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専門の矯正医がいない市町村は珍しくない。矯正歯科の地域差と、治療選択肢をつなぐ承継の課題

著者プロフィール

吉住 淳|医療法人社団生美会 理事長 / 株式会社Brace 代表取締役歯科医師
日本矯正歯科学会認定医。2016年に父の医院を事業承継し、2018年にSMILE ACCESS矯正歯科渋谷を開業。テクノロジーを活用し、適切な矯正治療をより身近にすることをテーマに、診療と事業の両面から業界に向き合っている。


矯正治療は、まだ十分に届いていない

厚生労働省の「令和4年 歯科疾患実態調査」によると、矯正歯科治療を受けた経験がある人の割合は、全体で7.7%でした。50歳未満では2割近くに上る年代もありますが、それでも日本全体で見れば、矯正治療はまだ一部の人にしか届いていない医療だと言えます。

予防歯科の普及によって健康的な口腔環境を持った成人が多い現在の日本において、歯ならびや噛み合わせに悩む方が少ないとは考えにくいでしょう。

もちろん、費用や治療期間など、治療に踏み出せない理由はさまざまです。
その一方で、「相談できる医院が近くにない」「長期間通い続けられる医院が見つからない」といった理由から、検討の入り口にすら立てていない方もいるのではないでしょうか。

ご存知の通り、矯正治療は長期間にわたる継続的な通院と経過管理が必要な医療です。だからこそ、患者さんにとって「通える距離に、信頼して相談できる医院があること」は、治療を始めるうえで大きな条件になります。


都市部への偏りが生む課題

地域差は、矯正歯科医療における構造的な課題の一つです。
2010年の自治体データを用いた研究では、専門的に矯正治療を担う歯科医師や、日本矯正歯科学会の認定医は、地域ごとに大きな偏りがあることが示され、とくに人口5万人未満の市町村では、専門的な矯正医が極めて少ないと報告されています。

また、別の研究では、2014年時点の人口10万人あたりの「矯正歯科に従事している歯科医師数」全国平均2.3人であり、最も多い都道府県は東京都、最も少ない都道府県は青森県でした。最多と最少では、6.5倍の差があったと報告されています。

もちろん、これらの研究は一定年数前のデータに基づくものであり、現在の状況をそのまま表すものではありません。ただ、それでも、矯正歯科のように専門性の高い医療ほど、地域によって受けられる選択肢に差が生じやすいという構造は、今も無視できない問題だと感じています。

一般の歯科医療全体を見ても、厚生労働省の調査において、歯科医療機関を容易に利用できない「無歯科医地区」が2019年の777地区から2022年には784地区へ増加し、該当人口も188,647人に上っています。

これはもちろん、矯正歯科に限った統計ではありません。ただ、基礎的な歯科医療ですら地域によるアクセス課題が残るなかで、より専門性が求められる矯正治療においては、一つの医院が地域で果たす役割がさらに大きくなり得るのではないかと考えています。


一つの閉院が、地域の選択肢に影響することもある

都市部であれば、ある矯正歯科医院が閉院したとしても、患者さんが別の医院を探せる場合があります。もちろん転院には負担が伴いますが、比較的複数の選択肢が見つかりやすい地域も多いでしょう。

一方で地方では、数十年にわたり地域の矯正治療を支えてきた医院が閉院した場合、患者さんは次にどこへ相談すればよいのか、判断に迷うことも少なくありません。
これは、治療中の患者さんだけに限られる問題ではなく、これから矯正治療を考える子どもや保護者にも関わる課題です。身近な地域で専門的に相談できる場所が少なくなることは、治療を検討するきっかけや選択肢にも影響を及ぼします。

患者さんが、住み慣れた地域で相談を続けられること。スタッフが、これまでの経験を生かして働き続けられること。紹介元の先生方との関係や地域の中で育ってきた信頼が、次の世代にも引き継がれていくこと。そうしたものを守り、つないでいく手段として、私は承継を考える大きな意味があると思っています。


医院がなくなることで地域に残るもの

長年診療を続けてきた先生ほど、「自分がいなくなっても、どこか別の医院があるだろう」と考えられることがあるかもしれません。
しかし矯正歯科では、その“どこか”が必ずしも近くにあるとは限らないのです。
もちろん、医院を続けることが難しくなったとき、閉院は決して否定されるべき選択ではありません。先生ご自身の人生や健康を考えれば、当然あり得る判断です。

それでも、もしそこに「引き継ぐ」という別の道があるのだとしたら。患者さんにとっても、スタッフにとっても、地域にとっても、残せるものは大きく変わります。

私たちは、承継を単なる「経営の出口」としてだけでなく、これまで地域で担ってきた診療を、患者さんやスタッフにできるだけ負担をかけずに次へ引き継ぐための選択肢でもあると考えています。

この地域で、これからも矯正治療を受けられる場所を残したい
自分が築いてきた医院を、患者さんのために次へつなぎたい
閉院しかないと思っていたが、他の選択肢も知りたい

このようなお気持ちやお悩みをお持ちでしたら、まずはお話をお聞かせください。まだ具体的に決まっていない、承継を検討し始めたばかりの段階でも問題ございません。
無料・秘密厳守で承りますので、お気軽にご相談ください。

お問い合わせは下記より承っております。※お問い合わせの際は、項目欄にて『承継・事業譲渡について』をご選択ください。


矯正歯科医療の地域差は、専門医の数だけでなく、医院の承継、後継者不足、閉院といった問題とも深く関係しています。
地域に必要な矯正歯科医療をどう残していくのか。これは、これから開業を考える若手矯正医にとっても、引退や承継を考え始めた院長先生にとっても、避けて通れないテーマです。

関連記事として、以下の記事もあわせてご覧ください。

矯正歯科の後継者不足と閉院が地域医療に与える影響

■若手矯正歯科医にとっての新規開業と承継の違い


【引用・参考文献】
厚生労働省「令和4年 歯科疾患実態調査結果の概要
・厚生労働省「令和4年度無医地区等及び無歯科医地区等調査の結果を公表します
・Yoshikazu Okawa et al. “Geographic distribution of specialist orthodontists and orthodontic providers in Japan
・厚生の指標 第64巻第2号「診療科別歯科医師の地域偏在


※本記事は、公開情報および一般的な事例をもとに作成しています。記載している統計データは各調査時点のものであり、個別の医院の状況を示すものではありません。

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