創作市場は変わった。でも、“好きな物語”が必要なくなったわけじゃない。KADOKAWA出版赤字のニュースを見て考えたこと|書籍化ログ(#創作論 #web小説 #note #エッセイ #創作 #生成AI)
「異世界に転生しすぎた」KADOKAWAが大幅減益、主力の出版事業が赤字転落
主力の出版事業は10億円の営業赤字に転落、アニメ事業も減収減益
このニュースを見た瞬間、タイトルのあまりの秀逸さに思わず笑ってしまいました。
でも、そのあとすぐ、
笑っている場合じゃないな……と、急に胃が重くなりました。
こんにちは。こんばんは。
普段はラノベを書いている「うら表紙」と申します。
今回は、「小説を書いて書籍化したい!」と思っている方には、
かなり重要な話になると思います。
たぶんこれ、今年から本格的にゲームルールが変わります。
以前、マンガ業界の中の人の記事を紹介したことがありました。
そこには、
・電子の新刊配信数は一日300件超え
・多い日は1,000冊以上配信
・10年前の30倍近い供給量
……と書かれていました。
▶元記事
正直、読んだ時は「そんなに!?」と思ったのですが、
今こうしてKADOKAWAの出版赤字ニュースを見ると、
全部繋がって見えるんですよね。
一昔前、紙の時代は単行本のヒット期間が数カ月程度だったそうです。
でも電子は違います。
一度アルゴリズムに乗れば、
長期間売れ続ける。
しかも、
・紙代不要
・在庫不要
・配送不要
・棚すら不要
利益率が高い。
そりゃみんな参入します。
するとどうなるか。
市場が「異世界転生」で埋まりました。
ランキング上位を書籍化。
当たった設定を横展開。
さらに類似作品。
さらに類似作品……。
気づけば読者側も、
「またこのパターンか」
となっていく。
……よーくわかります。
でもこれ、
書いてる側からすると全然他人事じゃないんです。
なぜなら、
私自身もその市場の中で書いてきた側だからです。
そして同時に、
そういう物語に何度も救われてきた読者側の人間でもありました。
「最初から強い」
「安心して読める」
「お約束がある」
そういう物語って、
疲れた日に読みたくなるんですよね。
「この先どうなるんだろう」と
胃を痛めながら読むというより、
「大丈夫。この作品はちゃんと安心して読める」
という信頼感そのものを楽しむ感覚に近い。
だから私は、
異世界テンプレを馬鹿にする気がまったくおきません。
むしろ好きです。
昔から時代劇の「水戸黄門」が長く愛されてきたように、
同じようなお約束の流れを、
「わかってる、わかってる。これがいいんだよ」
と楽しむ文化って、ずっと存在しているんですよね。
たぶん私は、
そういう“安心して帰ってこられる物語”を
書いていたい側の人間なんです。
安心できて、
平和で、
最後にはちゃんとオチがつく。
価値観が激しく揺れたり、
救いのない絶望に落ちたり、
人間の醜さをえぐるような話ではなくて、
「はぁ~今日も楽しかった!」
で終われる物語。
私はそういう話が好きで、
そういう物語を書いてきました。
でも……
今回のKADOKAWAの流れを見ていると、
出版社がこれから求めるものはそこじゃないというのが
伝わってきます。
KADOKAWAは最近、
・骨太ダークファンタジー
・ホラー
・異世界×謎解き
みたいな募集を急に始めました。
最初は、
「最近ホラー流行ってるのかな?」
くらいに思っていたんです。
でも調べてみると違った。
これ、
海外市場を見据えた動きなんですよね。
異世界転生って、
かなり日本特有の文脈に依存しています。
ステータス画面。
ハーレム。
悪役令嬢。
掲示板文化。
日本のサブカル文脈を共有している前提で成立している。
でも、
・恐怖
・闘争
・愛
・善悪
・絶望と希望
みたいなテーマは違います。
国を超えて伝わる。
実際、
海外で大ヒットしている日本のアニメ作品を見ると、
ダークファンタジーやサスペンス要素の強いものが本当に多い。
つまり出版社側としては、
国内で細かく回る異世界転生より、
海外で“巨大化する普遍的なIP”を欲しがっている。
赤字転落した今ならなおさらです。
だから「ホラー」なんです。
だから「ダークファンタジー」なんです。
ここまで考えた時、
「あ、出版社側も生き残りに必死なんだ」
と妙に納得してしまいました。
……でも、
問題はここからです。
じゃあ、
私はその市場に適応できるの?
これが、本当に難しい。
私はそもそも、
「葛藤」とか「闘争」とか「恐怖」を書くのがすごく苦手なんです。
これまでの記事を読んでくださった方は感じていると思いますが、
この未来を想像しながら、私もできることは試してきました。
でも、
書き始めるとつらいんです。
醜悪な人間を書くのもつらいし、
その醜悪さに巻き込まれる
善良な人の不幸を描くのも苦しくて仕方ない。
キャラクターを傷つけなければ
一段深くできないとわかるのに、
どうしてもそれができない。
たぶん私は、
「誰かが怒り出さない空気」を
ずっと探しながら生きてきたんだと思います。
家の中なのに、
今日は大丈夫だろうかと
空気を読んでしまう感じ。
誰かの機嫌ひとつで、
場の温度が急に変わる感じ。
だから私は、
物語の中くらい、
安心したくなる。
誰かが理不尽に傷つけられたり、
救われないまま終わったりする展開を書くと、
自分の中まで苦しくなってしまう。
書きながら、
安全だった場所まで壊れていく感覚になるんです。
だから結局、
平和な方向へ戻してしまう。
でも今、出版社が求めているのは、
そっちじゃない。
もっと激しい感情。
もっと強い闘争。
もっと深い絶望。
普遍的でドラマ性の強い展開。
その方が、
世界市場では強い。
頭ではわかるんです。
わかっている……。
でも、
「じゃあ自分がそれを書きたいか?」
と言われると、
そこで急に手が止まってしまう。
このズレが、
最近ずっと怖いんです。
市場は変わっている。
明確な転換点が来た。
でも、
自分の“好き”は、
そんな簡単に変わってくれない。
書籍化したい。
でも、
求められるものを書くために、
自分のメンタルを削りつづけられるのか。
削りつづけた果てに、
それが読まれるとも
選ばれるともわからないのに…。
それがとんでもなく怖いんです。
最近は、
そんなことをよく考えています。
ただ――、
それでも私は、
たぶん平和な話を書いてしまう気がします。
疲れた人が、
安心して読める話。
大きな絶望ではなく、
小さな幸せを持って帰れる話。
出版社的には、
もう不要なのかもしれない。
でも、
水戸黄門みたいに、
私たちは何十年も「お約束の物語」を愛してきた歴史があるんです。
だから、
すべての異世界転生がなくなるとも思えない。
大量生産の時代が終わっても、
「この安心感が好き」という読者まで
消えるわけではないと思うから。
……と、自分に言い聞かせながら、
真っ暗な恐怖の中、
誰も傷つけない物語を今日も書いています。
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また次回の投稿でお会いしましょう。
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ラノベ市場の雲行きについて、他社の傾向も踏まえながら
深掘りの記事を続きとして書きました▼
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