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#2_宛名のない手紙 ー 心の中でそっと送る、あなたへー

実際にあったことかもしれないし、
空想の話かもしれない。
ふと浮かんだまま書き綴っただけの言葉かもしれないし、
誰かに読んでもらうための手紙かもしれない。

どちらでもいい、
そんな自由なニュアンスの連載です。

届くことのない想い、
言えなかった気持ち、
すれ違いの中で置いてきてしまった言葉たち。

届かないまま胸の奥で
時折フワッと浮かんできたり、
沈んだりしていた想いー

そんな想いを
心の中でそっと送るだけの手紙に、
静かに、ゆっくりと綴っていきます。

(※不定期連載です。)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


あなたへ

しばらくーいや、随分と長い間会っていないけれど
元気かな?

あっという間に時間は過ぎて、
お互いに残された日々の方が少なくなってしまったね。

思えば、もう数十年のつきあいになる。
幼い頃から一緒に育ち、大人になった。

「他の友達とは違う。」
そう言い合っていたよね。

お互いに「いい距離」を保って、
干渉しすぎず、
分かり合えない部分はそっとしておく。

それが相手の生き方を尊重することだと、
私たちは自然に知っていた。

その心地よさがあったから、
私たちのつきあいは続いている、
遠く離れていても。

子供の時から、他の人には言えないことを
お互いに話したよね。

小さい頃から、あなたはいつも目立っていて、
存在感があった。
長いつきあいだからこそ、
身近な関係だからこそ、
言えないことがあるー

「あなたはいつも輝いているんだよ」

こんなこと今さら言えない、
そう思って言わずにいた。

でも、私はいつもそう思っていた。
一番の友達であることが誇らしかった。

知らないと思うけれど、
他の子たちからよく聞かれていたんだ。

「あの子と仲いいの?」

「うん、家が近いし家族同士も仲いいよ」

そう答えると、みんなびっくりしていた。

いつもオシャレで大人びていて
持ち物も個性的で独特だったあなた。

あなたの真似をする子が何人もいた。

お金持ちで大きな家に住んでいて、
お父さんが海外に行くたびに
当時では珍しいお土産を私にもくれた。

そんな輝いているあなたの裏側に、
誰も知らない孤独を抱えていることを
私は知っている。
無理をして大人びた子供でいようとしていたことも。


いつもしっかりしているあなたが
一度だけ、私の前で泣いた日のことを覚えている。

小学3年生の冬。
その日は雪が降っていた。

お母さんが病院に運ばれた。

お父さんには愛人がいて、子供も生まれていた。
そのことでしょっちゅうケンカになっていたんだよね。
そして、お母さんは雪の降る寒い日に薬を飲んだー。

他の誰も知らない、あなたの家の闇。

幼いあなたは、部屋でひとり、
ケンカをする両親の怒鳴り声を毎日聞いていた。

学校の帰りによく私の家に寄っていたよね。
うちは両親とも働いていて、いつも誰もいなかった。

「家に帰りたくないから、もう少しいてもいい?」

5時近くになると、毎回そう聞いていたあなた。

「お父さんとお母さんがケンカばっかりしてて、
家にいたくないの。」

わたしのことを「羨ましい」と言ったあなた。

あの時、本当にびっくりした。

みんなから憧れられているあなたから、
そんなことを言われるなんて、想像もしていなかった。

仲がいい両親がいて羨ましいー、
そうつぶやいた3年生の女の子。

私は気の利いたことも言えず、
ママが作ってくれていた寒天ゼリーを
黙ったまま差し出した。

2人で黙って食べた寒天ゼリーは
お皿の上でプルプル揺れていた。


輝いている姿の裏側に闇を抱えながらも
あなたは変わらずしっかり生きている。

早く家を出たいからと、
大学からアメリカに行ってしまった。
卒業しても戻ることはなく、
今でも一人で雄々しく生きている。

雪の日に泣きじゃくった3年生の女の子は
きっとまだあなたの中にいるはずー。

だからこそ、あなたは今でも輝いているんだよ。

そんなこと、私から言われてなくても分かってるよね。


ようやく自由な時間ができたから、
飛行機に乗ってあなたに会いに行こうかな。

その時は言えるかもしれない。

「いつも変わらず輝いてるね」

この一言を。



~今日の曲~
"You're the Inspiration"
  Chicago Band




~最後まで読んでくださった方へ~
心よりありがとうございました😊

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