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「どうすれば読まれるのか」が、前より難しくなった気がする。KADOKAWA出版赤字から考える、これからの創作とWeb小説市場|深掘り書籍化ログ(#小説家になろう #カクヨム #アルファポリス #創作 #市場 #マーケティング )

こんにちは。こんばんは。
普段はラノベを書いている「うら表紙」と申します。

前回の記事では、このニュースを見た一人の書き手としての
「等身大の怖さ」についてお話ししました。

今回は少し視点を変えて、

「なぜ今、この現象が起きているのか?」

そして、

「これからWeb小説市場はどう変わっていくのか?」

について、構造や市場の流れから整理してみたいと思います。

創作をしていると、PVが伸びない夜ってありますよね。

更新ボタンを押して、
しばらく経ってから恐る恐る管理画面を開いて、
数字がほとんど動いていない。
ブクマも増えていない。
感想も来ていない。

すると私たちは、
どうしても「自分の実力不足」の話にしてしまいがちです。

文章力がないんだろうか、
設定が弱いんだろうか、
もっと流行を研究しなきゃいけないんだろうか。

私もずっと、
PCの中ばかりを見つめていました。

でもある時、
「そもそも市場全体ってどうなってるの?」と思った時に、
見える景色がかなり変わったんですよね。

よい作品をつくる努力は大前提ですが、
一生懸命書いているのに見つけてもらえない時って、
市場側の構造変化が大きく影響していることもあるんです。

たとえば、
雨が降っている日に薄着で外へ出ると寒いように、
市場にも“気候”みたいなものがあります。

どんなジャンルに人が集まり、
出版社がどこを見ていて、
プラットフォームが何を押し上げているのか。

そこを知るだけでも、
「今、自分がどこに立っているのか」がかなり見えやすくなる。

今回のKADOKAWAのニュースは、
まさにその“市場の天気図”が大きく変わり始めていることを示す
かなり象徴的な出来事だったように感じています。


●KADOKAWA出版赤字の背景で、いま市場に何が起きているのか

KADOKAWAが2026年5月14日に発表した決算資料によれば、主力の国内出版事業が、前年の黒字から一転、10億円の営業赤字に転落しました。

その背景として、同社は大きく4つの要因を挙げています。

・「なろう・異世界系」への依存による市場飽和
・刊行点数増加による“作品の小粒化”
・販促リソースの分散
・製造・物流コストの上昇

これを見た時、私は「ああ……ついに来たか」と感じました。

というのも、
ここ数年のWeb小説市場って、
書き手側から見ても明らかに“供給過多”の空気があったんですよね。

更新を開けば、
毎日のように新作が並ぶ。
ランキングも高速で入れ替わる。

しかも、
どの作品も昔よりクオリティが低いわけではない。
むしろ皆、
かなり上手い。
それでも埋もれる。

これ、書き手側からするとかなり苦しい状況です。

電子書籍はもともと、
紙代や配送コストが不要な、
非常に利益率の高いビジネスで、
だから大量の参入を招きました。

出版社はその競争の中で勝ち残るため、

「すでに読者がついている作品を大量投入する」

という戦略を取り、
紙と電子の両方を市場に次々投入する仕組みを構築しました。

特にカクヨムや小説家になろうなど、
ランキングシステムが強い場所では、

「ランキング上位=需要が証明されている作品」

として機能していたんですよね。

ただ、だからといって
市場全体の読者数が急激に増え続けるわけでもない。

すると何が起きるか。

一作品あたりの売上は小さくなり、
宣伝リソースも分散し、
「出しても埋もれる」が起き始める。

そこへ近年の物価高や物流コスト上昇が重なった。
今回の赤字は、単なる一時的な不振というより、

“大量供給モデルそのものの限界”が見え始めた

出来事なのかもしれません。

●他社の好調と、KADOKAWAの赤字を分けた「ゴールの違い」

ここまで読むと、

「じゃあもう、異世界系そのものが限界なの?」

と思う方もいるかもしれません。

実際、私も最初はそう感じましたし、
焦りました。

でも、少しずつ他社の動きも見ていくと、
実はそこまで単純な話ではないんですよね。

というのも、
同じようにWeb小説発の作品を積極的に書籍化している企業の中には、
