捨てたくなるものは、捨てられない場所で静かに温める。
過去は、すぐに捨ててしまいたくなる。
よくできた!と思ったものでも、
すぐに温度が消えてしまう。
なんでこんなものを作ったんだ、って
恥ずかしくなって、消したくなる。
触れると痛い過去は、
ぜんぶ、手放したくなってしまう。
捨ててしまえば、
なにかから逃げられるような気がしていた。
昨日、幼なじみに、
「そういえば、猫の被り物も捨てようとしてたね」と言われて、ハッとした。
一昨日、
「傷つく前に、先に諦める癖」があることを書いた。
幼なじみと今までのことを振り返っていたら、
諦め癖のほかに、捨て癖もあることに気づかされた。
諦め癖と、よく似た温度をしているのだけれど、
捨て癖は
「断捨離」
「過去は引きずらない」
という表向きの綺麗さがあるから
それが、ちょっとした「悪癖」になっていることに気づかなかった。
諦め癖と同じで、
「傷つくことが怖い」から、捨てることに繋がってしまう。
猫の被り物も、捨てる候補のひとつだった。
離婚したときに、元夫との思い出の品は全部捨てようと思った。
離婚したとき、
わたしは、大切に育ててきた自分のお店も閉じたばかりだった。
薬の影響で10キロ太って、
大好きなコスプレもできないと思った。
感情が動くものを、目にすることができなくなった。
だから、全部捨てちゃおうと思った。
ぜんぶぜんぶ捨てきって。
タンスの奥から出てきたのは、
一度も被ることのなかった、
段ボール箱に入ったままの猫の被り物。
元夫を通してオーダーしたものだったから、
私の中では、猫の被り物は元夫を思い出す物だった。
猫が大好きだったから
細部まで、こだわって作ってもらった。
けれど。
結局、一度も被ってないし。
どうせ、この先も被る機会なんてないだろうし。
もう、いらないな。
そんな風に思っていた。
それを聞いた幼なじみが、捨てるのを止めてくれた。
「猫に罪はない」って、笑いながら。
そして、「撮影行こうよ」って誘ってくれた。

そしたら、自然の中に置かれた猫の姿が愛おしくなって、
そこから、一気にたくさんの夢が生まれた。
このときに芽生えた
いつか、猫の写真集を出したい!という小さな夢が
今日この日まで私を引っ張ってきてくれた。
なんもいらない、と思っていた私は、
今また大好きな言葉を綴っている。
たくさんの言葉も、
同じように、捨ててきた。
13年前に受賞した小説だって、全部捨てちゃった。
創作をしている友達にその話を聞いてもらったら、
「捨てられない場所」を作るといい、と教えてもらった。
メンバーシップは、その一言から生まれた場所。
すぐに大切なものを捨てちゃう私が、
かんたんに捨てることのできない場所。
今書いている本も、
そのことがとても大きい。
捨ててしまいたくなるほど大切なものは、
捨てられない形にして、温める。
それは、きっと、
なにかにつながっていくような気がしている。
ここでは、生きづらさや心のこと、
自分と向き合う中で見つけた気づきを綴っています。
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