文系教員が挑むAI基礎の授業計画#15(最終回)
第1回から第14回まで、この授業では、「AIを使う」力ではなく、「AIと一緒に設計する」力を積み上げていきます。最終回も、成果物そのものを見る授業ではなく、成果物の設計を振り返る授業にしたいと思います。
第15回授業のテーマは「AIとの共同制作を読む」。第14回授業で生成した動画を視聴し、ピアレビューをする授業です。学生たちは、これまでの授業で体験してきた、ことば・画像・音声を用いたAI活用のプロセスを振り返ります。そのうえで、どこまでを人が設計し、どこからをAIに委ねていたのかをことばで説明できるようになることが目的です。もっともらしい誤情報生成という意味でのハルシネーションについてのミニ講義も用意しました。
事前学修では、ピアレビューで使用する評価シートを読み、それぞれの設問が何を見るものなのかを一文ずつ書いてきてもらいます。評価行為そのものをメタ化する作業はたいへんです。でも、最終回が単なる動画上映会ではないこと、作品の出来映えが評価の対象ではないことを意識してもらうために、思考力をフル稼働させて取り組んでもらいたいと思います。その努力がミニ講義のあとの活動をスムーズにしてくれるはずです。
その活動は、私がAIに生成させたサマーピーチフールの紹介動画を視聴して、評価シートを書くワーク。この動画には、ことばと音声と画像がずれた箇所があったり、AIに丸投げしたスライドがあったり、実在しない書籍の実在しない主張がもっともらしく引用されている箇所があったりします。設計の可視化への評価、人が決めた部分とAIに委ねた部分の区別、ことば・音声への気づき、全体コメントを一通り遠慮なく書いてみることによって、仲間の作品を「読む」姿勢を確かめてもらうことがねらいです。
授業の最後は、実際に自分以外の3人の学生が作った動画を視聴し、評価シートにチェックを入れたり、コメントを書いたりする実習です。この授業は他者の動画作りの上手さを評価する上映会ではありません。他者の設計を見て、良かった点や惜しかった点を伝えると同時に、本人も気づいていないような意図しないAI任せが起こっていれば、それを指摘する練習でもあります。その過程で、作品の中に人間らしさやその人らしさを見つけることができたら、そのことも評価シートに記載してもらいたいと思います。
事後学修では、自分が受け取った評価シートに対する回答を書いてもらいます。褒められて素直に嬉しいところもあれば、うまくいかなかった点を指摘されて反論したいと感じたり、考え直したいと思う点もあるはずです。意図せずにAIへの丸投げをしていたり、AIの生成結果を丸呑みにしていたことを見抜かれて、少し恥ずかしいと感じることもあるかもしれません。回答はすぐに書かず、時間をおいて冷静に書くことも心がけてほしいと思います。最終回は、学生たちが「自分」から「他者」へ視点を移す回と位置付けました。
ツールとしてのAIを私より上手に使ってしまうであろう学生たちに、最後の授業で川原繁人氏の『友だち以上恋人未満の人工知能 言語学者のAI倫理ノート』(KADOKAWA、2026)を紹介できるのではないかと楽しみにしています。発売は2月16日です。
もう1つの案は、学生たちに、同じく Shigeto Kawahara 氏の『When AI’s helpfulness becomes harmful II: A currentAI system recommends cherry-picking and HARKing Version 1.0』に挑戦してもらうことです。LingBuzz掲載の論文は、大学の学術リポジトリ基盤の上で、言語学者コミュニティによるチェックを受けて公開されています。
https://ling.auf.net/lingbuzz/009690
新科目「AI基礎」のシラバスを大学に提出したあと、各回の授業を文章で説明してみたいと思い、noteに記事を書き始めました。私がこの授業で学生に伝えたいことは単純です。意味がわかっているのも、判断ができるのも私たち人間の方である。このことをことばで説明できていないような授業が計画の中に紛れ込んでいないかどうか、記事を書きながら確認していました。思いがけないことでしたが、私の記事を読んでくださる方がいらしたことで、背筋を伸ばして授業計画を見直すことができたと感じています。ありがとうございました。
気がつけば、第1回授業本番まで2ヶ月を切っていました。それまでに各回授業で私が行うミニ講義や、学生たちに取り組んでもらう実習のサンプルのことも文章にしてみたいと思っています。引き続き、よろしくお願いします!
