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壊れゆく「普通という檻」の中で:生成AIが崩す教育の価値観

「普通でありたい」と願うことは、防衛反応であり、同時に呪いであった。

誰にも傷つけられたくはない。
責められたくはない。
だから、「普通」の輪郭に沿った白線の中で、そこからはみ出さないように、息を潜めて生きてきたような気がする。


「変に目立ってはいけない」
「間違った道に進んではいけない」
きっと、誰かにそんな言葉を投げつけられたわけじゃない。
漂う空気感がそうさせたに過ぎないのだろう。

それでも、私は、自分の内側にせっせと白線を引いて、
「普通かどうか」で自分を測る習慣を、静かに身につけていった。
自分で描いた白線を踏んでいないかを、いつも気にしていた。


普通であれば、許されるし、守られる。
正解の近くにいられる。
安心感が得られる。
そんな風に信じていた。

そうして、何重にも重ねた「普通」を形どる白線は、いつしか壁のように高くなっていた
その壁が高く、超えられないものであるほどに安堵があった。
ただ、それは同時に、自分を縛る檻にもなっていた。

 

「普通」ということを教えてくれたのは、きっと学校だった。

毎日同じ時間に、同じ場所に登校し、
決められた時間にチャイムが鳴って、
誰かが決めた正解を、黒板に映して、
誰もが一斉に同じ方向を向いて、
違うようでどこか似た未来を想像していた。

それを守っている限りは盾のような安心感があり、
守れなくなるときに鋭い刃に触れるような怖さがあった。

そうして、いい成績を取って、いい大学へ行って、いい企業に就職する。
誰かが言っていたそんな言葉を真に受けて、それが「普通の幸せ」だと思い込んでいた。


ただ元より「普通」などというのは流動的な価値基準でしかない

例えば普通だと思っていた終身雇用は、所詮戦後が生んだ過渡的な制度でしかなく、疲弊しつつある。
年賀状という深く社会に根付いていた文化すら、もはや普通ではなくなってきている。

人の生き方が、価値観が多様化すれば、普通なんてものは徐々に失われていく。
誰もが、同じ時間に、同じテレビ番組を見る時代なんて疾うに過ぎてしまった。
同じ価値観を醸成する場が失われていけば、普通という幻想は消えていくしかない。


ただ、多様化していく中にあって、普通さを担保するための幾つかの基盤はまだ残されている。
1つは、「学校教育」であるはずだ。

だが、それすら時間の問題なのかもしれない。


一説によると、生成AIは既に大学院修士レベルにあると言う。
確かに、推論モデル(O3)を使っていると、もはや否定するのも難しい。
多くの分野で、適切な設問さえ与えれば、即座に情報を収集、整理して、概ね妥当な回答を用意してくれる。

その速度感も、回答の質も、相応の専門性を兼ね揃えてなければ、人が上回るのは難しい。
そう感じる場面は増えつつある。
大卒の社会人1, 2年目でそれと戦うのは酷なレベルとさえ思う。


とは言え、本来、このことがすぐさま教育の必要性を否定するわけではない。
教育の本質は「即戦力を育てる」ことだけではなく、「考える」という行為そのものを育むことにある。

表面的な知識の獲得なんかではなく、問いを持ち続ける力、他者と違う視点を受け入れる寛容さを高めることにこそ価値がある。


ただ、そのためには、時間的にもコスト的にも、「余裕」がいる。
一方で、タイパやコスパばかりを求める、今の社会にはその「余裕」が、もう残されていないのかもしれない。
企業も余裕がないとき、既に「完成された何か」を欲しがる。
学びの途上にいる人間よりも、すぐ答えを出せるAIのほうが合理的なのだから。


そうして、出口としての企業が、「教育された人間」を求めなくなったとき、学校教育の価値が毀損される日がやがて来るのだろう

そのときに、高等教育を目指すことが普通ではなくなっていく。
本質的には教育の価値も、教養の重要性も、変わることなく不変であったとしても、教育への価値観は、就職の需給バランスだけを以て変わっていく。

教育は、ちゃんとした未来に辿り着けると信じられる、そんな分かりやすい地図のようだった。
そんな価値観を失うとき、「普通という檻」は更に壊れていくのかもしれない。


普通という道標を失ったとき、生きることは、より模範回答のない白紙のスケッチブックに近づいていく。
どう描けばよいという正解はなく、一方でどう描いてもよいという自由もある。

「普通という檻」を出てみたとき、眼前に広がる景色は、澄みきった青空かもしれないし、荒涼とした砂漠なのかもしれない。

それは誰にもまだ分からない。



今回もエッセイ感強めで書いてみました。
良かったらスキしてくれると嬉しいです。
それではまた。


〇関連リンク(ChatGPT, 生成AI関係)

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