始まりの物語

ここまで書いてきた時間のさらに前に、
自分の基礎を形づくった時期があります。

大学時代、ラグビーに向き合っていた頃の記録です。
当時はただ目の前に取り組んでいただけでしたが、
今振り返れば今へ続く一本の線の上にあった出来事のようにも感じます。

興味を持っていただけた方がいれば、
その始まりの時間にも触れていただければ幸いです。


この記事を書いている人はこんな人

・・・というのがわかるような書籍を出版しています。

大学の頃に経験したラグビーと、その後留学して取得したMBA にまつわる話をまとめた書籍です。このnote でも「小麦譚」というシリーズ(マガジンでまとまっています)で無料で見れる部分がありますので、是非読んでみてください。
難しい話や専門的な内容はほとんどありません。
むしろ、
「なんでこんなに無理してたんだろう」
と後から振り返るような、そんな話が多めです。
ダイエットの話をここまで読んでくださった方なら、
きっと気負わず読める内容だと思います。

  • 紙版(1518円)

  • Kindle版(780円:)

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