猫のおしっことちゃんちゃんこ ――猫は理由もなく問題行動を起こしたりしない
連載初回はこちら:――事の起こり
前回は、ちゃんちゃんこを洗った話を中心に書いた。
しかし本当の問題は、当然ながら「なぜそんなことが起きたのか」という点にある。
猫がおしっこを失敗する、あるいはトイレ以外の場所でしてしまう場合、
多くの人はまず「しつけができていない」「わざとやっている」と考えがちだと思う。
だが、少なくとも俺が見ている限り、猫は理由もなく問題行動を起こしたりはしない。
ただし、ここで書いているのは、俺が俺なりに猫の気持ちになって観察し、背景を考察しているだけだ。
俺自身は専門家でもなんでもないので、その点はご留意いただきたい。
トイレでできるのに、別の場所でやるという事実
うちのタウリンの場合、朝などはきちんとトイレで用を足すこともある。
というか、俺が起きるまで何度も鳴いて知らせ、我慢して、事務所の外側にあるトイレに行けてから初めてトイレする……ということが何度もあった。
つまり、
トイレの場所を知らないわけではない
トイレでする能力がないわけでもない
ということになる。
それなのに、ソファや服の上など、別の場所におしっこをかける行動が出る。
ここで重要なのは、これは「失敗」ではなく、別の目的を持った行動だという点だ。
猫にとっておしっこは、単なる排泄ではなく、自分の匂いを環境に残すための手段でもある。
つまり、
安心できない
落ち着かない
自分の居場所が不安定
こういう状態になると、
「匂いを残すことで環境を自分のものにしよう」とする行動が出やすくなる。
俺はこれを、(少なくともタウリンの場合は)いわゆる「不安衝動」に近いものだと考えている。
環境の変化は、猫にとっては大事件である
今回の件を振り返ると、思い当たる節はいくつもある。
年末年始、俺は家を離れてホテルに滞在していた。
その間、タウリンがよく来ていた事務所にも出入りできない状況があった。
猫にとって、
いつもいる人がいない
出入りできていた場所に行けない
匂いで安心できる物が減る
この3つが同時に起きるのは、かなり大きなストレスだと思う。
人間の感覚だと「ちょっとした模様替え」くらいの変化でも、
猫にとっては生活基盤が崩れたように感じることがある。
そんな状態で、安心できる匂いのついたソファや服があれば、
そこに自分の匂いを重ねて「ここは安全だ」と主張したくなる。
文句も言いたくなる状況だったのだと思う。
力関係と安心感は、猫社会でも普通に存在する
もう一つ考えられる要素として、猫同士の力関係というものがある。
現時点で家には猫が6匹出入りしており、全員家族なのだが、そんな関係性でもこの力関係は存在するらしい。
タウリンは他の猫に対しても気を使う場面が多く、特定の猫――特に母猫に対しては、かなり依存しているようにも見える。
外では母猫の後をついて回るのに、屋内では逆に不安が強く出る。
こういう行動を見ていると、単純に「仲がいい」「仲が悪い」では片付けられない、
微妙な力関係と安心感のバランスがあるのだろうと思わされる。
そして、その不安が向かう先が、人の匂いが強く残っている場所や物になることも、決して不思議ではない。
嫌がらせではなく、生存戦略に近い行動
ここまで書くと分かる通り、この手の排尿行動は、決して嫌がらせではない。
むしろ、
「自分が安心して生きるための環境を確保しようとする行動」
に近い。
人間から見ると迷惑でしかないが、猫の側から見れば、かなり必死な行動でもある。
だから俺は、この手の行動を見ても「悪さをした」とはあまり思えない。
困るのは確かだが、理由を考えれば、納得できる部分も多い。
問題は行動そのものより、その背景にある
ここまで来ると、「おしっこをした」という事実そのものよりも、
「なぜそんなに不安になっているのか」の方が、よほど重要な問題になってくる。
行動だけを止めようとしても、不安の原因が残ったままなら、別の形で必ず出てくる。
だから次に考えるべきなのは、
叱るかどうか
ではなく、
どうすれば安心できる環境を作れるか
という点になる。
次回はこの「感情的に叱らない方がいい理由」について、もう少し踏み込んで整理してみたいと思う。
連載3回目はこちら:――叱ると長引く(公開前の場合があります)
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