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若返りタンパク質DEL-1が骨の老化細胞を除去!それ以上の働きも!【新潟大学2026年1月の研究】

(アイキャッチは新潟大学医学部の公式Xヘッダー画像より引用)

現在はシリーズで、DEL-1(デルワン)というタンパク質の記事を書いています。

最近では、DEL-1は「若返りタンパク質」や「抗老化因子」として注目されています。

このDEL-1研究で世界トップクラスの研究機関が新潟大学であり、研究リーダーが歯学博士ということもあり、どちらも個人的に不思議に感じました。

新潟大学は今年(2026年)1月に国際学術誌『Advanced Science』誌 に下記の論文を発表しました。

体に備わったアンチエイジングの守護神DEL-1が骨の若返りを担う-骨粗鬆症や歯周病の根本治療に光-』

医学論文のタイトルに『抗老化』でなく『若返り』と書かれるのは極めて異例だと思います。
この研究は新潟大学大学院医歯学総合研究科の前川知樹教授らの研究グループによるもので、ペンシルベニア大学(アメリカ)、ドレスデン工科大学(ドイツ)などとの国際共同研究です。
新潟大学の大学院は医学と歯学を総合で研究しており、前川教授は医学博士でなく、歯学博士です。

研究チームが突き止めたのは、DEL-1が単に炎症を抑えるだけではなく、体の中で老化細胞を除去する生体内セノリティックタンパク質として働くということです。
さらにDEL-1は、骨髄にある幹細胞の老化を防ぎ加齢による骨の減少を抑えることも明らかになりました。
これは、DEL-1研究における非常に大きな発見です。

今回は、この研究で何が分かったのかを、できるだけ分かりやすく解説します。


1.老化すると、骨を作る力が弱くなる

① 骨粗鬆症の背景にある細胞の老化

人の骨は、一度作られたら一生同じ状態というわけではありません。
古い骨が壊され新しい骨が作られるのです。
この仕組みを骨リモデリングといいます。

古い骨を壊す細胞が破骨細胞
新しい骨を作る細胞が骨芽細胞
骨の中に閉じ込められ、監視する細胞が骨細胞です。
なお、骨は骨リモデリングはじめ「ほね」でなく、「はこつ」や「こつが」など全て「こつ」と読みます。

若いときは、骨を壊す働きと骨を作る働きのバランスが保たれています。
しかし、加齢によりこのバランスが崩壊しやすくなります。
骨を壊すスピードに対して、新しい骨を作るスピードが追いつかなくなると、少しずつ骨が弱くなっていきます

DEL-1はこの骨リモデリングに関係しています。
DEL-1は古い細胞を処理し、炎症を抑え、さらに新しい細胞を作るという3つの働きを助けると考えられているからです。

若い頃は、破骨細胞による骨の破壊と、骨芽細胞による骨の形成がうまくバランスを保っています。

しかし、加齢によりこの破壊と形成のバランスが崩壊するのです。
骨を作る力が弱くなり、骨を壊す量に対して新しい骨を作る量が追いつかなくなります。
その結果、骨の量が少しずつ減少し、骨がもろくなっていきます。
これが骨粗鬆症につながる大きな要因の一つです。

それでは、なぜ年齢を重ねると、新しい骨を作る力が弱くなるのでしょうか。
その重要な原因の一つとして注目されているのが、骨髄に存在する幹細胞の老化です。
幹細胞とは、骨などを作る細胞へ変化する能力を持つ細胞です。
簡単に言えば、骨を作る細胞のもとになる細胞の一つです。

若い体では、この幹細胞が健康な状態を保ち、必要に応じて骨を作る細胞へ変化します。
しかし、年齢を重ねると、この幹細胞自体が老化してしまいます。
すると、骨を作る細胞へ変化する能力が低下します。
つまり、骨粗鬆症を防ぐためには、すでに存在する骨を守るだけではなく、新しい骨を作る細胞のもとを健康な状態に保つことも重要なのです。

