医療業の6割以上が後継者未定という現実──。矯正歯科の後継者不足と閉院問題
著者プロフィール
吉住 淳|医療法人社団生美会 理事長 / 株式会社Brace 代表取締役歯科医師
日本矯正歯科学会認定医。2016年に父の医院を事業承継し、2018年にSMILE ACCESS矯正歯科渋谷を開業。テクノロジーを活用し、適切な矯正治療をより身近にすることをテーマに、診療と事業の両面から業界に向き合っている。

承継が「まだ先の話」ではない時代に
矯正歯科医として長くこの業界に身を置いてきて、いま強く感じていることがあります。それは、地域の中で静かに、しかし確実に、受け継がれなくなる医院が増えているということです。
私自身、父の医院を引き継いだ経験があります。当時は、親から子へ承継することがまだどこか自然な流れとして存在していました。
しかし今は、その前提自体が大きく変わっています。「承継したくても継ぐ人がいない」「続けたくても任せ先が見つからない」そうした現実が、歯科、ひいては矯正歯科の現場にも確実に広がっているのです。

帝国データバンクの2024年調査では、病院・診療所を含む医療業の後継者不在率は61.8%でした。つまり、医療業の6割以上が、次を託す相手を決めきれないまま運営されているということです。 (TDB)
さらに、2025年に休業・廃業・解散が判明した医療機関は823件と過去最多。そのうち歯科医院は147件で、こちらも過去最多となっており、休廃業・解散の増加について帝国データバンクは、経営者の高齢化と後継者不足を主な背景として挙げています。 (TDB)

この数字は、単に「承継に悩む先生が増えている」という話ではなく、これまで地域で続いてきた医院が、後継者を見つけられないまま役目を終え「閉院」というかたちで市場から消えていく可能性が高まっている、という現実です。
一つの閉院が、地域医療に残す空白

長年地域で診療を続けてきた先生にとって、閉院は単なる事業の終了ではなく、人生をかけて積み上げてきたものに区切りをつける出来事でもあります。
しかし、その影響を受けるのは院長先生だけではありません。患者さんとの関係、スタッフ、紹介ネットワーク、そして「ここに行けば診てもらえる」という地域の安心感まで、一緒に失われてしまうことがあります。
この影響がより深刻になりやすいのが、まさに私たちが提供している矯正治療です。
矯正治療は、診断にはじまり、装置の選択、歯や周囲組織の確認、経過の調整、保定まで、長い時間をかけて進んでいきます。だからこそ、治療の途中で医院が閉院してしまうことは、患者さんにとって非常に大きな不安につながります。たとえ転院先を紹介できたとしても、これまでの治療方針がどのように引き継がれるのか、誰が最後まで責任を持って診るのか、当初の計画通りに治療を進められるのかといった不安が生じることで、思わぬトラブルにも繋がりかねません。
矯正治療は、継続的な経過管理と専門的な判断の積み重ねによって成り立つ医療。だからこそ、地域から専門性の高い診療拠点が一つ失われることは、その地域にとって決して小さくない損失です。
私はこの点にこそ、承継を考える本当の意味があると思っています。承継は、院長先生の引退準備である前に、患者さんの治療を途切れさせないための準備でもあるのです。
承継を考え始めるなら、50代は決して早くない
実際、承継において動き出すタイミングはとても重要です。2024年に休廃業・解散となった歯科医院の代表者平均年齢は69.3歳でした。体力面、判断力、交渉のしやすさを考えても、そこに至ってから準備を始めるのでは、選択肢が限られてしまうことがあります。 (TDB)

一方で、50代後半から60代前半であれば、まだ診療に余力があり、医院の価値を整理しながら承継先と向き合いやすい時期でもあります。この時期こそ最も現実的で、医院の価値を守りながら次につなげやすいタイミングだと、私は感じています。
「まだ先の話」と思っているうちに、相談できる相手も、選べる形も、少しずつ減っていく。その現実を、私は現場で何度も見てきました。
スタッフ体制、患者さんとの関係、地域での信頼、それらをきちんと次につなぐためには、「まだ先」と思える時期から考え始めることに意味があるのではないでしょうか。
承継は医院を手放すことではなく、残すこと

承継という言葉に、少し寂しさや後ろ向きな印象を持たれる先生もいらっしゃるかもしれません。しかし私は、承継は「終わりの準備」ではなく、これまで築いてきた診療・医院を、別のかたちで地域に残していくことだと思っています。
そして、だからこそ私は、承継について相談できる場や選択肢をつくりたいと考え、SMILEACCESSの承継サービスを立ち上げました。閉院しか選べなくなる前に、できることがあるからです。
患者さんのために。スタッフのために。そして、ご自身が長年積み上げてこられた医院の価値を、未来につないでいくためでもあります。
一方で、承継は引退を考える院長先生だけの話ではありません。これから開業を考える若手矯正医にとっても、現実的な選択肢になり得ます。
若手矯正医の開業と承継については、以下の記事でも詳しく解説しています。
「自分の医院は承継できるのか」
「いつ頃から考え始めるべきなのか」
「患者さんやスタッフへの影響を最小限にするにはどうしたらいいのか」
そんな段階からでも構いません、まずはお気軽にご相談ください。無料・秘密厳守で承ります。
お問い合わせは下記より承っております。※お問い合わせの際は、項目欄にて『承継・事業譲渡について』をご選択ください。
【引用・参考文献】
・帝国データバンク「全国『後継者不在率』動向調査(2024年)」
・帝国データバンク「医療機関の倒産・休廃業解散動向調査(2025年)」
・帝国データバンク「『歯科医院』の倒産・休廃業解散動向(2024年1-10月)」
※本記事は、公開情報および一般的な事例をもとに作成しています。記載している統計データは各調査時点のものであり、個別の医院の状況を示すものではありません。
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