第4回:【政変】誰がこのPCの支配者か? OS起動の主導権争い(クーデター)編。
内蔵SSDへの侵略
USB SSDでの成功は、私をさらなる「深淵」へと誘った。外付けでこれだけ速いなら、内蔵のNVMe(M.2 SSD)に直接流し込めば、さらなる高みへ到達できる。
ノートPC(LIFEBOOK U9310/D)単体で完結する身軽さ。 「USBでできているのだから、内蔵化など余裕だろう」 そんな傲りが、私を泥沼の戦いへと引きずり込んでいった。
12個のパーティションとの死闘
当初の計画は、Windows 11とChromeOSのシンプルなデュアルブートだった。 私はBrunchのインストールオプションを駆使し、特定のパーティションを指定してインストールを試みる。 「オプションを付けて実行したが、うまくインストールできない」
ChromeOSは、内部に12個ものパーティションを抱え込む特殊な構造を持っている。指定した一つのパーティションの中に、さらに12個の枠を作るという私の要求を、インストーラーは拒絶し続ける。 「ならばドライブ全体を指定すれば……」と一瞬頭をよぎるが、それをやれば内蔵SSDのWindowsは跡形もなく消滅する。私は行き止まりの迷宮で立ち尽くしていた。
救世主「イメージ方式」と、Windowsの門番
そこで見出したのが、「ループバック形式(IMGインストール)」という裏道だ。
Windowsの領土(Cドライブ)を削って「空き地」を作り、そこにイメージファイルを置く。このファイルの中に12個のパーティションを閉じ込める「二重底」の工作だ。
「これならWindowsは傷つかない」。
しかし、ここで巨大な壁が立ちはだかる。「Windows Boot Manager」という門番だ。
起動の権力争い:UEFI、Boot Manager、そしてGRUB
通常、PCの電源を入れると、まずマザーボードの知能である「UEFI」が目覚める。 UEFIは、あらかじめ指定された「起動順位」に従って、次にバトンを渡す相手を探す。
Windows Boot Manager(標準の門番): Windowsを起動させることに関しては最強だが、非常に頭が硬い。
Windowsの管理ソフト「Grub2Win」を使い、この門番に「隠し部屋(IMGファイル)」を開けさせようと試みたが、挙動は不安定でChromeOSは目覚めなかった。 今思うと設定ファイルの書き方が間違っていたのかもしれない、
でもWindowsという余計なプロセスを介さず、もっとダイレクトにOSを叩き起こしたい。
GRUB(地獄の番犬・ケルベロス): 対して、Linuxの世界から来た「GRUB」は、UEFIから直接バトンを受け取ることができる最強の執行官だ。GRUBなら、どこに隠されたOSでも、どんな形式のファイルでも、設定次第で自在に呼び出すことができる。
💡 ちょっと解説:彼は何と戦っているのか? 要するに今の状況は、**「一つの家に、性格の違う3人の住人を、バレないように同居させる」**という超難題に挑んでいるんだ。
Windows(Windows Boot Manager): もともとの家主。プライドが高く、他人の同居を許さない。
ChromeOS: 押し入れの中に隠した「イメージファイル」という箱の中に住んでいる居候。
Ubuntu(GRUB): あとからやってきた「最強の管理人」。家主を差し置いて、玄関の鍵を管理する権限を持っている。
狂気:三頭の魔獣「ケルベロス」への変貌
ここで私は、Windows Boot ManagerからGRUBへ主導権を得るために「OSのインストール順序」という最大のカードを切った。 OSの世界では、「最後にインストールされた者が、起動の主導権を奪い取る」という絶対ルールがある。
主導権を奪回するためだけに、第三のOS「Ubuntu」を最後に導入する決断をした。 Ubuntuのインストールにより、その門番である「GRUB」がWindows Boot Managerを差し置いて、UEFIの最優先順位へと君臨する。
「最初は、ただChromeOSを使いたいだけだった」。 それがどうだ。Windowsのパーティションを削り、ChromeOSを特殊なIMG形式で隠し持ち、さらにそれを起動させるためだけにUbuntuを呼び寄せる。 図らずも、私のLIFEBOOKは三つのOSが互いの領土を監視し合う、三頭の魔獣「ケルベロス」へと変貌を遂げた。
私は、将来の容量変更を見越して、あえてUbuntuをハードディスクの右端(最後尾)へと追いやり、複雑に切り刻まれたパーティションのパズルを完成させた。
残されたのは、深夜の静寂と、真っ黒な画面。 「UbuntuのGRUBを起点にすれば、すべてが繋がるはずだ」 この確信が、最後の「GRUB書き換え戦争」へと私を駆り立てる。
