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第二章:離職率9割

本シリーズは特定の企業を批判する目的で書いているものではありません。
むしろ、あの時代に社会へ出た多くの人が
どこかで感じたかもしれない違和感の記録です。
それが個人の問題だったのか、
それとも時代の問題だったのか。
その問いを、冷静に辿っていきます。

シリーズ一作目はこちら:第一章 「あの挨拶」の会社

研修は、なかなかに厳しいものだった。
社歌や社訓を、チームになった人たちと肩を組んだ状態で、
延々と歌わされる。
そして「声が小さい」などと煽られる。
もっとも、
元々体育会系だったこともあり、
何より周りがみんなそんな感じだったので、
「こんなもんかな?」
という感覚で、なんとか乗り切った。
ただ、
冷静に考えれば、明らかに異常な状況でもある。
実際、この研修の時点で、
何人かは脱落していたような気がする。
それと、
研修そのものは、それなりに楽しい面もあった。
現役の営業マンが、
商品に関するプレゼンを行ったり、
当時としてはそれなりに最先端だった、
ネットワークの知識を教えてもらえたりもした。
リースの基礎知識なども教わったし、
当然、表には出ない裏話的な話も聞けた。
人の金で、知識を与えてもらう。
この経験は、
直近までMBAの授業を、
半分以上自費で受けていた私からすると、
かなり贅沢なものにも思えた。
今振り返ると、
全体としては、
ある種の洗脳を受けていたのだと思う。
そして、
「俺もガンガン稼いでやるぞっ」
という意気込みとともに、
一度チームになった人たちは、
全国の勤務先へと、散り散りに赴任させられた。


こうして、地獄は始まった。


テレマーケティングと言えば、
聞こえはいいかもしれない。
だが、
要するに、
朝から晩まで、
どこからか手に入れたと思われる連絡先に、
ひたすら電話をかけ続ける仕事である。
言葉にすれば簡単だが、
営業電話に慣れきった人が多い中で、
普通にガチャ切りされたり、
怒鳴られたり、
説教されたりする。
そんな、通常の精神状態であれば、
簡単にへし折れてしまうような出来事が、
平均して3分おきくらいに発生する。
それでも、
電話をかけていないと、
マネージャーがやってきて、
鬼のように「詰められる」。
(「詰める」とは、
怒鳴ることを含めて罵倒されたり、
座っている椅子の背もたれを、
ガンガン蹴られたりすることを指す。)
そして営業である以上、
売り上げが上がらない日も、
当然ある。
というか、
そっちの方が多いまである。
そうなると、どうなるか。
ここは、少し説明が必要だろう。


今では、
もう認められていないのかもしれないが、
当時は
「みなし管理職」
あるいは
「名ばかり管理職」
と呼ばれる雇用形態が存在した。
新人であろうが、
全員が、この形で雇用されている。
どういうことかというと、
管理職と同等である、
という建前での雇用であるため、
残業という概念が存在しない。
では、
残業という概念がないと、
どうなるか。
つまり、
売り上げが上がっていなければ、
延々と働き続けることになる、
という状況である。

第三章はこちら:第三章 8時半から22時まで
(公開前の場合があります)


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