現在もかなり好調なところがあるからです。

たとえば、アルファポリス 。

同社は現在も増収増益を続けています。

つまり、
「異世界転生だからダメになった」
という話ではないんですよね。

国内市場では今も強く支持されていますし、
実際、それで結果を出している企業もある。

ではなぜ、
KADOKAWAだけが赤字転落したのか。

ここで大きいのが、
「どの市場を見ていたのか」の違いです。

ニッチな国内市場へ向けて、
安定して売れる作品を届けるのか。

それとも、
海外展開まで含めた
“世界規模のIP”を作ろうとしていたのか。

今回の決算って、
この“ゴール設定の違い”が、
はっきり数字に表れた出来事なんだと思うんです。

●ランキングシステムの限界と、編集部による「強制バイパス」

ここ数カ月、カクヨムを見ていて、
「あれ?」と思うことが増えていました。

ホラーばかりを募ったり、
以前なら、
ランキング上位に並びにくかったテーマのコンテスト募集が
はじまったり。

たとえば、

・異世界×謎解き
・骨太ダークファンタジー
・ホラー

など。

最初は私も、
「最近こういうジャンルが流行っているのかな?」
くらいに思っていました。

でも、市場全体の流れと合わせて見ていくと、
これって単なる流行というより、
“ランキングシステムそのものを食い破る流れ”
に見えてきたんです。

というのも、
Web小説サイトのランキングって、
仕組み上どうしても、

「毎日読みやすいもの」

が強くなりやすいんですよね。

更新を追いやすい。
理解コストが低い。
お約束が共有されている。

そういう作品が安定しやすい。

私自身も、
疲れている時ほど、
“お約束”に救われてきました。

だからこれは、
ランキングが悪いとか、
異世界テンプレが悪いとか、
そういう話ではまったくないんです。

むしろ、
“多くの人が安心して楽しめる”
という時点で、
それはすごく強いエンタメなんですよね。

ただ一方で、
ランキングという仕組みに長く依存し続けると、
どうしても似た構造が増えていく。

すると、
市場全体としては、
「新しい大ヒットの形」が生まれにくくなっていく。

今回のKADOKAWAの動きを見ていると、
出版社側もそこにかなり強い危機感を持ち始めているように感じます。

つまり今起きているのは、

「PVが高い作品をそのまま拾う」

だけではなく、

「ランキングでは拾いにくい作品を、
編集部側が意図的に探しにいく」

という動きなんですよね。

いわば、
ランキングシステムの“自動判定”を一度横に置いて、
編集部自身が「目利き」として動き始めている状態に近い。

これ、書き手側からすると、
かなりゲームルールが変わる話だと思っています。

今までは、

「まずランキングに乗る」

ことが、
ほぼ絶対条件に近かった。

でもこれからは、
ランキング外にいる作品にも、
別ルートで光が当たり始める可能性がある。

もちろん、
だから急に誰でも書籍化できる、
みたいな甘い話ではないということはわかります。

けれど少なくとも、

「ランキングだけが唯一の正解」

という時代は、
着実に変わり始めているのかもしれません。

●なぜ「ホラー」や「ダークファンタジー」なのか?

ここまで整理すると、
最近KADOKAWAが

・ホラー
・ダークファンタジー
・異世界×謎解き

といったテーマを募集し始めている理由も繋がって見えてきます。

先ほども触れた、
「海外市場(IP輸出)」ですね。

KADOKAWA にとって、
海外配信プラットフォームなどへのアニメライセンス販売は、
大きな収益源です。

そして同社は、
アニメ制作スタジオへの投資を強化しながら、
「新しい作品(新規IP)」を作るフェーズへ、
大きく舵を切り始めています。

つまり今、
出版社側が本当に欲しいのは、

「国内で一定数売れる作品」

だけではなく、

「海外のマス層まで届く特大IP」

なんですよね。

ここで、
異世界転生というジャンルの特徴が見えてきます。

異世界転生や悪役令嬢って、
私も大好きなジャンルですし、
実際、国内では今もすごく強い。

でも一方で、
かなり日本独自のサブカル文脈に依存している
部分も大きいんですよね。

だから海外のマス層から見ると、
“前提知識の壁”が生まれやすい。

一方で、
最近募集が増えているテーマを見てみると、

・人間の根源的な恐怖(ホラー)
・因果関係の解明(謎解き)
・重厚な世界観での闘争(ダークファンタジー)

