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#3_宛名のない手紙 ー 心の中でそっと送る、あなたへー

実際にあったことかもしれないし、
空想の話かもしれない。
ふと浮かんだまま書き綴っただけの言葉かもしれないし、
誰かに読んでもらうための手紙かもしれない。

どちらでもいい、
そんな自由なニュアンスの連載です。

届くことのない想い、
言えなかった気持ち、
すれ違いの中で置いてきてしまった言葉たち。

届かないまま胸の奥で
時折フワッと浮かんできたり、
沈んだりしていた想いー

そんな想いを
心の中でそっと送るだけの手紙の中に、
静かに、ゆっくりと綴っていきます。

(※不定期連載です。)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


あなたへ

空港で見送ってから、もう1年が経ったね。

何年も会わないまま、
長い歳月が過ぎていた。

日本に戻らず一人で生きている私に
会いに来てくれたあなた。

再会した瞬間、
会わないでいた長い時間が
静かに溶けていくようだった。

「子育てが一段落したから」
そう言って長距離フライトに乗って来た、
一人で。


大学からはアメリカに行くと決めた時、
あなたは聞いたよね。

「もう戻ってこないんでしょう?」

私の気持ちを知っていたから。

言わなくても
分かってくれている人
私にとって、あなたはそういう人。

ただの友だちじゃない、
ただの幼馴染でもない、

「分かってくれている人」


父が亡くなった時、
最初に知らせてくれたのは
あなただった。

とても言いづらかったはず。
愛人の家で亡くなったー
看取ったのは愛人とその子供だった、
そんなことを伝えるなんて。

携帯電話を握りしめたまま、
私はしばらく黙っていた。

「どうする?」

そう聞いたよね?

私が日本に戻らないことを
あなたは知っていた。

「帰らないよ」

それが私の返事。

「わかった。連絡したことは誰にも言わないでおくね」

あなたの一言で、
感情の水面みなもの揺れが
静かになっていった。

涙なんて
ひと粒も流れなかった。

憎しみ
怒り
恨み
絶望
嫌悪感
父に対する感情はそんなものだけ。

そういったものが薄い膜を破って、
溢れそうになるのを感じながら
私は生きていた。

誰にも言ったことなどない。

でも、あなただけは知っている。

一度だけ泣いたことがあるからー。
あなたの前で泣きじゃくった、
小学3年生のあの日。

雪が降る日に
母が自殺未遂をした日。

夕方に
一緒に雪だるまを作ったよね。
ウサギも作った。
あなたが作ったウサギは
顔がデコボコで、二人でたくさん笑ったね。

たくさん笑ったら、
涙が溢れてきたんだ。

不格好なウサギを両手にのせたまま、
私は声をあげて泣いた。


涙が流れ続ける頬に
あなたは雪をそっとのせた。

「こうすると涙が凍って止まるよ」

そう言って
両手で私の頬を包んでくれたね。

あの時、夕焼けに雪がキラキラ輝いて、
オレンジ色に染まっていた。

頬に夕陽が映って
あなたは輝いていたよ。


知ってる?
あの日から、
私は一度も泣いてないんだー。


長距離フライトはくたびれるけれど、
また会いに来てほしいな。

次はー
家族みんなで来てくれたら、
うれしいな。



~今日の曲~
"Don't You Remember" Adele




~最後まで読んでくださった方へ~
心よりありがとうございました😊


◆Insta
Artwork
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