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猫のおしっことちゃんちゃんこ ――叱ると長引く

連載初回はこちら:――事の起こり

ここまで、猫がトイレ以外の場所でおしっこをしてしまう理由について、
不安という観点から整理してきた。
では、そういう行動を見たとき、
人間はどう対応するのがいいのだろうか。
正直に言えば、
叱りたくなる気持ちは、かなり分かる。
お気に入りのソファや服をやられたら、
腹が立たない方がおかしい。
掃除や洗濯の手間もかかるし、
臭いが残るかもしれないという不安もある。
だから、「ダメでしょ」「なんでこんなことするの」と言いたくなるのは、
人としてごく自然な反応だと思う。


でも、猫は「何が悪かったか」を理解できない

問題は、猫の側がその叱責をどう受け取るか、という点にある。
猫は、人間の言葉の意味を理解しているわけではない。
声のトーンや表情、雰囲気から「怖い」「怒られている」ということは感じ取るが、
なぜ怒られているのか
どの行動が問題だったのか
という因果関係までは、ほとんど理解できない。
結果として何が起きるかというと、

  • その場所が怖い場所になる

  • その人が怖い存在になる

という学習が起きやすくなる。
そして、怖い場所や怖い人が増えれば、
猫の不安はさらに強くなる。


不安が増えると、問題行動は減らない

ここが一番やっかいなところだ。
不安が強くなればなるほど、
猫はより強く「自分の匂いを残す」行動に出やすくなる。
つまり、
不安 → 排尿行動 → 叱られる → さらに不安 → さらに排尿行動
という、かなり分かりやすい悪循環が出来上がる。
人間の側からすると、
何度言ってもやめない
反省していない
という印象になるかもしれないが、
猫の側では、むしろ不安が強化されているだけ、というケースも多い。


叱ることで得られるのは「安心」ではなく「緊張」

叱ることで、
一時的に行動が止まることはあるかもしれない。
だがそれは、
理解してやめた
ではなく、
怖くて動けなくなった
という状態に近い。
そして、その緊張状態が解けた瞬間に、
別の形で不安行動が出る。
爪とぎ、隠れる、食欲不振、過剰な毛づくろい。
出方は色々だが、根っこは同じだ。
だから、叱ることで問題が「解決したように見える」瞬間があっても、
実際には場所や形を変えて続いているだけ、ということも珍しくない。


それでも叱ってしまうのは、人間の感情の問題

ここで少し厳しいことを書く。
猫を叱る行為は、
猫の行動を正すためというよりも、
叱る側の感情を発散するための行動になっている場合が多い。
怒り、苛立ち、無力感。
そういう感情を、どうしてもどこかに向けたくなる。
だが、その矛先が、
理由を説明して理解させることのできない相手に向かってしまえば、
問題は解決しないどころか、むしろ深くなる。
感情が湧くこと自体は仕方がない。
だが、その感情をどう扱うかは、人間側の責任だと思う。


本当に必要なのは、行動の裏にあるものを見ること

ここまで書いてきた通り、
猫の排尿行動の多くは、不安と強く結びついている。
だから、考えるべきなのは、
どうやってやめさせるか
ではなく、
なぜそんなに不安なのか
何が安心を奪っているのか
という点だ。
行動だけを止めようとすれば、
別の形で必ず表に出てくる。
不安が解消されなければ、
問題行動は形を変えて続く。


次に考えるのは「環境」の話

ここまでで、

  • 猫の行動には理由がある

  • 叱ることは不安を強めやすい

という点までは整理できたと思う。
では、具体的にどうすればいいのか。
次回は、
不安衝動を持つ猫に対して、
人間がどんな環境を用意できるのか。
「叱らない」だけで終わらせず、
もう一歩踏み込んで、現実的な対処の話をしてみたい。

連載最終回はこちら:――不安を消すことはできなくても、減らすことはできる(公開前の場合があります)

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