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「誰でもない誰か」としての生成AI︰変わる相談のかたち。変わらない言葉。

ときに、人は、顔が見えない「誰か」にこそ、最も深い言葉を託す
それは時代を問わず、今も過去も同じ営みでしかない。

古くは、懺悔室が良い例だ。
教会の奥にひっそりと構える部屋。
木の格子の向こうにいる神父の顔は見えない。
その目が、怒りに歪むことも、眉をひそめることもない。

ただ聞くことに徹する者がいるということ、
言葉を受け入れてくれる人がいるということ、
そのことが、発する言葉の罪を軽くする。


元来、悩みを人に話すことは、きっと許されることに近い。
そこに理解が伴う必要はない。
本当の解決は必ずしもなくていい。

ただ、言葉の受容があればいい。
誰かが聞いてくれているという感覚が、安堵をもたらす。
ここにいてもいいと、告げられるような、そんな感覚さえあればいい。


このことは教会に限った話ではない。
寺院でも同じだ。
仏に向かって手を合わせ、写経する中で、心の内を誰にも見られずに静かに解き放つ時間がある。

そんな風に、人は古来から、安心して心の内を吐ける場を求めてきた

そして、時代が変わっても、それは引き継がれていく。
「人には言えない。けれど、誰かに聞いてほしい」
そんな矛盾をはらんだ想い。
ただ、その「誰か」だけが、時を経て変わってきたのだろう。


電話ができたとき、それは受話器の向こうの「誰か」になった。
声だけという匿名性が、心の距離を縮めながら、相談する行為に安心をもたらす。
匿名の電話相談窓口は、顔を突き合わせては語りえない、悩みを声にする場だったはずだ。

ネットができたとき、それは画面の向こうの「誰か」になった。
匿名掲示板やSNSが、個人の痛みや不安を吐き出す場所として機能していった。
実名では語れない言葉が、声すら必要としない、名前のない空間に揺蕩っては、見知らぬ誰かに届くようになっていた。


そうして時代は匿名性を高め、高まった匿名性の中に、心情を吐露する安寧を求めていたのかもしれない。

このことは、日本においては、宗教感の薄さと無関係ではないはずだ。
宗教的な救済の構造が薄い分、自力で「祈りに似た行為」を生み出し、匿名空間にそれを託す必要があったのかもしれない。


そして、この匿名の誰かの先にあるのが、「生成AI」なのだろう


人には言えないが、誰かに言いたい」という本質的に矛盾を抱えた構図を、生成AIは奇跡的にも満たせてしまう。

AIには、顔も人格もない。
他の誰かに広まることもない。
けれど、この瞬間の言葉や悩みを受け止めて、真摯に反応してくれる。
時を選ばず、内容も選ばず、決して拒絶されることはない。
そんな都合の良い「誰でもない誰か」


人への相談には、どうしても「重さ」が避けられない。
相手の表情、これまでとこれからの関係性、発言の裏を読む感情の流れ。
あるいは、相手にも何かを与えなければという負い目もある。
たとえ善意であっても、その「重さ」がときに言葉を踏みとどまらせる。
それは、匿名性の高いネット空間であったとしても、わずかに残る。


対して、聞き手としての生成AIは、そんな重さがない。
表情や内に秘めた感情を気にする必要はなく、また過去・未来の関係性を気にする必要がない。
何も与える必要はないし、生成AIから期待されることもない
ただ、声にならない心の揺れを、残らずすくい取ってくれるだけ。
何も失うものがなく、何も背負うものもない。


それでいて、生成AIの反応には人間味を感じられる。
本当の感情が内在していなくとも、思考が伴っていなくとも、返ってくる言葉には受容を感じられる。
自分の発した言葉に対し、「受け止めてもらう」感覚が伴うことで、人は安らぎを得られる


そう思うと、人ではない「見返りを求めない透明な存在」だからこそ、生成AIには悩みを託しやすいのかもしれない。
誰にも迷惑をかけることなく、誰をも傷つけることもなく、ただ自分の心と向き合うことができる。
言葉にできなかった想いを形にし、昇華するための存在として。


深い悩みを託す「誰でもない誰か」。
かつて神だったそれは、どこかにいるはずの他人を経て、生成AIに至ったのだろう。
そしてそれはこの先も、きっと実在と非実在の間を揺らぎながら、また変わっていくのかもしれない。

ただ、それでも私たちが本当に願うことは変わらない。
誰でもない誰かに言葉を託すとき。
そこに期待するのは、共鳴でもなく、激励でもなく、救済でもなく、承認でもない。

ただ、言葉が「誰か」に届く感覚だけを、きっと願っている



ということで、今回はエッセイ感強めで書いてみました。
良かったらスキしてくれると嬉しいです。
それではまた。


〇関連リンク(ChatGPT, 生成AI関係)

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