新潟大学の研究は、まさにこの部分に注目しました。

② 老化細胞の増加による骨の変化

老化細胞は、単に働きを止めているだけではありません。
一部の老化細胞は、周囲に炎症を引き起こす物質を放出します。
その結果、老化細胞の周囲では慢性的な炎症が起こりやすくなります。
このような状態が長く続くと、正常な細胞にも悪影響が及びます。

骨髄の中でも同じことが起こります。
老化した幹細胞が増えると、骨を作る細胞へ変化する能力が低下します。
その結果、新しい骨を作る力が弱くなり、加齢による骨量減少につながるのです。

つまり、骨の老化を防ぐためには、「骨を壊す細胞を抑える」だけではなく、「骨を作る細胞のもとになる幹細胞を若く保つ」ことが重要になります。

新潟大学の研究が注目されたのは、DEL-1がこの両方に関係する可能性を示したからです。

2.DEL-1は体内に備わった老化細胞除去システム

① 世界で初めて示された生体内セノリティックタンパク質

今回の新潟大学の研究で最も大きな発見が、DEL-1の新しい役割です。
研究チームは、DEL-1が生体内セノリティックタンパク質として働くことを明らかにしました。
セノリティックという言葉は、老化細胞を選択的に取り除く働きを意味します。
これまでの老化研究では、セノリティクスという研究分野が注目されてきました。
老化細胞を取り除く薬を使うことで、老化に伴う病気を防いだり、健康寿命を延ばしたりするという研究です。

しかし、今回のDEL-1研究が非常に興味深いのは、人工的に作った薬ではない、もともと人の体の中に存在するタンパク質が、老化細胞の除去に関係していたという点です。
つまり、人の体には、もともと老化細胞を処理する仕組みが備わっていると考えられます。
DEL-1は、その仕組みを担う重要な分子の一つだったのです。

これは、老化研究における非常に重要な発見です。
なぜなら、老化細胞を取り除くために、必ずしも外から強い薬を投与する必要はないかもしれないからです。
もともと体に備わっている老化細胞除去システムを活性化することで、より自然な形で老化細胞を減少させる可能性があるからです。

② DEL-1は老化細胞を見つけて処理する

それでは、DEL-1が老化細胞を除去する方法を解説しましょう。
ここで活躍するのが、シリーズ初回の記事でも紹介したマクロファージです。
マクロファージは、体内に侵入した異物や、不要になった細胞の残骸などを取り込んで処理する免疫細胞です。
いわば、体の中の「掃除業者」のような存在です。

今回の研究では、DEL-1が老化細胞に働き、死を促すとともに、その後のマクロファージによる処理を助けることが示されました。

流れを簡単にすると、次のようになります。
DEL-1老化細胞に作用する
 ↓
老化細胞死亡する
 ↓
マクロファージ死んだ細胞発見する
 ↓
マクロファージ老化細胞の残骸処理する
この仕組みによって、老化細胞が体内から効率よく取り除かれると考えられます。

ここで重要なのは、DEL-1が「老化細胞だけを狙う」という点です。
正常な細胞まで無差別に攻撃してしまえば、体にとって大きなダメージになります。
しかし、研究ではDEL-1が老化した細胞に対して選択的に作用することが示されました。

つまり、DEL-1は正常な細胞をできるだけ守りながら、不要になった老化細胞を処理する「ピンポイントの老化細胞除去システム」として働く可能性があるのです。
これが、DEL-1が「天然のセノリティックタンパク質」として注目される大きな理由です。

3.DEL-1は骨の若さを守る

① 老化した幹細胞を減らし、骨を作る力を維持する

今回の研究で明らかになったもう一つの重要なポイントが、DEL-1と骨髄の幹細胞との関係です。
加齢によって骨が弱くなる背景には、骨を作る細胞のもとになる幹細胞の老化があります。
この細胞が老化すると、骨を作る細胞へ変化する能力が低下します。
その結果、骨を新しく作る力が弱くなるのです。

