第2話|「覚悟」とは、どこまで自分で背負うか。【言葉の裏側シリーズ全3話】
「覚悟を持つ」と聞くと、
強い意志や精神力を想像する。
何があっても逃げない。
最後までやり抜く。
腹を括る。
私自身も、以前はそんなイメージを持っていた。
でも、会社員時代にいくつかのトラブル対応を
経験して、少し考え方が変わった。
覚悟とは、気合いの問題ではない。
むしろ、
「なぜ自分は、そこまで背負えるのか」
その根拠のほうが大切なのではないかと
思うようになった。
覚悟が「分散」していた経験
会社員時代、会社にとって非常に重要な案件で、
大きなシステムトラブルが起きたことがある。
場合によっては社会的な責任も問われる。
信用や信頼を失う可能性もある。
風評被害につながるかもしれない。
当然、一営業担当者だけで
対応できるような話ではない。
会社として総力を上げて対応する。
技術部門も動く。
上層部も関わる。
関係する部署も対応する。
私自身も、お客様と会社の間に立つ役割として、
それなりの責任を持って対応した。
ただ、今振り返ると、
そこには「分散された覚悟」があったように思う。
会社として責任を取る。
組織として対応する。
それは当然、正しい。
でも、その分だけ自分の中には、
「最後は会社が責任を取る」
という逃げ道もあった。
責任を背負っているようでいて、
実は一人では背負っていない。
連帯責任という形で、覚悟が分散されていた。
自分で覚悟を背負った経験
もう一つ、印象に残っているトラブルがある。
こちらも会社にとって、
そして自分にとって重要な案件だった。
ただ、最初の案件とは少し違った。
まだ会社としての認知度も浅く、
今後どうなるかもわからない。
いわゆるPoC(検証フェーズ)の案件だった。
そのため、会社としてはそこまで大きな案件として
認識されていなかった。
トラブルが起きても、
所属する部門くらいしか大きく動かない。
正直、上のほうはあまり動いてくれなかった。
でも、私自身はこの案件の今後にかなり期待していた。
ここで終わらせたくない。
そう思った。
そこで、自分で覚悟を決めた。
営業という自分の役割を超えて、
プロジェクトの中に入り、
PMのような立場でトラブルに向き合うことにした。
PMとしての経験は、まったくなかった。
そこは正直、不安だった。
それでも動けた。
なぜか。
「なんとかする」には根拠があった
自分の中では、ゴールが明確だったからだ。
その案件は検証フェーズだった。
だから、検証結果そのものがすべてではない。
もちろん結果は大切だ。
でも、それ以上に重要なのは、
「なぜその結果になったのか」
というプロセスだった。
お客様が社内に報告するときに、
きちんと説明できる材料を用意する。
どう検証したのか。
何がわかったのか。
何がわからなかったのか。
次に何をすべきなのか。
そこまで整理できれば、
お客様は上司や社内に説明できる。
そして、それが信頼につながる。
だから、自分の中では
「なんとかできる」という感覚があった。
もちろん、PM経験がないという不安はある。
でも、何を目指せばいいのかはわかっていた。
だから、覚悟を決めることができた。
結果的には、お客様から信頼を得ることができ、
その後の大きな案件にもつながった。
覚悟は、精神論ではなかった
この二つの経験を振り返ってみると、
覚悟について少し違った見方ができるようになった。
覚悟とは、
「何があってもやります!」
という精神論ではない。
むしろ、
「自分は何を背負うのか。そして、なぜそれを背負えるのか」
ということなのではないか。
最初の案件では、組織として責任を背負っていた。
だから、自分の覚悟は分散されていた。
二つ目の案件では、
会社がそこまで動かない中で、自分自身が背負った。
でも、そこには「こうすれば信頼につながる」
という根拠があった。
だから腹を括れた。
そう考えると、
「覚悟」と「技術(できる根拠)」は切り離せない。
何もわからない。
何もできない。
何をすればいいかもわからない。
それでも「覚悟だけはあります」と言っても、
なかなか難しい。
覚悟を支えるものが必要になる。
「寄り添う」にも覚悟がいる
第1話で、「寄り添う」という言葉について考えた。
私は、寄り添うこと自体を否定したいわけではない。
むしろ、自分自身も人に寄り添うような仕事を
していきたいと思っている。
でも、「寄り添います」と言うなら、
その言葉に対して自分なりの責任を持ちたい。
相手によって、必要な寄り添い方は違う。
だから、正解は一つではない。
それでも提供する側には、
「この人に対して、自分は何ができるのか」
「何ができないのか」
「どこまで責任を持つのか」
を考える必要があると思う。
それが、私にとっての「腹を括る」ということ
なのだと思う。
覚悟を綺麗ごとで終わらせないために
そして、ここで一つ怖いことがある。
「覚悟を持って寄り添います」
これもまた、
綺麗な言葉になってしまう可能性があることだ。
言葉はいくらでも綺麗にできる。
だからこそ、
その言葉を行動に変えられるものが必要になる。
私の場合、それは「技術」だった。
覚悟があるから何でもできるわけではない。
むしろ、覚悟を持ち続けるためには、
自分自身ができることを
増やしていかなければならない。
だから私は、覚悟とは精神的な強さだけではなく、
「必要なときに、なんとかするための根拠を持っていること」
なのではないかと思っている。
そして、その根拠をつくるものこそが、
日々磨き続ける「技術力」なのだと思う。
次回は、その「技術力」について考えてみたい。
ITの世界では、
技術力というと最新技術を思い浮かべる。
でも、私が現場で感じてきた技術力は、
少し違っていた。
第3話へ続く…
第1話、第3話はこちら↓