など、“世界共通で伝わりやすい感情”に寄っているんです。

たとえばホラーって、
単に驚かせるだけじゃなく、

「知らないものへの恐怖」
「理解できないものへの不安」

みたいな、
根源的な感情を扱うジャンルですよね。

これは文化圏が違っても、
比較的共有されやすい。

だから翻訳された時にも魅力が落ちにくく、
海外展開との相性がいい。

今回のKADOKAWAの動きを見ていると、
出版社側は今、
そういう“国境を越えやすいテーマ”へ、
明確に舵を切り始めているように感じています。

●結論:市場は二極化する。私たちはどこに作品を届けるか

深夜スマホでランキングをぼんやり眺めながら、
私は最近、
「もう“みんな同じ場所を目指す時代”ではなくなってきているのかもしれない」
と思うことが増えました。

創作市場がはっきり
“二つの流れ”に分かれ始めているように感じています。

それが、
市場の二極化です。

① 安心感を楽しむ市場(国内向け・コミュニティ型)

これは、
昔からずっと存在している需要です。

「最初から強い」
「お約束がある」
「安心して読める」

先の展開に胃を痛めるというより、

「この安定感が好きなんだよな~」

と安心して帰ってこられる作品群ですね。

安心感を求める読者って、
今の時代ほど増えている部分もある気がしているんですよね。

② 普遍的な感情を求める市場(海外展開・IP型)

一方で、
もう一つ大きくなっているのが、
“国境を越えること”を前提にした作品市場です。

激しい葛藤。
深い絶望。
強い闘争。
価値観の衝突。

キャラクターの感情を大きく揺さぶりながら、
読者の心を強く動かしていくタイプの作品ですね。

そして今、
出版社が大きな予算やリソースを投下し始めているのは、
間違いなくこちら側です。

だから私は最近、
「どうすれば読まれるか」
だけではなく、

“自分はどこに作品を置こうとしているのか”

を考えることが、
以前よりずっと大事になってきている気がしています。

市場は今、
かなり大きな転換点に入っています。

どんなジャンルに人が集まり、
出版社がどこを見ていて、
プラットフォームが何を押し上げているのか。

その“市場の気候”が変われば、
同じ作品でも、
届きやすい場所と届きにくい場所が変わっていく。

だからこそ、

自分はどんな物語を書きたいのか、
どんな読者に届けたいのか、
どの場所なら、
どのコンテストなら、
どのプラットフォームの主催なら、
どの出版社の主催なら、
自分の作品の魅力がちゃんと伝わるのか。

これからの創作では、
そこを見つめ直してみることが、
以前よりずっと重要になっていくのかもしれません。

作品を磨きながら、
「いま自分が立っている市場の景色」まで見渡す。

たぶんこれって、
創作を純粋に楽しみたい人ほど、
本当はあまり考えたくないことなんですよね。

私も本来は、
そんなことを気にせず、
好きな物語だけを書いていたい側の人間です。

できれば市場分析なんてせず、
「面白ければいつか届く!」
を信じていたい。

でも、
市場の流れって、
知っているだけで少し呼吸が楽になる瞬間もあるんです。

「あ、自分だけの問題じゃなかったんだ」

と、視界が開けることがある。

なので、
普段はそこまで市場なんて追わなくても大丈夫です。

その代わり、
たまに私の記事を読みに来てください。

私はこういうことを考えるのが大好きなので、
また市場の天気図が変わり始めたら、
懲りずに深掘りしていこうと思います。

※参考:
・株式会社KADOKAWA「2026年3月期 通期決算説明資料」(2026年5月14日発表)
・株式会社アルファポリス「2026年3月期 決算短信」(2026年5月15日発表)

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