新潟大学の研究チームは、DEL-1がこの老化した幹細胞に作用することを明らかにしました。
DEL-1によって老化した幹細胞が除去されると、骨髄の中に残る健康な幹細胞が働きやすくなります。
その結果、骨を作る能力が回復し、加齢による骨量の減少が抑制できると考えられます。

つまり、DEL-1は、単に古い骨を守るのではありません。
骨を作る細胞のもとになる幹細胞の環境を整えることで、新しい骨を作る力そのものを維持する可能性があるのです。

これはこれまでの骨粗鬆症研究とは少し違う発想です。
従来の治療では、「骨が壊れるのを抑える」ことが重要な目標の一つでした。
しかし、DEL-1研究から見えてきたのは、「骨を壊さないだけではなく、新しい骨を作れる状態に戻す」という新しい治療です。
これは骨の若返りという言葉につながる重要な考え方です。

② DEL-1は「骨を守る」と「骨を作る」を同時に支える

骨の健康を維持するためには、2つのことが必要です。
一つは、古い骨が必要以上に壊されないことです。
もう一つは、新しい骨が必要なだけ作られることです。

DEL-1は、この両方に関係していると考えられます。
老化細胞を減らすことで、老化によって起こる慢性的な炎症を抑制します。
その結果、骨を壊す方向に傾いた環境を改善できるでしょう。
さらに、骨髄の幹細胞の老化を抑えることで、骨を作る細胞が生まれやすい環境を維持します。

つまりDEL-1は、「骨の破壊を抑える」と同時に、「骨の再生を助ける」という二つの方向から骨の若さを支えていると考えられるのです。

この点が、DEL-1が単なる老化細胞除去タンパク質ではなく、組織そのものの若返りを支える抗老化因子として注目される理由です。

4.DEL-1研究が示す老化治療の未来

① 老化細胞を消すだけではなく、体を若返りやすい環境に戻す

今回の新潟大学の研究成果を、もう一度整理してみましょう。
DEL-1は、老化細胞に働きかけます。
その後、マクロファージが老化細胞の残骸を処理します。
これによって、体内に蓄積した老化細胞を減少させることができます。
さらに、老化した幹細胞が減ることで、骨を作る細胞が働きやすい環境が整います。
その結果、加齢により減少した骨の回復につながるのです。

つまり、DEL-1は次の流れで働きます。
老化細胞減少させる
 ↓
慢性炎症抑制する
 ↓
健康な細胞が働きやすい環境になる
 ↓
組織を再生する力回復する

これは、老化研究において非常に重要な考え方です。
老化細胞を除去すれば、それだけで若返るわけではありません。
古くなった細胞を処理した後に、健康な細胞が働ける環境を作らなければなりません。
DEL-1は、その両方に関係しているのです。

だからこそDEL-1は、「老化細胞を消すタンパク質」というだけではなく、「老化した組織が再び正常に働ける環境を整えるタンパク質」として考えることができます。

② 骨粗鬆症だけでなく全身の抗老化へ

新潟大学の研究は、主に骨粗鬆症歯周病による骨の減少を対象としています。

しかし、DEL-1は骨だけに限定されないかもしれません。
DEL-1は血管や骨髄など、全身に存在しています。
そして、老化細胞や慢性炎症は、骨だけではなく、血管、筋肉、脳、各種臓器など、全ての組織の老化に関係しています。

もし、DEL-1が、それぞれの組織に蓄積した老化細胞を適切に処理し、炎症を抑え、組織の再生を助けるのであれば、その効能は骨以外の臓器にも関係する可能性があります。
新潟大学も、今回の研究成果について、骨粗鬆症などの加齢性疾患だけでなく、老化細胞の除去による健康寿命の延伸に向けた治療法開発への展開が期待されるとしています。

