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外国人永住要件の厳格化で、運送業界に「定着の壁」が来る

行政書士の横山輝明です。

昨日、こんな記事を書きました。

▼前回の記事
https://note.com/aobato_office/n/n750124cdc004

「外国人ドライバーは早い者勝ちになる。」

幸い、この記事はnote編集部「noteマネー」に取り上げていただきました。

でも、その翌日に飛び込んできたニュースは、私の予想をさらに上回るものでした。

2026年7月25日、読売新聞はこう報じました。

▼読売新聞の記事
https://www.yomiuri.co.jp/politics/20260725-GYT1T00137/

政府が外国人の永住許可の要件を大幅に厳格化する方針を固めた、と。年収要件は今年10月から。その他の新基準は来年4月から適用される予定です。

記事を読み終えた瞬間、こう思いました。

これは外国人政策の話ではない。運送会社の採用戦略そのものが変わる。


年収要件「日本人平均超え」が、中小運送会社を直撃する

新指針案では、「日本人世帯の平均収入を上回る水準に継続して達している」ことが永住の条件となる予定です。

日本人世帯の平均年収は約550万円。

運送業のドライバー職は、全産業平均を下回ります。地方の中小運送事業者では、400万円台が一般的です。

永住権を取れれば、家族を呼び寄せ、腰を据えて働いてもらえる。それが企業側の期待でした。

しかし今回の年収要件では、その期待が簡単には叶わなくなる。

外国人だけ給与を引き上げることは、既存社員とのバランスから現実的ではない。全社員の給与を一律に引き上げる余力のある中小企業は少ない。

結果として、「永住を目指せる外国人は大手企業だけ」という構造が生まれます。

人手不足が最も深刻な中小事業者ほど、外国人の定着が見込めなくなる。制度の目的と、運送業界が抱える人手不足との間には、大きなギャップが生まれるように感じます。

要件だけを見ると制度の話です。でも現場では、「採用した人が長く働けるか」という問題になります。


「厚生年金30年加入相当」が、特定技能ルートを断ち切る

もうひとつ見逃せないのが、年金要件です。

「将来受給できる年金額が厚生年金に30年加入していた水準に達する」ことが求められる見通しです。

運送業界では今、特定技能からのステップアップを想定した雇用計画を立てる企業が増えています。しかし特定技能の在留期間は通算5年が上限。その後永住を目指すには、別の在留資格への切り替えが必須です。

企業が想定していた「特定技能→永住」というルートが、事実上機能しなくなります。

30年という年金加入期間を満たすには、20代で来日し、50代まで働き続けることが前提。現実には、在留資格の切り替えがうまくいかず、途中で帰国せざるを得ないケースも少なくない。

この要件が加わることで、「永住」をゴールとした長期的なキャリアプランが描きにくくなります。


配偶者ビザ特例の延長が、家族の生活設計を狂わせる

従来は、日本人や永住者の配偶者であれば、婚姻期間3年・在留期間1年で永住申請が可能でした。それが今回、婚姻期間5年・在留期間3年に延長されます。

たった2年の延長。そう思われるかもしれません。

でも、永住権がないと金融機関の住宅ローン審査が通らない。社宅の入居条件に永住権の有無が含まれているケースもある。

永住権取得を前提に住宅ローンを考えていた家庭、子どもの進学計画を立てていた家庭にとって、この2年は「想定外の制度変更」です。

たった2年が、家族の生活設計を狂わせます。


「子どもの就学状況」がチェックされる

新指針案では、「義務教育期間の子どもを就学させていない」場合は「消極評価」とする方針も盛り込まれる見通しです。

一見、当然のことのように思えます。

ただ、運送業は夜間・早朝勤務が多く、外国人ドライバーの家庭では配偶者も共働きというケースが多い。子どもの就学手続きが遅れていたり、一時的に母国に預けていたりする家庭もある。

「制度への理解不足」が審査でどこまで厳格にチェックされるのか。実務上、気になる点です。


「永住が遠のく」と、人は静かに去っていく

心配しているのは、外国人の短期離職が加速することです。

永住の見込みがなければ、「数年働いたら帰国する」「より条件の良い会社に移る」という選択になる。採用コスト・教育コストをかけた会社は、投資が回収できない。

「外国人は定着しない」という諦めが広がれば、外国人採用そのものを見送る企業が増える。人手不足解消の切り札を、自ら手放すことに等しい。


現場で、外国人と働いたことがあります

若い頃、ペルー出身の人と風呂掃除の仕事をしたことがあります。日本語はほとんど話せませんでした。それでも仕事が始まると、一度教えたことは次からきちんとやる。真面目で、時間も守る。「外国人」というより、一緒に働く仲間でした。

古紙回収をしていた頃には、アフリカ系とおぼしき業者が荷台に古紙を積んでやってくることがありました。私には思いつかない積み方でした。見ているこちらがヒヤヒヤするような山の高さ。でも、量はすごかった。

やり方が違う。文化が違う。それだけのことでした。

もし日本で暮らし続けたいと思っていても、その道が遠くなる人も出てくるかもしれない。今回の記事を読みながら、そんな顔が何人も浮かびました。


私は制度の賛否を書きたいわけではありません。

永住制度を厳しくすることには、治安や社会保障など様々な議論があります。その議論を否定するつもりはありません。

ただ、運送業界では今、人手不足を補うため外国人ドライバーの受け入れが始まったばかりです。そのタイミングで「長く働いてもらう仕組み」が難しくなるなら、企業は採用だけでなく、定着まで含めた戦略を見直す必要があります。

人手不足は数字で語られます。でも、人が定着する理由は数字だけではありません。

制度が変わるたびに、現場は静かに変わります。

私はこれからも、その変化を現場の視点から伝えていきたいと思います。


横山輝明(行政書士あおばと合同事務所)

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横山輝明 水道工事13年・古紙回収8年・危険物輸送7年、現場28年の経験をもとに運送業・物流の話を書いています。「面白かった」「参考になった」と思っていただけたら、次の記事を書く励みになります。