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文系の私がAI基礎の資料を作るとき#16:作品の向こうにある設計

毎年、ボーカルレッスンの先生が開いてくださる親睦会ライブに参加しています。バックバンドも門下生が担当するので、私も何曲か鍵盤楽器を担当します。今年はその中の1曲に、ボーカル、コーラス、ベース、ピアノだけというシンプルな編成の曲がありました。

合わせは、本番2週間前の30分だけ。私は、ベースの動きを邪魔しない音選びを心がけ、リハーサルに臨みました。しかし!ワンコーラス行くか行かないうちに、先生からも周りからも「これじゃ歌えないよ〜」と言われてしまいました。

一人で練習していた1ヶ月ほどの間、自分で弾いて、それに合わせてうたっていたので、勝手に歌いやすい伴奏になっていると勘違いしていたようです。順番が逆だった!私だって、自分が歌うときには、バンドが歌を支えてくれることを期待します。なぜかこの曲に限って、その視点の切り替えが、すっかり抜け落ちていました。

演奏している本人には見えていなくても、周りには見えていることがあります。気づかせてもらえることや、それに納得できることは、大きな前進につながることがあります。今回も、周囲からもらったアドバイスをもとに、ドラムが加わった新しい編成に合わせて、ピアノの刻みやアーティキュレーションを見直すことができました。

本番は(たぶん)みんなで楽しい(そして良い)演奏ができたと思います♪

「AI基礎」第15回で行うピアレビューも、学生にとってそんな経験になってほしいと思いながら、最後の資料を作りました。

最終回のテーマは、「AIとの共同制作を読む」。これまでの授業で体験してきた、ことば・画像・音声を用いたAI活用のプロセスを振り返り、どこまでを人が設計し、どこからをAIに委ねていたのかを言語化できるようになることが目的です。

学生は、事前学習として、制作時の設計を振り返るシートを書いてきます。制作の過程を自分自身の言葉で整理できるように、たとえば次のような項目を記入できる設計シートを作ってみました。

・いちばん伝えたいこと
・特に工夫したところ
・AIに任せたところ
・見てほしいところ

この設計シートを作った理由はもう一つあります。この日のミニ講義では、AIがもっともらしい誤りを出力する「ハルシネーション」を扱いました。私自身が作ったデモ用のサマーピーチフールの紹介動画にも、fruit fool の由来についての誤った説明と、その根拠として実在しない書籍が挙げられているという、二重のハルシネーションが含まれています。でも、AIは幻覚を見ているわけではありません。学習したパターンから、それらしい続きを生成しているだけです。だから本当に問われているのは、人間がその結果をどう読み、どう判断するかです。

授業では、自分以外の学生が作った新商品紹介動画を、当初の予定から1本増やして、4本視聴します。ピアレビューの対象は作品ではなく、設計です。見る人だからこそ気づく特徴や工夫もあるため、ピアレビューシートには、上の点に加えて:

・この作品らしさ

を整理する欄も作りました。

作者の意図だけを探すのではなく、作品から読み取れることを見た人が言葉にする。その往復によって、自分一人では気づけなかった設計が見えてきます。このピアレビューの構造は、AIとの協働にも少し似ています。人がAIの出力を読み、意味づけし、必要に応じて修正する。その一連の過程まで含めて、「AIとの共同制作」なのだと思います。

さて、最終回。いつも資料の最後に置いている「AIをどう語るか/AIを語る言葉」のコーナーには、この連載の第1回で予告した通り、「人工知能」を記載しておきました。授業では終始「AI, Artificial Intelligence(人工知能)」とスライドに表記し、「エーアイ」という響きだけで終わらせないようにしてきました。最終回は、その日本語表現を正面から扱う回にしたつもりです。

知能を定義することも、今はまだ難しそうです。それなのに、あたかも「知能」というものがあって、それを工学的に再現した結果が人工知能であるかのように考えてしまうことも、私たちの人間らしいところかもしれません。授業は終わりますが、もう少し「AI」について思いを巡らせたい学生には、田口善弘氏の『知能とはなにか:ヒトとAIのあいだ』(講談社、2025年)を勧める予定です。

AIを使う技術は、数か月もすれば変わってしまうでしょう。でも、この授業で最後まで伝え続けた「意味をわかっているのも、判断するのも人間である」というメッセージは、これからも変わらないのではないかと思っています。

第15回の授業計画については、以下の記事で紹介しています。よろしければご覧ください。


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