現在の研究成果から、DEL-1によって人間の全身が若返ると結論づけることはできません。
今後、DEL-1が骨以外の組織でも同じような働きをするのかを検証する必要があります。

それでも、今回の研究が示したことは非常に大きな意味を持っています。
それは、人の体にはもともと、老化細胞を見つけて処理し、炎症を抑え、組織の若さを守る仕組みが存在する可能性があるということです。
そして、その仕組みの中心にDEL-1というタンパク質が存在しているのかもしれません。

まとめ DEL-1は老化細胞を除去するだけではない

今回の新潟大学の研究によって、DEL-1の役割は大きく変わりました。
これまでDEL-1は、炎症を抑えたり、骨の形成を助けたりするタンパク質として知られていました。
しかし、今回の研究によって、DEL-1にはさらに重要な働きがあることが明らかになりました。
それが、体内で老化細胞を選択的に除去する働きです。

DEL-1は老化細胞の死を促しマクロファージの処理を助けるのです。
その結果、老化細胞の体内蓄積を防止します。
さらに、骨髄の幹細胞の老化を抑制することで、骨を作る能力を維持し、加齢による骨量減少を防止することができるでしょう。

DEL-1は単純な若返りタンパク質ではありません。
それは次の老化に対する複数の働きをつなぐ存在なのです。
老化細胞を除去する。
炎症を抑制する。
健康な細胞が働ける環境を作る。
組織の再生を支える。

そして、DEL-1研究の最も大きな意義は、外から強力な薬を投与するのではなく、人の体に本来備わっている「老化細胞除去システム」を活性化するという新しい抗老化戦略にあります。

NADFADの研究では、細胞の中にある生命活動の仕組みを整えることで、老化に立ち向かう方法が研究されています。
一方、DEL-1研究は、細胞の外にある環境を整え、不要になった細胞を処理し、組織を再生しやすい状態へ戻すという、別の方向から老化にアプローチしています。
細胞を元気にする」だけではなく、「古い細胞を処理し、残った細胞が元気に働ける環境を作る」。
DEL-1は、そんな新しい抗老化研究の扉を開く存在なのかもしれません。

今後の研究で、DEL-1が骨だけでなく、血管や筋肉、脳などの老化にも関係することが明らかになれば、DEL-1研究は「骨粗鬆症の治療」という枠を超え、健康寿命を延ばすための新しい老化治療へと発展するかもしれません。

新潟大学の研究は、老化研究に新しい視点を与えてくれました。
人の体はただ老化していく一方ではないのかもしれない。
体の中には、老化細胞を見つけ、処理し、炎症を収め、組織を再生するための「若さを守る仕組み」が、もともと備わっている可能性があります。
DEL-1は、その仕組みの重要な一員なのです。

もしDEL-1の働きが加齢によって低下するのであれば、その原因を突き止めることで、老化を遅らせる新たな方法が見えてくるかもしれません。
DEL-1研究の先には、「老化細胞を除去する」だけではなく、「老化した組織そのものを再生させる」という、これまでとは異なる抗老化医学の未来があります。

本記事は健康に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の疾病の診断、治療、予防を目的とするものではありません。
体調に不安がある場合は、医師等の専門家にご相談ください。

今回は新潟大学の2026年の研究を中心に解説しました。
実は新潟大学は2024年にDEL-1を増やす薬の研究を報告しました。
次回はDEL-1を増やす食事・運動・生活習慣・薬をテーマで解説します。

さて、お盆の時期はスキやビューが極端に落ちます。
シリーズや同一テーマで記事を書いてもお盆の記事だけスキが少なくなるのを避けます。
次回以降のスケジュールですが、下記の通りとし、個人的にスキが少なくてもよいサイトマップ記事を公開します。

8月10日(月)午前10:00 DEL-1(4回目)
8月13日(木) 公開無し
8月17日(月)午前10:00 
サイトマップ記事
8月20日(木)以降は新テーマで月・木曜日午前10:00公開とします。

最後までお読みいただきありがとうございました。
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