メランコリックは紅茶色
「極論、白Tシャツが肌着に見えなくて、それにデニムだけで格好つく男はいいよねぇ」
よりによって真夏の昼下がり、遊びに誘われたと思ったら開口一番でこれだ。
なんちゃらホテルの涼しげなアフタヌーンティーにいながらも、炎天下に放り込まれた気分で茶谷(チャタニ)の話に付き合う。
差し詰め今現在、彼女にとって意中の人、または交際相手がそのような人物、といったところか。
中学2年生から親交があれば大体のことは分かるもので。進学や就職に伴い、ひとり、ふたりと連絡を取らなくなっていき、私のもとに唯一残ったのが恋に生きる女・茶谷だった。
私が側で見ている限りでは、年に3人くらいのペースで好きだの嫌いだの、一喜一憂してこちらの時間・都合を問わず大騒ぎする。
もう学生ではないのだからいい加減、落ち着いて欲しいのに、彼女には思う存分楽しんでもらって、最終的に転んだら友人として自分が手を差し伸べれば結構、と心のどこかで考えていた。
されど、今回の恋愛は順風満帆らしい。
〈白T男〉との出会いがナンパと聞いて眉を顰めるも、商業施設内のセレクトショップで働く茶谷が一目惚れされたとか、口癖のように今すぐ結婚したいと言われたら、私も悪い気はしなかった(だってそうでしょう、面倒臭い点を抜くと自慢の友達だもの)。
「幸せなら良かった。前の〈永久病み期ボーイ〉とは別れて正解だね、殺されそうになったけど」
「笑い事じゃないよぉ、大事件。あの時、静(しず)が匿ってくれなかったとしたら、本当にヤバかったの」
茶谷は唇に真っ赤なジャムをつけたまま、静のおかげ、静さまさま、と繰り返す。
まるで少女のような友人の口元を軽く指で拭ってやり、笑顔を向ける。
この時間がずっと続けばいいけれども、休日ゆえに白T男から『会えるー?』と彼女にメッセージが入った。
偶然、予約が取れたアフタヌーンティーの後はお開きか。
せっかく暑さを覚悟して外出したので、買い物にでも行きたかったが、仕方あるまい。邪魔者は早く帰ってシャワーを浴びよう。
レモンイエローのフローラル柄、ホテルに合わせてとびきりお洒落をしたつもり、シフォンのサマードレスが色褪せていく。
ところが、恋人の『友達と一緒?紹介してよ』に対して茶谷は
「来んなって感じ。今日は静とデートなんだよぅ。彼氏が最優先じゃありません!」
バッサリ断っており、ぷんすか怒りながらスマートフォンまでポシェットに仕舞う。
むくむくと込み上げてくる気持ちを
「ありがとう」
で収めるのに随分と苦労した。
茶谷はこういう女で「静のことが大好き」だとしょっちゅう口にする。この言葉で私がどんな感情を彼女に抱くかも知らずに。
「私も白Tとデニムのコーデ、似合うと思う?」
「静はお姫様でいてぇー、初期装備の勇者じゃなく」
どうか茶谷が幸せになって、私の想いが叶いませんように。

